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「なあなあ真島、オレってアリ?ナシ?」 昼休みになっても佐藤は朝の話を忘れていなかった。 メシも食い終わって次の授業までのまったりタイム。弁当をたいらげ、デザートのミルクフランスを食べながらイチゴ牛乳をキメようとするオレのまわりを佐藤はチョロチョロする。 「少しだけ食わせろ」という佐藤に「これだけはやれん」と断ったからだろう。佐藤の少しは少しじゃすまねえからな。ほぼ全部だからな。ミルクフランス我いのちなり~。 「うっせえなあ。知らねえって」「ひどいわ。考えてくれたっていいじゃない。少しくれたっていいじゃない。あたしはあなたにとってなんなのよ」 佐藤のウザがらみには慣れっこのオレたちもノってやら…
「あのねぇ、ずっと、」 なんの脈略もなく、だけどとても自然に、空を見上げていた時雨さんが口を開いた。どこまでも青い空に、綿あめみたいな真っ白な雲がひとつ、ふわふわと時雨さんの視線を誘いながら流れていった。「ずっと、探している気がするんだ」 夢のなかにまだ、半分くらい居る。そんな表情をして時雨さんはそう云った。 独り言なんだろうか。隣に立つ僕は、どう返せばいいのかそれとも聞こえない振りをしていれば良いのか、迷い、半端に口を開いたまま、時雨さんの端正な横顔をただ見つめる。「なにを、だろう。なにを・・・・・・、なんだろう。でも、わかんない、」 漂う雲を追っているのか、それともあの空の向こうをただ見て…
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人27 BL小説 一呼吸おいて、速水は続けた。 「いくらでも女がより取り見取りだろう? ゲイってわけじゃないんだ。何も坊やなんか選ばなくてもいいだろ? いったいどこで知り合った? ニューヨークあたりでもよくいるが、あの手合いは絶対援助目的だぜ? お前の素性知ってるんだろ?」
月夜の猫-BL小説です Vacances12 BL小説 「何余裕ぶっこいてんだよ、きさま」 「やつの代わりを立てればいいだけの話だろ? 俺に妙案がある」 あくまでも藤堂は暢気そうに答える。 「ほう、言ってみろよ。尾崎は鴻池物産の方で指名してきたキャストだが、中川アスカの添え物としては駆け出しでもいいセンだったん
どきどきしたまま黙り込んでいると、佳踊がいたずらっぽく風海の顔を覗きこむ。「俺、たいてい風海のこと考えながらやってるし」「えっ?どんなふうに?」 佳踊が笑う。ぱあっとたんぽぽの綿毛が風に散るような笑いかただった。なぜだろう、僕たちっていまとてもよくない、後ろめたいような話をしているんじゃなかったっけ、と風海は思う。「どんなふうに?って風海、俺がしているとこ見たいの?」 風海は一気に血が頬に昇るの...
月夜の猫-BL小説です 春雷73 BL小説 平造への箱は割と大き目で、どうやらみんな同じブランドのものらしい。 ってか、これ、ラルフローレンじゃん。 「あらまあ、素敵!」 あらまあを連発して、鈴木さんは取り出したシルクのスカーフを早速肩にかけてみる。 紺地にゴールドのバラが品の好い鈴木さんによく合っている。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人26 BL小説 六本木の大通りから少し入ったところにあるバー「サンクチュアリ」は、富裕層が利用する高級会員制クラブの系列で、VIPルームもあるシックな店だが、京助や速水にとっては高校時代からのたまり場で、加えて大抵何人もの遊び仲間が屯していた。 久々にドアをくぐると、久しぶり
月夜の猫-BL小説です Vacances11 BL小説 工藤や河崎の話している内容から、良太も大体のことは把握できた。 工藤もドラマのために河崎らと同行してイタリアに飛び、撮影用にヴィラを押さえてきたのだが、持ち主から急遽使うことになったから貸せないという連絡が入り、こちらも番狂わせもいいところなのだ。 「来週
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ45 BL小説 「おい、だからそんな恰好で寝るな」 いきなり首に引っ掛けていたタオルで頭をガシガシやられた千雪は目を覚ました。 ぼんやりしているうちに寝てしまったらしい。 「ほんまにお前の兄貴、クエナイやつや」 千雪はボソリと言った。 「だからそうだってっだろ? 兄貴のやつ、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人25 BL小説 「桜木? 政治家というと、まさか何年か前、贈収賄事件で起訴された桜木代議士?」 「そうだ。君の言う通り、引き裂かれて自殺なんて、今時はやらないよな」 小田は苦笑いしながら振り返った。 「いえ、境遇とかは違うかもしれませんが、俺の両親、駆け落ちやったんです。母親
月夜の猫-BL小説です Vacances10 BL小説 爽やかな好天にもかかわらず、朝からオフィスは怪しい雲行きを醸し出していた。 「そのくらいの怪我、テーピングで何とかごまかせるでしょう?」 丁寧な言い回しだがはっきりと秋山は相手を見据えた。 「いや、そう簡単には行かないみたいでして。誠に申し訳ございません。
「風海、笑ってよ。どうしたの、ほんとに」「……佳踊に会えるのはうれしいよ。だけど、すこしだけ気まずい」 気持ち悪がられてもいい。嫌われてもいい。隠し事をしているのはよくない、隠していてもいつか佳踊には知られてしまう気がする。佳踊は風海のことならなんでもお見通しなのだから。 風海は自分の身に起こった出来事を佳踊につっかえつっかえ小声で打ち明けた。夏の日差しがじりじりと頭のてっぺんを焼いている。 風海...
