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イタリア・ソレント 冷えた白ワインとサマータイムの夕暮れ <トラキチ旅のエッセイ>第13話
ちょうど伊豆半島に対する熱海のようなロケーション――。 ソレント半島の北の付け根に位置するソレントは、潮風とレモンの薫るイタリア・カンパニア州の海沿いをめぐる旅人にとって、この上ない場所にある。 まず、ローマからの新幹線が入線するナポリの中央駅からは、この町まで私鉄―Circumvesuviana―が延びている。 その途中、沿線には有名な「ポンペイ」の遺跡がある。 このポンペイの遺跡は広大で、じっくり見学しようと思えば、一日や半日ではとても時間の足りるものではない。 見どころが多い上、足元を覆う二千年前の石畳は、砂も浮かび、現代人にとってはなかなか歩きにくく、特に夏は照りつける太陽があまりにハ…
イタリア・アマルフィ 栄光の記憶はまどろみの中に <トラキチ旅のエッセイ>第11話
日本の商船は、日の丸=日章旗をかかげて海をゆく。商船旗――Civil ensign が、日本の場合、国旗と同じであるからだ。 しかし、そうではない国もある。たとえばイタリア。国旗は緑・白・赤、おなじみの三色旗だが、船は少し違う旗を掲げる。 見ると、緑と赤にはさまれた真ん中の白い部分に、紋章が描かれている。 さらに、この紋章、どうやら4つの別々の紋章らしきものがひとつに組み合わされたものらしい。 実は、これらはある4つの国の「国旗」だ。 国の名は、ヴェネツィア、ピサ、ジェノバ、そしてアマルフィ。 9世紀より連続してイタリア半島に現れた、4つの海洋貿易都市国家の旗が、いまも誇らしげにここに縫い込ま…
イタリア・ポジターノ 天国の夏を過ごす <トラキチ旅のエッセイ>第12話
ナポリの南、あの「ポンペイ」を灼熱の灰にうずめた有名なヴェスヴィオ火山の裾を抜けると、ソレント半島が横たわっている。 その半島の南岸、断崖を削って進む狭い幹線道路は、ルパン三世がフィアットで疾走しそうな景色。 高所恐怖症の人は、車の窓を覗くのは控えたほうがいい。 切り立つ崖のはるか眼下、吸い込まれそうなほどに青い地中海の海面を望んでしまうことになるからだ。 そんな風景の中、ポジターノの町は突然現れる。 パステルの家並み。光を浴びてかがやく木々。入り江に停泊する無数のクルーザー、ヨット。白い飛行機雲。 ハリウッド・スターが夏の隠れ家とし、優雅なリゾートファッションがここから発信される。 ソレント…