*小説『ザ・民間療法』を始めから読むこの前、お寺の住職に馬乗りになって施術しているのを見られて、とんでもないかんちがいをされてしまった。しかし患者に馬乗りになっているのを見てかんちがいするのは、実は人間だけではない。私が施術にうかがうお宅では、ペットを飼
『モナ・リザの左目』(非対称化する人類)の花山水清、初の小説<新連載> 人類史に残る新発見の軌跡とともに世界の民間療法と医療の実像に迫る! 毎回読み切り。3分で読めてクスッと笑えて知識も増える♪
この特異な現象が人体にもたらすインパクトはあまりに大きく、同時代の人間の多くには全容を把握することさえできなかった。そしてこの発見の重要性を訴えるMの発言は、社会からはことごとく排除されていく。ついに彼も老いと呼ばれる年齢を迎え、「このままでは神から託された預言が埋もれてしまう」と焦る。彼が見つけてきたもの、成し遂げたものとは何だったのか。果たしてその真実が正しく評価される日は訪れるのか。
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むこの前、お寺の住職に馬乗りになって施術しているのを見られて、とんでもないかんちがいをされてしまった。しかし患者に馬乗りになっているのを見てかんちがいするのは、実は人間だけではない。私が施術にうかがうお宅では、ペットを飼
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私は出張専門の整体業なので、いろいろな家に出かけていく。家の大きい・小さい、新しい・古いのちがいだけでなく、通される部屋もまちまちではあるが、古い家では圧倒的に仏間に通されることが多い。仏間というのは畳敷きの和室のせい
地域タグ:台東区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む先日、近藤くんに連れられて行った勉強会の内容には少しガッカリだった。それでも世の中には、まだまだ私の知らないスゴイ治療家がたくさんいるはずだ。テレビをつければ、ド派手なパフォーマンスを披露するスゴウデの治療家が登場する
地域タグ:神奈川県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんに連れられて行った凸凹会で、「の」の字による腎臓病の治療法はマスターした。ここでは毎回ちがう病気をテーマにしているそうだから、腎臓病が「の」の字なら、流れとしては前回が心臓病か肝臓病あたりで、「へ」の字だったの
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんから電話があった。彼は私が特殊美術をやっていたころからの知り合いで、放送作家のかたわら治療院も経営しているという変わり種である。その彼が突然ぎっくり腰で動けなくなって、同じ治療家である私に助けを求めてきたのだ。
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近、また腰の痛みがひどくなってきた。だれでも腰痛にはなるものだから、私だって腰が痛いときがあるのは当然だ。腰痛治療が仕事であっても関係ない。しかも今回は痛いのが腰だけじゃない。お尻から足にかけて痛みが広がって、し
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっぱり健太くんのような重大疾患の人に施術するのは、私にはあまりにも荷が重すぎたのだ。それがわかっていたから無償で施術してきたのだが、これは健太くんだけではなかった。子育て中なのに膠原病になってしまった女性や、友人の
地域タグ:埼玉県
第51話 奇跡は起きるのか(6/6)カメラが捉えた奇跡、その後。
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む健太くんの家に通い始めて、半年が過ぎようとしていた。言葉と知能はかなり前進したようだったけれど、歩行機能については全く進歩が見られない。脳性麻痺なのだから、歩けないのは当たり前かもしれない。それでも私の心のどこかには、
地域タグ:埼玉県
第50話 奇跡は起きるのか(5/6)イルカと泳ぐと癒やし効果がある!?
