chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
RIYO
フォロー
住所
埼玉県
出身
未設定
ブログ村参加

2022/01/09

  • 『病気の通訳』(停電の夜に)ジュンパ・ラヒリ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 闇につつまれたキッチンをほのかに照らす蝋燭の灯り。停電の夜ごと、秘密の話を打ち明けあった二人は、ふたたびよりそって生きることができるのか。──表題作ほか、O・ヘンリー賞受賞の「病気の通訳」等全九篇を収録。インド系女性作家による瞠目のデビュー短篇集。本年度ピュリツァー賞、PEN/ヘミングウェイ賞受賞作! インド東部に位置するコルカタ出身の両親を持つジュンパ・ラヒリ(1967-)は、英国ロンドンで生まれ、アメリカで育った移民二世の作家です。ベンガル人の両親は渡米後もインドの文化や価値観を維持した生活を送り、ラヒリへの教育もそれらに則したものを与え…

  • 『闇の奥』ジョゼフ・コンラッド 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 アフリカ奥地の貿易会社出張所にやってきた船乗りマーロウが耳にしたのは、最奥部の出張所をあずかる腕ききの象牙採取人クルツの噂だった。折しも音信を絶ったクルツの救出に向かうマーロウ一向の前に、死と闇の恐怖を秘めた原始の大密林がおおいかぶさる。ポーランド生れのイギリス作家コンラッドの代表作。 1877年にロシア帝国がオスマン帝国(トルコ)に宣戦して勝利した露土戦争は、講和条約を締結して終戦したものの自治獲得などの面でイギリスとオーストリア=ハンガリー帝国が強い反発を見せて混乱が続きました。更なる紛争を抑えるためにドイツ帝国宰相ビスマルクが調停に乗り…

  • 『黄金虫変奏曲』リチャード・パワーズ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 たった四つの文字から「畏るべき豊穣」を生む遺伝情報と、バッハのゴルトベルク変奏曲。その二つの構造の不思議なまでの符合を鋳型にして、精巧なロマンスとサスペンスが紡ぎ出される。1957年、遺伝暗号の解読を目指す若き生化学者スチュアート・レスラーに、一人の女性がゴルトベルク変奏曲のレコードを手渡す。25年後、公立図書館の司書ジャン・オデイは、魅力的な青年フランク・トッドから、奇妙なリサーチの依頼を受ける。夜ごとゴルトベルクを聴きながら凡庸なコンピュータ・アルゴリズムのお守りをしている、恐ろしく知的で孤独な同僚の正体を調べたい、と。長い時を隔てて存在…

  • 『赤い髪の女』ヤン・ウォルカーズ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 ソロモンの雅歌にある輝く小麦のあいだに茶色の豆を置いたようにそばかすの散らばる彼女の胸部は、なだらかな曲線を描き、その下で少しへこんでから、ふたたび少女の小さな乳房のような弾力のある丘をつくっていた。そしてミルク色のジュースをしたたらせたわれめのある熟した赤毛のばら色の果実。ぼくは両手を彼女のうしろにまわし、彼女のからだを僕に近づけ、その濡れた溝に舌を差し込んだーー 燃えるような赤毛の女、オルガと、若き前衛芸術家の、残酷な悲劇で終わる愛の生活を描き、そのストレートな性表現で、ヘンリー・ミラーの作品や、「ラスト・タンゴ・イン・パリ」と比較された…

  • 『林檎の樹』ジョン・ゴールズワージー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 銀婚式の日、妻と共に若い日の思い出の地を訪れた初老のアシャーストの胸に去来するものは、かつて月光を浴びて花咲く林檎の樹の下で愛を誓った、神秘的なまでに美しい、野生の乙女ミーガンのおもかげ、かえらぬ青春の悔いだった……。美しく花ひらいた林檎の樹(望んでも到達することはない理想郷)の眩ゆさを、哀愁こめて甘美に奏でたロマンの香り高い作品。 イギリスに根付いていた階級社会は二十世紀初頭においても顕著であり、貴族階級や中産階級が資本を支配する格差社会が固く構築されていました。人口の約80%は労働者階級として貧困に悩まされて暮らしていました。産業革命によ…

  • 『青い麦』シドニー=ガブリエル・コレット 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ブルターニュの海岸に毎年避暑にやって来る16歳の少年フィルと清純な少女ヴァンカは、芽ばえ始めた異性愛にとまどう。フィルは知り合った美しい中年女性の別荘を訪れ、はじめて時間をすごすが、ヴァンカは彼の突然の変化を感じ取り、二人はもはや無心な遊び友達ではいられなくなる……コレットが終生追究した肉欲のテーマを少年少女の混乱した心理を通して描いた散文詩的な小説。 フランスの中心からやや北部に位置するヨンヌ県、パリから南東へ200kmほど離れたサン・ソヴール・アン・ピュイゼ(Saint-Sauveur-en-Puisaye)にてシドニー=ガブリエル・コレ…

