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空々と漠々 くうくうとばくばく https://ku-ku-baku-baku.hatenablog.com/

おもに高校生男子がワチャワチャしているBL小説置場です。fc2→はてなブログに引っ越しました。

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カノカヤオ
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2017/02/16

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  • 『アキノワルツ』休載について

    『アキノワルツ』、お読みいただいてありがとうございます。タイトルのままですが、しばらくお休みを頂きます。週3日投稿していましたが、ストックが無くなってしまいました。くわえて首と右腕に痛みがあり、長時間キーボードを打つのが困難になったためです。秋のお話なので秋までには再開できればいいのですが……。少しづつ書き続けては行きますので、時間がかかるかもしれませんが、お待ちいただければ幸いです。 よろしくお願いいたします。 カノカヤオ

  • アキノワルツ 第42話 春日井大社

    「久しぶりだな」灰谷を見て春日井が言った。 「オレのこと、覚えてるんですか?」「覚えてるさ。灰谷だろ。西村と同じチームにいた」 春日井が自分のことを認識していたこと、名前まで覚えていた事に灰谷は驚いた。 「良いセンスしてた。いまどこでやってるんだ?」 あの春日井大社にこんな事言われる日が来るなんてな。感慨深い。 「あ、実は中学に入ってから脚やっちゃって」「そうか。残念だな」 悪い事を聞いてしまったとでもいうように春日井の顔が曇る。 「もう昔のことなんで」「急遽招集したんすよ。親父、週末のサッカー命だから」と西村が割って入った。 「見つかんなかったら小遣い減らすとか言われて電話かけまくって。こう…

  • アキノワルツ 第41話 サッカー

    ピピー。 試合終了を知らせる笛の音が響くと、灰谷はその場に倒れこんだ。 ハッ ハッ ハッ ハッ。 息がはずみ心臓がバクバクと音を立てた。肺が新鮮な空気を求めている。 苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。 なんも考えられない。 灰谷は目を閉じ、カラダの声を聴いた。というより丸ごとカラダになった。全身を流れる汗。フル稼働する心臓・肺・駆けめぐる血液・震える筋肉。 ヤバい……久々のこの感じ。忘れてた。 オレ自身だ。まるごとオレ自身だ。何思う事もない。全部まるごと、まぎれもなくオレ自身だ。 あー気持ちいい~~~。 大きく手足を伸ばして息を吐き、目をあけた。 空はかき曇り今にも雨が降り出しそうだった。 「お…

  • アキノワルツ 第40話 金曜夜の電話

    『灰谷、ヤバイ。助けてくれ~。親父に殺される……』 金曜の夜に物騒な電話をかけてきたのは少年サッカー時代のチームメイト・西村だった。 「何?どした?」 話を聞いてみればなんのことはない。西村の父が毎週末、仲間と楽しんでいるサッカーのメンツが足りない。来られないかという誘いだった。 「なんだよ殺されるって。大げさだな」『いや、マジなんだよ。うちの親父、週末サッカーと、その後の飲み会が命なんだ。今回ホントに集まらないみたいでさ。オレは強制参加で最低あと一人って言われてさ』「バイトあるんだよな」『それ休めねえ?』 ……休めないことはないかも知れない。明日は天気悪いらしいからお客さんも少なそうだしな。…

  • アキノワルツ 第39話 雨のコンビニ⑤

    「と…友樹…あの……オレ……」オレの声が震えている。 と、その時、ふいに友樹が下を向いた。友樹のつむじが見える。 そして肩が小刻みに震えはじめた。 え?泣いてる?……。え?え? 「……くッツクククク。アハハハハッ」友樹が腹を抱えて笑い始めた。 「マコ先輩のこまった顔…。クククク。カ~ワイ~」 ! 友樹、こいつ!からかいやがったな……。 「アハハハハッ」友樹は目尻から小さく涙をながしている。 それを見た途端オレの顔は火がついたみたいに熱くなった。な、なんか言わなくちゃ。 オレはなんとか言葉をふりしぼる。 「……もう~オマエ……キライ」 そんな言葉しか出てこない。恥ずか死ぬ~~~。 オレの言葉に友…

  • アキノワルツ 第38話 雨のコンビニ④

    「灰谷先輩、楽しんでますかねえ」 黙っているのにもさすがに飽きたのか脚をブラブラさせながら友樹がいう。 昨夜灰谷から電話があった。 「ワリぃ、明日迎えに行けなくなった。徒歩で行ってくれ」「なん?どした」「バイトも休みもらったから」 何事?と聞いてみれば少年サッカーをやっていた頃の友達に試合に誘われたのだという。 中学の時、足にケガをしてやめてから、ボールを蹴っている姿を見たことは一度もない。見たかったなオレも。 灰谷がピッチを走り回る姿はホントにカッコ良かったから。まあでもな、クラブメンバーと親しげな様子を見てるのはちょっとヤケたけどな。ああいう戦友みたいな絆って幼なじみとかとは別物じゃん。 …

  • アキノワルツ 第37話 雨のコンビニ③

    ブチブチッ。 天井のスピーカーから、コンセントにささったケーブルを無理やり強く引き抜いた、みたいな音がした。 「あっ有線」と友樹がつぶやく。 店の中に流れていたBGMが止まってしまった。 「店長に言わないと」と立ち上がろうとした友樹に「雨風強いと止まる時あるんだ。たぶんアンテナの関係。しばらくしたら戻るよ」と教えてやる。 店長も慣れたものでバックルームから出てくる気配はない。 無音になった空っぽの店内で友樹と二人、アメリカンドッグをパクつくがすぐに食べ終わってしまった。 友樹と二人、窓の外をぼんやりと眺めた。 天気予報があたったせいか街には人っ子一人いない。向かいの美容院は相変わらず無人だし。…

  • アキノワルツ 第36話 雨のコンビニ②

    まるで嵐だよ……。 「友樹、アメリカンドッグ食わない?」 「え? いいんですかねえ」 友樹はチラリとバックルームの入口に目をやる。 「いいだろ。誰もいねえし。店長、当分出てこねえよ」「ですよねえ」「Suicaな。オゴるわ」とオレがスマホを渡すと「ごちそうさまで~す」と友樹がレジに消える。電子決済って便利だよな。 「はい、マスタードありです」「おう」 オレの好みを覚えてくれてる友樹がアメリカンドッグを差し出す。「ボクは辛いのちょっと苦手で」なんてカワイイこと言う友樹はケチャップだけだ。 二人並んでつかの間のモグモグタイム。 やっぱうちの店のより、家の近所のコンビニのほうが格段にうめえんだよな。な…

  • アキノワルツ 第35話 雨のコンビニ①

    時計の針は午後二時過ぎ。土曜日だというのにコンビニ店内は空っぽ。朝からどんよりした曇り空で予報は夕方まで傘マーク。 窓ガラスを拭く手をとめ、空を見上げれば予想どおり今にも雨が降り出しそうだ。 「マコせんぱ~い。来ないですねえ、お客さん」 床にモップをかける手をとめ、友樹がぼやく。 「ああ。天気こんなだし。来るなら雨上がってからじゃね?」「ですよねえ」 キュッキュッキュッツ。オレは力を入れてガラスをこすった。やれることはやっちまわないとな。 「次は何します?マコ先輩」 モップをしまいながら友樹がオレに指示をあおぐ。何しよう。掃除は終わったし、お客さんは来ねえし。 「ん~~座っとくか」オレは大きく…

  • アキノワルツ 第34話 『血まみれでも きみは うつくしい』

    「マジナカ~、オマエらどこ行ってたんだよ~」「おう佐藤、勉学に励んでたか?」 寄ってきた佐藤の額を指ではじく。 「イタッ。なに上機嫌だよ真島は」「いや、んな事ねえよ」 って、ああ。こっち見てる灰谷の顔……。あれはちょい心配してんな。 席にすとんと腰を下ろしてチラリと後ろをふり返れば、灰谷と目が合った。 なんかあったんじゃねえだろうな……みたいな顔。あ~この顔好きだ。ってそれはいいからオレ。 「今日いい天気だよな。中田とぼや~っとして来たわ~」 すっとぼけて言ってみたけれど、ふ~んみたいなイマイチ納得していない様子。まあオレ、授業サボったことないもんな。でも、中田の色々は言えねえし……。 「真島…

