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頷いた、その顔を見ることができなかった。 ぼくは、 俯いたまま、背を向けたまま、 ドアが閉まる音を、全身で聴いた。 ドアが閉じる。それは、 終わりの音。 あれからぼくはずっと、 世界から遮断されているような気持ちでいる。 ずっと、 ずぅっと、ぼくは、 ぼくは見えない膜に包まれていて、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・息ができないんだ。
あなたの傍に居られるのなら、他のすべてを無くしてもかまわない。 それを罪だと云うのなら、それさえも呑みこんでしまおう。 実を結ばない花が咲く。――――――ねぇ? その儚いうつくしさを大切に思っている。 あなたが思っているよりもずっと、 冥い感情を知っているんだ。
「プロッパ! 何やってるの!!」 ハッ「久々でつい見続けてシマッタ!」 カベ破壊から延々とソルムを見ていたプロパガショネムは、ベスの一声で箱から飛び降り走り出す。気付いたオフィが攻撃を仕掛けたが、死角から現れた棘武器がオフィを襲い、避けてる間にプロパガショネムとの距離が開く。その間にいざないがプロパガショネムを追いかけた「高…
「お花の朝露療法で心のトラウマを癒やす」南インドの酷暑に翻弄され、やつれ果てたM。道で彼を見かけたフランス人女性アドリーヌは、「あなたは心に大きな傷を負っていますね」といったあと、さらに衝撃の事実を告げる…小説『ザ・民間療法』第12話インド編 花山水清
【 】は、 はらはら零れる花びらを一枚指で掬い、―――喰んだ。 白い歯がさくりと花弁を噛み砕く。 甘い芳香が周囲を包む。 とくり、―――どくり、 躰の奥で鼓動する。胎動のごとく、鼓動する。 どくり、―――とくり、 躰のなか、ああ、これは花だ。花が喜んでいる。ぼくの心を蝕んでいる花が咲き誇る。 溶ける。―――溶ける。 躰が震えた。ずっと、望んでいる。ずっと願っているんだ。 望みが、欲望が、溢れ出す。花が咲きこぼれる。苦しい。苦しいんだ。 漆黒の虚無を見つめる。 静かに凪いでいるその瞳に映るぼくのこころは醜い欲望での汚泥に塗れている。 花はこんなにも美しく、咲いているのに。 ――――――【 】が、…
「粉を振りマケ!!」 バッ バッ 幹部も一斉に動き出すが、待ち構えていた魔物がkch.dを一丁達にばら撒いた。粉が届く前にただおの“ウォル・シルクリ”とまりもの“ウォールバン”がこれを防ぐ「くそ! 動けぬ!!」霧の様に真っ白になった視界を目の前にし、動きが止められた幹部は立ち往生「おきまりさん達もそこから出ないで下さい」
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むアフリカンダンスの教室で私は散々な目にあったと思っていたが、親切心の塊のドルマは、まだこりていなかった。今度は私をヨガ教室に誘ってくれたのである。自慢じゃないが、私はヨガの経験も一度もない。ヨガといえば、カルカッタで会
トゥパク・アマルはコイユールを助け起こすと、「アレッチェ殿を見舞いに来たのだが…。大丈夫かね」と、心配そうな眼差しをコイユールに向ける。 コイユールはいっそう深々と身を低めて、アレッチェに打倒された
「さて」数時間後、サウム島に到着し地面に降り立つ「僕以外の強者を手に入れて、勝算はあるのでしょうかね」不気味な程静かな島の先には先程映っていた三層の住人がいる。次々と到着する幹部は岸に降り様子を見ながら並び始めた「意図は分からぬ。こちらの戦力を減らし追い打ちを掛けるのかもしれぬ」「T!」最後、全体派を乗せた船が到着…
オーロビルには広大な森の中心に、マトリマンディアと呼ばれる巨大な瞑想施設がある。ガスタンクを何倍も大きくしたような球形で、威容を誇る圧倒的な建物だ。
せっかく進学した美術大学で油絵科に籍を置いたものの、いつしか私のなかでは絵を描く情熱は消え失せていた。最低限の課題には取り組んでいたが、あとは可能な限り旅に出た。旅といっても1970年代といえば、ディスカバー・ジャパンの時代である。行き先は