  • 『哀詩 エヴァンジェリン』ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀半ばの北米。英仏の植民地争奪戦により引き裂かれた恋人たちが、互いを探し求め、すれ違う悲しい運命を描いた物語詩。 十七世紀末よりイギリスとフランスによって引き起こされた英仏植民地戦争は、互いの重商主義がぶつかり合い、争いの規模を広げて十九世紀初頭にまで及び、第二次百年戦争とも呼ばれます。軍事に長けたウィリアム三世が財政革命を起こして軍需を整えると、オーストリアやプロイセンと同盟を結び植民地支配を拡大していきます。対するフランスはルイ十四世が絶対王政による厳しい徴税で財政を確保します。しかし、激しい植民地の奪い合いは戦争を長期化させ、両国…

  • 『孤独な散歩者の夢想』ジャン=ジャック・ルソー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀以降の文学と哲学はルソーの影響を無視しては考えられない。しかし彼の晩年はまったく孤独であった。人生の長い路のはずれに来て、この孤独な散歩者は立ちどまる。彼はうしろを振返り、また目前にせまる暗闇のほうに眼をやる。そして左右にひらけている美しい夕暮れの景色に眺めいる。ーー自由な想念の世界で、自らの生涯を省みながら、断片的につづった十の哲学的な夢想。 十六世紀末にフランスで創始されたブルボン朝による絶対王政は、旧封建社会(アンシャン・レジーム)によって大多数の国民を圧政によって締め付けていました。第一身分の聖職者、第二身分の貴族は、国民のほ…

  • 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』フィリップ・K・ディック 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 第三次対戦後、放射能灰に汚された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた〈奴隷〉アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた!現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界! 戦争に対する嫌悪を抱き、現実に潜む虚構を描き出すアメリカのサイエンス・フィクション作家フィリップ・キンドレッド・ディック(1928-1982)。突飛な世界で繰り広げられる劇中には、人間の本…

  • 『エッフェル塔の潜水夫』ピエール=アンリ・カミ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 セーヌの川底からお化け潜水夫に水死体が運び去られた。それを目撃したヴァランタン・ムーフラールも水死体となって、所もあろうにエッフェル塔の上に現われ、おまけに幽霊船『飛び行くオランダ人』号船長の契約書までも添えてあった。血の気の多いパリっ子を巻き込んで次々おこる怪事件、登場する怪人物、深まる謎……。エッフェル塔の構造の秘密という奇抜な着想から繰り出される奇想天外な物語。 ピエール=アンリ・カミ(1884-1958)はスペインとの国境に程近い南フランスのポーにてブルジョワ階級に生まれました。闘牛士を夢見ていましたが弱視のために家族に反対され、それ…

  • 『現代日本の開化』夏目漱石 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 圧倒的に優位な西洋文明を相手に漱石は「自己本位」の立場を同時代のだれにもまして痛切に生きた。その苦闘の跡を示す『現代日本の開化』『私の個人主義』などの講演記録を中心に、かれの肉声ともいうべき日記・断片・書簡を抄録する。 明治の文学思潮において西洋発祥の自然主義が日本で隆盛するなか、反自然主義として理知的思想と広い視野を誇り真っ向から対峙した「余裕派」の代表的な作家である夏目漱石。本書は彼の広い視野で見た知見を、日露戦争後に各地へ赴き語り通した講演の数々を収めた文明論集です。 日露戦争は1904年に勃発しました。ロシア帝国の経済的、領土的利権確…

  • 『夜想曲集』カズオ・イシグロ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とはーーほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの特別階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、音楽をテーマにした五篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描きだしたブッカー賞作家初の短篇集。 アイルランドの作曲家ジョン・フィールドによって生み出された性格的小品「夜想曲」(nocturne)は、彼を崇拝していたフレデリック・ショパンが倣うように作曲して生まれた…

  • 『じゃじゃ馬ならし』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 美人だが、手におえないじゃじゃ馬むすめカタリーナが、男らしいペトルーキオーの機知と勇気にかかって、ついに可愛い世話女房に変身ーー。陽気な恋のかけひきを展開する『じゃじゃ馬ならし』。 執筆時期は修行時代末期に該当する1590年頃、ロンドンにおいてエリザベス朝演劇が隆盛する時期で、演劇の大きな波が押し寄せ、多くの劇団が組織され、多くの劇場が建てられていました。ウィリアム・シェイクスピアはこの波の中にあり、俳優として活動する傍らで演劇台本の執筆も多く書き上げていました。『ヘンリー六世三部作』を始めとして、悲劇も喜劇も書き上げる才は、すでに同業者に煙…

  • 『ロミオとジュリエット』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 Two households, both alike in dignity,In fair Verona, where we lay our scene,From ancient grudge break to new mutiny,Where civil blood makes civil hands unclean.From forth the fatal loins of these two foesA pair of star-cross'd lovers take their life;Whose misadventured pit…

  • 『ヴェニスの商人』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ヴェニスの若き商人アントーニオーは、恋に悩む友人のために自分の胸の肉一ポンドを担保に悪徳高利貸しシャイロックから借金してしまう。ところが、彼の商船は嵐でことごとく遭難し、財産の全てを失ってしまった。借金返済の当てのなくなった彼はいよいよ胸の肉を切りとらねばならなくなるのだがーー。機知に富んだ胸のすく大逆転劇が時代を越えてさわやかな感動をよぶ名作喜劇。 種本として中世イタリアの物語集『イル・ペコローネ』(阿呆)の一つから取られており、借金、貿易、ユダヤ人、人肉担保、法学博士、求婚など、大筋の設定が活かされています。 当時のユダヤ人は、イギリス内…