  • アキノワルツ 第33話 屋上で聞いたこと⑤

    屋上のドアにカギを掛けて、ガーンと蹴るとカチリと閉まる音がした。 「へえ~そうやるんだ」「そう。ちなみに開けるときはドアノブ握ってガンガンガンとひっぱる」オレはやってみせた。 「おう。裏技」「コレ、誰も知らねえから」「お~う」 中田も一人になりたい時があるだろう。さりげなく教えておく。 もう一回ドアを閉め直してから、オレは言った。 「中田、オレにできることがあったら、なんでも言ってくれよな」 中田はちょっと照れくさそうな顔をして、「おう~。ま、なんかあったらそん時は頼むわ」とオレの肩を叩いた。 まあ、できることなんてなんもないけどね。たぶん中田は言わないだろうし。でも一応。一応言っておく。それ…

  • アキノワルツ 第32話 屋上で聞いたこと④

    矢沢のモノマネでなんとか中田から笑いを引き出した。 ♪キーンコーンカーンコーン 昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ったけど中田は動かず、なんだか教室に帰りたくなさそうに見えた。 「中田~ここで昼寝しようぜ5限」「ん~?ん~…そうすっか」「おう。よっ」 オレは立ち上がると手を広げ、バランスを取りながら貯水塔の載った建物のフチを一歩一歩、歩く。 「気をつけろよ」「おう~」 ゆらゆらゆらゆら。 生と死の境界線を漂う。って大げさか。手すりなんかないけど下の屋上に落ちても、二メートルぐらいだし。オレ、バランス感覚はいいしな。 ゆらゆらゆらゆら。 たゆたう たゆたう たゆたう。 ぐるりと一周して戻ってくると、…

  • アキノワルツ 第31話 佐藤の野生の勘②

    「わざわざすいません」 灰谷が席をたち、教室の入口に立つと友樹はニコリと微笑み、小さく頭をさげた。佐藤はといえば灰谷の隣りに立ち、腕組みをし、友樹を上から下まで眺め回していた。 「あの~マコ先輩は?」「真島、いま席外してる」 佐藤は眉間にシワを寄せ、「マコ…」と口の中で小さくつぶやいた。 不機嫌な佐藤のぶしつけな視線に気がついているだろうに友樹は笑顔だった。 「そうですか。屋上ですかね」「ああ。どうだろうな」「屋上って何?」 佐藤が灰谷と友樹の会話に割りこんできた。 「真島が一人になりたいと行くんだよ屋上」「は?知らねえぞオレ」「知られたくねえから一人で行くんだろ」「……」 灰谷の返しにムッツ…

  • アキノワルツ 第30話 佐藤の野生の勘①

    「あれ、マジナカいねえな。連れションか?」 結局オゴらされてしまった灰谷とご機嫌の佐藤が教室に戻って来ると、真島と中田の姿はなかった。 佐藤は席につくなり袋をやぶり、メロンパンにムシャムシャとかぶりつく。灰谷は焼きそばパンの袋を慎重に開け、パンをスライドさせ袋から出すと真ん中にのっていた紅ショウガをつまみ、全体にまんべんなく行き渡らせた。 「ヘンなの。なんか妙なこだわりあるよな灰谷は」「うっせ」灰谷は大きく口を開けてかぶりついた。 二人もぐもぐとそれぞれのパンに集中していたが、しばらくして佐藤が言った。 「なあなあ灰谷、あれ、すごくなかった?」「あれ?」「真島だよ。真島のあの発言」 __いや、…

  • アキノワルツ 第29話 屋上で聞いたこと③

    「ガーッ。ざけんなチクショウ」 あ、大きな声で叫んでる。 「チクショウ。ざけんなあの女。ざけんなチクショウ。ざけんなざけんなざけんな~っ!!!!」 たいそうご立腹のご様子。ん? あれ? この声どっかで……。カラダを低く起こしてそっと下をのぞきこめば……そこにいたのは……。 中田だった! 仁王立ちでスマホをにぎりしめ、緑のフェンスに向かって叫んでいる。 「あんのバカ女!!」 そう言うと中田はスマホを地面に思いっきり叩きつけた。肩が激しく上下している。 なんだなんだ? あの中田が。パッとみ強面のヤンキー風だけどその実、面倒見が良くていつも大人で落ち着いている中田が……。 ――――よっぽどの事があっ…

  • アキノアルツ 第28話 屋上で聞いたこと②

    『高橋が言ってたんだよ。やらしいことできるって』 やらしいこと……高校生男子にとってはパワーワードだぞ。オレはこみ上げるあくびを手で押さえて耳を澄ました。 『だよな。昼休みに屋上に行けばこの子とやらしいことできるって』 ここは下からは見えないから寝てても問題ないと思うけど。みつかったらめんどくさそうな感じがする。それにしてもこの穴場を知ってるヤツが他にもいるとは…ムムム……。 「つうか相手男だろ。キモっ」「カワイイんだって。ミルハニにそっくりなんだって」「ミルハニ? 格ゲーの? 無理だろ。二次元じゃん」「マジそっくりなんだって。動画見てみろよ」 下の会話もなんか気になる……。オレは耳を澄ます。…

  • アキノアルツ 第28話 屋上で聞いたこと②

    『高橋が言ってたんだよ。やらしいことできるって』 やらしいこと……高校生男子にとってはパワーワードだぞ。オレはこみ上げるあくびを手で押さえて耳を澄ました。 『だよな。昼休みに屋上に行けばこの子とやらしいことできるって』 ここは下からは見えないから寝てても問題ないと思うけど。みつかったらめんどくさそうな感じがする。それにしてもこの穴場を知ってるヤツが他にもいるとは…ムムム……。 「つうか相手男だろ。キモっ」「カワイイんだって。ミルハニにそっくりなんだって」「ミルハニ? 格ゲーの? 無理だろ。二次元じゃん」「マジそっくりなんだって。動画見てみろよ」 下の会話もなんか気になる……。オレは耳を澄ます。…

  • アキノワルツ 第27話 屋上で聞いたこと①

    「ふ~~スッキリ」 例によって例のごとくハンカチ忘れちまったんで、ぬれた手をフリフリ、トイレを出る。まだ教室に帰るのは早いかもなあと向かったのはオレの憩いの場所だった。

  • アキノワルツ 第27話 屋上で聞いたこと①

    「ふ~~スッキリ」 例によって例のごとくハンカチ忘れちまったんで、ぬれた手をフリフリ、トイレを出る。まだ教室に帰るのは早いかもなあと向かったのはオレの憩いの場所だった。 校舎の屋上は本当は立ち入り禁止でカギが閉まってるんだけど、古い建物なんでドアノブを握って右にひねり、ガンガンガンと3回引っ張ると簡単に開いてしまう。これ、オレが発見したスクールライフハックなのだ。学校生活を乗り切るにはこういう息の抜ける場所が必要なのだ。 のだのだ。 鉄のドアを開けると背の高い緑色のフェンスに囲まれた、だだっ広いグレーのコンクリートが広がっている。カギが閉まってたってことは、もちろん誰もいない。 灰谷の事で色々…

  • アキノワルツ 第26話 アリ? ナシ? ③

    「いやぁ!灰谷がオナってんの想像しただけで萎えるわ!」

  • アキノワルツ 第26話 アリ? ナシ? ③

    「いやぁ!灰谷がオナってんの想像しただけで萎えるわ!」 ギャー~~~。ってどの口が言ってんのオレ?告白した口で言ってんの。灰谷聞いてんのに~~。 でも必死に顔は平静をキープ!!!目を開けろ!目を開けるんだ真島信よ! 「ああ、そりゃあムリだな。生理的にムリってやつだな」と納得顔の佐藤。 爆発回避!でも生理的にムリって言葉、なんかヒドすぎ……。 その直後、「悪かったな」って灰谷の声がふってきた。 ギャー~~。 心は爆死!!! 灰谷の顔見れねえぇぇぇぇ。からってわけじゃないけど目に入った中田の頬がこころなしかゆるんでいる気がする。 「ド定番なんだよな、ひそかに親友に恋するやつ」「へえ~」 もういいっ…

