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月夜の猫-BL小説です 霞に月の50 bl小説 「あれ、良太?」 玄関に続く応接間の前で紫紀と仕事の話をしていた工藤は、玄関に向かうひとみや宇都宮、天野や下柳らから一人離れてあたりを見回している紗英に気づいた。 「紗英さん、お迎え待ってるん?」 すると京助と一緒にやってきた千雪が聞いた。 「ううん。六本木行くん
月夜の猫-BL小説です 幻月11 bl小説 「工藤はその通りのことを取り調べでも話したが、端から工藤を犯人と決めつけている警察は耳を貸さないようだ。なので黙秘している」 「六本木のクラブ『ベア』も松下美帆も工藤さんの周りに記憶にありませんね。少なくともチーママの証言というのは勘違いか、偽証でしょう」 ややあって秋
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ10 bl小説 「で? 勝っちゃんは誰に片思いなのかな?」 面倒な相手に聞かれたな、と勝浩は眉根を寄せて検見崎を見た。 「そんなこと、あなたに言う必要ないでしょ」 「いやあ、実は美利ちゃん、多分勝っちゃん狙いだろうってわかってたんだ。ついにって思ったのにな。勝っちゃんがそんな
そうっと髪を撫ぜられて、もう一度、唇が重なって離れる。心臓がせわしなく動いているのか、静まり返って止まってしまったのかさえ彩葉にはわからない。ぎゅっと抱きしめられる。「……清音」 かすれた声で呼ぶと、応じるように彩葉を抱きしめている腕にさらに力がこめられる。こんなふうにだれかに抱きしめられたことはない。こんな、とても壊れやすい大切なものをどうしようもない気持ちで扱うときみたいに。 頬に、清音の頬の...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の49 bl小説 佐々木は公一が連れてきた女性陣にアイドルのように囲まれていろいろ聞かれているようだ。 藤堂や直子、三田村とバルツァーは、佐々木軍団の傍でそれぞれ笑いあっている。 アスカは秋山と宇都宮や天野、ひとみや下柳、須永らと飲みかわしているが、秋山と一緒にいられれば落ち着いて
月夜の猫-BL小説です 幻月10 bl小説 「八時に下柳さんと『ブラン』で待ち合わせたが、携帯を忘れた下柳さんの伝言だと言って制作スタッフからセントラルハイアットホテルの『スマイル』に変更したという連絡が入った。『スマイル』で待っていると店に工藤さん宛の電話が入ったので移動したが、何も言わずに電話は切れた。カウ
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ9 bl小説 夕方になっても気温が三十度までしか下がらない中を散歩するのは、人間も犬たちもなかなか大変だ。 一人でハスキーとラブラドールを散歩させるのは尚のこと。さらに三匹を連れてとなると、かなりな肉体労働になる。 二人は犬たちを三十分ほど運動させ、ぐるりと学内をまわってクー
軽く風呂を洗って換気扇をまわし、すこし緊張しながら自室の扉を開けると、清音がふとんの端で読んでいた本から目をあげた。「なんだかすっかりくつろいでしまった」などと言いながら本を閉じる。「お泊まり会って、もっと緊張するかと思っていたのにな」 清音の言葉にうっすらとした寂しさを覚えながらも、「ゆっくりしてもらえてよかった」と返した。ベッドに腰かけると、ふとんに座った清音が彩葉を見上げてくる。まつげが長...
月夜の猫-BL小説です 幻月9 bl小説 「俺はどうなろうとかまうものか。それを認めたら俺は自分の嫌悪するヤクザと変わらないことになる」 Tはどう片をつけたかは言わないが、それに対して工藤がそう言ったことがある。 「あなた自身ではなくあなたの大切な者に災いが降りかかるとしても、そんなことを言っていられますか?」
皿をまとめて運んだ清音がシンクで水を使う音を聞きながら、彩葉は口をひらいた。「清音、将来のことはなにか決まった?奨学金とか、目指す学部とか」「奨学金はたぶん大丈夫。学部は就職率とかも勘案しなきゃいけないから、ゆっくり決めるよ」「そうかぁ。就職率、重要事項だよねぇ」「菅原はいい図書館司書になれるよ。俺はそう信じてるから」 テーブルをはさんで、キッチンカウンターのむこうで皿を洗いながら清音はなんのて...