  • 『二人の貴公子』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 古代ギリシアを舞台に、従兄弟同士の騎士が王女の愛を競い決闘する。新たにシェイクスピアの作品と認定された傑作戯曲!人間の運命がもたらす悲哀を謳い上げた五幕の悲喜劇。 近年の研究により、ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)の執筆と認められる作品が増えています。シェイクスピアは国王一座の作家であったことから、演劇台本を書くことが仕事であり、役者が演じるために用意するものであったことから、署名の無い作品が多数存在していました。本作『二人の貴公子』も同様に正規作品と見做されていませんでしたが、初版のタイトルページに名前があったこと、そして文…

  • 『エドワード三世』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 百年戦争の最中、美女の誉れ高い伯爵夫人に恋い焦がれるエドワード三世の様と騎士道の美徳を称えた歴史劇。 ウィリアム・シェイクスピア(1564-1616)は、エリザベス女王一世の統治下における宮内長官による劇団一座にて演劇台本の執筆を手掛け、数多くの作品を生み出しました。統治がジェイムズ一世となると、劇団はそのまま国王一座として受け継がれ、過去に書き上げられた作品も引き取られました。宮廷用の演劇台本として書かれた作品は匿名の状態で後世に継がれたため、現在において、幾人か存在したお抱えの作家のいずれが執筆したかが不明となっている作品が多くあります。…

  • 『あらし』(テンペスト)ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 奸悪な弟に領地を奪われ、娘ミランダと共に絶海の孤島に漂着したミラノ公プロスペローは、魔法の力を究め弟の船を難破させたが……シェイクスピア最後の傑作。 野心溢れる実弟アントーニオーとナポリ王アロンゾーの陰謀により国外へ娘と共に追放された元大公プロスペローは、漂い流れ着いた孤島にて恨み辛みを抱きながら、それでも大切な我が子を生かそうと懸命に育てました。追放の際に忠実で親切な臣下ゴンザーローから手渡された僅かな生活必需品と大切な魔法の研究書を手に、十二年間も生きながらえます。その間、島に住んでいた魔女の子供キャリバンに言葉や知恵を与えて服従させて、…

  • 『飛ぶ教室』エーリッヒ・ケストナー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 孤独なジョニー、弱虫のウーリ、読書家ゼバスティアン、正義感の強いマルティン、いつも腹をすかせている腕っぷしの強いマティアス。同じ寄宿舎で生活する5人の少年が友情を育み、信頼を学び、大人たちに見守られながら成長していく感動的な物語。ドイツの国民作家ケストナーの代表作。 アメリカの株式崩壊を発端に起こった世界大恐慌が人々の生活を脅かすなか、第一次世界大戦争の責任を全て押し付けられる形で終えたドイツでは、失われた国の誇りを取り戻そうとする、アドルフ・ヒトラー率いるナチスへ国民は期待を強めていきます。政権を奪取した1933年から怒涛の内政改革を行い、…

  • 『サロメ』オスカー・ワイルド 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 妖しい美しさで王エロドの心を奪ってはなさぬ王女サロメ。月光のもとでの宴の席上、七つのヴェイルの踊りとひきかえに、彼女は預言者ヨカナーンの生首を所望する。幻想の怪奇と文章の豊麗さによって知られる世紀末文学の傑作。ビアズレーの挿絵をすべて収録。 オスカー・ワイルド(1854-1900)は十九世紀末に隆盛を始めた耽美主義を率いる代表者の一人です。アイルランドのダブリンに住む、イギリス系の敬虔なプロテスタントの父と詩人の母の元に生まれました。彼の秀でた能力は多言語の習得だけでなく、古語と詩作を中心に才能を開花させ、オックスフォード大学を優秀な成績で卒…

  • 『暗い絵』野間宏 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 野間宏(1915-1991)は、第二次世界大戦争直後の文学における草分けとして、そして第一次戦後派の代表作家として、世に知られています。武田泰淳、埴谷雄高、椎名麟三、梅崎春生などと肩を並べ、戦前から戦後への思想変化や、戦時中の戦地体験、被災体験に影響された価値観で社会を眺めた作品を次々と生み出しました。 日露戦争に勝利したことで得た満州の鉄道は、後の日中関係を歪なものへと導きます。1931年に大日本帝国関東軍が自作自演の鉄道爆破事件(柳条湖事件)を起こしたことを皮切りに、対中国への敵対心を明らかにします。翌年には上海での日中両軍の激しい衝突が…

  • 『海からの贈物』アン・モロー・リンドバーグ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 女はいつも自分をこぼしている。そして、子供、男、また社会を養うために与え続けるのが女の役目であるならば、女はどうすれば満たされるのだろうか。い心地よさそうに掌に納まり、美しい螺旋を描く、この小さなつめた貝が答えてくれるーー。有名飛行家の妻として、そして自らも女性飛行家の草分けとして活躍した著者が、離島に滞在し、女の幸せについて考える。現代女性必読の書。 1945年に各国を巻き込んだ第二次世界大戦争が終結して、各地での復興と国際経済の正常化が目指されました。参加国のなかでも戦禍を直接的に受けることが少なかったアメリカでは、戦争軍需による大きな利…