  • アキノワルツ 第25話 アリ? ナシ? ②

    「んじゃ真島、中田は?」 そう来たか佐藤よ。

  • アキノワルツ 第25話 アリ? ナシ? ②

    「んじゃ真島、中田は?」 そう来たか佐藤よ。 「ナシ」「お?なんで」「逆に掘り倒されてガバガバになりそう」オレはノリで答える。 中田は白い歯を見せてニヤリと笑い、「つうかオレもナシ。デカくてやわらかいのないと」と言いながらオッパイを撫でて顔をうずめるような手つきをした。 「中田~や~らしぃ~」と佐藤がはやし立てる。 「オマエら、いい加減でやめろよ」いままで静観していた灰谷があきれ顔でつぶやいた。 「佐藤、オマエあんなに混乱してたのに、なに普通に話しちゃってんだよ」 灰谷の正しい見解。 「いや~だから今朝も言ったじゃん。桜子ちゃんにBLマンガ借りたら面白くってさ」 佐藤は顔をキリッとさせ、「『男…

  • アキノワルツ 第24話 アリ? ナシ? ①

    「なあなあ真島、オレってアリ?ナシ?」 昼休みになっても佐藤は朝の話を忘れていなかった。

  • アキノワルツ 第24話 アリ? ナシ? ①

    「なあなあ真島、オレってアリ?ナシ?」 昼休みになっても佐藤は朝の話を忘れていなかった。 メシも食い終わって次の授業までのまったりタイム。弁当をたいらげ、デザートのミルクフランスを食べながらイチゴ牛乳をキメようとするオレのまわりを佐藤はチョロチョロする。 「少しだけ食わせろ」という佐藤に「これだけはやれん」と断ったからだろう。佐藤の少しは少しじゃすまねえからな。ほぼ全部だからな。ミルクフランス我いのちなり~。 「うっせえなあ。知らねえって」「ひどいわ。考えてくれたっていいじゃない。少しくれたっていいじゃない。あたしはあなたにとってなんなのよ」 佐藤のウザがらみには慣れっこのオレたちもノってやら…

  • アキノワルツ 第23話 未来は僕らの手の中

    『未来は僕らの手の中』……か。

  • アキノワルツ 第23話 未来は僕らの手の中

    『未来は僕らの手の中』……か。 オレはため息つきつつ窓の外を眺める。広いグラウンドは空っぽで土ぼこり。 一限が始まってもオレは担任・田中のメッセージが頭の中で回っていた。 未来……未来か。僕ら……オレと灰谷。僕らの、オレたちの未来はどうなるんだろう。親父が言ってたみたいに二十歳になって三人で酒なんか飲める日がホントにくるとは今のオレにはまったく想像がつかない。 そう。オレはいつも目の前の事で精一杯。オレのしたい事って……。 なんだろう~。なんだろう~。なんだろう~。 ……。……。……灰谷とツーリング……ってバカ、そういうことじゃなくてさ。 オレは……なんだろう。ホント、なんもねえなあ。中学から…

  • アキノワルツ 第22話 いつもの、いやいつもとは少しづつ違う日々。

    「なあなあ真島、あのな、オレってアリ?ナシ?」

  • アキノワルツ 第22話 いつもの、いやいつもとは少しづつ違う日々。

    「なあなあ真島、あのな、オレってアリ?ナシ?」 声を少しだけひそめて佐藤がこんな事を訊いてきた。なんだ?この急角度の切りこみ。 「へ?人として?ナシナシ」「ちっげえ~よ!真島はぁ……」というとまた声をひそめ、「オレとできんのかなあって。究極アリかナシならどっちかなあって」とすました顔で佐藤が言った。 ドびっくり!朝っぱらから佐藤がド:下(シモ)ネタを放りこんできた!ってそういう事聞いてるんだよな? 「いやさ。最近桜子ちゃんに借りてBLハマっててさ。ちょっと気になっちゃってさ。テへへ?」 佐藤は舌を出してウィンクした。カワイくない。てさてさって、なんなのこいつ。 「オマエ、どの口が言ってんだよ」…

  • アキノワルツ 第21話 登校時のルーティーン②

    夏の終わりに、買ったばかりのチャリを盗まれてからこっち、灰谷はいまだにオレを迎えに来てくれている。

  • アキノワルツ 第21話 登校時のルーティーン②

    夏の終わりに、買ったばかりのチャリを盗まれてからこっち、灰谷はいまだにオレを迎えに来てくれている。新しいチャリ買うよりバイク代の支払いにあてたほうがいいだろって。灰谷は優しい。なので、オレの特等席は健在なのだった。 「真島、感謝しろよ~。灰谷の献身に」「オマエが言うな佐藤」とオレが返せば「慣れたんだよ。ただのルーティーン」ぶっきらぼうにそう言う灰谷にほんの少しさびしくなったオレは「ルーティーン大好きA型でーす」とかぶせる。 灰谷がピタリと立ち止まった。?となるオレたち(マジサト)。 「真島、オマエ、明日から歩いて行け」と言うなり、灰谷はチャリのカゴからオレのカバンをポンと放り投げた。 オレは思…

  • アキノワルツ 第20話 登校時のルーティーン①

    朝、いつもの交差点に着き、オレの特等席(灰谷のチャリの後ろ)から降りたところで佐藤の呼ぶ声がした。

  • アキノワルツ アキノワルツ 第20話 登校時のルーティーン①

    朝、いつもの交差点に着き、オレの特等席(灰谷のチャリの後ろ)から降りたところで佐藤の呼ぶ声がした。 「マジハイ~~」 横断歩道を佐藤がものすごい勢いで走ってくる。目を輝かせ、シッポがあれば間違いなくちぎれんばかりに振っている、そんな感じ。たどり着くとゴール!とばかりにチャリの前カゴをガチャガチャと揺する。 「サトナカマジハイ。イエイイエイ。イエ~イ」「や~めろ」 灰谷の止めるのもなんのその、ご機嫌でカゴをゆさぶる。 「灰谷チーッス、真島チーッス」 連日のバイトと反動のゲームでお疲れのオレは痛むこめかみを指でぐいぐいとつまみながら言った。 「佐藤、オマエ小学生か。朝っぱらからテンション高すぎ」「…

  • アキノワルツ 第19話 帰り道の物思い

    『気をつけて。ホントにホントにホントに気をつけて』という節子の言葉を守り、安全運転を心がけながら灰谷は自宅に向けバイクを走らせていた。

  • アキノワルツ 第19話 帰り道の物思い

    『気をつけて。ホントにホントにホントに気をつけて』という節子の言葉を守り、安全運転を心がけながら灰谷は自宅に向けバイクを走らせていた。 結局、真島が友樹を開放したのは夕食をすませてから一時間後だった。友樹はニコニコとイヤな顔ひとつ見せず真島のゲームに付き合っていた。真島が可愛がるのもわかる気がする。 それにしても……真島の噂の件、あのオレをアオるような態度はなんだったのか。 『お二人、仲がいいから、真島ブラザーズなんて言われるボクとしてはちょっと嫉妬しちゃうんですよね』 嫉妬、とか言ってたけど。ただオレの反応見て面白がってるって感じもあったし。 『さっきだってボクの存在忘れちゃってたでしょ。ま…

  • アキノワルツ 第18話 二十歳になったら

    ♪フンフフン~ 鼻歌まで飛び出して、皿を洗う節子は上機嫌だった。

  • アキノワルツ 第18話 二十歳になったら

    ♪フンフフン~ 鼻歌まで飛び出して、皿を洗う節子は上機嫌だった。 となりに並び灰谷はせっせと皿を拭く。 『誰かと一緒に台所に立つっていいわね』と節子が言ったことを覚えていた灰谷は機会があれば手伝うようにしていた。 「ボクも手伝います」と友樹も申し出たが「灰谷がいれば大丈夫だって。ゲームっ!ゲームっ!」と、真島に引っ張られていった。ほどなく真島の父も帰ってきてダイニングテーブルで晩酌を始めた。 「プハー。ウマイっ。夏には夏の。秋には秋のウマさがある」 テレビCMのように美味しそうにのどをならし、ビールのコップを空けると真島の父・正彦は誰にともなくそうつぶやいた。鼻の下に泡をくっつけたまま満足そう…

  • アキノワルツ 第17話 初めて見る表情

    「ホンっトにオマエは……」 え?え?オマエは……何?

