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月夜の猫-BL小説です Vacances3 BL小説 「お前がその程度でやり込められるタマじゃないってことくらい誰でも知ってるだろ!」 「ジョークもほどほどにしてよ! あたしが工藤さんみたいなオヤジとどうにかなるわけないじゃない! 奈々なんかもっとジョーク、ジョークっだわ! オヤジがいいなんて良太くらいなもんよ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人18 BL小説 一限目の講義のあと、千雪は図書館に出向いた。 飲み会の時の宮島教授の言葉が気になっていたのだが、ここ数日忙しくて時間が取れなかったので、いつの間にか週末になってしまった。 実は三羽じゃなかったんだ、ということはつまり、他にまだ誰かがいた? 荒木志郎、小田和義、工
佳踊に手を引かれて、バックヤードを通って冷たい風が吹き渡る裏庭に出る。冷えた空気を吸うと、肺が透明になっていく気がする。 あのさ、と繰りかえして言う佳踊は風海を引っ張ってきたくせに、なにか言い淀んでいる。土を靴底でざりざりとこすりながら、佳踊がようやくうつむいたまま言った。「風海は、やっぱりうちの母さんみたいな美人が好き?」 佳踊の発言の意図がわからず、首をかしげると「風海、好きな女の子とか、い...
月夜の猫-BL小説です Vacances2 BL小説 ここのところ、青山プロダクションを標的にした根も葉もない噂が業界をちらほら飛び交っている。 そもそもは工藤本人を罵倒した記事が、出る杭は叩く、もう出ないように叩く、という手合いの女性週刊誌に載ったことが始まりだった。 裏金を遣ってキー局のチーフディレクターを
月夜の猫-BL小説です 春雷65 BL小説 「さっき聞いて私もびっくりしたのよ」 キッチンから出てきた鈴木さんが良太にコーヒーを持って来てくれた。 「犯人は捕まったし、飛行機は隅から隅まで調べたけど何も出てこなかったらしくて」 「それはよかったですね」 ほんとにテロとか聞くと良太はぞっとする。 以前、9.11以
月夜の猫-BL小説です Vacances(工藤×良太) BL小説 青山プロダクションの広瀬良太は、入社以来、ああしろこうしろとこき使われてきた社長の工藤高広とは一応、付き合っていることは社内でも公認だ。だが工藤のことを刷り込みしたひよこのように好きな良太としては、工藤が自分に本気とは思えないでいる。秘書兼運転手兼
月夜の猫-BL小説です Vacances1 BL小説 滑らかなステアリングで大型のメルセデスベンツが駐車場に滑り込むと、やがて大柄な男が後部座席から降り立った。 ライトブルーのシャツにきちんと結ばれたタイ、Vゾーンも涼しげに、例年にない暑さもものともせずスーツを一部の隙もなくビシと着こなした男に、建物の裏口にあ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人17 BL小説 二件目に入ったパブでは、京助は誰が何を言っていたかも覚えていないくらいイラつきながらやたら酒を煽っていた。 今度こそ千雪が離れていってしまうのではないかという不安につき動かされ、店を出るなり速水の誘いを突っぱねてここにきた。 京助にしてみれば、実際、昔の女とくっ
書名 キットとパーシー [ キャット・セバスチャン ] 引用 「とにかく」パーシーはさらに続けた。「自分の主義だと信じていたものはただの行動原理でしかなかったし、今置かれている状況では何の役にも立たな
そのときだ。凜と張る声がした。「あなたが風海くん?」 うつくしい声に振りかえると、佳踊と目鼻立ちのよく似通った女性がこちらにむかって歩み寄ってくるところだった。すらりとした足が、軽やかに床を踏む。「こんにちは、風海くん。毎年なかなかご挨拶できなくてごめんなさいね。佳踊の母です」 なにか言わなければと思うのにぽかんと口が開いたままの風海からはなんの言葉も出ない。至近距離で見れば、圧倒的にこれまでの...
