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漱石の作品をデビュー作『吾輩は猫である』から読んでいくと、漱石の歩んだ道と重ね合わさる部分を見出すことができます。明らかに、作風や、漱石が読者に伝えたいことが作品ごとに変わっています。それは、漱石の人生を反映しているようです。
『行人』は、漱石の後期三部作の2番目の作品です。人を理解することの難しさが浮き彫りにされています。登場する人物それぞれの苦しみが細密に描かれています。「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか。僕の前途にはこの三つのものしかない」という重い言葉が出てきます。
このブログのタイトルの「行人日記」と私のハンドルのwayfarerは、夏目漱石の後期三部作の2作目、「行人」(英訳のタイトルが「The Wayfarer」)から取っています。夏目漱石の前期三部作(「三四郎」「それから」「門」)が、現実の出来事に対する葛藤が描かれているのに対し、後期三部作(「彼岸過迄」「行人」「こころ」)は、他人からは見えづらい内面の苦悩を抱えた人物が描かれています。特に「行人」は、気難しく家族からも疎まれている知識人の主人公が、心を許せる相手が全く無い中で人間不信に陥り、追い詰められて精神状態が破綻寸前になって終わる・・そんな話です。後期三部作の中では、最も凄絶な苦悩が描かれ…