  • 『地獄の季節』アルチュール・ランボオ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 16歳にして第一級の詩をうみだし、数年のうちに他の文学者の一生にも比すべき文学的燃焼をなしとげて彗星のごとく消え去った詩人ランボオ。ヴェルレーヌが「非凡な心理的自伝」と評した散文詩『地獄の季節』は彼が文学にたたきつけた絶縁状であり、若き天才の圧縮された文学的生涯のすべてがここに結晶している。 1868年に悪政を轟かしていたスペイン女王イザベラに対抗すべく、政府は軍事クーデターを起こしてフランスへ亡命させるに至ります。空位となったスペイン王座を利用しようと、プロイセン首相のビスマルクは自国のポルトガル王家血縁者を推薦し、傀儡政権を成立させようと…

  • 『アンセム』アイン・ランド 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 米国議会図書館の調査で「聖書に次いでアメリカ人に最も影響を与えた本」とされた『肩をすくめるアトラス』の著者アイン・ランドによるディストピア短編小説。集団・平等主義が極限まで推し進められた結果、「私(I)」という概念が排除され「われら(we)」に置き換わってしまった遠い未来。主人公は自由を取り戻す闘いに立ち上がる。 ロシア帝国最終皇帝のニコライ二世政権下で領土拡大を目的とした南下政策が行われました。朝鮮半島から満州までの広範囲を目的とした進軍は、同様に進軍政策を進めていた大日本帝国との衝突を生みます。互いに武力行使が激しくなり、1904年に日露…

  • 『アルケミスト』パウロ・コエーリョ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。 二十世紀初頭のブラジルではサトウキビ、コーヒーを中心とした農業大国でした。しかし、その恩恵は国内全土には広まらず、商業や工業に携わる民衆は貧困に苦しんでいま…

  • 『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン 感想と一日一篇

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 知る人ぞ知る優れた短篇作家、アメリカで守られ続ける文学の秘密、など幾つもの肩書きを持つルシア・ベルリン(1936-2004)ですが、世界的な評価を受けるに至ったのは、つい最近の2015年になってからでした。 父の仕事に合わせて転々とした住居、生まれつきの脊椎側彎症(背骨が横にS時に湾曲)、内向的な性格による嫉みといじめの被害、貧困層と富裕層の双方を経験、祖父からの性的虐待、掃除婦や救急救命看護師や電話交換手といった多くの職場経験、母と叔父はアルコール中毒者、本人もアルコール中毒者、デトックス成功後に刑務所で囚人相手の教師、三回の結婚と四人の息…

  • 『誰がために鐘は鳴る』アーネスト・ヘミングウェイ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 全ヨーロッパをおおわんとするファシズムの暗雲に対し、一点の希望を投げかけたスペイン内戦。1936年に始まったこの戦争を舞台に、限られた生命の中で激しく燃えあがるアメリカ青年とスペイン娘との恋を、ダイナミックな文体で描く代表作。義勇兵として人民政府軍に参加したロバートは、鉄橋爆破の密命を受けてゲリラ隊に合流し、そこで両親をファシストに殺されたマリアと出会う。 1914年のサラエボ事件を発端とした三国同盟(ドイツ・オーストリア・イタリア)と三国協商(イギリス・フランス・ロシア)によるヨーロッパでの衝突は、戦禍の火を広げて第一次世界大戦争を引き起こ…

  • 『デカメロン』ジョバンニ・ボッカッチョ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 1348年、当時、フィレンツェの町ではペストが流行、郊外の別荘に避難した10人の紳士淑女たちは退屈しのぎに1人、毎日1話ずつ10日間にわたって物語りを話すことに決める。下賤な馬丁が王様と姿が似ているのを利用して、深夜王妃の寝室にしのび込むという話、親しい友人同士の一方が相手の妻と密通したことがきっかけで互いの妻を共有しあう話など、王侯貴族、僧侶、商人、農民といったあらゆる階級の人物がまきおこす、好色、皮肉なもの、ロマン的なもの、悲劇的なものを話題として底抜けな明るさで物語られる。作者ボッカッチョは暗い中世ののちに、自我に目覚める人間像を、生命…

  • 『獨樂園』薄田泣菫 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 詩集『白羊宮』などで象徴派詩人として明治詩壇に一時代を劃した薄田泣菫は、大阪毎日新聞に勤めてコラム「茶話」を連載し、好評を博する。人事に材を得た人間観察から、やがて自然や小動物を対象にした静謐な心境随筆へと歩をすすめ、独自の境地を切り拓いた。本書は泣菫随筆の絶顚であり、心しずかに繙くとき、生あるものへの慈しみと読書の愉悦とに心ゆくまで浸るにちがいない。 ロマン派そして象徴派に挙げられる薄田泣菫(すすきだきゅうきん 1877-1945)は、詩人として日本で初めてソネット(絶句)を発表し、文士として芥川龍之介を文壇に立つ足掛かりを与えました。 詩…

  • 『深夜の酒宴』椎名麟三 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 文学における第一次戦後派は、戦争時代の体験によって起こった精神変化、情勢変化、生活変化を文学に収め、観念や倫理を社会に映し出そうとした作家たちです。野間宏、武田泰淳、埴谷雄高、梅崎春生などが挙げられ、椎名麟三(1911-1973)も代表者作家のひとりです。彼は貧窮の少年時代を過ごします。ともに愛人を持つ両親は、二人ともが自殺、拠り所を無くした彼は文字通りに世界を失います。生きるために至るところで雑役に就き、命を繋ぐようにして過ごしました。私鉄の車掌となった彼は、カール・マルクスに強く影響を受けて共産党に入党し、労働運動に没入します。世界を失っ…

