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月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲4 BL小説 快晴の空は夏の兆しが見え隠れしていた。 風は心地よく傍らを抜け、ぽっかりあちこちに浮かんだ雲はマグリットの世界にワープしたかのようだ。 「よろしくお願いします」 良太は編集部の面々に頭を下げ、周りの女の子にはさりげににっこり笑って挨拶した。 今日は、青山プロ
佳踊の声が心配そうにかげった。風海の目をじっと見てくる。「風海くん、きょうは楽しくなかったの?」「うーん、算数のドリルの宿題がいっぱい出たから、やだなぁと思って」「いっぱいあるんだったら、はやく家で終わらせないと」 佳踊のもっともな発言に、背負っていたランドセルを急に重く感じた。佳踊は風海の感情の起伏に気づいたのか、「それか、ここでやっちゃえば?」ととびきりの提案をするように言った。 風海はいい...
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲3 BL小説 疲れたああああ… しばらくベッドに沈んでいた良太だが、スーツが皺になる、とようやく身体を起こしてバスタブに湯を張っているうちに、スーツをハンガーに掛け、服を脱いでバスルームに戻る。 湯につかった一瞬の心地よさで、疲れも引いていく。 部活なんかもっとハードだっ
月夜の猫-BL小説です 春雷48 BL小説 自分の母親なのに、会ったこともない知らない人間の写真を持ってたって何の意味もないだろう、などと言って全く取り合わない。 「お前がもらったんならお前が持っていればいいだろうとかって、渡そうと思っても工藤さん、意に介さないし」 「まあ、引き出しの奥にでも入れといたらええや
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲2 BL小説 本当は工藤が接待を兼ねて高山に会うことになっていたのだが、出張先で足止めをくらった工藤の代わりに、良太が接待しなくてはならなくなった。 ロケ現場近くの業者が、仕事の邪魔だと文句をつけたため、工藤がその業者にかけ合っているらしい。今夜の最終便に間に合うかどう
そこから、風海は佳踊についていくつかのことを知っていった。恥ずかしげながらに、佳踊が教えてくれたのだ。はにかんだような笑顔がよく似合うな、と風海は思う。 佳踊は言葉を選び選び、語った。両親がバレエ団にいるのであちこちを転々としながら暮らしていること、風海とおなじ小学校一年生だということ、将来は両親とおなじようなバレエダンサーになりたいと思っていること。 風海も自分について話した。といっても、「こ...
真島がいなくなると部屋にピンと張り詰めた空気が流れた。 パリパリパリパリと灰谷がレタスやキュウリを噛む音だけが響く。しばらくして友樹が口を開いた。 「言わなかったでしょ?」 「……」 灰谷はバリバリと野菜をかみ砕いた。 バリバリバリバリ。 「灰谷先輩、あの時ボクに言いましたよね」 あの時……。真島についての悪質な噂を聞いた時の事か。 「『真島がそういうヤツかどうか、一緒に働いて自分の目で確かめてくれ。あいつ、いいヤツだよ。オレが保証するっ』って」 よく覚えてるな。 「マコ先輩はステキな人ですよ。灰谷先輩の言葉が、一緒にいてよくわかりました。ボク、大好きだなあ」 バリバリバリ。 つうか、なんなん…
月夜の猫-BL小説です 春雷47 BL小説 「とりあえず、お返しするわ」 紫の袱紗にくるんだベルベットのペンダントケースを千雪は良太の方に押しやった。 「ちゃんと中、確認してや」 千雪に言われて良太はちょっと嫌そうな顔をしつつ、袱紗を開いてペンダントケースを開けた。 「はあ、確認しましたけど」 「あかんがな、偽
小説サンプル・⑧ 『沈む贖い』 エムグラム診断で自分がわかる?
小説サンプル・⑧ 『沈む贖い』 小説サンプルも早いもので8作目✨今回は、チョット昭和臭漂うBLショートストーリー(´艸`*)ウェブ版同人サークル【voyageボヤージュ】のウェブ会誌に投稿させて頂いた作品。也菜なりな いくみ様(voyageメンバー)にタイトルイラストを描いて頂きました♡【voyage】では、昔あった会員制サークルのように、メンバー同士での挿絵のユニットや、コラボをこんな感じでお気軽に楽しんで頂けます♪ ※...
《小学校一年生》 はじめて劇場で佳踊を見かけたのは、小学校にあがったばかりの春、埃っぽい匂いのするひと気のないロビーでだった。 両手に持った紙パックのオレンジジュースを飲みながら、ぶらぶら足を振っていた。振り子のように規則正しく振られるまだ小さなかかとは、ロビーの椅子に腰かけると中途半端に宙に浮いていた。春の日差しが淡く高窓から差し込み、色素の薄い少年の髪のうえで踊っていた。光のかたまりみたいだ、...