アキノワルツ アキノワルツ 第20話 登校時のルーティーン①
朝、いつもの交差点に着き、オレの特等席(灰谷のチャリの後ろ)から降りたところで佐藤の呼ぶ声がした。 「マジハイ~~」 横断歩道を佐藤がものすごい勢いで走ってくる。目を輝かせ、シッポがあれば間違いなくちぎれんばかりに振っている、そんな感じ。たどり着くとゴール!とばかりにチャリの前カゴをガチャガチャと揺する。 「サトナカマジハイ。イエイイエイ。イエ~イ」「や~めろ」 灰谷の止めるのもなんのその、ご機嫌でカゴをゆさぶる。 「灰谷チーッス、真島チーッス」 連日のバイトと反動のゲームでお疲れのオレは痛むこめかみを指でぐいぐいとつまみながら言った。 「佐藤、オマエ小学生か。朝っぱらからテンション高すぎ」「…
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人16 BL小説 万里子には、小林千雪の正体については社外秘だといい含めて、工藤は万里子と千雪のためにタクシーを呼んだ。 いちいち驚かれるのも面倒なので、千雪としてもそうしてくれると有難かった。 部屋に辿り着くとどっと疲れが出て、千雪はベッドに倒れこんだ。 肉体的疲労という
月夜の猫-BL小説です 春雷63 BL小説 天野は実に寡黙で表情から何を考えているのかわからない男だった。 良太がドラマについて説明する間、うんともすんとも言わずに黙って聞いていた。 やはり何か自分に対して敵意をもっているのだろうか、などと良太は考えてしまう。 秋山からかつての良太にとっての黒歴史であるCMとド
「なっ」と念を押してくる佳踊はずるい、と風海は思う。そう言われてしまったら、もう風海にはどうしようもないのに。 けれど、本気で腹が立つわけでもないので「佳踊はずるいなぁ」とわざと声に出した。「知らなかった?風海、俺、けっこうずるいよ」 風海がくすくす笑うと、佳踊は「ほんとだって!」とむきになるのがなおのことおかしい。 「おふたりさーん!」と声が飛んでくる。見なくてもわかる、七未の声だ。 けれど...
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人15 BL小説 「あら、おいしそう。いただきます」 万里子はソファに座り、長いストレートの髪を無造作に搔き揚げると、クッキーをつまんだ。 「ねえ、それより鈴木さん、今夜もこんな時間まで? あとはあたしやっておくから、いいわよ、帰っても」 鈴木さんを労わり、気軽にそんなことを申
《小学校四年生》 風海が四年生の冬、佳踊のいるバレエ団は北風がぴうっと頬に厳しく、冷たくなるころに風海の街にやってきた。 ことしは会えないのかなとさびしい気持ちでいたので、父親から「お前の友達のいるバレエ団が来週水曜日からくるぞ」と聞かされたとき、心のなかでてんでばらばらに太鼓が打ち鳴らされているみたいだった。胸が躍るとはこういうことを言うのだろうか。 新調してもらったダウンコートを着て水曜日の放...
『気をつけて。ホントにホントにホントに気をつけて』という節子の言葉を守り、安全運転を心がけながら灰谷は自宅に向けバイクを走らせていた。 結局、真島が友樹を開放したのは夕食をすませてから一時間後だった。友樹はニコニコとイヤな顔ひとつ見せず真島のゲームに付き合っていた。真島が可愛がるのもわかる気がする。 それにしても……真島の噂の件、あのオレをアオるような態度はなんだったのか。 『お二人、仲がいいから、真島ブラザーズなんて言われるボクとしてはちょっと嫉妬しちゃうんですよね』 嫉妬、とか言ってたけど。ただオレの反応見て面白がってるって感じもあったし。 『さっきだってボクの存在忘れちゃってたでしょ。ま…
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人14 BL小説 「大丈夫。私が何とかしてみせるわ。お願い、もう一度チャンスをちょうだい」 平と呼ばれた女性は揺ぎ無い口調で言い切った。 「仕方ないな。やってみろ」 渋い表情のまま、工藤は言った。 「ありがとう。あなたを後悔させるようなことはしないわ」 女性は踵を返し、オフィス
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲19(ラスト) BL小説 「ちょっかいはちょっかいだ。しかし因果応報ってやつだな。そんな昔の所業のせいでお前をあんな野郎に取られるところだった。千雪から、土方にお前が脅されているらしいって聞いて、俺は自分を呪ったぞ」 「工藤さん…」 良太は伸ばされた腕にすがりついた。 確かに工藤が
弾んだ声で、名を呼ばれる。この世でただひとつ、聞きたがえようのない声。「風海!」 稽古が終わったのだろう、佳踊が舞台から袖に戻ってきた。うれしそうに手を振っている。ぺたんと汗で前髪が額に貼りつき、手放しの笑顔もあいまって、すこし幼い印象になっている。「佳踊、じょうずになったな」 風海が言うと佳踊は照れたみたいに、「がんばればうまくなれるんだって最近わかってきた」と言う。 七未が口をはさむ。すこし...