  • 『居酒屋』エミール・ゾラ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 洗濯女ジェルヴェーズは、二人の子供と共に、帽子屋ランチエに棄てられ、ブリキ職人クーポーと結婚する。彼女は洗濯屋を開くことを夢見て死にもの狂いで働き、慎ましい幸福を得るが、そこに再びランチエが割り込んでくる……。《ルーゴン・マッカール叢書》の第七巻にあたる本書は、十九世紀パリ下層階級の悲惨な人間群像を描き出し、ゾラを自然主義文学の中心作家たらしめた力作。 1852年から約二十年間続いたフランス第二帝政は、ルイ=ナポレオンが治めるボナパルティズム末期を指し、プロイセンのオットー・フォン・ビスマルクの挑発に乗って普仏戦争による敗北を招き、終焉を迎え…

  • 『夏の夜の夢』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ草を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇。 本作『夏の夜の夢』の一つの特徴として種本が無いということが挙げられます。婚礼式典の余興として描かれていることから、貴族の結婚式で披露する目的でシェイクスピアが自ら書き上げたと考えられています。 Midsummer-dayは「夏至」を指します。キリスト教文化圏においては、この日に洗礼者聖ヨハネの誕生を祝う日として催しが行われます。それに関わる「ヨハネの聖水」という風習があり、夏至前…

  • 『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ 感想

    こんにちは。 RIYOです。今回はこちらの作品です。 名刺の住所は「旅行中」、かわいがっている捨て猫には名前をつけず、ハリウッドやニューヨークが与えるシンデレラの幸運をいともあっさりと拒絶して、ただ自由に野鳥のように飛翔する女ホリー・ゴライトリー。彼女をとりまく男たちとの愛と夢を綴り、原始の自由性を求める表題作をはじめ、華麗な幻想の世界に出発し、多彩な作風を見せるカポーティの作品4編を収める。 1918年に迎えた第一次世界大戦争の終結から、アメリカではロシア革命に端を発するボリシェヴィキズム(暴力革命を掲げる過激派共産主義)が広がり、統制の取れた革命思想を持つ労働者たちが無政府共産主義的な運動…

  • 『モンパルナスとルヴァロワ』ジャン=リュック・ゴダール 感想

    こんにちは。 RIYOです。今回は映画作品です。 1954年、映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」に掲載された記事が映画界を変革するほどの大きな影響を与えました。それは、のちに自ら映画を監督することになるフランソワ・トリュフォーの文章で、既存の脚本重視の作品は「芸術としての本質」に欠けているという主張でした。「良質の伝統」を守り続けるフランス映画はリアリズムを求めている、しかし決まり文句や使い回された洒落ではリアリズムはより遠のいて行く。こう主張して「真のリアリズム」を映し出そうと模索することが必要であると説きました。脚本を元に監督が脳内でイメージを創り上げるならば、撮影される作品がそれ以上のも…

  • 『毛皮のマリー』寺山修司 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 著者の下宿の裏通りには街娼がよく出没した。その中の54歳の娼婦が実は男だと知り、作った表題作は都内中のゲイバーのママが総出演し、アンダーグラウンド・カルチャーの仇花となった。〝ワイ雑で、野放図で、ぶちこわし型で、その中に人間存在の根源をさがし求めてゆく〟やり方は、新劇の啓蒙的近代主義へのアンチ・テーゼとなった。1960年安保闘争を描いた処女戯曲「血は立ったまま眠っている」他、戯曲と同時代のすれちがいを提示しつつ、現代寺山演劇の萌芽を内包する初期傑作戯曲集。 寺山修司(1935-1983)は、母方の叔父が経営していた青森の映画館「歌舞伎座」で少…

  • 『悪の華』シャルル=ピエール・ボードレール 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 十一世紀に生まれた「聖アレクシス伝」「ロランの歌」などから始まるフランス詩史は、やがて厳格な規則性を持ちフランス韻文詩が形成されていきます。道徳的思想と芸術性を併せ持った美しい詩が数百年ものあいだ生み出され続け、堅固たる伝統的文化としてフランス文学に定着します。心身の美を追求した幾つもの作品は、読者の心を清浄にし、身の穢れを削ぎ落とす、美しい文体と韻律で絵画のように描かれていきました。 十九世紀に入るとナポレオン・ボナパルトの戴冠に始まり、ヴァグラム、ドレスデン、ライプツィヒ、ワーテルローでの激しい戦争、フランス七月市民革命と、民衆が心を落ち…

  • 『桜島』梅崎春生 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 処女作『風宴』の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作『桜島』の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作『日の果て』。『桜島』『日の果て』と照応する毎日出版文化賞受賞の『幻化』。無気味で純粋な〝生〟の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。 日本文学における第一次戦後派と呼ばれる作家たちは、戦争体験により影響された哲学や思想、社会性や政治などに対する訴えが込められた文学作品を生み出していきました。野間宏、武田泰淳、椎名麟三、埴谷雄高などと並び、梅崎春生(1915-1965)もその代表作家のひとりです。 彼は第二…