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私はいつも自炊している。1年のうち1000食は自炊しているだろう。経済的な理由だから、弁当や惣菜を買って家で食べるようなこともない。ところが出張整体の仕事だと、出先からそのまま次の場所に移動することが多い。するとなかな
地域タグ:沖縄県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む ある日のこと、いつものように健太くんの家に行くと、お母さんがいいづらそうに「実は…」と話を切り出した。隣町に、健太くんと同じ脳性麻痺の子供を抱えるお母さんがいて、健太くんが急にしゃべれるようになったことを、つい話して
地域タグ:埼玉県
第48話 奇跡は起きるのか(3/6)突然しゃべり始めた健太くん
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎週日曜日に、脳性麻痺の健太くんの家に通うことに決めた。健太くんのトレーニングのためである。トレーニングといってもごく軽い動作なので、健太くんは遊びだと思っていることだろう。子供の扱いが苦手なはずの私が、なぜこんなこと
地域タグ:埼玉県
第47話 奇跡は起きるのか(2/6)健太くんのトレーニングを始める
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む助産師の酒井さんに連れられて、脳性麻痺の健太くんの家に行った私は、なぜ彼の背骨には、脊髄損傷の人のような緊張が現れていないのか、それを不思議に思った。これは全く予想外だったのである。そもそも脳性麻痺と脊髄損傷による麻痺
地域タグ:埼玉県
第46話 奇跡は起きるのか(1/6)脳性麻痺の健太くんとの出会い
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む開業して半年も過ぎると、だんだんと整体の仕事にも慣れてきた。もちろんまだまだ知らないことばかりで、毎日が勉強に次ぐ勉強だ。それでも学生のころとちがって勉強が全く苦にならない。知識はすぐ実践に反映されるので、そこに充実感
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近また釣りを始めた。始めたといっても、月に1回も行けるわけではない。それでもふとした瞬間に、「今度は何を釣ろうか」と考えるだけで楽しい。もともと田舎育ちの私は、子供のころから近くの川で釣りをするのが好きだった。しか
地域タグ:神奈川県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私にとって仕事の予約の電話は生命線である。できるだけ受け損ねないように、寝るときだっていつも手が届くところに電話を置いている。その日も夜中にグッスリと眠り込んでいるときに、突然、枕元の電話が鳴り響いた。深夜にかかって
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の親しい友人である寺田さんは、ロック専門の音楽事務所をやっている。彼の紹介のおかげで、ロックミュージシャンたちからの予約も多くなっていた。音楽の好みとしては、私はロックよりも圧倒的に藤圭子のファンである。だが、私は
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の整体は出張専門なので、いろいろなお宅に出かけていく。一人暮らしの小さなアパートから高級住宅街の豪邸、企業の会議室や高級ホテルにいたるまで、行き先はさまざまだった。友人の近野さんのおかげで(せいで)、私の患者には医
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む考えてみると、人から人への「紹介」はおもしろいものだ。以前、タモリのお昼の番組に「ともだちの輪」というコーナーがあった。そこではその日のゲストが次のゲストを指名する。すると思いもよらない人同士のつながりが見られて、番
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の仕事を出張専門で開業した私は、紹介のおかげで予約がたくさん入るようになった。これなら仕事としてつづけられそうで、まずは一安心である。ところが整体と銘打っている以上、整体を提供しなくてはならない。これが予想以上につ
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の学校を卒業した私は、いよいよプロの整体師として開業することにした。とはいっても、ちゃんと場所を構えて看板を上げるようなゆとりなどない。不動産バブルは崩壊していたが、それでも東京都内の路面店となれば、べらぼうに家賃
