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鳥海山は初めて一人で、泊まりで登った思い出の山である。 車の運転に全く興味のなかった私だったが、免許は学生時代に取っておいた方がいいという親の勧めにしたがい、大学4年の夏休みに自動車学校を探した。 寒河江市にある山形中央自動車学校の合宿免許の広告が目に留まった。「20日間で免許取得。宿泊費、食事代、大阪からの交通費込みで20万円。」こんな感じの広告だったと思う。免許のついでに東北の山に登れる、という理由でここに決めた。 部活では日本アルプスにばかり通っていて、東北の山に一度も登ったことがなかった。そして東北の山でまず最初に思い浮かべたのが鳥海山だった。富士山のようなキレイな円錐状の火山で海沿い…
">「忘れえぬ山」という本がある。串田孫一氏編集による珠玉の山岳エッセイ集である。山を愛する岳人たちの「忘れえぬ山」が生き生きと描かれている。必ずしも有名な山、高峰、記録のついた山ではなく、その人にとってのとっておきの山旅が選ばれている。文章だけでその山の雰囲気や人々の息づかいが聞こえてきそうである。私は特に20代後半頃、通勤電車に揺られながら何度も繰り返しこの本を読んでいた。 "> 今私は日本から遠く離れたニュージーランドで生活している。そして、ふと私自身の遠い日本の、遠い過去の「忘れえぬ山」の記憶を書き記しておきたくなった。 大学時代にワンダーフォーゲル部で山歩きを覚え、その後、就職して1…
忘れえぬ山/カムイエクウチカウシ山からコイカクシュサツナイ岳へ
">26歳頃の話である。当時、東京でシステムエンジニアとして働いていた私は「仕事が充実している」と自分に言い聞かせながら、実のところひどく疲弊していた。仕事が自分の世界とは遠くかけ離れた世界のように感じていた。仕事と山。僕の心は完全に二極分化していた。だから少しでもまとまった休暇があるとすぐにひとり山に逃げ出すのだった。 その夏、京浜東北線に揺られながら「山に行きたい」という気持ちがくすぶり、激しく燃え上がりだした。自分にとって何か手ごたえのある山に登りたい。充実感のある山に登りたい。私は日高山脈のカムイエクウチカウシ山を選んだ。 "> どこでこの山を知ったのだろう?。星野道夫さんの本の中に出…