月夜の猫-BL小説です 春雷46 BL小説 何が食べたいか千雪に聞いたところ、温かいもの、というので、西麻布のフレンチレストランに予約を入れた。 以前、工藤が連れて行ってくれたこじんまりとした店で、工藤の元同期がオーナー、その弟がシェフで、気取らない雰囲気だが美味しいフレンチを食べさせてくれる。 車寄せに車を停
「あ、風海くんだ」 舞台袖からこっそりステージをのぞいていると、背後から声がかかる。懐かしい声に振り返る。快活な笑みをたたえた女性が立っていた。風海の声が自然とはずむ。「七未(なみ)ねえちゃん、ひさしぶり」「風海くんもこの一年で大きくなったねぇ。うちの佳踊もすごく背が伸びたよ」「男子高校生だからね、水を飲んでも背が伸びる」 風海の言葉に七未は「ありえる」とわらうと、「佳踊を呼んでこようか?」と舞台...
月夜の猫-BL小説です 春雷45 BL小説 ともあれ、良太はダメモトで千雪の携帯を呼び出した。 「あ、お忙しいところ恐れ入ります、広瀬ですが」 繋がったことだけでもラッキーだ。 千雪は編集から逃れるために携帯を切っていたりするからだ。 「ああ、何? 良太からの連絡とか、嫌な予感ばっかやから」 なるほど、千雪
「夏休みにも来てましたよ、お店に。他校の女子たち。ねえ~灰谷先輩」 静かに微笑み灰谷を見つめる友樹。 「そうだっけ」と返した灰谷に、「来てたじゃないですか女の子たち。ボク、休憩中に店の前で捕まって取り囲まれてあれこれ聞かれたんですよ」と友樹が澄ました顔で言う。 先程のやり取りを知らない真島は「ほほう~。相変わらずモテるな灰谷~」とオムライスを頬張りながらちょっと誇らしげな様子だった。 「覚えてねえな」そう返すと灰谷は友樹に鋭い視線を投げかけた。 それをさらりと受け流して友樹がさらに明るい声で続ける。 「ホントに覚えてないんですか?灰谷先輩」 「ああ」ぶっきらぼうに灰谷は返す。 「灰谷、オマエ、…
月夜の猫-BL小説です 春雷44 BL小説 「良太ちゃん、山根監督からお電話よ」 たった今考えていた『今ひとたびの』の監督だ。 「はい、お電話代わりました。お世話になっております。は? え? 小林先生ですか?」 またぞろ、山根は面倒なことを言ってきた。 今日の撮影シーンで、原作者の小林千雪に確認したいことがある
バックヤードの薄暗くてどこか埃っぽい階段をのぼっていく。一段、また一段。造りがしっかりしているので、乱暴に駆けあがってもきっと軋まないだろう。けれど、いつもこの階段をのぼるとき、足運びは慎重になる。 だんだんと耳に届いてくる音楽や、靴が床に擦れる高い音、飛び交う言葉。最後の一段までのぼりきり、舞台のあるフロアとおなじ階の通路の重い扉を押し開けると、音と光と人の気配の洪水に包まれる。 衣装や音響、...
月夜の猫-BL小説です 春雷43 BL小説 黒塗りの車が向かった先は、十階建てのビルで、株式会社KCC。 良太がネットで検索したところ建設会社となっていたが、元々は上田市にあった中山組系暴力団君塚組が解散した後に会社組織として改名したものだという。 社長の君塚隆造は先代君塚組の長男で、次男、三男とも役員として会
普段着はズボン派?スカート派? ズボン。足元がスースーするのが嫌だから。 スカートだと、夏場以外は毛糸のパンツ着用の事!やわ。 冷えるんじゃ。ババァ…
優羽の指が墓石からそっと離れるのと、恋人のほがらかな声が聞こえるのが同時だった。「優、持ってきたよ」 優羽に柄杓を手渡すと、足元にバケツを置き、供えられた花束を交換している。そのやわらかい横顔を無性に好きだと思った。智伸の眠る墓石をすっかりきれいにして、手を合わせる。――俺、たぶん大丈夫。だから、心配しないでゆっくり休んでくれ。最後、苦しかったぶんもゆっくり眠って。 優羽が目を開けると、神妙な顔で...