月夜の猫-BL小説です 幻月8 bl小説 それじゃ、到底真犯人に辿り着けるわけがない。 「証拠は挙がっているんだぞ!」 今度は威嚇か。 まるで三流ドラマで使い古された科白じゃないか。 あの時、酒がまずいような気がして飲み干していなかったからか、朦朧とはしていたが、比較的早く目が覚めた。 俺にご丁寧に血の付いたナ
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ7 bl小説 「さっき編集部の人たちと話してたやつでしょ? お断りします」 そう言い合っている間に、車は勝浩が借りている部屋の前に停まった。 「たまには、融通を利かせようよ」 「ユウの散歩があるから、ダメ。じゃあ、どうもありがとうございました」 にこやかに車から降りる勝浩を見
月夜の猫-BL小説です 霞に月の(工藤×良太)47までアップしました BL小説 霞に月の(工藤×良太)47までアップしました。高校時代勝浩が密かに思いを寄せていた先輩幸也は好きな相手に振られていた。東京で充実した学生生活を送っている勝浩の前に、いきなり幸也が現れるー月で逢おうよ アップしています。幻月(工藤×良
「清音、ハンバーグつくるのってそんなにすごいことじゃないから。やってみれば簡単にできちゃうし」「もうそのせりふがすごいよ……菅原って料理好きだったんだな、知らなかった」「うーん、好きっていうか、中学生のころから家事が分担制になったせいでできるようになっただけだよ」 ふうん、とうなりながら清音はカウンターキッチン越しに彩葉の手もとを凝視している。子どものようなまなざしに小判型に種を整える手が恥ずかしが...
月夜の猫-BL小説です 幻月7 BL小説 「小田さんも警察に行ってるそうです」 良太は淡々と口にした。 「そうか。だったら、とにかく、何があったのか、はっきりしたところを聞かないことにはな」 小田は工藤の大学の同期で、青山プロダクションの顧問弁護士でもある。 良太は工藤が連行されたということに愕然としていたが、
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ6 BL小説 「勝浩、そろそろ終わる? 俺、この辺で切り上げるけど」 後ろの席で煙草をいじっていた検見崎が声をかけてきた。 最近自分の部屋以外喫煙可能な場所を探すのすら困難になってきたのだが、癖でつい手にしてしまうのだ。 時計の針は午後九時を少しまわろうとしているところだった。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の47 BL小説 工藤も良太の方に顔を向けた。 すっかり良太に気を許したヨハンナと笑いながらたどたどしいドイツ語で懸命に会話をしている良太に、工藤は苦笑する。 だが、ちょっとは良太のことを心配したらどうなんだという藤堂の思惑まで気づくはずもない。 「良太ちゃんって、やっぱすごいんだ
月夜の猫-BL小説です 幻月6 BL小説 下柳を待ってグラスを傾けていると、「工藤様いらっしゃいますか?」と店のスタッフが言った。 工藤が立ち上がると、電話が入っているという。 携帯を忘れたといっていたから、下柳がまた遅れるとかいう電話だろうと思い、工藤は店の受話器を持って人のいないレストルーム近くへ移動した
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ5 BL小説 おそらくほんのきまぐれだったのだろう、あの人からもらったマフラーは、あの日の、たった数十分の時間と一緒に引き出しの中にしまってある。 学園を卒業するまで、勝浩にとってはずっと昔から苛めっ子でしかなかった幸也だ。 だけどいつの間にか、長谷川幸也という存在は、それこ
なんで?と湯船につかりながら彩葉は何度目かもわからないまま疑問を心に浮かべた。 あのとき、『清音は僕の特別だから』とたしかそう言った。あの言葉にどうしてあんなに清音は驚いたのだろう。わからない。 自分の身に置き換えて考えてみた。もしも清音が『菅原は俺の特別だから』って言ったら?あの声で、そんなふうに言われたらどう思う?彩葉は鼻まで湯に浸りながら、うれしい、という単純な結論を即座に導いた。どんなか...