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む友人たちに、最近占いの勉強をしているというと、みんなキラッと目が光り、「見て見て!」とせがんでくる。整体なんかよりも、占いに興味がある人が多いようである。そこで頼まれるまま、あちこちで運勢を占ってあげていた。そんな話が
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む世の中は占い流行りである。今や街のいたるところに、占いの看板が立っている。ところが今ほど占いが流行っていなかった、私がまだ中学生のころ、地元の飲み屋街に住んでいた「児島のおばさん」が占いを始めた。始めたといっても、おば
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む平日通っている整体の学校では、私が顔を出すたびに、大外先生をはじめみんなが私の気功修行の成果を知りたがる。そこで週末に習ってきたことを、「にわか気功師」の私がレクチャーすることになった。初歩的な「気」の出し方から始ま
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む何か得体のしれない黒いモノ、意念でしか見えないソイツは、人に取り憑いて悪さをするのだという。それはいわゆる「悪霊憑き」というヤツだろうか。ナカバヤシ先生は、その取り憑いたヤツを「気」の力で引きはがすのだ。そのためには
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む「私は気功に向いているのかもしれない」そう思うと練習が楽しくて仕方がない。毎週、日曜にナカバヤシ先生のお宅に行くのが待ち遠しいほどだった。夢中で通い続けてしばらくたったころ、ようやく治療のための気功を教えてもらえるこ
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むさあ今日から気功の修行が始まる。私はいくつか電車を乗り継いで、ナカバヤシ先生の自宅がある埼玉県の郊外まで出かけていった。ナカバヤシ先生は痩せ型の50代ぐらいで、ちょっと見は中国人の風貌をしている。弟子はとらないと聞い
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の学校に1か月も通うと、技も少しずつ使えるようにはなってきた。しかし整体そのものの実体が、私には今いちナゾのままである。自分なりにいろいろ調べてみたが、整体にはそれほど古い歴史があるわけではなさそうだ。19世紀末
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私とアケミママを乗せて夜の街を走り続けた車は、赤坂にある一軒の店の前までくると、ようやく停まった。運転していたホソダという若い衆に案内され、ママの後ろについて店に入る。そこからまた奥に進んだところで、広めの部屋に通さ
地域タグ:港区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む平日は朝から晩まで整体の学校で練習に励んでいる。実践も兼ねて、友達の家で整体をやってあげたりしていると、それだけで1週間のスケジュールはいっぱいだ。そんなとき友達から、知り合いのスナックで厨房のバイトを探していると聞
地域タグ:渋谷区
第29話 お色気「ランバダ流」整体 VS 白衣を着た「〇〇流」整体
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっと住むところも決まったことだし、私は意気揚々と池袋の整体の学校に通い始めた。40になったばかりの私など、かなり若い部類である。生徒の大半は中高年で、退職や定年を機に新たな技術を身につけ、人生の再出発を目指している人
地域タグ:インド
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むヒロコさんが旅立ってしまってからも、彼女が遺した「あったかい」という言葉は、私の耳に響き続けていた。あのときお腹に軽く手を当てただけで、死にゆく人に向けて言葉にならない気持ちを伝えることができた。言葉ではなく、触れる
地域タグ:豊島区
心づくしのごちそうのおかげで、少しずつ食欲が回復し、インド暮らしで失った体重とともに、本来の体力ももどってきた。そこでささやかではあるが、お礼として今までの治療法に加えて、インドで覚えたオイルマッサージを披露してみた。すると・・・
地域タグ:ネパール
