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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る今日の私の任務は、治療家になりすましてロシアの大富豪D氏に近づき、彼の密輸ルートを探り出すことだった。スパイ映画なら、そんなストーリーになるのだろう。そして次のシーンでは、金髪の美女が登場して私を誘惑してくるはずだった。
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る小池さんは60代の男性だ。彼はもう長いこと首の調子が悪い。あちこちの病院だけでなく、民間療法でもあらゆるところへ行ってみた。それでも結局全然よくならなかったのである。ところがうちに来たら、ほんの一瞬で治ってしまった。あま
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る「さっきここに、ヘソ出しルックでミニスカートの女の子が来てなかった?」今野さんは部屋に入ってくるなり、靴を脱ぐのももどかしそうに、勢いよく話し始めた。今野さんに会うのは、彼女の3度目の結婚のあと、みんなで沖縄に行って以
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るやっとの思いで出したメールマガジンの第一号は、意外にも大好評だった。「医者も知らないがんの前兆」と銘打っただけに、かなり否定的な反響も予想していたので、ちょっと拍子抜けした。それならそれでいい。この調子でどんどん原稿を書
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る「よし、今日は肉野菜炒めにしよう」そう決めて、私はいつもの定食屋へ向かった。ふだんの私は自炊派である。好きなものを好きなだけ食べられるからだ。もちろん経済的な理由も大きい。とはいっても外出の予定が立て込んでいると、家まで
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るどうにかこうにか私の初めての勉強会が終わった。出だし好調とはいえないが、それでも何とか船出はできた。こうやって地道に浸透させていけば、民間療法界だけに留まらず、いずれは医学界、そして全世界へと広がっていくはずだ。今はいわ
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るいよいよ私の勉強会が始まった。参加者はほぼ顔見知りばかりだが、全員男性なので、男子校の先生になったみたいな気分だ。ふと私は、高校で美術教師をしていたころのことを思い出す。美術教師というのは、ふつうは女子生徒に人気があるも
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る人に何かを教えることは、自分自身にとっても学びが大きい。頭のなかにまとまりもなくつめ込まれていた内容が、むりやり整理される。せっぱつまった引っ越しのときみたいに、なくしたと思っていた大事な物が意外なところから出てくること
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る私がまだ20代のころ、親戚中でいちばん仲良しだったいとこが、腰痛で入院したことがあった。昭和の時代には、腰痛といえば年寄りか新婚さんのモノと相場が決まっていた。それなのに若くて健康で独身の彼が、腰痛で入院するなんてよほど
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る「やんだタマゲたな~。急にナニいうだぁ~♪」私の頭のなかで、オヨネーズの名曲「麦畑」が鳴り響いている。整体学校の大外先生から、出し抜けに「師匠、私を一番弟子にしてください」といわれた私は、いきなりプロポーズされた女性みた
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るがん患者には、左側の脊柱起立筋が異常なほど固く緊張している人が多い。起立筋だけではなく、左半身の知覚はことごとく鈍くなっている。そんな状態では、どんなに力を入れてもんでも叩いても、ビクともしないのである。ところがある特定
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る沖縄から帰った私は、久しぶりに池袋の整体学校に行ってみた。さわやかな潮風でリフレッシュしたばかりの私には、この場末感が漂う雑居ビルのたたずまいが、ある意味とても新鮮だ。ギギギィーッと建付けの悪いドアを開けると、そこには大
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る明るい光で目が覚めた。ここはどこだろう。メガネがないからよく見えないが、この陽射しはどう見たってうちじゃない。そうだ。沖縄のホテルに泊まってるんだった。胸の奥にプクッと楽しい気分がわいてくる。窓まで行って外を見ると、視界
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る朝カーテンを開けると、日差しがまぶしい季節になっていた。そういえば今日の午前は仕事の予約が入っていない。今のうちに池尻大橋の図書館に本を返しに行こう。ついでに丸正で魚も見てこよう。そう決めると、私はリュックに本を詰めこん
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るいつもお世話になっている樹森さんから電話があった。「ちょっと診てあげてほしい人がいるのヨ~」と、相変わらず元気な声である。それよりも、樹森さんのところでベビーシッターをしている瀬戸さんの妹さんが、その後どうなったかが気に
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る樹森さんの運転する車が、買い物客でにぎわう吉祥寺の街をゆっくりと抜けると、あっという間に春子さんが待っている瀬戸さんの家に着いた。見上げるほど大きなマンションの前で、「ここです」といわれて入った地下駐車場には、高そうな外
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る友人の子どもは大きくなるのが早い。ついこのあいだ生まれたばかりだと思っていたら、「もうそんな年なの!?」と驚くことがよくある。その度ごとに、独身の自分だけが、世の中から取り残されているような気分になったりする。先週、樹森
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 「二度あることは三度ある」とはよくいったものだ。この仕事をしていると、それをつくづく実感する場面が多かった。昨年の暮れから、立てつづけに寺田さん関係でがん患者が現れていた。以前、紹介されて、施術でたいへんな思いをした大