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人24 BL小説 「ああ、ちょっと話をした時にね。それに君の小説を映画化するという話じゃないか、工藤にしてみれば結構大きな仕事になるようだし、私も影ながら応援くらいはさせてもらうよ」 ワハハと豪快に笑う小田からは誠実な人柄が窺えた。 「工藤さんとは今も親しくされてはるんですね」
月夜の猫-BL小説です Vacances9 BL小説 「それで、シッポを掴んだのか」 「今、譲に調査させてるとこだ。だが、きさま、ほんとに奈々やアスカに手を出してるんじゃないだろうな? それが事実なら俺は無罪にしてやる気なんかさらさらないからな」 「るせーな、あんなガキに俺が手を出すかよ。何度もブタ箱に入り浸っ
《小学校六年生》 夏に団の公演を控えている佳踊に会うのが、ことしはほんのすこしだけ怖かった。両腕に余る大きな荷物を抱えて、あっちこっちうろうろしている気分だ。これは完全に風海の問題で、佳踊にさえなんと伝えたらいいのかわからない。 春のはじめ、目が覚めたら風海は精通を迎えていた。 それだけならまだなんということもないのだけれど、その前に見ていた夢に佳踊がいた。夢の舞台の上、何もまとわずに軽やかに舞っ...
『未来は僕らの手の中』……か。 オレはため息つきつつ窓の外を眺める。広いグラウンドは空っぽで土ぼこり。 一限が始まってもオレは担任・田中のメッセージが頭の中で回っていた。 未来……未来か。僕ら……オレと灰谷。僕らの、オレたちの未来はどうなるんだろう。親父が言ってたみたいに二十歳になって三人で酒なんか飲める日がホントにくるとは今のオレにはまったく想像がつかない。 そう。オレはいつも目の前の事で精一杯。オレのしたい事って……。 なんだろう~。なんだろう~。なんだろう~。 ……。……。……灰谷とツーリング……ってバカ、そういうことじゃなくてさ。 オレは……なんだろう。ホント、なんもねえなあ。中学から…
月夜の猫-BL小説です 春雷71 BL小説 「いや、今朝、おかゆとか食べて薬飲んだけど、気力だけで動いてるみたいです。夕べは何せ、斎藤さんの付き合いだったし」 「ああ、体調悪い時あの人の付き合いはきついな。しかし、インフルじゃないのか? 病院にも行ってないわけ?」 「熱があるようなら病院行かないとですよね」
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人23 BL小説 さすがに切れ者の弁護士というだけあって、その表情からは何も窺い知れない。 「刑法と処罰について、考えているところなのですが、弁護士として実際の事件を扱っておられる先生に、差しさわりのない程度でお話を聞かせていただけたらと思いまして」 もちろん、自分が携わってい
月夜の猫-BL小説です Vacances8 BL小説 それに、昨年末の忙しい時期に十日ほども入院し、しかも工藤に別荘に連れて行ってもらったりして、逆に工藤に負担をかけてしまった良太としては非常に心苦しかったのだ。 どちらかというと休みをとって欲しいのは、工藤自身になのだが。 それにしても家族で一緒に旅行なんて何
佳踊はことし、どうやら風海と口づけを交わすことに執心しているようだった。 舞台袖で人目をはばかって、バックヤードで、裏庭で、風海はなんども佳踊とキスをした。そのたびに佳踊の唇がかさかさ乾いていたり、しっとり湿っていたりするのがふしぎでおもしろかった。佳踊の両手に腕を掴まれて口づけられると、自分のすべてが肯定されている気がした。自分の居場所はここなんだ、ここにならいていいんだ、というふうに。 この...