  • 『危険な関係』ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦かーー。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み、幾重にもからまった運命の糸が、やがてすべてを悲劇の結末へと導いていく。華麗な社交界を舞台に繰り広げられる駆け引きを、卓越した心理描写と息詰まるほどの緊張感で描ききる永遠の名作。 一六世紀末にアンリ四世より創始されたブルボン朝はフランス絶対王政を堅固なものとして、国内外に向けて二百年以上も強力に勢力を伸ばして圧政を敷いていました。構築されたアンシャン・レ…

  • 『山猫』トマージ・ディ・ランペドゥーサ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 一八六〇年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ(1896-1957)は、代々宰相を務める大貴族の家系に生まれました。莫大な富の中でありながら、父からの愛情をあまり受けることなく、母親と家庭教師と共に広大な敷地で暮らしていました。 1915年に第一次世界大戦争のイタリア戦線、カポレットの戦いに行軍します。この戦いは当初イタリア側が優勢と見られてい…

  • 『スターメイカー』オラフ・ステープルドン 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 肉体を離脱した主人公は、時間と空間を超え、宇宙の彼方へと探索の旅に出る。訪れた世界で出会った独自の進化を遂げた奇妙な人類と諸文明の興亡、宇宙の生命と生成と流転を、壮大なスケールと驚くべきイマジネーションで描いた幻想の宇宙誌。アーサー・C・クラークやスタニスワフ・レム、J・L・ボルヘスをはじめ多くの作家に絶賛され、多方面に影響を与えてきた伝説の作品を全面改訳で贈る。 敬虔なクリスチャンであった哲学者のオラフ・ステープルドン(1886-1950)は、幼少期に海運事業主の父の都合で幼少期をエジプトの運河都市ポートサイードで過ごしました。イギリス国民…

  • 『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 父親フョードル・カラマーゾフは、圧倒的に粗野で精力的、好色きわまりない男だ。ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人兄弟が家に戻り、その父親とともに妖艶な美人をめぐって繰り広げる葛藤。アリョーシャは、慈愛あふれるゾシマ長老に救いを求めるが……。 1830年ごろに隆盛した「ロシア詩黄金期」は、アレクサンドル・プーシキンやミハイル・レールモントフを中心に素晴らしい詩を数多く残しました。ここに同時代の偉大な散文作家たちを加えて「ロシア文学黄金時代」と現代では括られています。含まれる散文作家の代表者と言えば、ニコライ・ゴーゴリ、レフ・トルストイ、イワン・…

  • 『死に至る病』セーレン・オービュ・キェルケゴール 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「死に至る病」とは絶望のことである。憂愁孤独の哲学者キェルケゴールは、絶望におちいった人間の心理を奥ふかいひだにまで分けいって考察する。読者はここに人間精神の柔軟な探索者、無類の人間通の手を感じるであろう。後にくる実存哲学への道をひらいた歴史的著作でもある。 セーレン・オービュ・キェルケゴール(1813-1855)はデンマークの思想家であり哲学者です。当時のゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルを中心とした理想主義の席巻は、宗教論にまで派生してデンマークの各教会にまで影響(ぐらつき)を与えるほどでした。これに対抗する思想を立ち上げてぶ…

  • 『お月さまへようこそ』ジョン・パトリック・シャンリィ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 映画『月の輝く夜に』でアカデミー脚本賞を受賞したジョン・パトリック・シャンリィ、初の戯曲集。ニューヨークを舞台にして、人間同士の心のかよいあいを中心にくりひろげられる現代のメルヘン。 南北戦争、第一次世界大戦争を経たアメリカ合衆国は、ヨーロッパ諸国からの移民に溢れます。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アイルランドなどから先住民たちを数で凌ぐほどの勢いで移り住みます。軍需だけでなく、イギリスに起こった産業革命の影響として、科学や工業製品の流入を伴いながらやってきました。現代のアメリカ人口の九割がこれらの移民の末裔であるという説もあります。…

  • 『夢みる宝石』シオドア・スタージョン 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 家出少年のホーティがもぐりこんだのは、普通でない人間たちが集うカーニヴァル。団長のモネートルには奇妙な趣味があった。宇宙から来た不思議な水晶の蒐集と研究だ。水晶たちが夢をみるとき、人や動物や植物が生まれる―モネートルはそれを利用して、己の野望を果たそうとしていたのだ。そのことを知ったホーティやカーニヴァルの団員は、恐ろしい運命の渦に巻きこまれていく。幻想SFの巨匠がつむぎだす珠玉の名品。 1840年代のアメリカはサーカス興行が盛んでした。広大な国土は、巡業して各地の民衆を楽しませてまわる業態に適していました。また多くの人種による多様な価値観や…

  • 『氷山へ』ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオの思考と実践に大きな影響を与えた孤高の詩人アンリ・ミショー。彼の至高の詩篇「氷山」「イニジ」について、ル・クレジオが包括的かつ詩的に綴った珠玉の批評-エッセイ。 1963年に『調書』で華々しくフランス文壇デビューを果たしたジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ(1940-)は、ルノードー賞を受賞し、ゴンクール賞にも候補として選ばれました。当時のフランスで中心的な風潮を持っていたアンチ・ロマンとは一線を画す描写で、作家としての立場を確立させました。1966年よりフランスの義務兵役代替としてタイや…

