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「おい、清子に何をした?」 傍らに立っていた、神林くんの肩をつかんだ。「ボクは…何もしていないよ」サラッとそう言うと、両手をパッと肩まで上げる。「はぁ?何を言…
「へ~え、そうなんだ」 まったく素知らぬふりをして、思い切って、中へくぐり抜ける。すると…ヒンヤリとした空気と、わずかにカビ臭いにおいがして、思いの外 広い空…
だが、宗太郎はあくまでも余裕の表情を浮かべ、「いや、ボクは後でもいいよ」ニッコリと微笑むと、「お先に、どうぞ」と右手を差し出した。「えっ、あっ、そうか?」神…
だが決して、せかすような空気は感じない。「いや、もしも誰かが、鍵をかけてしまったら、大変だなぁと思って」下手な言い訳だなぁと、宗太郎は思うけれども。まさかそ…
「いや、あの、もうちょっとよく調べた方が…」 その転校生が、少しでもおかしなそぶりを見せたら…すぐに止めよう、と目で追いながら、言葉を探す。「なによ、ソータロ…
するとカチリ…と音が聞こえて「ほら、開いたよ」 見ると鏡が斜めになっていて、その傍らに神林くんが立っていた。「え~っ!」清子が声を上げる。「え~っ、これ? …
「ここはねぇ~」 ポンと神林くんが壁を叩くと、「確かに…そうだよな」目のツケどころは、悪くない…と、清子を振り返る。「でしょ?」ニヤッと笑って、宗太郎を振り返…
「うん!」 疑うことなく、素直に返事をすると、清子は神林くんの後を追いかける。「おい!」ちょっと、本当に大丈夫か?宗太郎はまるで、清子の付き人のような気分にな…
「じいさんが…自分の世話をみてくれた人に…この家の権利を ゆずるって言ったんだ」「ここ?」「ここって…そんな価値があるのか?」 宗太郎にも、清子にも、この廃屋…
「親の側にいたくない…というのもあるけど… じいちゃんに、頼まれたんだ」初めて彼の心に触れたような気がした。「へぇ~そうなんだ」清子は嬉しそうに、ポンポンと彼…
それとももっとすごい『何か』が、隠されているのか?宗太郎はグルリと、辺りを見回す。「ここは…何だと思う?」 あらたまった口調で、神林くんは宗太郎と清子に向か…
階段を下りると、ワイン蔵のようになっていて、おそらくここが食料の貯蔵庫も兼ねていたのだろう。少しヒンヤリとしている。「何にもないねぇ」さすがにガランとした棚…
こんな奇妙な家だけれど、何だか不思議と怖くない。案外清子が言うように、ここが秘密基地だったからだろう。珍しそうに、回りを見ていると…「あ、天井がちょっと低い…
「えっ」 スマホをおもむろに開くと、神林君はアプリを起動させる。「あら」それで、何をするのか?見た目は、ただのお化け屋敷だ。一体、どんな仕掛けになっている?思…
(そんなことをして、平気なのか?大丈夫か?) そう思うけれど…宗太郎は何も、言葉にすることは出来ない。「ここ…地下室があるのを、見ただろ?」バタンと扉を閉める…
「それは、先生に聞いてみるんだな」 今度は宗太郎に向かって、そう言う。「なんだよ、それ」思わずブスリと、宗太郎はつぶやく。「だってキミたち…ボクのことを、信用…
まだ…清子の質問に、答えてはいないじゃないかぁ~と、宗太郎は思うけれど、「そうみたいだ」清子の顏を見て、自信なさそうに答える。「ふぅーん」宗太郎の微妙な表情…
「ちょっと、脅かさないでよぉ」清子は大げさなくらい、ケラケラと笑う。「なんだ、安心したぁ」明るい声でそう言うと、ポンポンと宗太郎と神林くんの背中を押して、中に…
そんな2人の様子を見ると…なぜか神林くんが、気の抜けた様子で、「相変わらず、仲がいいんだなぁ~キミたちは」なぜか、懐かしそうな顔をする。 なんだ? 羨ましい…
宗太郎にとって、それも謎だった。この家のことも、この転校生のことも。きっと、何かかかわりがある…と思うけれども、今のところ糸口は何ひとつ、見つからないのだ……
何とか自分の立ち位置を、立て直そう…とする宗太郎の顏を「ふぅーん」意味あり気な瞳で、神林くんは見つめてニヤリと笑う。(何なんだ?何があるっていうんだ?)宗太…
「ダメだなぁ~ 女の子には、優しくしないと」 大げさに口に手をあてて言う仕草に、宗太郎の気持ちが逆なでされる。(やっぱり 女の気持ちはわからん!)イライラした…
「なんだよ、それ」 あんな委員長と、一緒にするなよなぁ~宗太郎は、ムッとした顔になる。せっかく心配した…というのに…(なんだよ、コイツ)心配して、ソンした…と…
驚くのは、こっちの方だよ…宗太郎は、声を上げるタイミングを失った。「へぇ~」案の定、神林くんは清子に目を向け「キミ…覚えていたの?」と声をかける。それは彼に…