せっかくインドでの暮らしに慣れてきたが、Mは栄養失調で倒れてしまった。もうこれ以上、ここで暮らせば死んでしまう。失意の末にチベットを回ってインドを後にした。そして成田空港にたどりついた彼を待っていたのは…
地域タグ:インド
第25話 インド編「シッキムのラマ教寺院で究極の悟りに至る」
河口慧海の場合、チベットに行こうと思えば関所破りしかなかったので、彼はヒマラヤの周囲をかなり遠回りした。当時は関所破りが見つかれば重罪で、死刑は免れなかったからである。それに比べてMは…
地域タグ:インド
「よし、日本に帰ろう!」Mはやっと決心した。だが何のためにインドに来たのだったか。これといって具体的な目的があったわけではない。こんなところまで来ておきながら、収穫もないまま手ぶらで帰っていいのか。そんなことが頭のなかでグルグルし始めた。
地域タグ:インド
Mは昨日から今いち体調が優れない。今朝も頭がボーッとして寝起きが悪かった。そういえばインドに来てからどれだけ痩せただろう。ヨーロッパから来た人たちは平気なのに彼だけがどんどん痩せていく。そしてとうとう…
地域タグ:インド
第22話 インド編「ヒンドゥー教の火渡りと御柱祭の岡本太郎」
日本でも修験道の行者の火渡りはテレビでたまに見かけるが、あの火渡りの源流はヒンドゥー教らしい。その本場インドでヒンドゥー教の火渡りを目にして衝撃を受けるM。その体験から彼が得た死生観とは…
地域タグ:インド
ある日のこと、近所のユルグがサイババのところまで行ってもらってきた、ビブーティなるものを見せてくれた。ちょっと見はお焼香の灰みたいで、あまりありがたくない。「どうせならもっとイイものをもらってくればよかったのに」Mがそんなことをいうと彼は・・・
地域タグ:インド
第20話 インド編「寒気と高熱で気絶したあとのイタリアン味噌汁」
オーロビルでは毎年4月ごろから急に暑くなる。日によっては夜でも室温が40度から下がらない。暑いだけではない。ここは南インドでも海岸に近いため、その分、湿度も高い。そのせいで寝苦しい夜が続き体力を消耗し尽くしたMはとうとう…
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第19話 インド編「特大パワーストーンの魔除け効果とヒーリング」
Mの住むコミュニティから少し離れたエリアにパワーストーンを扱う人たちがいた。そこへ出かけて行くと、色も大きさもちがう珍しい石がズラリと並んでいる。説明によれば、石にはそれぞれちがったパワーがあって、水晶などはヒーリングにも使われるのだという。確かに…
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第18話 インド編「1杯2000円のコーヒーとインドの外国人専用歯科」
インドのオーロビルで暮らすM。彼がある日、食べ残しの硬いパンをかじっていたら、パンの中にもっと硬いものが混じっていた。石でも入っていたのかと思って吐き出してみるとそこには…
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第17話 インド編「本場インドのオイルマッサージ師と頂上対決!?」
私が治療もどきのことをしているのを聞きつけて、あのマッサージ師のアドンがたずねてきた。どうやら私の実力のほどを確かめたいらしい。二人でお互いを治療し合って、得意の技を競おうというのだ。私は一瞬身構えた。
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第16話 インド編「カルカッタの人混みでインド人のひざ痛を治す」
オーロビルでは、1年間ボランティアをすればオロビリアンに認定されて、そのまま永住資格がもらえる。まわりの友人たちが、私も何かボランティアをやってオロビリアンになるように勧めてくれた。そのためには、何でもいいから特技はないのかと聞いてくる。Mが「少しだけなら治療らしいことができる。東京で腰痛を治したことがある」と話してみると…
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第15話 インド編「奇跡の輪郭 フランス人青年ミシェルとマッサージ師アドン」
ある日、隣の部屋にミシェルという青年が住み始めた。彼は交通事故のせいで下半身付随になったときから、車いすの生活らしい。毎年フランスから一人でやってきて、バカンスの時季の数か月だけオーロビルで過ごすのだという・・・
地域タグ:インド
インドには宝石の産地が多い。だから宝石を扱う店もたくさんある。日本人の観光客は、それを目当てに買いにきている。しかしガイドに連れていかれた店で、お土産用のバカ高い宝石を安いと思って買って帰る。あまりにも相場を知らないと、どこの国でもいいカモになってしまうのだ。ところがMは…
