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☆『あなたの声で息をする』の続編になります☆遠木がアフリカでの勤務医の任を解かれて帰国したのは、彼があちら側にわたってから12年後のことだった。8月の半ばの夕方にとてもひさしぶりに遠木からメールが届いたと思ったら、紛争が終結にむかっていること、それにあわせて医療チームも人員を減らす運びになったこと、11月の末に帰国することが記されていた。はじめは夢でも見ているのかと思ったけれど、次第に喜びがむくむく...
「・・・・・・・・・・・・んかった、」 時雨さんの、小さな声。「・・・・・・届かんかった、・・・・・・駄目やったぁ、・・・・・・おれ、・・・・・・」 あの日、時雨さんはなにを掴みたかったんだろう? 『届かんかった』 ・・・・・・・・・・・・その、意味を、・・・・・・・・・・・・、 僕は今更ながら考えてしまった。
写真集をあった場所に戻して、永崎、と呼ぶと、優しくやわらかく「どうした?」と返ってくる。僕が呼べば永崎はいつもこんな口調で返してくれた。「もう、暗い道は歩かなくていいんだ。洞窟のなかに迷い込んでいくようなことはおしまいにしよう」永崎が耳朶を撫ぜていた手をとめる。「……え?」永崎にむかって笑ってみせた。心から、まっすぐに視界のなかの滲んだ顔を見た。「ありがとう、僕といっしょに不安な道を歩いてくれて。ひ...
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)173までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)173までアップしました。恋ってウソだろ?!28までアップしましたリンクアドレスが間違っていたところがございました。訂正いたしましたので、よろしくお願いいたします。
じわじわと永崎に浸食されていく。自由にならない息は苦しいけれど、しあわせで陶然となっていく。「挿ったよ、ぜんぶ」僕のなかに完全に自身を収めて、子どもみたいな声で永崎が言う。そのまま動きたいのを堪えているのだろう、覆いかぶさってきてぎゅっと僕を抱きしめる。「……夢みたいだ。うそみたい、峰邨を抱いてる」「夢でもうそでもないよ、ちゃんとここにいるよ」そのままなんども唇を重ねた。お互いの速い鼓動がどちらのも...
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に173 BL小説 そろそろ起きないと、猫たちのお世話をしてシャワーを浴びて着替えて、何か食べて。 夕べコンビニに寄るのを忘れたから、何かあったっけ。 栄養ゼリーくらいあった気がする。 だが動こうという思いとは裏腹に、身体はなかなか動いてはくれなかった。 大体、そもそもの元凶はど
永崎はふたりの息も整わないうちに、「ほんとに、いい?」と僕の後孔にふたりぶんのぬめりをまとった指を這わせる。その声が切羽詰まっているのがおかしくて、笑いながら「いいよ」と言った。永崎に言われ、脚を膝を立ててできるだけ大きくひらいた。いやだ、恥ずかしいという気持ちとこの先を早く知りたいという気持ちが綯い交ぜになる。永崎はなるべく痛くないようにするな、と言って指先をなかへと挿しいれてきた。永崎の手つき...
「峰邨」名を呼ばれる。僕の顔に影が差して、唇が重なる。なんどもついばむようにキスしながら、永崎が僕を抱きしめた。永崎の舌先が僕の唇をなぞる。かすかに開くと、永崎の舌が口腔内に潜りこんでくる。舌を吸い上げながら絡め合い、さんざん深いキスをする。気持ちよくて永崎の背中にしがみつくと、ひょいと抱えられてベッドに押し倒された。真上からの永崎のキスを感じながら、制服のブレザーとシャツを脱がされた。それがとて...
川沿いの遊歩道をゆるゆると歩きながら、熊と小鳥のたとえを思い出す。熊が小鳥にささやき続ける。『ごめんね。ずっと一緒にいるから。安心していいよ』と、心からの誠意と愛をこめて。小鳥は決して熊を愛することはないと僕は思っていたけれど。熊の言葉は小鳥の傷からしみわたり行きわたり、やがて小鳥の心を動かすかもしれない。「好きだよ、峰邨」ふっと永崎の声が想像の景色をかすめた。ずっといっしょにいると言ってくれた、...
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)170までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)170までアップしました。恋ってウソだろ?!13までアップしました。「恋ってウソだろ?!4」をアップし損ねていたことをつい先ほど確認、話がぬけていました。不手際、平にご容赦くださいませ
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!12 BL小説 南青山にある広告代理店プラグインは、二年前、大手広告代理店英報堂のエリートだった河崎、藤堂の二人が興した会社で、河崎の元部下である三浦と浩輔を加えた四人がこのオフィスのメンバーだ。 代表は河崎だが、藤堂は、三階、四階にあるギャラリーの役員として
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に170 BL小説 熱い湯を頭から浴びながら、工藤は今までにも覚えのある徹底的に仕事をやりつくした感と微妙な寂寥の思いもあり、多少の充実感をも感じていた。 実際はこれから編集作業が待っているわけだが、些細なことにもこだわって創り込む日比野にしろスタッフにしろ、今回演者として参加
ほんの少しの沈黙のあと、永崎が僕に尋ねる。「……どういう、意味?」「だれかを憎んでいる自分より、だれかと楽しく過ごせる自分のほうがやっぱりいいよ」「そっか。そうだよな」同情でも憐憫でもなく、永崎の声が優しい。そのことが、ただうれしかった。だれかに優しくされる価値のある存在なのだと、自分のことを素直に認められた。「永崎」呼びかけると、うん?と返事があった。「優しくしてくれて、たくさん僕のことを考えてく...
