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月夜の猫-BL小説です 幻月24 BL小説 「小田さんの方から、今の仕事の状況と同時にMEC電機のCMが入ったことを、工藤さんに伝えるように言ってください」 おそらくそれで工藤は、波多野が動いていることを知るわけか。 「わかりました」 良太は神妙な顔で言った。 「ではプラグインの藤堂さんがいらっしゃるまで、し
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!2 BL小説 モデルや俳優を使ってCMや雑誌広告を創ったりする仕事の中で、下手をすると佐々木自身が誰よりその画像の中に納まるのが似合っていたりするわけで。 特に冬など、ゆったりしたセーターでも着て、バーでグラスを傾けていたりすれば異様に画面にはまる。 ちょっと長めのウエ
「彩葉ちゃんの初恋の相手って、速水くんだったの?」「そう、だけど……」「お似合いと言えばお似合いなんだよねぇ。彩葉ちゃんかわいいし、速水くんはかっこいいし……」 ぶつぶつと思考の海に沈んでいくと思われたふたばが、突然「あぁ!やっぱ無理!」と発するので彩葉の胸は冷えた。「瀬戸さん、やっぱり男どうしでつきあってる……って嫌悪感があるよね。ごめん、へんなところ見せちゃって」 うなだれる彩葉に「ちがうの!」と慌...
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!1 BL小説 瞼に走った光の帯が眩しくて、佐々木は寝返りをうった。 朝か………何時やろ…… 気分は悪くないが、身体が重い。 やっぱ夕べちょっと飲みすぎたかも………。 できればもう少し眠りたいと枕に頬をうずめた佐々木は、ふと額に暖かいものを感じて目を開けたのだが、超絶な違
月夜の猫-BL小説です 恋ってウソだろ?!-Tricky Night- BL小説 「誰にもやらない」などで登場した佐々木周平のエピソードです。 「好きなのに」へと続きます。工藤と良太にもリンク。 ■酔ってハロウインの夜に出会った男の腕の中で目が覚めた?! あり得ない出来事に混乱して佐々木は逃げ出したが、
そより、と頬を撫でたのは夏の匂い。微かに潮の香りが混じるそれは、幼い頃を過ごしたイタリアの港町ラヴェンナを思い起こさせる。そこは、哀しみと寂しさを置き去りにした町。喪ってしまった日常や奪われたいくつかの未来を直視することができず、遺されたアルバムを開くこともできなかった。だが、今は違う。彼らと共に過ごせた時間は決して多くはなかったけれど。惜しみない愛情を与えられ、無条件の優しさに包まれ、幸せだった...
月夜の猫-BL小説です 秋の陽10 BL小説 結局ベッドに雪崩れ込んでからも歯止めが効かずに工藤は良太を喘がせる。 いつか良太を離してやるなどと言っていた自分を思い出して工藤は己を嗤う。 息も整えきれない良太の胸を工藤の指が掠めただけで、全身が敏感になってしまっている良太は悲鳴のような声を上げて身体を捩った。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の60 BL小説 武蔵野市にある書道家三宅雄一郎の自宅では朝から撮影が行われ、ようやく終わってクルーが引き上げたのは夜の十一時を回った頃だった。 心身ともに疲れ切った良太が車を乃木坂にある会社の駐車場に止めた時には既に真夜中を回っていた。 こだわりのディレクター下柳とこちらも自分の
月夜の猫-BL小説です 幻月23 BL小説 「とにかく、今は女を殺した真犯人を見つけない限り、工藤さんはまずい状況にあります。もし仮に真犯人を見つけられなかった場合、工藤さんが起訴される前に、すなわち工藤さんが容疑者として名前が出る前に、最終手段を行使します」 「最終手段……って……」 波多野はぞっとするような笑
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ22 BL小説 「こういう車で、サイドシートが犬と男、って面白くない図ですよね」 沈黙に耐え切れず、勝浩は口を開いた。 美利と大杉は猫を連れて垪和のワゴン車に乗り込み、ロクは後部座席に陣取った。 幸也の運転するアウディのサイドシートにおさまったのは、後ろにずらしたシートの前にキ
「ねぇ、ちょっとちょっと彩葉ちゃん!」 瀬戸ふたばがにぎにぎしく彩葉の席まで小走りでやってきたのは、冬休みがあけた日、全校集会を終え、きょうはこれで帰るだけ、という放課後だった。がらんとした教室で、色を読むまでもなく興奮した表情を浮かべたふたばは、椅子から立ちあがろうとしていた彩葉の肩に手を置いて「まぁまぁ落ち着いて」などと言う。「どうしたの?落ち着いたほうがいいのは瀬戸さんのような……」「落ち着い...