世には「釣りバカ」と呼ばれる人種がいる。初めて竿を出したあたりで、いきなり大物を釣り上げてしまった人の成れの果てだ。最初に大物が釣れたのは、いわゆるビギナーズ・ラックである。たまたま運が良かっただけなのだ。だが、その感触が忘れられずにのめり込んでいく。私の場合は
第5話 インド編「インド人と日本人の親切はこんなにちがう!」
インドに到着した私は、しばらく仏跡を散策して過ごしていた。日本から同行したグループが、いよいよサイババの元へ出発する段になって、そこで彼らとは別れた。「あなたにはサイババのところよりも、オーロビルのほうが向いている」
はるばるカルカッタから3日もかけて、オーロビルにたどりついたものの、私には現地に知り合いがいるわけではない。とりあえずすぐにでも泊まれそうな場所を探す。そこで最初に案内されたのは、フランス人が設計したゲストハウスだった。
第7話 インド編「サソリより痛いスコーピオン・アントの猛毒と激痛体験」
私が暮らしていたオーロビルでは、定住者たちはオロビリアンと呼ばれていた。彼らはここで、思いつく限りのさまざまな仕事に従事している。インセンスや藍染製品、アクセサリーを作って売る人、アンティーク家具を扱う人、本格的な宝石商から、ファッション・デザイナーやマッサージ師までいた。
インド人には菜食主義者、つまりベジタリアンが多いといわれる。確かにインド行きの空路の機内食にも、ベジかノンベジかの選択肢が用意されていた。当然、オーロビルでもゲストハウスで提供される食事は、ベジタリアン食が基本となっていた。
中学の時点で人体のからくりに触れたとはいえ、その後の私の興味は、絵を描くことに向かっていた。地元の進学校に入学した私は、その興味のまま、何となく美術クラブに入った。特に強い思い入れがあったわけではない。もともと絵を描くのも苦手だった。ところが
あれは私が川釣りを覚え、黒曜石拾いに熱中していた中学生のころのことだった。学校から帰った私が、いつものように近くの河原に行く準備をしていると、それまで平静だった母が、「うっ」と胸を押さえてうずくまった。
バン!「ミング・カピトかるうりんいる!?」 「あなたは…」派長室の扉を荒く開き一人の人物がやって来る 「ミイナ!」 「緊急よ! 大変な事が起きたわ!!」入って来たミイナは走って来た様で酷く呼吸が激しい「ミイナさん!? そのままマルーへ来たんですか!?」「だって防衣着る余裕なんて無かった!」ミイ…
「花が咲くんだ」 そう云うとあなたは困った様に笑ってそれから頭を撫でてくれた。 それだけで、 うれしくてしあわせで、 くるしくてかなしくて、 ああ、 ほらまた、―――またひとつ、花が咲く。 ねぇ? 花が咲くんだよ。花が、・・・・・・。 「花が咲いて咲いてたましいを切り裂くんだよ」
「あのー、何始めたんですか?」「言うと思うかアホ面の女あ!」「拷問して良いか?」「丁重に言わさせて頂きますっ!」ソルムの手が動き出したのを知り暗人とれいりはギョッとなる 〈カクカクシカジカ カクカクシカジーカ〉 「彼は暗なのでしょうか…とても美しいですね」「総帥がこの場におられれば…」〈美しいのと冷たさ…
休園となっている植物園の前にれいりは現れる「よし!」キィと軋む鍵の掛かっていない扉を開き、れいりは気合を込め中を進む(いた!!)入り組んだ植物を掻き分け数メートル、さっき見た緑の帽子を発見 「リムさん!!」 驚いて振り向くリム。側にはリムの他数人がリム同様驚いてれいりに視線を向けた
「マラソンって苦手…」 はーはー「お疲れ様です。れいり」 はい最下位で到着したれいりは、前屈みになり太ももに両手を置いて呼吸を整えている。タオルを持ったイソネがれいりに渡し、受け取るといつもいる筈の人物が見当たらない事に気付く「あれ? そう言えばミヨシは…」「あち…
トゥパク・アマル陣営──。 モソプキオ村でのアンドレスたちとロカ神父との会合が、そろそろ終わりを迎えようとしていた頃の夕刻時。 スペイン軍総指揮官ホセ・アントニオ・アレッチェが治療を受けている居室で
夏目漱石「明暗」ゆかりの滝・不動滝 - バスに乗り湯河原の不動滝へ
不動滝は文豪・夏目漱石の未完小説「明暗」に出てくる落差15mの日本文学史を飾るうつくしい滝です 湯河原不動滝(ふどうたき) 不動滝の美しい滝姿 出世大黒尊から見えた不動滝 不動滝茶屋の味噌田楽 平成31年(2019年) 2月15日 村内伸弘撮影 上り坂だし、歩き疲れました。...