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人13 BL小説 ほろ酔い加減も、初夏の夜風に飛ばされたようだ。 街路樹も青々とした葉をつけて、ゆっくりとざわめいている。 乃木坂の駅を上がって数分、青山プロダクションのエントランスに立って見上げると、夜の九時にもかかわらずオフィスにはまだ煌々と灯りがついていた。 千雪は一旦自
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲18 BL小説 会社の七階にある自分の部屋に良太を連れて入ると、リビングボードからホワイトラムとグラスを二つ持って戻ってきた。 「座ってろ」 怒ってるんだ。 少し平静を取り戻した良太は工藤を上目遣いに見やり、ラム酒が注がれたグラスを素直に受け取る。 「大体、あんなケチ
夏の劇場は暑い。人いきれだけではなく、夏休み興行とあって一段と練習に熱が入る。完全には効ききらない空調が冷気をそれでも送り出している。 佳踊に会いに来る風海の存在に劇団員は慣れたのか、軽く頭を下げてくれるもののそれぞれの仕事の傍らで、という感じだ。 佳踊はことし、ほんのすこし大きな役をもらえたといって張り切っていたので、練習を見るのをとても楽しみにしていた。舞台の上に立つ佳踊の背中はまっすぐな糸...
月夜の猫-BL小説です 春雷60 BL小説 「ああ、そういえば、俺も学生ん時くらいしか。確かに日本じゃ、パーティとかそうそうやらないからな、セレブとかじゃなければ、ハロウィンとかクリスマス、かこないだみたいな誕生会くらい?」 それを聞くと、えええ? と森村は情けない顔をした。 「わかった。確か業者さんでも合コン
♪フンフフン~ 鼻歌まで飛び出して、皿を洗う節子は上機嫌だった。 となりに並び灰谷はせっせと皿を拭く。 『誰かと一緒に台所に立つっていいわね』と節子が言ったことを覚えていた灰谷は機会があれば手伝うようにしていた。 「ボクも手伝います」と友樹も申し出たが「灰谷がいれば大丈夫だって。ゲームっ!ゲームっ!」と、真島に引っ張られていった。ほどなく真島の父も帰ってきてダイニングテーブルで晩酌を始めた。 「プハー。ウマイっ。夏には夏の。秋には秋のウマさがある」 テレビCMのように美味しそうにのどをならし、ビールのコップを空けると真島の父・正彦は誰にともなくそうつぶやいた。鼻の下に泡をくっつけたまま満足そう…
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人12 BL小説 編集者はいざとなれば電話だけでのやり取りでもいいし、楽なのだろう。 そこへ行くと宮島教授やあの工藤は千雪に対して最初から何の先入観もなく、ごく普通に接していた。 まあ、何が出てくるともわからない業界を渡り歩いてきた工藤にしてみれば、この程度のコスプレなど、ちょっ
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲17 BL小説 「工藤さん…でも…」 言いかけた良太の言葉を遮り、工藤は言った。 「会社のひとつやふたつどうにでもなる」 二人が出て行って閉まるはずのドアがまた開いた。 「残念ながら、そんな面ろい記事とか、書けへんで」 入れ替わるように入ってきた黒縁メガネの男が言った。
「七未ねえちゃんがバックヤードで団員の男の人とこうしてた。あとで聞いたら、ほんとうに好きな相手とはこうするんだよって教えてくれた」 しずかな声で佳踊は言った。とても大事なものを差し出すような声が、そのあとにつづく。「僕、風海のことが好きだよ。ほかのだれより風海が好き。おかしいかな」 風海はかぶりを振る。佳踊が好きだと言ってくれた。だれより好きだと。ただ、うれしかった。発光しているみたいなきれいで大...
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人11 BL小説 「ずるいぞ、名探偵!」 後ろから声がかかったが、すぐエレベータのドアが閉まった。 「そういえば、小林くん、聞いてるかな」 思い出したように、宮島が言った。 「何をですか?」 「工藤くんたち、三羽ガラスって言ったよね、実は三羽じゃなかったんだ」 「どういうことで
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲16 BL小説 「俺の出方次第じゃ、どうするって? いいのか? そんなこと言って、俺がお前のことを書いて週刊誌にでも売りつけりゃ、青山プロの評判もがた落ちだな? 社長が社員にウリさせていたなんてな」 「あれは俺が勝手にやったことで、会社とは何の関係もない!」 「さあ、そ
風海は玄関を手で示した。佳踊が「ん?」というふうに首をかしげる。「あがってく?」「いいの?ありがとう。喉乾いちゃったから麦茶もらっていい?」 いいよ、と答えて佳踊を家にあげる。きちんとそろえられた佳踊のスニーカー。留守にしているらしい母親がきれい好きでよかった、とちらっと思う。どうしてそんなことを思うのか、風海は自分で不思議だった。散らかった家だったら佳踊を招かなかった?そうじゃない、そんなこと...