「えっ、神林君、知っているの?」 やっぱりと思い、思い切って一歩踏み出すと、いきなりこの転校生はははは…と笑い出す。「知ってるよ」今度ははっきりとそう言うと、…
取り残された3人は…何となく気まずい空気に包まれる。「さっき…何をしていたの?」にぃっと笑って、こちらを見るので、やはり気付いていたのか…と、宗太郎はヒヤリ…
「えっ」 一瞬、からかわれているのか、と宗太郎は思う。先生の後ろから…当の神林君が、姿を見せたのだ。(やばい)宗太郎はあわてて、口をつぐむ。「すごい洞察力だね…
「えっ」 どうして、先生が?宗太郎は、足を止める。(先生…帰ったんじゃなかったのか?)確か…すれ違った人影を見掛けた、と思ったのだが。「こんなトコまで来て…何…
「そりゃあ、決まっているだろう?」 清子の問いに、宗太郎はニヤリと笑う。「あそこさ!」そう言うと、まっすぐに先ほど彼を見掛けた、あの窓を見上げた。 「えっ、ソ…
どうやら清子は…あの当時のことを覚えているようだ。「なに?何のこと?」 そういえば…と思い当たることがある。なぜだかこの町に越して来た時…近所の人たちの反応…
「えっ?」 思わず宗太郎は、言葉を失う。そう言われれば、確かにそうだ。ここはもともと…誰も住んではいない古い家のはず…「あっ、おじいさんか誰か、住んでたとか?…
「へっ?」 清子もかなり驚いて、素っ頓狂な声を上げた。「なになに~ まるで、ユウレイを見たいに…」はっはっはっと、彼は笑う。(おかしい…ボクたちが、ここに入る…
「はっ?」 助けないのか?急に、清子のことが、わからなくなる。宗太郎の顏が、変化するのを見ると…「だって、どうしようもないんだもん。 鍵がかかっているし、確か…
本当に、大丈夫なのだろうか?宗太郎は、清子の後ろ姿を見送る。自分も…ついて行った方が、いいのだろうか?そう迷っていると…ガタガタと何か物音が聞こえる。「おい…
「ほら!」 なぜか見せびらかすように、清子が嬉しそうに「あった、あった」と声を上げる。「ね、あったでしょ」そう言いかけた時、再びガタッと物音がした。 「しっ」…
そうは言ってはみるものの…ウソだろ?そんなことがあるのか、とまだ疑う気持ちが強い。「じゃあ…どこなんだ?」さり気なく、うながしてみると「確か、ここに…床下収…
いくら清子の記憶力がすごいとはいえ、さすがに覚え違いはあるだろう…宗太郎は、そう思うのだが…「私たちの秘密基地… 地下の貯蔵庫みたいなところだった」いきなり…
「何か、あったのか?」 自分自身は覚えていないので、頼みの綱は清子だ。「えっ?さぁ~」清子は目を泳がせる。(やはり、そうかぁ~)となると…「床下?」まさかな!…
「やっぱり…誰か、いる」 清子をかばうように、自分の背後に隠すと、宗太郎は耳を澄ました。ミシッミシッと、床板が鳴る音がする。歩き回っているのか?「猫でも、いる…
よく見ると…ガラスがわずかにひび割れをしていて、ここからホームレスの人が入り込んだとしても、おかしくはない。(何しろ、鍵がかかっていないからなぁ)だが…水も…
「ソータロー、名探偵になれるわよ」「ほめ過ぎだよ」「いや、そうだって!」 興奮したように、清子は両手をぐっと組んで、宗太郎を見る。宗太郎が、つかまれた手を、ズ…
「不自然?なんで、そう思うのよ」 清子は眉間に、しわをギュッと寄せる。「まさか…何か気に入らないとか?」「バカを言うなよぉ」なんで、そうなるんだ?何でも、そう…
「なんで?」 思わず声がついて出る。だがこれは、ニヤッと笑うだけで、何も言わない。「それは…生徒の事情は、基本誰にも言ってはいけないんだ。 でも…せめて先生に…
「ここ…なのか?」 どう見ても…ただの荒れ果てた、物置小屋にしか見えない。清子はフフッと笑うと、「まぁ~見てたら、わかるわよ」ぐっと入り口に、手をかける。(き…
「で、どこに行くつもりなんだ」 腹を決めて聞く。「わかってるじゃない」ニヤッと清子は笑う。「あそこよ!」 さっき入った玄関とは別に、草に埋もれた物置きのような…
「でも…清子は女子部にいるんだろ?」 御手洗…ということは、両親が離婚したわけではなさそうだ。「じいちゃんたちがね…年を取ったから、母さんがシブシブ こっちへ…
あっけなく、「どうぞ」と龍友はあの古家の鍵を開けた。門の中(雑草に埋もれていたが、存在した)の中に入ると、かなり荒れていて、植木もあるけれど、枯れているか、…
雑木林の中から…ポッカリと廃屋が姿を見せる。どうみても…人が住んでいるような家には見えない。 「だから、いいんですよぉ」龍友は、またも先生の心を読み取るよう…
さすがに…神林くんのお母さんの旧姓なんて、わからない。何と書いてあるのか?「え~とぉ、これって館林?」かろうじて、清子が読み取った。「館林かぁ~地名みたいな…