月夜の猫-BL小説です 春雷42 BL小説 「佐藤製作所の会社で佐藤彰吾が出てくるのを待ってたら、ちょうどエントランス前の車に乗るとこだったみたいで、スーツ着て出てくる佐藤とわざとぶつかったんです。いや、あんなにうまくいくとは思わなかったけど、ガイジンの振りして英語で捲し立てたら、日本人て逆に引くんですよね。
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ42 BL小説 聞きたくないながら聞いた千雪に、小夜子が言った。 「やっと事実を理解したら、京助さんが誑かしたに違いないとかってお父さんが怒り出すから、綾小路では二人のことをちゃんと認めてるって言ったのよ」 「ってか、余計そんな状況でやる食事会に顔出すやなんて冗談やないわ
恋人と距離を詰めていったのはごくゆっくりだった。そのあいだ、彼が焦れる様子もなく優羽のそばにいてくれたのが、たぶんきちんとつきあうことになった決定打だった。優羽をちゃんと尊重してくれている。そう思えるようになって、はじめて優羽は彼のまえで泣いた。与えられる優しさに、改めて智伸の不在が浮き彫りになったから。 キスをされても、抱きしめられても、抱かれても、なにもかもが智伸とはちがった。ちがうと思うこ...
月夜の猫-BL小説です 春雷41 BL小説 それを俺に言うのが後ろめたかったとか? やっぱね。 何かあったに違いないって勝手に俺が思うのと、リアルな証拠を突き付けられるのとではちょっと違うよな。 だから、京助さんがあんなに工藤に対して目くじらを立てるわけで。 まあ、千雪さんにとっては昔のことなのかも知れないけ
「友樹、どんどん食えよ」「いただきま~す」「唐揚げ、ほれ唐揚げ食べろ。うまいから。そんでポテサラな」 真島は友樹の皿にポテトサラダを盛りつけた。 「うんま~い!」唐揚げを口に入れた友樹が声をあげる。「マコ先輩のお母さん、料理お上手ですね」「だろだろ~って、なんだよ友樹、急に。マコやめろって」「いや、マコってなんかカワイイなと思って。あっポテトサラダも美味しい」「だろだろ。っていやいやカワイイもやめろよ。かわいくねえし。なあ灰谷」 真島の向いに座った灰谷はスマホの画面を見ながらオムライスをモリモリ頬張っている。 「今日のオムライスどうよ」「ウマい」「食事中に行儀悪いなあ。さっきから何見てんのそれ…
胸の奥で花が揺らめく。 ―――【 】が尋ねる。心底不思議そうにぼくに問う。 胸の奥で花が震える。 ああ、こんなにもぼくの躰には花がみっしりと根を張っているのに。 ああ、こんなにもぼくの心は果てしなく空虚なんだ。 花たちはほろほろと花弁を散らす。それは涙のようにはらりはらりと足許に零れる。 ―――【 】が尋ねる。心底不思議そうにぼくを眺める。 もう、いいんだ。もう、終わらせたんだ。なのに、 ――――――――――――なのに、―――――――――――――――どうして? 〈暗転〉
《それから》 薄手のタートルネックの背中を、ガラス越しのおだやかな午後の日差しが照らしている。暖かさにうつらうつらしていると、ふいに手の甲を叩かれる。淡い眠りの海から引き戻されるとき、とても優しい夢を見ていた気がした。「優、着くよ」 聞きなれた駅名を繰りかえすアナウンスが流れる。 覗きこんでくる笑顔に微笑みかえして、優羽はそっとかばんを膝に乗せなおした。ちいさなかばんに収まった線香の香りがかすかに...
月夜の猫-BL小説です 春雷(工藤×良太)40までアップしました BL小説 春雷(工藤×良太)40までアップしました。かぜをいたみ(京助×千雪)40までアップしました。
月夜の猫-BL小説です 春雷40 BL小説 「まあ、じゃあ、ほんとにその方近しい方がいらっしゃらなかったのね。疎遠になってしまっているとお孫さんもそんなもんなんでしょうかねえ」 「子や孫がいても今時はそんなもんなんだろうな」 鈴木さんが平造としみじみと語っている間に、良太は小田に電話を入れた。 「お忙しいところ
くるしい、 くるしい、 くるしい、 くるしい、 ・・・・・・・・・・・・だってまだこんなにも、 あなたの残滓がぼくの細胞ひとつひとつに沁みついている。 だってあなたはぼくの寄す処(よすが)だった。 美しかったあのセカイは色を失った。 ぼくはどうやって、 ことばを紡げばいいんだろう。
とうとう智伸と優羽がそれぞれ暮らすアパートの最寄り駅に到着してしまう。先に改札をくぐった優羽は振り返って智伸を見上げた。「ありがとう。旅行につきあってくれて。……見舞いに行くから」 「ああ」と答えた智伸が優羽の両手をぎゅっと握りしめた。あたたかい体温が伝わってくる。「あしたがいい日でありますように。どんなに優羽がつらくなっても、お前に降り積もりつづけるあしたが、ずっとずっといい日でありますように」...