月夜の猫-BL小説です 霞に月の46 BL小説 「良太ちゃん、大丈夫かしら」 良太の背中を見送ってから、ひとみが工藤の方に視線を向けた。 「ただの高校の同級生だろ?」 宇都宮も工藤と香坂が談笑しているのをチラリと見た。 「誰? 工藤さんと話してる人」 小声だがはっきりした声で秋山が良太に尋ねた。 秋山も意外に思
清音の問いが、耳に滑り込んできた。どこかぼんやりとした、幼い口調だった。「菅原、いままで友達を泊めたことないのか?」「実はね。お泊まり会、はじめてなんだ」 みじかく答えて、清音を見る。目があうと、すうっと的を絞るように彩葉だけを清音の視線がとらえた。 そのときの清音の表情の変化の意味を彩葉は読み取れなかった。たとえて言うなら、暗い闇に沈んだ地面をさっと強く鮮やかな光が掃いていくような、そんなふう...
「みっともないところを見せたね」そう言って微苦笑するパスクァーレに促され、ハインリヒは絨毯についていた片膝を上げた。そして、場所を変えてもいいだろうかと問う彼にアルフレードと共に頷き、杖を手にソファから腰を上げた彼に続く。部屋から出ると席を外していた執事のエリゼオがこちらに戻ってくるところで、主であるパスクァーレに慌てて駆け寄って来た。それもそうだろう。長く仕えている主の瞳に涙の跡があれば誰だって...
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ4 BL小説 「そうね。ぐーたら、飲み会ばっかやってる場合じゃないと、常々思ってはいたのよ」 垪和もうんうんと頷いた。 「やってみるか。だがちょっとやそっとじゃできないぞ。こいつら、てんで躾がなってないし」 「ああ、俺、心当たりある。躾の達人に。ちょっと頼んでみるよ」 当時
月夜の猫-BL小説です 幻月5 BL小説 「何せ、局時代はすごかったからな。いや、今も彼女の一人や二人、いるんだろうが、身を固めたりする気はないのか?」 紺野はからかい半分、そんなことを聞いてくる。 「俺はムリですよ」 「それだ。お前は自分からシャットアウトしてしまってる。血縁といってもほぼ無関係なんだし、お前
2023-09-07更新キム・フィールディングさん作のBL小説 「ALASKA」の感想です。 2021.4月発売 (新書館 モノクローム・ロマンス文庫) (購入:コミックシーモア) わたくし初の海外BL小説でございます。 いまはもう閉鎖されてしまった 某BL感想ブログで紹介されていて いつか読みたいな、と思って 購入候補に入れたのではないかと思うのですが そのあたりの記憶が全く定かではなくて どんな紹介をされていたかもわからず・・・ 短編でしたのでサクッと読んだのですが これがまあ重かった(笑 家庭環境に恵まれず 辛い思いをしているスコットとマルコの クリスマスの日を5年おき 12~32歳になるまでの20年間が描かれています。 ふたりの境遇がつらすぎて 年月が経ってもそれがなかなか解消されず 苦しくて苦しくて 読みながらもう..