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オーロビルでは有名な話がある。あるところに、がんにおかされて医師からも見放された男がいた。彼はダライ・ラマのところに行けばチベット医学の秘薬があると聞いて、人づてにダライ・ラマを紹介してもらった。そこで手渡された秘薬を飲んだら・・・
地域タグ:インド
「お花の朝露療法で心のトラウマを癒やす」南インドの酷暑に翻弄され、やつれ果てたM。道で彼を見かけたフランス人女性アドリーヌは、「あなたは心に大きな傷を負っていますね」といったあと、さらに衝撃の事実を告げる…小説『ザ・民間療法』第12話インド編 花山水清
地域タグ:インド
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むアフリカンダンスの教室で私は散々な目にあったと思っていたが、親切心の塊のドルマは、まだこりていなかった。今度は私をヨガ教室に誘ってくれたのである。自慢じゃないが、私はヨガの経験も一度もない。ヨガといえば、カルカッタで会
地域タグ:インド
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私が暮らすオーロビルには、チベットから来た人も何人か住んでいた。彼らはダライ・ラマ法王に従って亡命し、インドの各地で暮らしているのである。ご近所さんとして彼らと親しく接してみると、チベット人は見た目だけでなく、メンタリ
地域タグ:インド
オーロビルには広大な森の中心に、マトリマンディアと呼ばれる巨大な瞑想施設がある。ガスタンクを何倍も大きくしたような球形で、威容を誇る圧倒的な建物だ。
地域タグ:インド
インド人には菜食主義者、つまりベジタリアンが多いといわれる。確かにインド行きの空路の機内食にも、ベジかノンベジかの選択肢が用意されていた。当然、オーロビルでもゲストハウスで提供される食事は、ベジタリアン食が基本となっていた。
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第7話 インド編「サソリより痛いスコーピオン・アントの猛毒と激痛体験」
私が暮らしていたオーロビルでは、定住者たちはオロビリアンと呼ばれていた。彼らはここで、思いつく限りのさまざまな仕事に従事している。インセンスや藍染製品、アクセサリーを作って売る人、アンティーク家具を扱う人、本格的な宝石商から、ファッション・デザイナーやマッサージ師までいた。
地域タグ:インド
はるばるカルカッタから3日もかけて、オーロビルにたどりついたものの、私には現地に知り合いがいるわけではない。とりあえずすぐにでも泊まれそうな場所を探す。そこで最初に案内されたのは、フランス人が設計したゲストハウスだった。
地域タグ:インド
第5話 インド編「インド人と日本人の親切はこんなにちがう!」
インドに到着した私は、しばらく仏跡を散策して過ごしていた。日本から同行したグループが、いよいよサイババの元へ出発する段になって、そこで彼らとは別れた。「あなたにはサイババのところよりも、オーロビルのほうが向いている」
地域タグ:インド
世には「釣りバカ」と呼ばれる人種がいる。初めて竿を出したあたりで、いきなり大物を釣り上げてしまった人の成れの果てだ。最初に大物が釣れたのは、いわゆるビギナーズ・ラックである。たまたま運が良かっただけなのだ。だが、その感触が忘れられずにのめり込んでいく。私の場合は
地域タグ:インド
せっかく進学した美術大学で油絵科に籍を置いたものの、いつしか私のなかでは絵を描く情熱は消え失せていた。最低限の課題には取り組んでいたが、あとは可能な限り旅に出た。旅といっても1970年代といえば、ディスカバー・ジャパンの時代である。行き先は
地域タグ:東京都
中学の時点で人体のからくりに触れたとはいえ、その後の私の興味は、絵を描くことに向かっていた。地元の進学校に入学した私は、その興味のまま、何となく美術クラブに入った。特に強い思い入れがあったわけではない。もともと絵を描くのも苦手だった。ところが
地域タグ:北海道
あれは私が川釣りを覚え、黒曜石拾いに熱中していた中学生のころのことだった。学校から帰った私が、いつものように近くの河原に行く準備をしていると、それまで平静だった母が、「うっ」と胸を押さえてうずくまった。
地域タグ:北海道
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読むこの前、お寺の住職に馬乗りになって施術しているのを見られて、とんでもないかんちがいをされてしまった。しかし患者に馬乗りになっているのを見てかんちがいするのは、実は人間だけではない。私が施術にうかがうお宅では、ペットを飼