肩をつつかれ皆の方を振り向く 〔今から順番に近づきます〕 「…はい」紙に書いた字を一人のディックが掲げ、右のディックかられいりに近づく(文字表記したのジンホウさんぽいな…)近づいては離れるディック達を見ながられいりなりに推察している 「…何とも無かった」パチパチパチパチパチ 四人はごく自然にれいりとのお…
「先ほどもお伝えした通り、アリスメンディ様と親交のあったドミニコ会などの神父や修道女は私だけではありません。 ですから、私と同じような境遇におかれ、モスコーソ大司教から出頭を命じられている者たちは他
変化界沿いの川辺を探索していた全体派は、収穫がさっぱり無く皆溜息を吐いていた「だめだ、さっぱりねーわ」「一体副団長の視えた場所は何処にあるのでしょうね」ただおは手を団扇代わりにしパタパタ顔を扇ぐ「隠されてるとは思えねーんだが」「日も傾いた。休む事にしよう」一丁の号令元一度切り上げテントの支度を始める 「団長」
少し前まで、時折、教会の外の広場から流れきていた村人たちの喧騒も、今はだいぶ静かになってきている。 治療や薬学に長けているロカ神父を呼びに来ないところからして、先ほどの戦いでの自警団員たちの負傷はさ
マルー視聴室。集まった幹部の前で夫人がスクリーンに映る人物を指し棒で強調していた「しきさんの話によりますと、キリート・ダイラは能力が高く身のこなしも速い。口から発する大音量で動きを足止めするそうです」スクリーンの布に指し棒がぶつかる度映ったダイラがユラユラ揺れている「ソノと二人がかりなら押さえられたかもしれんな」「ほのをさんは当時しきさ…
【本】川上未映子『黄色い家』~人はなぜ金に狂い、罪を犯すのか?~
1、作品の概要 『黄色い家』は、2023年2月20日に刊行された川上未映子の長編小説。 ページ数は、608ページ。 読売新聞で2022年7月24日~2023年10月20日に連載された。 「読書メーター」読みたい本ランキング(2022年11月21日~12月21日)第1位を獲得。 ミステリー要素を持ったノワール小説で、川上未映子の新境地とも言える作品。 2、あらすじ 昔一緒に暮らしていた黄美子が捕まったニュースをネットで見た花は、長らく忘れていた20年前の記憶を思い出していた。 スナックで働くシングルマザーの母親との極貧の生活、窒息しそうな息苦しい毎日から花を救い出してくれたのは黄美子だった。 1…
――チールコの労働者が仮住まいとする宿舎 〈おや、新入りか?〉〈ああ〉〈よろしくな〉 すれ違うたさいに仕事終わりの労働者が次々声を掛けている「リダさん、新入りだとよ」「飛び込みですか」責任者の所に連れて来られたたさいは、深く帽子を被りサングラスに髭を生やしたリダを見ていた「助かります。今は人手不足なんで…
人間の友達がいないのは狐守の家系だからだと、筒井数は思っている。今日も今日とて、いつの間にか水筒から逃げ出していたキツネ――キューちゃんを探して、学校中を駆け回る日々だ。1年5組の変人。周りからは、そう揶揄されて嗤われてもいる。在里颯真という、別クラスの爽やかイケメンを除いて。
#02 狐し庵は、今日も騒がしい – おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)
「皆さん、お疲れさまッス! いや~、今日もいい労働をしたッスね!」この日の最後の客を満面の笑顔で送り出すと、ノルさんは和帽子をすぽんと外し、その勢いで大きく伸びをした。長めの金髪の隙間から覗く尖り気味の耳は、今日も数えきれないほどのピアスに噛みつかれている。
#04 また、しんじゃったんだって – おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)
おかあさんの、においがした。おひさまのような、おはなのような、ほんのりあまくて、やわらかいにおい。ずっとまえになくしてしまった、あるはずのないにおい。だから、はしった。にほんのあしはおそすぎるから、よんほんのあしではしった。あたまのなかと、まわりのけしきが、まっしろなまま、はしった。
