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部屋の中には、由紀子(ゆきね)の姿の茜と椿の二人だけ。茜は、届いた資料を読んでおり、椿は所在なさげにスマートフォンを触っていた。 「椿さん」 「はい」 茜は、苦笑していた。 「なんだか、ごめんなさい。この体で生活していた由紀子という子とは、仲良くされていたんでしょ? それなのに、私なんかがこの体を使っていて」 「……私の本来の役目は、赤鬼(せっき)の暴走を起こした際、水及(みなの)様が到着するまで…
橘家の廊下。水及(みなの)は、由紀子(ゆきね)の様子を見に行くため、歩いていた。 「くっそ、昨日は酷い目に遭った」 昨日の事を思い出す。 「わざわざ申し訳ありません」 車から降りたところで、出迎えに来ていた除霊士の男が頭を下げる。 「妖(あやかし)は、狼型で体躯は優に二メートルを超えております。一体、二体程度ならば我々でも対処が出来たのですが、少なくとも十体。それが、統率が取れた動きをしていて、…
五話『覚醒予兆 後編』 聡ノ往く道 二章『夏樹と三人の由紀子』
状況は、混沌としていた。 「つまるところ、由紀子(ゆきね)さんの封印が最優先という事ですね」 椿は、その混沌とした状況の中から、最優先事項を引っ張り上げる。 椿が到着した時には、すでに櫻(さくら)を襲った鬼神会の構成員と赤鬼(せっき)を暴走させた由紀子は居なかった。 鬼神会の構成員との戦いで負傷した櫻は、すぐ後に合流したフリーの除霊士である沢村遙の治療魔法で応急処置を受けていた。 「私、回復魔…