月夜の猫-BL小説です 幻月22 BL小説 「どういう………」 良太は息をのむ。 「工藤さんは表に出てはいけないんです。表に出るのならむしろ人気俳優にでもなって大々的に顔を知られるような存在であれば、ああいう連中も担ぎ上げようとか思わなかったかもしれませんし、狙われることもなかったかもしれませんが…………」
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ21 BL小説 何やら狐につままれたような面持ちで、勝浩は大学の片隅にある古いクラブハウスで待っているだろう犬や猫たちのもとへと向かう。 でも、机の上にあった見慣れぬ銀のライターといい、やはり夢ではないらしい。 誰のだろう? 検見崎さんって、いつも百円ライターの人だしな。 そ
清音の頬に手を伸ばして、彩葉は言う。「清音、ちゃんと心の色が見えるよ」「よかった……」「もうだいじょうぶ。清音はなくさない、もう、なにも」「ありがとうな。ぜんぶ、菅原のおかげだ」 彩葉を抱きしめている腕に力がこもる。まるで、懸命に身体のかたちを憶えようとしているかのようだった。 憶えていて。刻んでおいて。なくさないように。清音の心がいまを刻みはじめたのを感じながら、彩葉は胸を躍らせてその抱擁を受け...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の59 BL小説 「絶対あの准教授のせいよ」 アスカは断言した。 「准教授?」 「わかってるくせに。交流会の時にいたじゃない、香坂准教授。工藤さんの高校のクラスメイトよ」 もちろん秋山もわかっていた。 「工藤さん彼女と会ったんだって。ユキから聞いたのよ。良太はだから反旗を翻してるの
月夜の猫-BL小説です 幻月21 BL小説 千雪が良太にこっそりそう思わせておけと言ったのは、その時、千雪を襲った連中が千雪のことを工藤のイロと口にしていたところを見ると、千雪を工藤の女だと思い込んでいて、工藤の女を拉致するのが目的だったらしいからだ。 波多野は良太を小会議室といった部屋に案内し、やがて女性が良
月夜の猫-BL小説です 秋の陽8 BL小説 良太もちょっと可哀そうに思うのだが、何と言って声をかけていいかわからない。 「ちょっと、良太、万里ちゃんに振られた可哀そうなあたしに、俺でよければ、とかくらい言えないの?!」 とんだトバッチリだ。 「え、ああ、じゃあ、俺でよければ」 良太は棒読みのように口にした。
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ20 BL小説 勝浩が、いつ、何を言うか、幸也も志央も戦々恐々として、ようすを伺っていたに違いない。 思えば、その頃からこの二人は何人女を落とすか、なんてことを競争して、しかも賭けなんかをしていたのだろう。 人の心をもてあそぶなんて、ほんとに許せないやつらだ! そう思う傍から
「気持ちはうまく隠し通すつもりだったんだ。でも、おとといの夜に菅原のパジャマ姿を見て、欲情を我慢できなくなった。……まぁ、つまり、要するに、むらむらしたわけだな。怒鳴られても、殴られてもいいから、告白しようと思ってキスしたら泣かれてしまってびっくりした。あぁ、そんなに嫌なのかって。だから、全力でごまかした」 彩葉はそっと清音の背中を抱きしめかえした。こんなにかわいい人を、僕はほかに知らない。「それな...