  • アキノワルツ 第17話 初めて見る表情

    「ホンっトにオマエは……」 え?え?オマエは……何? オレは灰谷を見つめて言葉の続きを待った。 ――――この顔って。ええと…。これって……もしかして呆れてる?オレ、なんかヘンな事言った? が、灰谷はそのまま何も言わずにくるりと背を向けるとドアを開け、部屋の中に入ってしまった。 な、何? なんなの。なんで「ホンっトにオマエは……」でやめちゃうんだよ。ってか何あの顔。なんかもうこいつ……みたいな表情。あんな顔、はじめて見た。何なにその思わせぶりなやつ……。オレなんかした?ええ~? なんだか胸ん中をワチャワチャさせながら部屋に入る。 「マコ先輩、コーヒーおいしいです」友樹がカップ片手に微笑んだ。 「…

  • アキノワルツ 第16話 ホントに……オマエは……。

    食事会のメニューもギョウザメインの中華に決まった。こりゃあ楽しみだぜっとオレは思ったけど、灰谷的にはどうなんだろうな。

  • 第16話 ホントに……オマエは……。

    食事会のメニューもギョウザメインの中華に決まった。こりゃあ楽しみだぜっとオレは思ったけど、灰谷的にはどうなんだろうな。 「そうだ、おかず足りた?」母ちゃんが聞く。「あ~灰谷が唐揚げバクバク食うからさ~」とオレがボヤけば、「ウマいからな節子の唐揚げ。世界で一番ウマイ」灰谷がさらりとつぶやいた。「もう~灰谷くんったら~」母ちゃんの顔がパッと耀く。 もう~そういうとこ。そういうのを、たらしてるって言うんだぜ。 「早くお婿に来て来て~」「じゃあ高校卒業したら」小さく笑いながら灰谷が返す。 おっ、灰谷がノッた。 「来て来て~。マコ、あんたからもお願いして」「だからマコやめろって。なあんでオレがお願いすん…

  • 第16話 ホントに……オマエは……。

    食事会のメニューもギョウザメインの中華に決まった。こりゃあ楽しみだぜっとオレは思ったけど、灰谷的にはどうなんだろうな。 「そうだ、おかず足りた?」母ちゃんが聞く。「あ~灰谷が唐揚げバクバク食うからさ~」とオレがボヤけば、「ウマいからな節子の唐揚げ。世界で一番ウマイ」灰谷がさらりとつぶやいた。「もう~灰谷くんったら~」母ちゃんの顔がパッと耀く。 もう~そういうとこ。そういうのを、たらしてるって言うんだぜ。 「早くお婿に来て来て~」「じゃあ高校卒業したら」小さく笑いながら灰谷が返す。 おっ、灰谷がノッた。 「来て来て~。マコ、あんたからもお願いして」「だからマコやめろって。なあんでオレがお願いすん…

  • アキノワルツ 第15話 灰谷の地蔵化

    「灰谷く~ん。座って座って」 居間のテーブルの上に料理本やらレシピノートやらを広げた母ちゃんがソファから嬉しそうに手招きする。

  • 第15話 灰谷の地蔵化

    「灰谷く~ん。座って座って」 居間のテーブルの上に料理本やらレシピノートやらを広げた母ちゃんがソファから嬉しそうに手招きする。久子母ちゃんの婚約が嬉しくてたまらない母ちゃんは何日も前からあれこれと食事メニューの案を練っていた。 「久子さんとの食事会のこと、ちょっと相談させて」「はあ」 母ちゃんの向かいのソファに灰谷が腰を下ろす。オレは灰谷側のソファの肘掛けにケツを半分だけのっけた。 「和洋中どれがいいかしら~。久子さんはイタリアン好きよね。お相手もお好きかしら」「さあ?一度しか会ったことないんでオレ」「あら、そうなの?」「はい」「じゃあ、わからないわね~」「わからないっすね」 灰谷は気持ちいつ…

  • アキノワルツ 第14話 隠されていたもの

    「しっかし、モノの少ない部屋だな」 一人になった友樹はあらためて部屋をぐるりと眺め、つぶやいた。

  • アキノワルツ 第14話 隠されていたもの

    「しっかし、モノの少ない部屋だな」 一人になった友樹はあらためて部屋をぐるりと眺め、つぶやいた。 ベッド、勉強机、テレビの載ったAVラック、食事ののった折りたたみ机、家具はそれだけで全体にがらんとした印象だった。 ふらりと立ち上がり、クローゼットの扉を躊躇なく開け、中を眺める。 「服、少なっ。ボクの百分の一じゃん。逃亡犯かよ。うわっ、ダサッ」 扉についた鏡に映る自分のジャージ姿を見てつぶやく。 「スポーツブランドを私服にするのってなんかなあ~。趣味じゃないんだよな」 クローゼットの扉をしめるとゲームやマンガが整然と並んだAVラックを眺め、机の引き出しを下から順に開けた。プリントの入ったファイル…

  • アキノワルツ 第13話 一触触発?

    真島がいなくなると部屋にピンと張り詰めた空気が流れた。 パリパリパリパリと灰谷がレタスやキュウリを噛む音だけが響く。しばらくして友樹が口を開いた。

  • アキノワルツ 第13話 一触触発?

    真島がいなくなると部屋にピンと張り詰めた空気が流れた。 パリパリパリパリと灰谷がレタスやキュウリを噛む音だけが響く。しばらくして友樹が口を開いた。 「言わなかったでしょ?」 「……」 灰谷はバリバリと野菜をかみ砕いた。 バリバリバリバリ。 「灰谷先輩、あの時ボクに言いましたよね」 あの時……。真島についての悪質な噂を聞いた時の事か。 「『真島がそういうヤツかどうか、一緒に働いて自分の目で確かめてくれ。あいつ、いいヤツだよ。オレが保証するっ』って」 よく覚えてるな。 「マコ先輩はステキな人ですよ。灰谷先輩の言葉が、一緒にいてよくわかりました。ボク、大好きだなあ」 バリバリバリ。 つうか、なんなん…

  • アキノワルツ 第12話 あおり

    「夏休みにも来てましたよ、お店に。他校の女子たち。ねえ~灰谷先輩」

  • アキノワルツ 第12話 あおり

    「夏休みにも来てましたよ、お店に。他校の女子たち。ねえ~灰谷先輩」 静かに微笑み灰谷を見つめる友樹。 「そうだっけ」と返した灰谷に、「来てたじゃないですか女の子たち。ボク、休憩中に店の前で捕まって取り囲まれてあれこれ聞かれたんですよ」と友樹が澄ました顔で言う。 先程のやり取りを知らない真島は「ほほう~。相変わらずモテるな灰谷~」とオムライスを頬張りながらちょっと誇らしげな様子だった。 「覚えてねえな」そう返すと灰谷は友樹に鋭い視線を投げかけた。 それをさらりと受け流して友樹がさらに明るい声で続ける。 「ホントに覚えてないんですか?灰谷先輩」 「ああ」ぶっきらぼうに灰谷は返す。 「灰谷、オマエ、…

  • アキノワルツ 第11話 スモーキー・ロビンソンとマコトモ

    「友樹、どんどん食えよ」「いただきま~す」「唐揚げ、ほれ唐揚げ食べろ。うまいから。そんでポテサラな」 真島は友樹の皿にポテトサラダを盛りつけた。

  • アキノワルツ 第11話 スモーキー・ロビンソンとマコトモ

    「友樹、どんどん食えよ」「いただきま~す」「唐揚げ、ほれ唐揚げ食べろ。うまいから。そんでポテサラな」 真島は友樹の皿にポテトサラダを盛りつけた。 「うんま~い!」唐揚げを口に入れた友樹が声をあげる。「マコ先輩のお母さん、料理お上手ですね」「だろだろ~って、なんだよ友樹、急に。マコやめろって」「いや、マコってなんかカワイイなと思って。あっポテトサラダも美味しい」「だろだろ。っていやいやカワイイもやめろよ。かわいくねえし。なあ灰谷」 真島の向いに座った灰谷はスマホの画面を見ながらオムライスをモリモリ頬張っている。 「今日のオムライスどうよ」「ウマい」「食事中に行儀悪いなあ。さっきから何見てんのそれ…

  • 『アキノワルツ』を読んで下さっている方へ

    『ナツノヒカリ』続編 『アキノワルツ』、読んでくださってありがとうございます。 取り急ぎお詫びしなければならない事があります。 本日5月10日(水)『アキノワルツ』10話の更新を済ませた後、何気なく記事一覧のチェックをしていた所、『アキノワルツ』第5話の更新がされていなかったことに気がつきました。 本来なら4月29日に更新されたいたはずのものです。 ブログをFC2からはてなブログに移す際、うっかり落としてしまったようです。 先程4月29日の日付で更新しました。 ↓ 下記リンクからお読みいただけます。↓ ku-ku-baku-baku.hatenablog.com お話はなんとか繋がっていなくも…

