メインカテゴリーを選択しなおす
無数の星がきらめく黒い空。そして月のそばには、いちばん大きな星。(p.95) アブンディオという名のロバ追いの男が登場する。生者も死者も分け隔てなくしゃべりまくるこの小説内において、耳の遠い彼には特別な役割が与えられている。哀れな狂言回し。彼に与えられた役割はそれである、と私は考える。 アブンディオがこの小説内で最後に残したものは、二本の線である。 「酔っぱらっちまったよ」 男たちのところに戻った。彼らの肩にもたれかかると、そのまま引きずられて行った。地面には足先が刻んだ二本の筋だけが残った。(p.204) 地面に刻まれた二本の筋、これを、二つの道と考えてみる。アブンディオは道を用意した。二つ…
こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ペドロ・パラモという名の、顔も知らぬ父親を探して「おれ」はコマラに辿りつく。しかしそこは、ひそかなささめきに包まれた死者ばかりの町だった……。生者と死者が混交し、現在と過去が交錯する前衛的な手法によって、紛れもないメキシコの現実を描出し、ラテンアメリカ文学ブームの先駆けとなった古典的名作。 1846年にアメリカの領土侵略によって、アメリカ=メキシコ戦争が勃発しました。当時のメキシコの約半分の土地を奪ったアメリカは、その後、南北戦争を引き起こします。メキシコの州知事であったベニート=フアレスは、この領土割譲を批判すると、政府より知事の任を解かれ…