ベッドヘッドに積まれたクッションに顔を埋めるように倒れ込んだアルフレードの髪を梳き、ハインリヒは深く息を吐き出した。それに気付いたアルフレードが埋めていた顔を上げて、微苦笑する。「ふふ、お腹いっぱい。食べ過ぎちゃったね」「あぁ。さすがは卿の行きつけの店だったな」マルタ島の伝統的な料理を出すレストランは個人が経営する小さなものだったが、地元の人々が集うその空間には柔らかな時間が流れていた。財界人や著...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の58 BL小説 「話ならいつでも聞くから、連絡しなさいよ? 当分はまだ東京にいるから」 タクシーのドアを閉める前に、香坂は言った。 「おう、またな」 工藤はそう言ってタクシーを見送った。 聡明でさばけていて美人で、あんないい女、とんといないな。 だからこそ、加絵と遊んだ時のような
「―――あいつさぁ、」 紫煙が揺れた―――様にみえた。 錯覚だ。だって夜衣(よい)はもう煙草を喫っていない。夜衣が吐いたのは、ただの白い息。 ぼくは夜衣に眼を向けて、それからその視線の先を追って天を見上げる。 冬の夜空。澄んだ空気に星が瞬いている。月は細く、居心地悪そうに浮かんでいた。「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どーすんの?」 その声が少し震えていたのは、この寒さの中長時間こんな処に立っていたからだろうかそれとも、「・・・・・・・・・・・・・・・・・・どう・・・・・・、」 何気ない風を装っ…
月夜の猫-BL小説です 幻月20 bl小説 もう行っちゃうの、今度飲み行こうよ、という坂口の名残惜し気なセリフを後にして、良太は二時過ぎにスタジオを出ると、三時まで二十分ほどもある時間にMEC電機本社の駐車場にいた。 「しっかりしろよ、俺」 三時まで十分となったところで、良太はもう一度声に出して言うと、車を降り
月夜の猫-BL小説です 秋の陽7 bl小説 「あー、やっぱり万里ちゃんだ」 オフィスのドアを開けるなり、中川アスカは声を上げた。 青山プロダクション所属の看板美人俳優である。 「アスカさん、お疲れ様です」 良太がパソコンから顔を上げた。 「アスカちゃん、久しぶり!」 万里子とアスカはハグすると、大テーブルのソフ
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ19 bl小説 忘れもしない、小学生の時、城島志央と一緒に勝浩に散々悪ふざけをした上級生。 子供のくせにやけに大人びて見えた。 「近頃の先生は何を教えてる、だって、笑わせるよ。いじめっ子はお前じゃないか!」 だが、その日のことが、何故か心に残った。 それから時折、塾への道すが
清音がなぁ、と言う。ちいさな猫がそっと鳴くときのような、なぁ、だった。「菅原、顔あげて」「……やだ」「なんで」「絶対、赤くなってるから」 清音がゆっくりと息をつく。そして、身動きする気配のあとで彩葉の身体に腕が回った。そのまま、抱きしめられる。彩葉が願っていたような、強く熱っぽい抱擁だった。 パジャマのままでぜんぜんさまにならないのが悔しい、と清音がちいさな声でつぶやいた。そして、こたつ布団に顔を...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の57 bl小説 中学でも工藤の伯父がヤクザだという噂はあっという間に広まっていたから、曽祖父は後見人の顧問弁護士を通じて工藤を私立の高校に行かせるように手はずを整えていた。 生徒のほとんどを海外からの赴任組の子どもや帰国子女が占めていた高校では、相変わらず工藤の出自は知られていた
月夜の猫-BL小説です 幻月19 bl小説 そんな顔をしていたのだろうか。 「まあ、いろいろ、夕方の打ち合わせのこととか」 「新しいドラマ?」 「いえ、CMなんですけどね」 そう、港区芝にあるMEC電機の広報部で四時からCMの打ち合わせが入っていた。 昔から家電のMEC電機として親しまれてきたが、今の正式名称は
月夜の猫-BL小説です 秋の陽6 bl小説 「何か、でも、いいよねぇ、高校生とかに戻りたいなあ」 万里子がため息交じりに言った。 「万里子さん、高校生の時からドラマに出てらしたわね」 鈴木さんが言った。 「そうなんだ。一年の時だけよ、高校生活満喫できたの、二年からこの世界に入っちゃったから。今でも思うのよ、あの
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ18 bl小説 迷惑を被ったのは勝浩だけではなかったし、乱暴したりするわけではなかったけれど。 勝浩は三年生の終わりに転校してしまったので、きっと幸也はそんなこともすっかり忘れているに違いない。 中学二年の時、父親が東京本社に栄転になると聞いて勝浩も喜んだが、当時人に貸して
「映画館の帰り、僕にマフラーを貸してくれたせいで清音が風邪を引いたんじゃないかって思ったら、なんだか申し訳なくて……」「そんなはずないだろ。俺が映画の途中で眠っちゃって、体温高いまま外に出たからだよ」 言下に否定するかすれた清音の声を聞きながらりんごの入った茶碗を片手に居間に行くと、水色の半纏を着た清音はこたつに入ってゆるく背を丸めていた。やっぱりだるいのかな、迷惑じゃなかったかな、と思いつつ清音の...