月夜の猫-BL小説です 春雷58 BL小説 と、良太のジャケットのポケットで携帯が震えた。 取り出すと工藤の文字が浮かんでいる。 「はい、お疲れ様です」 「そっちはどうだ?」 いつものように前置きなしの質問に、「ええ、今のところ滞りなく」と良太は答える。 「秋山の件はどうだ?」 「そっちは、そう簡単にはいかない
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人10 BL小説 「ねえねえ、あの事件の話、私、聞きたかったんだよね、どうやって解決したの? マスコミもまるで名探偵が犯人みたいな扱いだし、事情聴取までされたんでしょ?」 入れ替わるように、今度は牧村が近くの椅子を引き寄せて千雪の横へやってきた。 「あれは別に俺が解決したとかい
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲15 BL小説 鈴木さんから渡された差出人のない手紙を封切ると、パソコンで叩かれたメッセージには、土方のサインがあった。 今度は郵便かよ…… メールに入っているメッセージを無視していたせいで、手紙をよこしたのだと、良太はムナクソ悪くなる。 そこには土方の部屋がある同じマン
月夜の猫-BL小説です 春雷(工藤×良太)57までアップしました BL小説 春雷(工藤×良太)57までアップしました。お前にだけ狂想曲(工藤×良太)14、真夜中の恋人(京助×千雪)9までそれぞれアップしました
先を歩く背中に追いついて、顔を覗きこんだ。すこしも日に灼けていないのがふしぎだと思う。「佳踊、ひさしぶり。元気だった?」「うん、元気」 直射日光が真上から容赦なく照り付け、ふたりの影は短い。アスファルトの向こうに陽炎が揺れている。「ことしは夏休みと佳踊のバレエ団の公演が重なってラッキーだ」 風海の言葉にふっと佳踊が足をとめた。「どうして?」 えっ?と尋ねかえすと、「どうして重なるとラッキーなの?...
食事会のメニューもギョウザメインの中華に決まった。こりゃあ楽しみだぜっとオレは思ったけど、灰谷的にはどうなんだろうな。 「そうだ、おかず足りた?」母ちゃんが聞く。「あ~灰谷が唐揚げバクバク食うからさ~」とオレがボヤけば、「ウマいからな節子の唐揚げ。世界で一番ウマイ」灰谷がさらりとつぶやいた。「もう~灰谷くんったら~」母ちゃんの顔がパッと耀く。 もう~そういうとこ。そういうのを、たらしてるって言うんだぜ。 「早くお婿に来て来て~」「じゃあ高校卒業したら」小さく笑いながら灰谷が返す。 おっ、灰谷がノッた。 「来て来て~。マコ、あんたからもお願いして」「だからマコやめろって。なあんでオレがお願いすん…
「ホンっトにオマエは……」 え?え?オマエは……何? オレは灰谷を見つめて言葉の続きを待った。 ――――この顔って。ええと…。これって……もしかして呆れてる?オレ、なんかヘンな事言った? が、灰谷はそのまま何も言わずにくるりと背を向けるとドアを開け、部屋の中に入ってしまった。 な、何? なんなの。なんで「ホンっトにオマエは……」でやめちゃうんだよ。ってか何あの顔。なんかもうこいつ……みたいな表情。あんな顔、はじめて見た。何なにその思わせぶりなやつ……。オレなんかした?ええ~? なんだか胸ん中をワチャワチャさせながら部屋に入る。 「マコ先輩、コーヒーおいしいです」友樹がカップ片手に微笑んだ。 「…
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人9 BL小説 「ああ、彼女のことを思い出すと、今でも心がうずく! 京助、貴様にはこんな純粋な恋心なんかわからねぇだろうなぁ」 尚も突っかかる速水を見て、京助はフンと鼻で笑う。 「てめぇの薄汚れた心なんかわかってたまるか」 「何だと?」 「そういえば、ピアニストの桐島さんて、