月夜の猫-BL小説です 春雷(工藤×良太)70までアップしました BL小説 春雷(工藤×良太)70、真夜中の恋人(京助×千雪)22、Vacances(工藤×良太)7(良太入社2年目くらい)までアップしました。真夜中の恋人、Vacances は、エピソード―風薫る頃、からどうぞ。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人22 BL小説 「捜査一課の刑事だ。だいたい、こないだは千雪を容疑者扱いしといてどの面下げて来やがるんだ! 厚顔無恥な連中だ。千雪なんかに頼らず、ちったあ自分の頭を使ってみたらどうだ?! へっぽこデカどもめ!」 むしゃくしゃしていた京助は、ちょうど現れた渋谷に当り散らす。
月夜の猫-BL小説です Vacances7 BL小説 「俺の昔話なんかお前には関係ないだろうが」 工藤はもう終ったことだというようにそう言った。 でも、じゃあ何故、「あの人」のことになるとあんなに一生懸命になるんだ? それを聞く勇気がない。 …どーせ俺なんかさ! キショーめ、飲みに行っちゃろーかなー… さっき工
七未がまた踊るようになる。風海は素直にうれしかった。「そうなんだ。またバレエに戻るんだ」「うん。『こればっかりは業だねー』って言って」 佳踊が七未と美佑をおだやかな目で見ながら言う。とてもいいものを遠くから見る目だった。 たしかに、佳踊が風海を好きな限り、あの光景は佳踊の手の届くところには決して存在しない。だんだん、さすがの風海にもそういうことがわかってきた。風海は一瞬だけ目を伏せて、ちいさな声...
月夜の猫-BL小説です 春雷69 BL小説 曽祖父がスーツを着ると、昔の人間にしては背が高く体格もよかったせいか、ロンドンの紳士ってこんな感じだろうかと思わせるような佇まいだったのを覚えている。 激高して怒るようなことはなかったが、冷たい印象が幼い工藤には曽祖父には好かれていないと思わせた。 軽井沢の別荘に通って
アキノワルツ 第22話 いつもの、いやいつもとは少しづつ違う日々。
「なあなあ真島、あのな、オレってアリ?ナシ?」 声を少しだけひそめて佐藤がこんな事を訊いてきた。なんだ?この急角度の切りこみ。 「へ?人として?ナシナシ」「ちっげえ~よ!真島はぁ……」というとまた声をひそめ、「オレとできんのかなあって。究極アリかナシならどっちかなあって」とすました顔で佐藤が言った。 ドびっくり!朝っぱらから佐藤がド:下(シモ)ネタを放りこんできた!ってそういう事聞いてるんだよな? 「いやさ。最近桜子ちゃんに借りてBLハマっててさ。ちょっと気になっちゃってさ。テへへ?」 佐藤は舌を出してウィンクした。カワイくない。てさてさって、なんなのこいつ。 「オマエ、どの口が言ってんだよ」…
ああ、そうか、おれは、 約束をしたんだ、―――約束を、だから、 だからそうか、たいせつな■■を手放したから、だから、 だからおれはまた、 空っぽだ。
月夜の猫-BL小説です Vacances6 BL小説 「どうぞ」 キッチンから出てきた鈴木さんがコーヒーを谷川と井上に渡す。 「うお、ありがて~。今日は一段と美人だね~鈴木さん」 「魚武さんみたいなこと言わなくてもいいの」 ソファに腰をおろした井上はコーヒーをすする。 「…魚武って誰よ?」 「らしいってだけじゃ、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人21 BL小説 頭から工藤をヤクザと見下しているその正義感面にはかなりムカついたが、千雪のことを見下したいが故に工藤のことを持ち出している速水に対して、反吐が出る思いがして、千雪は立ち上がる。 「根拠のない噂話なんかに踊らされて、仮にも心理学者ともあろう人が、そう知らん他人を
《小学校五年生》 佳踊のバレエ団は秋口に公演を控えている。佳踊は去年とおなじくふた幕にわたる出番をもらったそうで「俺、あんまり出世しないな」と恥ずかしそうに風海に告げた。「そんなことないよ。あんなにたくさんの人のまえで踊るなんてすごい」 去年の冬の舞台をはじめて通して観た。話の流れは完全に理解できなかったものの、とてもうつくしいものを観たのだ、ということは心の底から感じた。 そして、佳踊は。満員御...