  • アキノワルツ 第10話 マコ先輩

    「服、大丈夫でしたか?灰谷先輩」 真島がいなくなると友樹が灰谷に話しかけた。 「ああ。大丈夫」 盛大にぶちまけたと思ったが被害は案外少なかったようだ。服よりもベッドカバーの方が濡れている。まあでもこれは自業自得だ。 濡れたところを避け、灰谷はまたベッドに寝転がった。 「灰谷先輩。マコ先輩ってカワイイですよね」 一人対戦モードでゲームをしながら友樹が言う。革ジャンの画像を見つめていた灰谷は首をひねる。 ……カワイイ?『カワイイ』か?『カワイイ』と『マコ』は真島の地雷なんだがな。 「見た目もですけど中身がっていうか。そう、なんかまっすぐでロマンチストなんですよね」 そんなかな、あいつ……。ああ。ま…

  • アキノワルツ 第10話 マコ先輩

    「服、大丈夫でしたか?灰谷先輩」 真島がいなくなると友樹が灰谷に話しかけた。 「ああ。大丈夫」 盛大にぶちまけたと思ったが被害は案外少なかったようだ。服よりもベッドカバーの方が濡れている。まあでもこれは自業自得だ。 濡れたところを避け、灰谷はまたベッドに寝転がった。

  • アキノワルツ 第10話 マコ先輩

    「服、大丈夫でしたか?灰谷先輩」 真島がいなくなると友樹が灰谷に話しかけた。 「ああ。大丈夫」 盛大にぶちまけたと思ったが被害は案外少なかったようだ。服よりもベッドカバーの方が濡れている。まあでもこれは自業自得だ。 濡れたところを避け、灰谷はまたベッドに寝転がった。 「灰谷先輩。マコ先輩ってカワイイですよね」 一人対戦モードでゲームをしながら友樹が言う。革ジャンの画像を見つめていた灰谷は首をひねる。 ……カワイイ?『カワイイ』か?『カワイイ』と『マコ』は真島の地雷なんだがな。 「見た目もですけど中身がっていうか。そう、なんかまっすぐでロマンチストなんですよね」 そんなかな、あいつ……。ああ。ま…

  • アキノワルツ 第9話 ドキドキ オレはいま確かに生きている

    ドカドカドカドカ。 オレは足音を立てて階段をかけ降りた。降りきったところで立ち止まる。心臓に手を当てるとバクバクいっている。

  • アキノワルツ 第9話 ドキドキ オレはいま確かに生きている

    ドカドカドカドカ。 オレは足音を立てて階段をかけ降りた。降りきったところで立ち止まる。心臓に手を当てるとバクバクいっている。 なんなのなんなのあれ。今の一連のあれなんだったの? そりゃ確かにペプシのペット振ったのも、先にくすぐったのもオレだけどさ。いつものノリっちゃノリだし。 それが……。 気がついたら両手首ぎゅっと握られて上から見下ろされてて顔があんなに近くにあって。真剣な顔で、なんか見つめられてて。 あいつ……なんであんな男前なんだよ。ありゃあ女子はキャーキャー言うわ。男のオレだってこうなんだから。つうかなんで見つめてたのオレのこと。え?オレがドキドキするのを見る復讐?いや、そういうんでも…

  • アキノワルツ 第8話 なに意識してんだよ。

    なに意識してんだよ……。 なんだか胸がむずがゆいような気持ちがこみ上げた。 灰谷は真島の手首をつかんだまま顔の横から頭の上に上げ、バンザイの格好をさせた。そして両手でつかんでいた手首を片手だけでつかみ直した。男にしては細めの真島の手首は灰谷の大きな手のひらに収まった。 急に頭の上で両腕をバッテンに拘束され、上半身がガラ空きになった真島の目に戸惑いの色が浮かんだ。

  • アキノワルツ 第8話 なに意識してんだよ。

    なに意識してんだよ……。 なんだか胸がむずがゆいような気持ちがこみ上げた。 灰谷は真島の手首をつかんだまま顔の横から頭の上に上げ、バンザイの格好をさせた。そして両手でつかんでいた手首を片手だけでつかみ直した。男にしては細めの真島の手首は灰谷の大きな手のひらに収まった。 急に頭の上で両腕をバッテンに拘束され、上半身がガラ空きになった真島の目に戸惑いの色が浮かんだ。 次の瞬間……。 「オラッ!」灰谷は空いた方の手ですばやく真島の脇をくすぐった。 「ひゃっひゃっひゃっ」「オラオラッ」「やめろっ。やめろっ…ひゃひゃひゃひゃひゃ…」 真島はカラダを折って足をバタつかせる。 「……モレる…モレる…」「モラ…

  • アキノワルツ 第7話 セクハラ上等?

    「セクハラってのはな……こういう事だっ!」 叫ぶなり真島は全身の力を一気に抜き、鯨がローリングするようにカラダごとドスンと灰谷の上に倒れこんだ。

  • アキノワルツ 第7話 セクハラ上等?

    「セクハラってのはな……こういう事だっ!」 叫ぶなり真島は全身の力を一気に抜き、鯨がローリングするようにカラダごとドスンと灰谷の上に倒れこんだ。 「イタっ!」「からの~っ」 真島は素早く起き上がると灰谷の両手首をつかみ、胸の前でバッテンにさせると器用にクルリとカラダを返し、うつ伏せにさせ、その背にドカッと腰を下ろした。あまりの早ワザに灰谷は身動きが取れなかった。 「ヘイヘイ~セクハラ上等~。いいケツしてんな灰谷く~ん」真島は灰谷の尻をペチペチと調子に乗って叩く。 「オマっ……何……ウワッ」 真島の指が灰谷の脇をくすぐりにかかった。 「ヘイヘーイ」「やめっオマ、やめっ……やっ……やっ……」 真島…

  • アキノワルツ 第6話 小学生か!

    「野郎ども、天国の門にキッスしな!」 友樹が甘いロリ声を作り、自身の操るキャラクター、ミルハニの決めセリフを叫んだ。 「うお~ミルハニ総攻撃~」 キャラチェンジしてからどうにも勝てなくなったらしい真島の焦った声を聞いて、灰谷は再びスマホから顔を上げた。

  • アキノワルツ 第6話 小学生か!

    「野郎ども、天国の門にキッスしな!」 友樹が甘いロリ声を作り、自身の操るキャラクター、ミルハニの決めセリフを叫んだ。 「うお~ミルハニ総攻撃~」 キャラチェンジしてからどうにも勝てなくなったらしい真島の焦った声を聞いて、灰谷は再びスマホから顔を上げた。

  • アキノワルツ 第5話 条件付きの原付バイク

    「さ、カラダも暖まったところで、もう一回戦いくぞ~」真島が腕をブンブン振り回す。「負けませんよ~」 真島にワシャワシャ撫でられてクシャクシャになってしまった髪を整えながら友樹がゲームのコントローラーを手にした。

  • アキノワルツ 第5話 条件付きの原付バイク

    「さ、カラダも暖まったところで、もう一回戦いくぞ~」真島が腕をブンブン振り回す。「負けませんよ~」 真島にワシャワシャ撫でられてクシャクシャになってしまった髪を整えながら友樹がゲームのコントローラーを手にした。 ♪~ ♪~『ファイト!!』 二人がプレイし始めたのはキャラクター同士が技を出しながら対戦する格闘ゲームだった。真島がここのところハマっており、部屋に遊びに来たものは誰かれ構わず相手をさせられている。 「灰谷、オマエもこの後やろうぜ」「ああ、オレいいわ」 灰谷はポケットからスマホを取り出し、ベッドにゴロリと横になる。 「なんでだよ~!」 少しふくれたような真島の声に「労働して疲れてんだよ…