  • 記事索引

    感想記事を国別でまとめました。作品がどの国で発表されたか、どの国で認められたか、などを参考にしているため、作家の出身国とは違う国にまとめられていることもあります。大きな違和感がある場合、ご指摘いただけますと幸いです。 フランス文学 アメリカ文学 イギリス文学 ロシア文学 ドイツ文学 チェコ文学 オーストリア文学 アイルランド文学 イタリア文学 イラク文学 インド文学 カタルーニャ文学 ギリシャ文学 コロンビア文学 デンマーク文学 ノルウェー文学 ペルー文学 ポーランド文学 日本文学 ギリシャ哲学

  • 『壊れた風景』別役実 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 食べ物からパラソルに蓄音機まで用意された素敵なピクニックの場に通りがかった他人同士。不在の主に遠慮していたはずが、ついひとつまみから大宴会へ。無責任な集団心理を衝いて笑いを誘う快作。 1930年の日本では、数年前の関東大震災から復興しきれぬ中、畳み掛けられるように世界恐慌の煽りを受け、経済は壊滅的な状況に陥ります。震災手形は支払不能となり、多くの企業が倒産して、国内は失業者で溢れます。日本は自国内での経済回復は困難と見て、大陸へ進出して領土を拡大し、そこを植民地とすることで利潤を得て、大規模な不景気から脱却しようと試みます。侵略対象は日露戦争…

  • 『雪のひとひら』ポール・ギャリコ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 雪のひとひらは、ある冬の日に生まれ、はるばるとこの世界に舞いおりてきました。それから丘を下り、川を流れ、風のまにまにあちこちと旅を続けて、ある日……愛する相手に出会いました。ひとりが二人に、二人がひとりに。あなたが私に、私があなたに。この時、人生の新たな喜びと悲しみが始まったのですーー。永遠の愛の姿を描く珠玉のファンタジーを、美しい挿画でお届けします。 第一次世界大戦争を終え、イギリス全土のあらゆる方面で疲弊が見られました。経済の不安定さが激しく、アメリカへの依存度が高まるに合わせて、世界の指導者としての立場は移行されていきます。インフレ対策…

  • ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 かねてから、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と激しく意志的な夫人の教唆により野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったマクベスは、その王位を失うことへの不安から次々と血に染まった手で罪を重ねていく……。シェイクスピア四大悲劇中でも最も密度の高い凝集力をもつ作品である。 デンマーク王子として「自身はどうあるべきなのか」と悩み続けるハムレットと比較すると、マクベスの小心性は顕著に見られます。大きな性格、性質の違いとしては、「宿命」に生きた前者は生まれ落ちたその日か…

  • ギ・ド・モーパッサン『脂肪の塊』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 プロシア軍を避けてルーアンの町を出た馬車に、“脂肪の塊”と渾名(あだな)される可憐な娼婦がいた。空腹な金持たちは彼女の弁当を分けてもらうが、敵の士官が彼女に目をつけて一行の出発を阻むと、彼女を犠牲にする陰謀を巡らす――ブルジョア批判、女性の哀れへの共感、人間の好色さを描いて絶賛を浴びた「脂肪の塊」。同じく、純粋で陽気な娼婦たちと彼らを巡る人間を活写した「テリエ館」。 1868年、スペイン女王イザベラの悪政に見切りをつけた役人や軍人は、クーデターを決行して国政から追放し、フランスへ亡命させるに至ります。空位となったスペイン王座を利用しようと画策…

  • ヘンリ・ミラー『北回帰線』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 〝ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまに、ぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる〟その激越な性描写ゆえに長く発禁を免れなかった本書は、衰弱し活力を失った現代人に最後の戦慄を与え、輝かしい生命を吹きこむ。 ヘンリ・ミラー(1891-1980)は、アメリカのブルックリンにあるウィリアムズバーグの移民地域で幼少期を過ごします。人種や言語が無差別に入り混じる街中で「人間」に対する観察力が強く養われていきます。文化の統一が見られない街では成長期の価値観…

  • フランシス・ホジソン・バーネット『秘密の花園』感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 両親を亡くし、ヨークシャーの伯父にひきとられた少女メアリー。やせっぽちで顔色の悪かった彼女が温かい人々、輝く太陽、澄んだ空気に触れるうち、バラ色の頬をした快活な少女に生まれ変わっていきます。荒れ地の「魔法」はさらに、病弱で寝たきりだったいとこコリンにも勇気と生きる力を与えます。彼女が秘密の花園の扉を開く時、閉ざされた心の扉も同時に開かれていくのでした。 1830年にスティーブンソンが実用化させた蒸気機関車がマンチェスターとリヴァプールを繋いで開通し、イギリス産業革命は成熟期に入ります。機関車や線路の原料である鉄、燃料として使用する石炭、運ぶ売…

  • ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(1866-1944)によるベートーヴェン賛歌。二十世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の中で自らの理想精神が抑圧されているのを感じていた世代にとってもまた、彼の音楽は解放の言葉であった。 神聖ローマ帝国の末期、現在のドイツ西部にある国境沿いの大都市ボンは十三世紀より続く代々のケルン大司教によって、選帝侯としての自治が担われていました。不安定な情勢において他国からの侵攻を望まない姿勢を、その治世によって表明します。絵画、彫刻、音楽、文…

