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こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 野間宏(1915-1991)は、第二次世界大戦争直後の文学における草分けとして、そして第一次戦後派の代表作家として、世に知られています。武田泰淳、埴谷雄高、椎名麟三、梅崎春生などと肩を並べ、戦前から戦後への思想変化や、戦時中の戦地体験、被災体験に影響された価値観で社会を眺めた作品を次々と生み出しました。 日露戦争に勝利したことで得た満州の鉄道は、後の日中関係を歪なものへと導きます。1931年に大日本帝国関東軍が自作自演の鉄道爆破事件(柳条湖事件)を起こしたことを皮切りに、対中国への敵対心を明らかにします。翌年には上海での日中両軍の激しい衝突が…
こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 文学における第一次戦後派は、戦争時代の体験によって起こった精神変化、情勢変化、生活変化を文学に収め、観念や倫理を社会に映し出そうとした作家たちです。野間宏、武田泰淳、埴谷雄高、梅崎春生などが挙げられ、椎名麟三(1911-1973)も代表者作家のひとりです。彼は貧窮の少年時代を過ごします。ともに愛人を持つ両親は、二人ともが自殺、拠り所を無くした彼は文字通りに世界を失います。生きるために至るところで雑役に就き、命を繋ぐようにして過ごしました。私鉄の車掌となった彼は、カール・マルクスに強く影響を受けて共産党に入党し、労働運動に没入します。世界を失っ…
こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 処女作『風宴』の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作『桜島』の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作『日の果て』。『桜島』『日の果て』と照応する毎日出版文化賞受賞の『幻化』。無気味で純粋な〝生〟の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。 日本文学における第一次戦後派と呼ばれる作家たちは、戦争体験により影響された哲学や思想、社会性や政治などに対する訴えが込められた文学作品を生み出していきました。野間宏、武田泰淳、椎名麟三、埴谷雄高などと並び、梅崎春生(1915-1965)もその代表作家のひとりです。 彼は第二…
こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 秘密の重い扉が開かれるとき、一抹の暗い不安と不思議な幅をもった恐怖を私達は覚えるけれども、さて、いま心の秘密の扉が開かれる。《心の秘密》ーーその頑強な扉を敢えて開くことは底知れぬ恐怖にほかならぬが、武田泰淳ならではもち得ぬ全的洞察力を備えた視点によって、さながら時間と空間の合一体を時空と呼ぶごとく、敢えて新造語をもって《セイニク》とでも呼ぶべき精神と肉体の統合された一つの装置の扉がいまここに開かれるのである。 精神と性のグロテスクで真剣な《セイニク》の刻印を帯びた存在の諸相が精神病院のかたちをかりた現世の曼陀羅として悠容たる富士に見おろされ…