月夜の猫-BL小説です 幻月18 bl小説 翌日は朝から良太は出ずっぱりだった。 工藤が顔を出すはずだったスタジオでは『田園』の撮影が行われていた。 朝『レッドデータ』のスタジオに顔を出し、昼からはこちらに向かったのだ。 「おや、良太ちゃん」 久々に見た脚本家の坂口は、景気のいい声で良太ににっこり笑った。 「何
月夜の猫-BL小説です 秋の陽5 bl小説 って、俺、野球、当然、やってたよな。 いや、まさかね~。 そんな、都合のいい、ってか、偶然、ってか……… 「ハハハ………まさかね………」 良太は窓に向かって首を横に振った。 「透明人間と話してるのか?」 唐突に後ろから低いドスの聞いた声がした。 「わっ!」 後ろを振り
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ17 bl小説 ユウが検見崎を急かしたので、検見崎はもう何も言わず、ユウと一緒に外に飛び出した。 しんと静まり返った部屋のベッドで眠る勝浩の、すうすうという寝息が幸也の耳にも聞こえてきた。 「無防備に可愛い顔して寝てるんじゃないよ」 勝浩の頬を指でちょんとつつき、幸也はボソ
教えてもらった住所をスマホに打ち込んで、清音の家へとむかった。駅の反対側はコインパーキングを抜けるとすぐに住宅街だ。 左手に提げた袋のなかの鮮やかなりんごの赤に彩葉は目を細める。清音の熱がひどいようなら、すりおろしりんごを作るつもりだった。 しばらくスマートフォンのガイドにしたがって歩くと、やわらかな声が目的地についたことを知らせる。彩葉は目のまえの家を眺めて、まばたきを繰りかえした。「……ここ、...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)55までアップしました bl小説 霞に月の(工藤×良太)55、月で逢おうよ(幸也×勝浩)16、幻月(工藤×良太)17、秋の陽(工藤×良太)4までアップしました。
月夜の猫-BL小説です 幻月17 bl小説 「だよな。俺も社長には世話になってっからよ。こんなとこで、工藤に引導を渡されてたまるかよ」 小笠原が声高に言った。 「そうですよね! ありがとうございます!」 良太はまた皆に深々と頭を下げた。 「チラッと話にもあったように、警察より早く、千雪さんらが動いてくれて、情報
月夜の猫-BL小説です 秋の陽4 bl小説 「そうそう。工藤さんに急に原作者に会わせるって言われて、このオフィスに来たら、千雪さんがいて、あたし、初めはてっきり俳優さんかモデルさんだと思ったんだ。そしたら原作者だって言うでしょ? もうびっくりよ」 万里子は明るく笑う。 「ですよね~、あれは詐欺だ」 良太もうんう
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ16 bl小説 二十歳になってから、クラスの友人に誘われたり、研究会のみんなと飲む機会は何度もあって、勝浩も少しはたしなむようになっていたものの、酒が入ると眠くなってしまうようで、部屋で高校からの友人である七海と飲んだりした時は気がつくと朝だったことがあった。 「あぶないなぁ
翌日、胸をはやらせながら登校したところ、いつまでたっても清音が教室に現れない。清音の席のほうばかりをふりかえっている彩葉のところに、瀬戸ふたばがやってきた。「彩葉ちゃん、どうしたの?きょろきょろしたって百円玉は落ちてないよ」「……うん、あの、清音がこないから」 ほんとに仲がいいよね、というふたばの言葉に胸が大きく跳ね、視線を戻した。目のまえの席に腰かけているふたばは「速水くん、風邪だって」と言う。...
断片が、繋がる。「おしまい」と結ばれたはずのいくつかの物語が。舞台を変え、主人公を代え、全く違う景色を描きながら。延長線上に、新しい物語を紡ぎ出す。誰かの祈りが、誰かの願いが、織り込まれていく。昨日が、明日へと。たとえ途切れてしまったとしても、そこで終わりではないのだ。そこからまた、こうして始まる。始められる、とハインリヒは己自身とロザリオを重ねた。このロザリオが見届けてきた時間はそれこそ人間には...