「はい、着きましたよ。ここが今日から修也さんが通う学校です!」 「おお、なんというか・・・すごく普通のテンプレ…
(・・・・・・あ、そうだ、昨日から舞原家に来てたんだった) 翌朝、見慣れない部屋に一瞬戸惑った修也だが、すぐに…
「あ、そろそろ呼ぼうと思ったたんですよ」 部屋の片づけが終わり2人でリビングに降りてきたら、夕飯の支度を終えた…
「それにしてもさぁ・・・」 「?どうしました修也さん」 舞原家に行く道中、おもむろに修也は口を開いた。 「引っ…
「一時はどうなるかと思ったけど助かったよ。ホントありがとな、蒼芽ちゃん」 「いえ、お役に立てたのなら良かったで…
れいり達が依頼に奮起してた頃、ナリス地域とメリディオ地域の間に位置する山では松明を持った全身完全装備の男達がガーベージウェストの対応をしていた。男が松明の先を押し込むとガーベージは跡形も無く消えていく「とうた! どうだ?」「終わった」「次は北だ。急ぐぞ」「ああ」よく見ると男達の額には動物、昆虫をあしらった模様が施されている
#07 ジャンプ・オア・フライ – おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)
結論から言えば、職員室は空振りだった。ユキの鼻の精度は前もって確認している。入り口から中を覗いた段階で何も匂いを感じなかったとしたら、そういうことだ。ここに、ユキの母親はいない。正直、大本命だった場所が不発に終わったことで、俺は一気に出鼻をくじかれた。鼻に頼っただけに。
「私が追放されなかったのは、私はイエズス会に属する神父ではないからです」 「え!? それじゃ、あなたは……?」 「私はイエズス会士ではなくドミニコ会に属する神父なのです」 「ドミニコ会?」 「
1、作品の概要 村上春樹の第3作目の長編作品です。 『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』の「僕」と「鼠」の物語。 初めて書いた文庫本で上下巻になる「長い長編作品」で、それまでジャズバーを経営しながら小説を書いていましたが、店を人に譲り専業作家として本腰を入れて書いた意欲作です。 野間文芸新人賞を受賞しています。 この長い長編を書いたことで、新人が描く中編小説という芥川賞の候補から外れ、後に村上春樹が世界的な作家として評価されたため、「芥川賞最大の取りこぼし」と揶揄されたようです。 hiro0706chang.hatenablog.com hiro0706chang.hatenablog.…
「~~び…びっくりした…」れいりは足元がおぼつかず前のめりに倒れていた「どこもケガしてない?」倒れ込む前にジンホウがれいりを受け止め下敷きに。近距離でジンホウを見たれいりは超驚きジャンピングして後退り ズザザザザ ガン!「~~~!!! だ!!」 後退りしすぎ後ろの木へ背中をぶつける ひゅん バシ! 振動…
#06 捜索開始 – おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)
「いってらっしゃいッス! デー……あっ、デートとかでは決してないんスけどデートみたいなカンジのやつを楽しんできてくださいッス!」「遅くならないうちに帰ってきてくだせぇ。腕によりをかけて夕飯を用意しておきやすから、スーさんも一緒に」
(遅ぇ…)部屋では食べるのに満足したのの子が横になり、いざないも離れた所で背を向け横になっている(つーか妙に目が冴えて落ちつかねー…)頭を手で支え顰め面でソワソワし機嫌がよろしくない。いざないは自問自答を繰り返しひたすら迎えが来るのを待っていた(んな所に押し込まれたからか…)ふと、いざないの背後で見下ろす黒い影がゆらりと動き近づいてくる…
#05 明日、デートするぞ – おこもり奇譚(長編小説 / 現代ファンタジー)
「ユキちゃああん、スーくうううん、おかえりなさいッス! あ~あ~あ~、よかったッス!!」元砂糖問屋を改装した旅館こしあんの風情ある引き戸は、俺たちが辿り着いたときには既に開け放たれていた。ユキと二人でこっそり中を覗くと、奥から両手をめいっぱい広げたノルさんが歓喜の声を上げながら突進してくる。