  • アキノワルツ 第4話 真島ツインズ

    ドスン。 友樹の隣りに乱暴に腰を下ろすと、真島は「ほらよ、ピザまん」と宙にポイッと放り投げた。

  • アキノワルツ 第4話 真島ツインズ

    ドスン。 友樹の隣りに乱暴に腰を下ろすと、真島は「ほらよ、ピザまん」と宙にポイッと放り投げた。 「うわっ」 あらぬ方に飛んでいったピザまんを友樹がかろうじてキャッチする。 「もう~……テレちゃって」「違うわ!」 テレ隠しもあるのだろう早速パクつきながら「あ~ウマいウマい。灰谷ゴチな」真島が礼を言う。 「灰谷先輩、ごちそうさまです」友樹も灰谷に向かって小さく頭を下げた。 ほんのちょっとした事でも必ずきちんと礼を言うよな真島は、と改めて思いながら「おう」と返し、灰谷はベッドに腰を下ろした。

  • アキノワルツ 第3話「仲、いいっすね」

    「何そんなに驚いてんだよ。バイトの代打センキューって」「おっ、おう」「ビビっちゃってカ~ワイ~」 そう言うと真島は履いていたジャージのズボンで濡れた手をぬぐった。 「ビビってねえわ。しっかり手、拭いてこい。小学生か」「小学生じゃねえわ。灰谷の潔癖」「潔癖じゃねえわ」 いつものやりとりを交わすと、真島は「おっ何それ」と目ざとく灰谷の手にしたコンビニの袋に目を止めた。

  • アキノワルツ 第3話「仲、いいっすね」

    「何そんなに驚いてんだよ。バイトの代打センキューって」「おっ、おう」「ビビっちゃってカ~ワイ~」 そう言うと真島は履いていたジャージのズボンで濡れた手をぬぐった。 「ビビってねえわ。しっかり手、拭いてこい。小学生か」「小学生じゃねえわ。灰谷の潔癖」「潔癖じゃねえわ」 いつものやりとりを交わすと、真島は「おっ何それ」と目ざとく灰谷の手にしたコンビニの袋に目を止めた。 「ああ、これな。肉……くすぐってえって」灰谷は身をよじった。 袋の中身をのぞき込んでいた真島が、肩にアゴだけのせ、首を振ってカクカクさせたからだ。こういうちょっとしたジャレを真島は最近してくるようになった。 「ホントオマエ、小学生か…

  • アキノワルツ 第2話 オニツカタイガー 肉まん 青ジャージ

    「灰谷くんいらっしゃい。お疲れ様」 真島の母、節子が玄関先で迎えてくれた。お陽さまみたいないつもの笑顔だ。 「チイッス。これ」「あら、何?」差し出されたコンビニの袋を受け取り、節子が中をのぞきこむ。 「新商品のチョコレートまんとカスタードまんっす。おじさんとどうぞ」「あら~いつもありがとう」とさらにニコニコしながら「そうそう友樹くんも来てるのよ」と節子は付け加えた。

  • アキノワルツ 第2話 オニツカタイガー 肉まん 青ジャージ

    「灰谷くんいらっしゃい。お疲れ様」 真島の母、節子が玄関先で迎えてくれた。お陽さまみたいないつもの笑顔だ。 「チイッス。これ」「あら、何?」差し出されたコンビニの袋を受け取り、節子が中をのぞきこむ。 「新商品のチョコレートまんとカスタードまんっす。おじさんとどうぞ」「あら~いつもありがとう」とさらにニコニコしながら「そうそう友樹くんも来てるのよ」と節子は付け加えた。 ……だろうな。 玄関に二足、仲良く並んだオニツカタイガー。真島が履いているのを見て友樹も欲しがり、二人おそろいになった白いスニーカー。 バイトの後輩である友樹を、真島が可愛がっているのもこの一ヶ月半の小さな変化の一つだった。 「い…

  • アキノワルツ 第1話 秋の香り

    赤信号でバイクを止めた灰谷はその長い足を持て余し気味に伸ばした。夏の終わりに乗りはじめた原付バイクは今では立派な足がわりになっていた。 「寒(さむ)っ」灰谷はつぶやき、カラダをぷるりと震わせた。 ーーあれから約一ヶ月半が経つ。 表面上は相も変わらず、夏休み前とほぼ同じ日々が続いていた。

  • アキノワルツ 第1話 秋の香り

    赤信号でバイクを止めた灰谷はその長い足を持て余し気味に伸ばした。夏の終わりに乗りはじめた原付バイクは今では立派な足がわりになっていた。 「寒(さむ)っ」灰谷はつぶやき、カラダをぷるりと震わせた。 ーーあれから約一ヶ月半が経つ。 表面上は相も変わらず、夏休み前とほぼ同じ日々が続いていた。 学校のある日は自転車で迎えに行き、週に三日はコンビニで一緒にバイト。放課後は真島家に入り浸っている。 小さな変化といえば、真島のバイト時間が増えたこと。バイクの代金を稼ぐためだ。早く両親に返し終わって、好きにバイクに乗りたいとバイトに精を出しまくっている。だがそんな真島もさすがに五連勤となるとしんどいらしく、ウ…

  • アキノワルツ 第00話

    このお話は拙作『ナツノヒカリ』続編となっております。 こちら↓を読んでからどうぞ。まあちょっと長すぎるんですけど……。 ku-ku-baku-baku.hatenablog.com

  • アキノワルツ 第00話

    「げえ~マジかよ~~」 スマホチェックしていた真島がそう言って机につっぷした。 真島・灰谷・佐藤・田中、略してマジハイサトナカ。いつものメンツで学校の昼休み、お腹も満たされ、まったりしている時の事だった。 「なになにどした? 真島?」 好奇心旺盛な佐藤が目をキラキラさせて声をかける。 「バイト先の店長から。今日もシフト入れないかって」 真島は顔も上げずにそう続ける。 「よっ!勤労少年!」「よっ!副店長!」 早速サトナカから声が飛ぶ。 「ぐわ~いやだー。ゲーム~。ゲームして~~」真島は手足をバタバタさせた。 「子供か!自分で言ったんだろ。空いたシフト全部入れますって」 佐藤のめずらしいド正論だっ…

  • 「城島と槙野」全6話 お礼とあとがき

    「城島と槙野」全6話、アップ終わりました。読んでくださった方、本当にありがとうございます。「ナツノヒカリ」からかなり時間が経ってしまったので城島?え?槙野?という方もいらっしゃったかもしれません。城島(本当の名は槙野)と本当の城島が出てくるのは下記の話数になります。14/16/22/23/25/26/30/31/36/42/54/55/70話。いや、それ連載前に教えといてよという感じですが、今更ながら思いついたので調べてみました。お時間のある時に読み返して頂ければより楽しめるかもしれません。槙野については元々ただの真島の初体験の相手として考えたのに作中ブツブツと暗いことを勝手に語りだし、それが…

  • 城島と槙野6

    「なあ。子供って生まれるのいつ?」運転する城島の隣りで槙野が言う。「ん?ああ今3ヶ月だから春だな春」「いいねえ。名前つけさせてよ」「はあ~?なんでだよ」「生まれるのって男?女?まだわかんない?」「あー女。娘だよ。絶対カワイイ」早くも親バカを発揮してか城島の頬が緩んだ。「女か……」槙野が黙りこんだ。信号待ちで車を停めると槙野を見て城島が言った。「オマエ……なんだその不穏な沈黙は。あ~言っとくけど娘に手を出したらブッ殺すからな」「いやいや名前を。それにオレ女は……そっかその手があったか。オマエが義理のお父さんってのもいいな」「ふっざけんな。同い年の婿なんていらねえぞコラ」「でもな、オレ女イけるかな…

  • 城島と槙野5

    「オマエがあの時、帰ってこなけりゃ、オレはオマエのそばで友達として笑ってられたのに。オマエがあんなことさえしなけりゃ、結婚しても子供ができたって聞いてもただおめでとうって言ってやれたのに。なんで……」ただの八つ当たりだとはわかっていたが、槙野は言わずにはいられなかった。何度も何度も考えた。あの日、あの日のあの事さえなければオレはこんなにもとらわれることはなかったのではないか、と。「あの時はオマエが愛しくてたまらなかった。こんなオレのことを全身で思ってくれてるオマエが。気がついたらああしてた。でもそれは……刹那の夢だ」槙野は唇を噛み締めた。そうでもしないと涙がこぼれ落ちそうだった。「ごめん。でも…