月夜の猫-BL小説です 春雷68 BL小説 おかゆを器に入れ、梅干しを添えて、薬や栄養ドリンクと一緒にトレーに乗せると、良太は隣へのドアを開けた。 何だか、妙にこのドアが機能している気がする。 部屋に入ると、工藤はシャワーを浴びたらしく、バスローブで頭をタオルで拭きながらリビングまでやってきた。 「シャワーとか
月夜の猫-BL小説です Vacances5 BL小説 「イっちゃってるよー、良太~」 バッチーンと背中を叩かれて、良太は「ってぇよ~~、アスカさ~ん」と振り返る。 「ドア見つめて、セツナげな顔しちゃってさ~、かーわい~ったら」 「せ…つなげになんかなってないよっ!」 アスカに追い討ちをかけられて、良太は顔をカ
小説サンプル・⑬『白猫のボレロ』 私が鬼滅の刃世界に転生したら?
小説サンプル・⑬『白猫のボレロ』 創作友達、也菜 いくみさんとウェブ版同人サークル【voyage】を立ち上げた際※、どんな活動か、皆んなに判るように、創刊号を出してみよう♪と言うこととなり、この作品を書き下ろしました!5000文字程度の、読むのに10分も掛からないショートストーリーです。ただし、成人向け🔞のBL作品ですから、どうぞご用心下さい※➝『昔あった同人サークルを作りたい!』と久遠が希望して、元々持っ...
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人20 BL小説 「あ、先輩! こんなとこにいた!」 お前は猛禽類か。 千雪は眼鏡の奥からよく見知った男を睨み付けた。 今日は天気もいいので南側のテラスへ続く扉が開かれ、オープンカフェになっていた。 できればこのうるさい後輩とは顔を合わせたくないし、ちょうど隅の木陰のテーブルが
照れもあってふたりで小突き合いながらステージに戻ると、ちょうど佳踊の出番のある場面の練習がはじまるところだった。佳踊が慌てて舞台へと駆けていく。その背中をなんとも言えない気持ちで見送った。さっきまで、あの細くて強い腕のなかにいた。 去年までの佳踊はステージの半分くらいを使っての舞いが多かったのに、今年は舞台全体を軽やかに駆け、跳び、くるくると回転している。あいかわらず、まっすぐに伸びた背中が凜と...
月夜の猫-BL小説です 春雷67 BL小説 大学の先輩で工藤はよくしてもらったというが、実際鴻池と相対した良太からみると、工藤に対して異様な執着があるのだ。 だから工藤がよりによって良太なんかと付き合っていることが気に入らず、良太を排除して自分が理想とする相手を工藤にくっつけようとしたわけだ。 当時は工藤も鴻池の
夏の終わりに、買ったばかりのチャリを盗まれてからこっち、灰谷はいまだにオレを迎えに来てくれている。新しいチャリ買うよりバイク代の支払いにあてたほうがいいだろって。灰谷は優しい。なので、オレの特等席は健在なのだった。 「真島、感謝しろよ~。灰谷の献身に」「オマエが言うな佐藤」とオレが返せば「慣れたんだよ。ただのルーティーン」ぶっきらぼうにそう言う灰谷にほんの少しさびしくなったオレは「ルーティーン大好きA型でーす」とかぶせる。 灰谷がピタリと立ち止まった。?となるオレたち(マジサト)。 「真島、オマエ、明日から歩いて行け」と言うなり、灰谷はチャリのカゴからオレのカバンをポンと放り投げた。 オレは思…
月夜の猫-BL小説です Vacances4 BL小説 弁護士のタマゴ一人と司法書士一人を抱え、半蔵門に事務所を構えている小田は、現東京地裁の敏腕検事荒木志郎や工藤とは大学の同期で、大学卒業の年には司法試験に三人競って合格したという、在学当時から一筋ならでは行かないツワモノ三羽烏の一人だ。 寄ると触るとお互いの
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人19 BL小説 よりによって、顔を見たくもない相手とどうしてこんなところで出くわしてしまうのか。 「ええ、一応、雑誌で連載なんかやってるんで、色々忙しいんです」 振り返ると速水とその後ろには文子が立っていた。 「まあ、連載? 何ていう雑誌ですか?」 にこやかに尋ねられて、千雪
月夜の猫-BL小説です 春雷66 BL小説 高輪にある工藤の部屋は、何だか生活感もなく、良太もたまにマンションの中に入っているスポーツクラブに連れて行ってもらったりしたが、どちらかというと高輪の方が別宅のような気がしている。 屋上プールは最高だったけどな。 昼は開いているが、夜はドーム型の天井から空が見えるのだ。