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高校生の時は、国道の路面電車に乗って通学していた。 定期券の期限が切れそうになると、次のを申し込んで購入する。 タイミングが遅れて数日間の間が空くと、乗車するのに現金の小銭が必要になる。 一度、そういう事になった。 母はその金がもったいないと怒ってわめきだした。 食事中だった。 子供の頃から金の事で文句を言われ続けて来て、それが慢性的な日常生活の風景になってしまっていた。 …
子供の頃、両親のケンカが始まると私は何も言えずに固まっていた。 父親の競艇場通いが母に知れ、言い争いが始まる。子供の私にはどうにもできない状況だ。 母の甲高い声、責め立てる声、金切り声に身がすくんだ。 静かになったところで両親が仲良くなるわけではない。 重苦しい険悪な空気だ。 私はそうやって他者のトラブルの渦中で成長した。 それに対処する方法を学ばず大人になった。 …
ミシンの騒音とアイロンを台に叩く鈍い音、そんな作業場で暮らした。私が生まれた時からの日常だ。 父親はバイク(カブ)で役所へ出勤する。だから日中は家に居ない。家は母の仕事場だった。一日中ミシンを踏むか手縫いの細かい作業をしていた。 私は母の仕事しか知らない。 父親の役所での仕事を具体的に聞いた事はない。 会話が無かったからそういう話題も出なかったように思う。 水道局だったはずだ。知っ…
私が幼少の頃から生涯、外へ働きに出た母の姿を見た事はない。 いつも家にいて作業場で洋裁をしていた。 ミシンを踏んでいない時は手縫いの細かい作業をしていた。 仕事はお客様の採寸から始まる。 その前にデザインの打ち合わせをするのだが、生地はどちらかが用意するか、お客様が持ち込まない時はこちらが商店街の生地屋さんへ行き調達する。 ボタンやファスナーもストックに適切なものが無ければ、裁縫…
子供の頃、正月に飾っていた鏡餅、今のように真空パックされていないから、お供えから下ろして食べる時期にはカビだらけになっている。 それをカビの部分だけ取り除いて食べていた。 青いカビを取り除いても、目には見えない状態で広がっているのだと思う。それをお雑煮にして食べるのだが、口の中がカビの臭いでいっぱいになる。 嫌でたまらなかったが、子供の頃は我慢して食べていた。 (いつからか私はカビの…