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前回ピックアップした蔵前仁一さんの自叙伝『あの日、僕は旅に出た』(2013年)は、文中にそれまで発表されたエッセイの話もチラホラ登場し、自然と過去作も読み返したくなる構成です(※詳しくはこちらから)。 ならば続け様にもう1冊、蔵前さんの作品を紹介したいと考え、『ホテルアジアの眠れない夜』(講談社文庫/1989年)を選んでみました。 余談ですが、『ホテルアジアの眠れない夜』の次作となる『ゴーゴー・アフリカ』が、今年9月にボツワナ編とトルコ編を加筆し、電子書籍版『新ゴーゴー・アフリカ』として新装されるとか。そちらも楽しみです。 記念すべき出世作 『ホテルアジアの眠れない夜』は蔵前さんにとって3作目…
宮田珠己さんの処女作『旅の理不尽 アジア悶絶篇』を取り上げておいて(※詳しくはこちらから)、蔵前仁一さんの本を紹介しないわけにはいきません。 そこで、いろいろな作品があるなか、ひとまず『あの日、僕は旅に出た』(2013年/幻冬舎)をチョイスしてみました。最初にお断りしておくと、この本はいわゆる旅エッセイじゃありません。 1つの旅を機に人生観がガラリと変わり、世界を放浪しながら個人旅行専門誌『旅行人』を、さらにはその延長線上で雑誌と同名の出版社を立ち上げ、そして手塩に掛けて育てた『旅行人』の休刊を決意するまでが綴られた、蔵前さんの自叙伝的な一冊です。 いち編集者として この物語は、フリーのグラフ…
引き続きアジアの旅エッセイです。前回ご紹介したマミヤ狂四郎さんの『アジア裏世界遺産 とんでもスポットと人を巡る28の旅』は、著者みずから率先してトラブルに巻き込まれようとするフシがあり、一般の旅行者にはなかなか体験できないエピソードだらけでした。 一方、今回取り上げる宮田珠己さんの『旅の理不尽 アジア悶絶篇』(1995年)には、アジアを旅する人の多くが経験してきたであろう、ありがちなハプニングが並んでいます。 出だしからこんなふうに書くと〈凡庸な作品なのでは?〉と思われてしまうかもしれませんが、凡庸なエピソードを非凡な作品に仕上げてしまう点が宮田さんの凄いところ。マジでこの人、どうかしています…