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私は出張専門の整体業なので、いろいろな家に出かけていく。家の大きい・小さい、新しい・古いのちがいだけでなく、通される部屋もまちまちではあるが、古い家では圧倒的に仏間に通されることが多い。仏間というのは畳敷きの和室のせい
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む先日、近藤くんに連れられて行った勉強会の内容には少しガッカリだった。それでも世の中には、まだまだ私の知らないスゴイ治療家がたくさんいるはずだ。テレビをつければ、ド派手なパフォーマンスを披露するスゴウデの治療家が登場する
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんに連れられて行った凸凹会で、「の」の字による腎臓病の治療法はマスターした。ここでは毎回ちがう病気をテーマにしているそうだから、腎臓病が「の」の字なら、流れとしては前回が心臓病か肝臓病あたりで、「へ」の字だったの
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんから電話があった。彼は私が特殊美術をやっていたころからの知り合いで、放送作家のかたわら治療院も経営しているという変わり種である。その彼が突然ぎっくり腰で動けなくなって、同じ治療家である私に助けを求めてきたのだ。
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近、また腰の痛みがひどくなってきた。だれでも腰痛にはなるものだから、私だって腰が痛いときがあるのは当然だ。腰痛治療が仕事であっても関係ない。しかも今回は痛いのが腰だけじゃない。お尻から足にかけて痛みが広がって、し
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっぱり健太くんのような重大疾患の人に施術するのは、私にはあまりにも荷が重すぎたのだ。それがわかっていたから無償で施術してきたのだが、これは健太くんだけではなかった。子育て中なのに膠原病になってしまった女性や、友人の
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む健太くんの家に通い始めて、半年が過ぎようとしていた。言葉と知能はかなり前進したようだったけれど、歩行機能については全く進歩が見られない。脳性麻痺なのだから、歩けないのは当たり前かもしれない。それでも私の心のどこかには、
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私はいつも自炊している。1年のうち1000食は自炊しているだろう。経済的な理由だから、弁当や惣菜を買って家で食べるようなこともない。ところが出張整体の仕事だと、出先からそのまま次の場所に移動することが多い。するとなかな
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む ある日のこと、いつものように健太くんの家に行くと、お母さんがいいづらそうに「実は…」と話を切り出した。隣町に、健太くんと同じ脳性麻痺の子供を抱えるお母さんがいて、健太くんが急にしゃべれるようになったことを、つい話して
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎週日曜日に、脳性麻痺の健太くんの家に通うことに決めた。健太くんのトレーニングのためである。トレーニングといってもごく軽い動作なので、健太くんは遊びだと思っていることだろう。子供の扱いが苦手なはずの私が、なぜこんなこと
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む助産師の酒井さんに連れられて、脳性麻痺の健太くんの家に行った私は、なぜ彼の背骨には、脊髄損傷の人のような緊張が現れていないのか、それを不思議に思った。これは全く予想外だったのである。そもそも脳性麻痺と脊髄損傷による麻痺
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む開業して半年も過ぎると、だんだんと整体の仕事にも慣れてきた。もちろんまだまだ知らないことばかりで、毎日が勉強に次ぐ勉強だ。それでも学生のころとちがって勉強が全く苦にならない。知識はすぐ実践に反映されるので、そこに充実感
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近また釣りを始めた。始めたといっても、月に1回も行けるわけではない。それでもふとした瞬間に、「今度は何を釣ろうか」と考えるだけで楽しい。もともと田舎育ちの私は、子供のころから近くの川で釣りをするのが好きだった。しか