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!6 BL小説 「にしちゃ、何だよ、その煮え切らない態度は。ビッグプロジェクトじゃないみたいだが、相手はあの大和屋だろ? 大和屋の一人娘っていえば、あの東洋グループの次期CEOの奥方で、うまくすればその奥方と懇意になってだな、芋づる式に東洋グループの仕事が転がり込んでく
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!5 BL小説 家具やソファセットは春日がコーディネイトして、佐々木の書斎用にも十四畳ほどの部屋が用意され、壁にかかっている十五号の絵は昔佐々木が描いた油絵だ。 オフホワイトの壁には大画面のモニター、テーブルやデスク、椅子など北欧調で、落ち着いたネイビーとオフホワイトを
どうしてだろう。永崎と話しているときに落ちるこんなふうな沈黙は決して居心地悪くない。気詰まりでもない。けれど、永崎はなんだかごまかすように「ほらほら、反対側のソースがはみ出してるだろ」と自分の食べたあとのバーガーの包み紙を見せてきた。たしかにバンズからはみ出したらしいソースの赤がぼんやり見えた。峰邨は器用なんだよな、と感心したように言うので、たかがハンバーガーの食べかたひとつでと妙におかしかった。...
LINEマンガインディーズ月例賞(9月度分)で月例賞をいただきました(*´ч`*) 賞と賞品を頂けるだけで、担当さんがつくなどといった確約はないんですけど。 でもありがたいことですよね。 …って最近更新滞ってますけど。精神的に参ってますけど。 あ!毎回毎回しつこくて申し訳な...
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)167までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)167までアップしました ペルセウスへ(力×佑人)18までアップしました ハロウインシーズンなので、 今までの話の中でハロウインに関係した話をいくつか集めました。 ハッピーハロウイン! (月末まで)
月夜の猫-BL小説です ハッピーハロウィン!(BL小説) BL小説 ハッピーハロウィン! (月末まで)ハロウインにちなんだお話を集めました。 よかったらお楽しみください!■月鏡(工藤×良太)工藤も良太も相変わらず忙しい毎日を送っているが、沢村に問題が起こり、由々しき事態に。同時に、良太はハロウインパーティの
永崎はしばらく話すのをやめて、ちいさな唸り声をあげた。そしてからりと陽気を装った声で言う。「だめじゃん、峰邨。俺、お前のこと好きだから、そんなこと言われたらうれしくて心臓が口から出てきちまう」僕がすこし笑うと、永崎は真面目な声で「ほんとに、頼むわ。うっかり望みがあるような気になっちゃうから」で言った。この瞬間、完全に信じた。永崎が僕を好きだということ、それが同情でも憐憫でもないこと。動揺を気取られ...
そういえば、いつだったか。 「ぼくがさぁ。くっそ甘いラブソングなんてつくっちゃって。しかもそれをうたっちゃったりしたら、気色悪いよなぁ、」 移動中のクルマの中だった。隣から、ぼそっとそんな声が聞こえてきた。 運転していたのはスタッフさんだ。三列シートのワゴン車の中。計登さんは一番後ろのシートを占領して眠ってた。時雨さんは確か仕事が入っていて、それを終えて現地で合流するって流れだった。 僕はスマホゲームをしていた。手こずっていたミッションを漸くクリアして、片耳だけイヤホンを外した処で、眠っていたと思ってた十秋さんがそんなこと云いだしたから、ちょっとだけ驚いた。 寝てなかったのかな。そう思って。ス…
永崎と散歩に出たのは、翌週のよく晴れた日曜日だった。「峰邨、ずっと外食なんてしてないだろ。モス行こうぜ、モス」と僕をファストフードで誘った永崎は、僕の両親に「峰邨くんと昼食を食べに出かけさせてください」と出しなに頭を下げた。このころになるともう僕の両親は永崎をすっかり信頼しきっていて、「ふたりぶんの昼食代にしてね」とお金を渡していた。「永崎くん、ほんとうのことを言うとね」母は永崎にしずかな声で言っ...
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)164までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)164までアップしました。ペルセウス(力と佑人)16
すばる。その瞬間、心のいちばんきれいな部分がもろもろと崩れ、泣いてしまうんじゃないかと思った。やわらかな永崎の名前、僕が好きだった星の名前。本物の昴は失われ損なわれ見えなくなり、そのかわりに『すばる』がやってきたみたいだと思った。ひとつの光が失われても、すべての光をなくしてしまうわけじゃない、そんなことも思った。永崎の名前からじわじわと温かさが身体じゅうに沁みこんできて、『事故』以来、ずっと重たか...
毎回亀更新でお馴染みの のり。 です。どうも。 いつの間にか10月に入ってましたね。 そしてアルファポリスさんで『漫画秋の陣』が開催されてます。 前記事に貼ってる作品と これもエントリーしてます。 よかったら清き一票をお願いします! 噂の?大吉ダースさん。 ご利益あるかな?笑