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ40 BL小説 「お、めでとう、ってか、もう五か月?」 小夜子は確かにゆったりしたAラインのワンピースを着ているが、お腹が特に目立っているとは思えない。 「先月、紫紀さんの仕事の都合もあって、一緒に日本に戻ってきたんだけど、ちょっと風邪気味かなと思って、病院行ったら妊娠してるっ
「服、大丈夫でしたか?灰谷先輩」 真島がいなくなると友樹が灰谷に話しかけた。 「ああ。大丈夫」 盛大にぶちまけたと思ったが被害は案外少なかったようだ。服よりもベッドカバーの方が濡れている。まあでもこれは自業自得だ。 濡れたところを避け、灰谷はまたベッドに寝転がった。 「灰谷先輩。マコ先輩ってカワイイですよね」 一人対戦モードでゲームをしながら友樹が言う。革ジャンの画像を見つめていた灰谷は首をひねる。 ……カワイイ?『カワイイ』か?『カワイイ』と『マコ』は真島の地雷なんだがな。 「見た目もですけど中身がっていうか。そう、なんかまっすぐでロマンチストなんですよね」 そんなかな、あいつ……。ああ。ま…
『ナツノヒカリ』続編 『アキノワルツ』、読んでくださってありがとうございます。 取り急ぎお詫びしなければならない事があります。 本日5月10日(水)『アキノワルツ』10話の更新を済ませた後、何気なく記事一覧のチェックをしていた所、『アキノワルツ』第5話の更新がされていなかったことに気がつきました。 本来なら4月29日に更新されたいたはずのものです。 ブログをFC2からはてなブログに移す際、うっかり落としてしまったようです。 先程4月29日の日付で更新しました。 ↓ 下記リンクからお読みいただけます。↓ ku-ku-baku-baku.hatenablog.com お話はなんとか繋がっていなくも…
「服、大丈夫でしたか?灰谷先輩」 真島がいなくなると友樹が灰谷に話しかけた。 「ああ。大丈夫」 盛大にぶちまけたと思ったが被害は案外少なかったようだ。服よりもベッドカバーの方が濡れている。まあでもこれは自業自得だ。 濡れたところを避け、灰谷はまたベッドに寝転がった。 「灰谷先輩。マコ先輩ってカワイイですよね」 一人対戦モードでゲームをしながら友樹が言う。革ジャンの画像を見つめていた灰谷は首をひねる。 ……カワイイ?『カワイイ』か?『カワイイ』と『マコ』は真島の地雷なんだがな。 「見た目もですけど中身がっていうか。そう、なんかまっすぐでロマンチストなんですよね」 そんなかな、あいつ……。ああ。ま…
諦めるとか、 忘れるとか、 どうやったらできるんだっけ。 あの日から毎日を、日常を繰り返してきたくせに、 昨日までと明日からの、 区切り方がわからないんだ。 予定を分刻みで詰め込んで、 楽しいと思い込んで笑って燥いで、 くたくたになって泥の様に眠りに落ちても、 明け方に見る、淡い陽炎みたいな夢の欠片。 曖昧な、形にすらなっていない揺らぐそのカケラが、 頭の片隅にこびりついたまま拭えない。 ふとした瞬間に、 気配を感じて。 空白の刹那に、 過るなにかを、 全身全霊で、気配や色や音やにおいを、 探している。自覚のないまま。 未練。 きっとそうなんだろうでも、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・手…
月夜の猫-BL小説です 春雷39 BL小説 「何かお手伝いすることがあればおっしゃって下さいよ」 鈴木さんが優しく平造に問う。 「そうですよ」 良太も頷いた。 すると平造はしばし迷ったような顔をしたが、「そうたいしたことじゃないんだが」と口を開いた。 「俺はガキの頃に親を亡くして、親戚をたらいまわしにされたんだが
「……そんなこと、できない」 かたくなな優羽の声に、智伸がつないだ手を軽く揺らした。「いつでもいい、どんなにゆっくりでもいい。俺がいなくなること、乗り越えてくれないか。優羽のためじゃないよ、俺のために。そうだな、これが俺の最後のわがままだな」「会えなくても、抱きしめられなくても、愛してるから。だから、そういう痛みを抱えて、ずっと生きていきたい」「痛む胸を抱えたままでも、しあわせにはなれるよ。優羽には...
月夜の猫-BL小説です 春雷38 BL小説 でも工藤がピアノとか、そういうの好きな相手と一緒なんだろうか。 あ、あれかな、ニューヨークの佳乃さん。 あの人が日本に来るとか? ちぇ、ま、いいけどさ。 これだから、工藤のことなんか、人に話せないんだよ。 ふう、と大きく溜息をついたところを、宇都宮に見られてしまった。