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私にとって仕事の予約の電話は生命線である。できるだけ受け損ねないように、寝るときだっていつも手が届くところに電話を置いている。その日も夜中にグッスリと眠り込んでいるときに、突然、枕元の電話が鳴り響いた。深夜にかかって
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の親しい友人である寺田さんは、ロック専門の音楽事務所をやっている。彼の紹介のおかげで、ロックミュージシャンたちからの予約も多くなっていた。音楽の好みとしては、私はロックよりも圧倒的に藤圭子のファンである。だが、私は
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の整体は出張専門なので、いろいろなお宅に出かけていく。一人暮らしの小さなアパートから高級住宅街の豪邸、企業の会議室や高級ホテルにいたるまで、行き先はさまざまだった。友人の近野さんのおかげで(せいで)、私の患者には医
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む考えてみると、人から人への「紹介」はおもしろいものだ。以前、タモリのお昼の番組に「ともだちの輪」というコーナーがあった。そこではその日のゲストが次のゲストを指名する。すると思いもよらない人同士のつながりが見られて、番
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の仕事を出張専門で開業した私は、紹介のおかげで予約がたくさん入るようになった。これなら仕事としてつづけられそうで、まずは一安心である。ところが整体と銘打っている以上、整体を提供しなくてはならない。これが予想以上につ
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の学校を卒業した私は、いよいよプロの整体師として開業することにした。とはいっても、ちゃんと場所を構えて看板を上げるようなゆとりなどない。不動産バブルは崩壊していたが、それでも東京都内の路面店となれば、べらぼうに家賃
オーロビルには広大な森の中心に、マトリマンディアと呼ばれる巨大な瞑想施設がある。ガスタンクを何倍も大きくしたような球形で、威容を誇る圧倒的な建物だ。
インド人には菜食主義者、つまりベジタリアンが多いといわれる。確かにインド行きの空路の機内食にも、ベジかノンベジかの選択肢が用意されていた。当然、オーロビルでもゲストハウスで提供される食事は、ベジタリアン食が基本となっていた。
私が暮らしていたオーロビルでは、定住者たちはオロビリアンと呼ばれていた。彼らはここで、思いつく限りのさまざまな仕事に従事している。インセンスや藍染製品、アクセサリーを作って売る人、アンティーク家具を扱う人、本格的な宝石商から、ファッション・デザイナーやマッサージ師までいた。
はるばるカルカッタから3日もかけて、オーロビルにたどりついたものの、私には現地に知り合いがいるわけではない。とりあえずすぐにでも泊まれそうな場所を探す。そこで最初に案内されたのは、フランス人が設計したゲストハウスだった。
インドに到着した私は、しばらく仏跡を散策して過ごしていた。日本から同行したグループが、いよいよサイババの元へ出発する段になって、そこで彼らとは別れた。「あなたにはサイババのところよりも、オーロビルのほうが向いている」
世には「釣りバカ」と呼ばれる人種がいる。初めて竿を出したあたりで、いきなり大物を釣り上げてしまった人の成れの果てだ。最初に大物が釣れたのは、いわゆるビギナーズ・ラックである。たまたま運が良かっただけなのだ。だが、その感触が忘れられずにのめり込んでいく。私の場合は
せっかく進学した美術大学で油絵科に籍を置いたものの、いつしか私のなかでは絵を描く情熱は消え失せていた。最低限の課題には取り組んでいたが、あとは可能な限り旅に出た。旅といっても1970年代といえば、ディスカバー・ジャパンの時代である。行き先は
中学の時点で人体のからくりに触れたとはいえ、その後の私の興味は、絵を描くことに向かっていた。地元の進学校に入学した私は、その興味のまま、何となく美術クラブに入った。特に強い思い入れがあったわけではない。もともと絵を描くのも苦手だった。ところが
あれは私が川釣りを覚え、黒曜石拾いに熱中していた中学生のころのことだった。学校から帰った私が、いつものように近くの河原に行く準備をしていると、それまで平静だった母が、「うっ」と胸を押さえてうずくまった。
『モナ・リザの左目』非対称化する人類(藤原書店)の著者である花山水清の最新作【小説『ザ・民間療法』】連載開始!