  • 「名刺がわりの小説10選」

    riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com

  • ジョサイア・コンドル『河鍋暁斎』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 幕末明治期の天才画家河鍋暁斎。その群を抜いた画力に惹かれた弟子の中には、かの鹿鳴館の設計者コンドルがいた。「暁英」の画号を持つ愛弟子が、親しく接した師の姿と、文明開化の中で廃絶した日本画の技法を克明に記し、暁斎の名を海外にまで広めた貴重な記録。 1853年に江戸湾近くの浦賀にマシュー・ペリーが率いるアメリカの黒船が強行上陸しました。江戸幕府は他国との折衝を最小限に行っていましたが、アメリカに対しても同様の姿勢を取ろうとします。しかし翌年のペリー艦隊の軍力に屈して交渉を余儀なくされ、遂には日米和親条約を締結します。オランダ、イギリス、ロシア、フ…

  • シェイクスピア『リア王』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった。四大悲劇のうちの一つ。 エリザベス女王一世の死後に『リア王』は発表されました。ジェームズ一世がイングランド王を継ぎ、スチュアート朝となってもシェイクスピアへの寵遇は変わりませんでした。シェイクスピアはこの変化を契機に絶対王…

  • ハンス・ペーター・リヒター『あのころはフリードリヒがいた』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ヒトラー政権下のドイツ。人々はしだいに反ユダヤの嵐にまきこまれてゆくーーその時代に生き、そして命をおとしたひとりのユダヤ人少年フリードリヒの悲劇の日々を、ドイツ人少年の目から克明に描いた話題作。 1870年に起こった普仏戦争で領土を制圧したプロイセンは、首相オットー・フォン・ビスマルクが中心となってドイツを統一します。フランスに残った傷はやがて怨恨へと変わり、反ドイツの意識が高まり続けていきます。ビスマルクはこの報いを警戒し、フランスへの軍需輸出を停止して、周囲の国々と関係を強めて自衛を図ります。オーストリア、ロシアへ歩み寄り三帝同盟を結びま…

  • ヘンリク・シェンキェヴィチ『クォ ヴァディス』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 フランス革命で広められたナショナリズムを否定して、絶対王政を復活させ、ヨーロッパ各国君主が共同支配した過去の秩序を取り戻そうと1814年に開かれたウィーン会議は、民衆を弾圧する反動体制として形成されていきます。これを受けて神聖同盟、四国同盟とヨーロッパ諸国同士が個々に連なり、ウィーン体制は堅固なものとなっていきます。各諸国の芸術家は民衆と緊密に繋がり、自由主義やナショナリズムを提唱して弾圧に抵抗を見せます。この抵抗を各国の保守派だけではなく、「ヨーロッパの憲兵」とい言われたロシアが武力を持って弾圧していました。 ナポレオンがプロイセンに建国し…

  • 武田泰淳『富士』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 秘密の重い扉が開かれるとき、一抹の暗い不安と不思議な幅をもった恐怖を私達は覚えるけれども、さて、いま心の秘密の扉が開かれる。《心の秘密》ーーその頑強な扉を敢えて開くことは底知れぬ恐怖にほかならぬが、武田泰淳ならではもち得ぬ全的洞察力を備えた視点によって、さながら時間と空間の合一体を時空と呼ぶごとく、敢えて新造語をもって《セイニク》とでも呼ぶべき精神と肉体の統合された一つの装置の扉がいまここに開かれるのである。 精神と性のグロテスクで真剣な《セイニク》の刻印を帯びた存在の諸相が精神病院のかたちをかりた現世の曼陀羅として悠容たる富士に見おろされ…

  • マルセー・ルドゥレダ『ダイヤモンド広場』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 三十以上の言語に翻訳されている、世界的名作。現代カタルーニャ文学の至宝と言われる。スペイン内戦の混乱に翻弄されるひとりの女性の愛のゆくえを、散文詩のような美しい文体で綴る。「『ダイヤモンド広場』は、私の意見では、内戦後にスペインで出版された最も美しい小説である」(G.ガルシア=マルケス)。 スペイン北東部にあるカタルーニャ州では現在も引き続き激しいデモが行われています。スペインの中央政府がカタルーニャ民族を蔑視し、高額の税金を搾取することからスペインからの離脱、いわゆるカタルーニャ独立運動が行われています。主だって活動している人々はカタルー…

  • シェイクスピア『オセロー』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ムーア人の勇敢な将軍オセローは、サイプラス島の行政を任され、同島に赴く。副官に任命されなかったことを不満とする旗手イアーゴーは、策謀を巡らせて副官を失脚させた上、オセローの妻デズデモーナの不義をでっちあげる。シェイクスピアの後期の傑作で、四大悲劇の一つ。 十五世紀に始まった大航海時代は、インド航路開拓を皮切りに新しい土地へヨーロッパ諸国が次々と足を踏み入れることになりました。そこで出会う土地、産物、人々は商業的な見方をされ、やがて壮絶な植民地支配合戦へと変貌していきます。この時代のきっかけとなった航海術の飛躍的な向上(羅針盤・快速帆船・緯度…

ブログリーダー」を活用して、RIYOさんをフォローしませんか?

ハンドル名
RIYOさん
ブログタイトル
RIYO BOOKS
フォロー
RIYO BOOKS

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用