  • 城島と槙野4

    大学を卒業、就職し、それから三年がすぎた頃、城島は結婚した。その頃にはお互い忙しく、高校時代の友人を交えて年に数回会うか会わないかぐらいになっていた。城島は槙野にも結婚式の招待状を送ってきた。槙野は出席した。「こいつ、高校からの親友で槙野。オマエの一個前の同棲相手」槙野から見れば似合わないタキシードを着た城島は、笑顔でそう嫁になる女に紹介した。あれは城島の中では既になかった事なのだ。その日、二人暮らしたアパートの部屋で槙野は泣いた。そして数日後、アパートを出た。それからの槙野の日々は心に波風の立つことのない、ある意味平和な、そして単調な日々だった。仕事をし、たまに適当な遊び相手を探し楽しむ。そ…

  • 城島と槙野3

    高校を卒業し、それぞれ大学に進んだ城島と槙野は高校生の頃のように毎日会うことはなくなった。だが、それでも月に何度かは会い、遊び続けていた。城島には隠していたがその頃の槙野の生活はかなりすさんでいた。ネットを通して知り合った不特定多数の男女と毎日のように関係を結んだ。城島への想い。セクシュアリティーへの迷い。若さゆえの好奇心。若くルックスも良かった槙野が相手に困ることはなかった。時には危ない目にあったりもしたが、なんとかギリギリで切り抜けていた。大学生活も2年を過ぎた頃、城島が槙野の部屋に転がりこんできた。家庭の事情で生活費を自身で稼がなくてはならずバイト漬けだった城島が家賃滞納でアパートを追い…

  • 城島と槙野2

    「城島のやつ……ったく……。あの頃はガキだった。何が第三の目だ」槙野は額を指でこすった。そしてポケットからタバコを取り出し一本くわえるとライターをこすった。ーー点かない。親指にギュッと力を入れてこする。小さな火花がチッチッと散った。チッチッ。チッチッ。点かない。ライターを逆さにしてからまたこする。点かない。槙野はライターをこすり続けた。ーーそうだな。あの時の城島のライターが放つ小さな火花がオレの目の中で弾けて焼きついて、それでこんな風になってしまったんだ。ただそれだけだ。あいつがイタズラを仕掛けて、それであんな風にオレを見て笑ったから。だから。叶わないから願い続けるんだ。こんな想いはただの感傷…

  • 城島と槙野1

    少年のいなくなった部屋で城島は、いや、自らを城島と呼ばせていた男、槙野は一人座りこんでいた。頭はズキズキと痛み、吐く息は酒臭かった。--あれから。頼まれたとはいえ少年を自分の意に添わない形で抱いてから。いや槙野の心情からすれば犯してから家を出て目についたバーに入り酒をしこたま飲んだ。閉店時間で追い出されるとネットカフェに入り、狭いブースでカラダを丸め死んだように眠った。そして朝の10時、部屋に帰ってきた。少年はすでにいなかった。テーブルの上に槙野が用意しておいた痛み止めはなくなっていたし、軟膏のチューブには使った形跡があった。昨夜の事を生々しく思い出した。そして渦巻いていた思いが胸の中で駆け巡…

  • ナツノヒカリ お礼とあとがきのようなもの。

    ナツノヒカリ全100話終了しました。最後までお付き合い下さった方、本当にありがとうございました。どこか少しだけでも楽しんで頂けていたなら嬉しいのですが。我ながら拙くてイヤになるのですが、これが今の実力と挫けそうになるのを騙し騙し書き続けました。そういう時、拍手の数やランキングサイトのクリック数、コメントがとても励みになりました。本当に本当にありがとうございました。それにしても100話。長い。長すぎる。真島が告白するまでに90話もかかってしまいました。こじらせすぎだぞ真島。何度ツッコんだかわかりません。本当に。真島と灰谷をくっつけたい一心で書いてきたのですけれど。最後の方で少しだけイチャイチャし…

  • ナツノヒカリ 100

    「真島。真島」あ。オレは緩みそうになる頬を引き締める。「真島ー起きろ~遅刻すんぞ」オレを呼ぶ声に聞き惚れる。もうちょっと聞いていたい。「信~起きなさ~い」遠くで母ちゃんの声もする。「お~い。起きてんだろ。足、ピクついてんぞ」バレてる。「真島~」いやいや、逆に起きれねえでしょ。寝たフリ寝たフリ……。ん?気配がしない?呆れて下に行っちゃったとか?と思ったら、耳元でささやかれた。「おはようマコ」うおっ。オレは耳を押さえて飛び起きた。「やっぱ起きてんじゃねえか」制服姿で笑う灰谷だった。あ~いつにも増して男前。この顔好きだ。って再確認してどうするオレ。つうか、確実に弱い所を攻めてくるのやめてくれよ。マコ…

  • ナツノヒカリ 99

    ……課題が終わった。夏休み最終日の明け方に。最後の方はサトナカハイに手伝ってもらって、どうにかこうにか無理矢理のやりで。そのまま寝オチて、目覚めれば午後。お昼もとっくに過ぎていた。「さーこれで自由だぞ真島」中田がオレの肩を叩く。「おう。サンキュー。みなさんのお陰です」「良かったな真島くん。サトナカハイに、特に佐藤によ~くタカユキするようにな」「ウッス!」「今日、これからどうしよっか?」灰谷が言う。「プール。プール行こうぜ。で、カラオケ。カラオケ行こうよ」佐藤が提案する。「つうか腹減らね、その前に何か食わない?」なんて話していたら中田のスマホが鳴った。「もしもし……ああ……いるけど……終わったよ…

  • ナツノヒカリ 98

    「あ~もう~飽きた~。飽きたよ中田~」短期集中課題デーも二日目を迎えて、さすがにシンドくなって来た。佐藤の言うとおりだった。飽きた。とにかく字を書くのに飽きた。今日までに終わらせたい、いや、終わらせる、そんな気持ちで昨日、サトナカが帰った後も頑張って、なんとか半分近くは終わったけれど。残り後半分……。コレを今日中にやり切って明日一日空けるのは難しそうだった。つうか、提出日までに間に合うかどうかも怪しい。う~。オレも煮詰まっていた。「んじゃあ、こういうのは?今まで隠してた秘密を一人一つずつ打ち明ける」中田が言い出す。「何それ?」「お遊びだよ。つまんねえんだろ。おもしれえじゃん」秘密……。「ほいじ…

  • ナツノヒカリ 97

    長渕聞いたりダラダラ話しながら課題やって、休憩つってお菓子食ったり。母ちゃんが作ってくれたミートソース食ってカレー食って、あっという間に一日が終わってしまった。灰谷と二人、帰るという佐藤と中田を玄関先で見送る。「じゃあまた明日な~」「んじゃな、真島、もうちっと頑張れよ」中田がオレの肩を叩く。「おう。頑張る」「ダーリーン頑張って~」「あいよダーリン」「灰谷、真島のケツ叩けよ」「お尻ペチペチだ~」「わかってるって」「帰り気をつけてな」「ウーイッス」泊まって行けばと誘ったのだが、課題に疲れたのか、明日の追いこみを考えてか、サトナカは帰って行った。「灰谷は、泊まってく…だろ」「おう。当然。ケツ叩かねえ…

  • ナツノヒカリ 96

    「真島~てめえ~ぶっ殺ーす」佐藤に首を締められた。「佐藤、ギブ。ギブ。ロープロープ」「オマエ~課題丸投げしてったろ。確信犯だろー」案の定、朝起きれなくて、灰谷と遅い朝メシを食べていた所にサトナカがやって来た。「いやいや違うって」「違わねえ」「なんだよダーリン。許してくれよ。これからタカユキするからさ」「よし、しろ。メッチャしろ。タカユキしまくれ」「まあ、とりあえず卵焼き食え」オレは佐藤の口に卵焼きをツッコんだ。「うぐっ。……ウマイ!真島の母ちゃん最高」「あら~ありがとう佐藤くん」台所で大きな鍋の中をお玉でかき回しながら母ちゃんが言った。「オッス真島」中田がオレの頭をポンと叩いた。「おう中田」「…

  • ナツノヒカリ 95

    久しぶりに灰谷と随分長い事、話しこんでしまった。「もう寝ないと明日起きれねえな。真島、オマエ疲れたろ?」「いや、オレは結構ダラダラしてたから」「そっか。オレはもう、ファミレスで課題やんのに頭使って、オマエ探すのにチャリダッシュして。あー」灰谷が布団の上に大の字になった。「ワリぃ」「ワリぃと思うんなら、課題ダッシュな」「ん?ああ」「まあ大体終わってるから、オマエはほぼ写すだけだけど。かなり量あるからな。手が死ぬぞ」「うん。あ、オレ、一応サトナカにLINEしとくわ」「おう」オレはサトナカにLINEを送ると、改めて灰谷からのメッセージに目を通した。「つうかこれなんだよ」「何?」「『月はキレイだ。ドッ…