月夜の猫-BL小説です 霞に月の45 BL小説 「だれ? 高広、とか言っちゃって」 早速ひとみが良太に聞いてきた。 「高校のクラスメイトだそうです。法医学の香坂准教授」 「ふーん? やけに馴れ馴れしいわね」 ひとみはチラリと香坂に視線を飛ばして言った。 「ま、でも大丈夫よ、良太ちゃん。高広はあんな女に屈するよう
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ3 BL小説 「ええ、橋爪さんには明日来いって言われてます。あさってはここの当番俺ひとりだし、ちょっと無理かも」 検見崎に聞かれて勝浩はそう答えた。 「んじゃ、明日ね」 賑やかな検見崎が背中を向けたまま、ひらひらと手を振ってクラブハウスを出て行くと、部屋の中はやがて和やかな静け
月夜の猫-BL小説です 幻月4 BL小説 どうも前田には実際よりかなり若いと思われているのかもしれない。 この店では特に工藤はあまりしゃべらない。 良太も黙ってマティーニを飲む、つもりなのだが、酔ってくるとつい良太の口は滑らかになる。 工藤はそんな良太に苦笑しながら答えている。 今夜はカランという氷の音が響くほ
……気にするなって、どういうこと? 清音の言葉の意味を掴めずに、彩葉は心に浮かんだまま「どういうこと?」と返した。清音はうつむいて、首筋をかりかりと引っかきながら困ったように言葉をさがしている。「俺の好きな相手のことなら、菅原は気にしないでくれ」 まだよくわからないけれど、自分はいま告白もしていないのにふられたのだとそれだけはわかる。彩葉は精いっぱいに振り絞った笑顔を浮かべて「承知しました!」と言...
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ2 BL小説 この研究会が学内で一躍注目を浴びた理由は、昨年から、老人ホームや養護施設に犬や猫を連れて行き、一緒に過ごしてもらうという活動を始めたことだ。 「でもせっかくホームのおばあちゃんたち喜んでたのに、雨降ってきちゃってさー」 「また、行けばいいさ、な、ラブ」 「ちょっ
月夜の猫-BL小説です 幻月3 BL小説 「あら、ありがとうございます。でも、今夜は娘と約束がありますの。どうぞ、良太ちゃんとゆっくりなさってくださいな」 「そうですか。ではまたの機会に」 工藤も無理にとは言えないのだが、何となく鈴木さんが遠慮したのではないかと思った。 そういう人の心の機微をさりげなく読むよう
その日の帰り、冬の夕方の白くて弱い光が差し込む昇降口で清音と鉢合わせた。制服のブレザーの上から厚手のコートとぐるぐる巻きのマフラーを身につけていて、ちょっとした越冬隊のかっこうだ。少なくとも、学年内のだれよりも厚着しているにちがいないと彩葉はちょっと笑ってしまう。「清音、寒いの苦手?」 告白事件の顛末を聞いてなにを話せばいいのかわからなくなっていたはずなのに、おかげでそんな軽口を叩くことができた...
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ1 BL小説 「ここの桜、春になるとすげーよな。こんだけ大きいの、あんまり見ないな」 風がひと吹き、まだ花には遠い寒々しい枝を揺らす。 毎年春になると校門をくぐる生徒たちを静かに見守っている桜の木の下を、初めて二人で歩いたのは、二年と半年前の二月、バレンタインデーのことだ。
月夜の猫-BL小説です エピソード秋の陽をアップしました BL小説 暑い毎日が続いておりますが、既に9月、秋の声も近づいているのでしょう。エピソード秋の陽をアップしました。幻月(工藤×良太)は、少し修正しつつアップしてまいります。引き続き、霞に月の、とともによろしくお願いいたします。お読みいただき有難うございま
月夜の猫-BL小説です 幻月2 BL小説 昨年からの不安定なアメリカ経済の余波と、若者のテレビ離れが懸念され、また視聴率の低下や経費削減のため昨今二時間ドラマなどの枠が激減し、下請けや孫請けの仕事を請け負っていた、青山プロダクションでも古い付き合いの制作会社が倒産、その社長が自死するという事態となった。 当時、
呆然と見上げる彩葉の視線の先で、相変わらず花のような香りのするふたばが楽しげに話している。 清音とはちがう香り。清音を抱きしめたときは、どこか香ばしい、牧草みたいなのんびりした匂いがした。あの瞬間、たしかに清音のいちばん近くにいたのは彩葉だったはずなのに。「彩葉ちゃんが仲良くなってから、速水くんもまわりと打ち解けてきてたしね。好きな女子のひとりくらいいてもおかしくないんだけど」 なにをやっていた...