メインカテゴリーを選択しなおす
【本】小川洋子『密やかな結晶』~たとえ失われていく運命だとしても~
1、作品の概要 1994年に刊行された小川洋子の長編小説。 2019年に英訳版が出版され、全米図書賞翻訳部門と、2020年ブッカー国際賞の最終候補に選出される。 文庫版で402ページ。 何かが少しずつ消滅していく島で怯えながら暮らす人々と、消滅を補完すべく権力を振りかざす秘密警察たち。 それでも心の在処を見定めようとする人々の物語。 2、あらすじ 前触れもなく、存在や、それにまつわる記憶が消滅していくとある島。 消滅を完全なものにすべく、秘密警察が権力を振りかざして、人々を蹂躙していた。 彼らは消滅したものを消す「記憶狩り」に飽き足らず、消滅した記憶を抱える人々を捕らえていた。 わたしの母親は…
文学編集者で田畑書店社主である大槻慎二さんの講演会に行ってきました。大槻慎二さんは福武書店(現在のベネッセコーポレーション)で、小川洋子さん、角田光代さんが、「海燕」大賞を受賞してデビューした当時担当した編集者さんです。小川洋子さんや、角田光代さんの、裏話的なエピソードが聞けるのかな?と軽い気持ちで参加したのですが、かなり真面目な文壇論から、35年前の編集者と今の編集者の違いなど、通好みというか、渋...