  • ナツノヒカリ 94

    「真島、ちょっと話さねえ?眠い?」「ううん。何?なんかあんの?」「うちの母ちゃんなんだけどさ」灰谷が布団の上であぐらをかいた。「久子母ちゃん?」「うん。なんか、急に会社辞めて自分で事業始めるとか言い出してさ」「お!いいじゃん。仕事できるんだし。そういう道もあるよな」「ん~。まあ、それは別にいいんだけどさ……」中々に口が重い。なんだろう。「……それでな。結婚するとか言い出して」「結婚!」これはきちんと聞かないと、と、オレはベッドの上に起き上がった。「まあ、パートナーっていうか。そういうのができたのは良いと思うんだけどさ」「え~いいじゃんいいじゃん。オマエの母ちゃん、カッコイイし。あの母ちゃんが認…

  • ナツノヒカリ 93

    「ふわぁ~」真島が大きなあくびをした。「眠い?」「あ~なんか家帰ってきたら途端に眠い。タオルケット~」「んじゃオレ帰るわ。また明日な」「え?帰んの?」真島は本当に帰っちゃうの?とでも言うようなひどく無防備な顔をした。こんな顔を見るのは長い付き合いで初めてかもしれない。どちらかと言えば、今までは、え~泊まるのかよ~って感じだった気がする。まああれも気持ちを隠すため、だったのかも知れない。カワイイ……と思わなくもない……。いやいや。流されるなオレ。でもな……。灰谷は言った。「泊まって欲しいか?」「え?…いや。帰れ帰れ。そういうんじゃねえし」「泊まってもいいか」「いいよ。ムリすんなよ」真島は灰谷に背…

  • ナツノヒカリ 92

    食事も済んでオレの部屋に灰谷と二人、上がってきた。「あ~タオルケット~」オレはベッドに飛びこみタオルケットを抱える。「いや、オレ、タオルケット大好きなんだってわかったわ」「なんだそれ」「こうやって指で挟んでスリスリしながら寝るのが最高」「なんだそりゃライナスか」 「ライナス上等」「お、そうだ真島、このダンボール」灰谷が窓際に置かれた灰谷行きとマジックで書かれたダンボールの側に立って言う。「なんかすんげえ増えてるんだけど」「いやあ~まあ、いいじゃねえか。読め読め。面白いの入れといたから」「オマエが読みたいやつだろ」「まあな~」「しょうがねえなあ」灰谷が机の前の回転イスに腰掛けた。「それより真島、…

  • ナツノヒカリ 91

    「ただいま~」オレは玄関のドアを開けて言った。台所から母ちゃんが走って来た。「おかえり信」当たり前じゃない当たり前、だった。ありがとうをこめてオレは言った。「ただいま」なんだかテレくさかった。「あら、あんた日に焼けたわね」「え~?日焼け止め塗ってたんだけどな」「ウソ。かなり焼けてるわよ」「そうかな。これ、アイスとプリン。おみやげ」「あら、ありがとう」「こんばんは」灰谷が挨拶した。「いらっしゃい灰谷くん。オムライス、すぐできるからね」「ごちそうさまです」「あ、でもその前に二人、お風呂入ってきたら」「え?」「沸かしてあるから」「じゃあ灰谷先入れよ」「いや真島入れよ」「いっしょに入ればいいじゃない」…

  • ナツノヒカリ 90

    ズビーッ。トイレから灰谷が持ってきてくれたトイレットペーパーでオレは鼻をかんだ。「きったねえな~」「しょうがねえだろうが……」泣きすぎたオレの声は少し枯れていた。オレたちは壁を背にして並んで座っていた。「オマエが……」また涙がこみ上げそうになったのを必死でこらえた。「……ヘンな事、言わすから」「おう」「はぁ~」「ため息つくな」「つくわ!……つうかなんでわかったんだよ」「あ?」「ここ」「さあな。テレパ……」「電波系かっつうの」灰谷は静かな声で言った。「オマエが呼んでる気がしたんだよ。んで……オレが、オマエに……会いたいと思ったんだよ。したら、わかったんだよ」会いたい……灰谷がオレに?灰谷もそう思…

  • ナツノヒカリ 89

    「真島てめえ、オレを走らせやがって」ドアを開けて入って来たのは、汗だくの灰谷だった。「なんで」「あ?」「なんでここってわかった。オレ、誰にも言ってないのに」「呼んだだろ」「は?」「テレパシー飛ばしたろ」「…何言ってんだよ」「灰谷。灰谷。灰谷って呼んだだろ」「つっ……」灰谷の顔を見たら涙がこみ上げた。「アホか!」泣いちゃダメだ。灰谷はオレの隣りにドスリと腰を下ろした。「あ~疲れた~。なんか飲み物くれ」オレはクーラーボックスから水のペットボトルを出して渡した。ゴブゴブと飲んで灰谷はむせた。「なんだこれ、ヌルっ」「しょうがねえだろ。冷蔵庫ないんだから」部屋をくるりと見渡して灰谷が言った。「え~。ああ…

  • ナツノヒカリ 88

    城島さんの部屋のマットレスの上でオレは冷えたアメリカンドッグをかじった。公園のベンチで食べようと思ったけど、なんだか食欲が沸かず。無理やりサンドイッチを水で流しこんで帰って来た。腹はグゥ~って鳴るんだけど、なんだかね。あそこのアメリカンドッグはウマイけど……。さすがに食べすぎて飽きてきた。置いといてもしょうがないんで惰性で食べる。コンビニのメシ、どうもなあ~。オムライスもそうだけど、母ちゃんの料理が食べたいと思った。あったかい物食べたいなあ。炊きたてのご飯に甘い卵焼きとか。あ~目玉焼きでもいいやこの際。はあ~。つまんねえなあ。一人でやれる事はやったような気がしている。実際なんにもしてないんだけ…

  • ナツノヒカリ 87

    「ただいま~」コピーの束を抱えて佐藤が帰ってきた。「おう、お疲れ~」「お疲れ佐藤」「うん」「遅かったな」佐藤がドサリとシートに腰を下ろした。「いやあ、そこのコンビニのコピー機が塞がっててさ。多分オレたちと同じ、課題?で、真島んちの方のコンビニまで行ってきた」「あっちまで?大変だったな」「オレ腹減ったよ~」中田が首をぐるぐると回しながら言った。「何時間いるオレら」灰谷がスマホで時間を確認する。「あ~四時間?五時間?」「頑張ってんな~オレら」灰谷は大きく伸びをして店内を見回した。集中していたので気がつかなかったが、ファミレスの中は午後のガランとしたテーブルから一転、ディナータイムになったようで席が…

  • ナツノヒカリ 86

    ふがっ。オレは目を覚ました。マットレスに大の字だった。背中に当たる本の感触。起き上がってみれば部屋の中はグチャグチャ。本があっちこっちに散乱している。あ~せっかく自分の部屋を断舎離したのに、またこんな……。あふ~。あくびをしながら立ち上がって窓の外をのぞけば、もしかしてもう午後?オレはまたこの部屋での定位置のマットレスの上に戻り、壁に寄っかかりあくびをした。あれから……最高な夢を見て起きた後、眠れなくなってしまった。夢があまりに強力で幸せすぎた。思い出す度にボーっとした。オレは両親と一緒に住みたいと思っていたのかな、とか。やっぱり認められたいと思っていたのかな、とか。やっぱ寝たいんだな、とか。…

  • ナツノヒカリ 85

    中田の兄が働く工場の片隅に二台のバイクが並んでいた。ジョーカー。二十年ほど前にホンダが作ったアメリカンタイプのスクーター。マックスシルバーとメタリックブラック。『ホントはベスパとか欲しいけど高いしな。つうかあんまり乗ってる人がいないのが良くね?』原付免許を取った後、中古のバイクを探していた真島が街中で見かけて、カッコイイと言っていたバイクだった。図書館で原付免許の本を手に取った時に灰谷は思った。真島と二人でバイクに乗ってツーリングに行きたいと。バイクなら板金工の中田の兄だという事でかなりムリを言って探してもらった。「うお~いいじゃん灰谷。ちょっとベスパっぽい」案内してくれた中田が言う。「ああ」…

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