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十八、イカロスいつもなら、森が見える場所のはずである。それなのに何も見えない。何も見えないというよりも、何もない。あるのは一面を覆い尽くす深い霧。その霧が晩秋の早朝のように道を覆い、森を覆い、その先の山を覆っている。「すげえ。霧のミルクだ」夏分にしてはいい表現だ。「何かの舌みたい」と羽流が続いたのをきっかけに、喩えが応酬した。雲の津波とか、霧の滝とか、アイスクリーム、カキ氷。そんなのはまだ好か...
頬打つ風の後先にうつろう季節の歌声はぼくを起こす風の歌町も季節も一緒になって命を乗せて過ぎてゆく見たまえ この時の爆風を目の前に今日が訪れるのは離れる岸を忘れないためあらゆる事物が足早に去るのは世界が虚しいほどの空っぽさゆえに風の歌は刷新を望み、無常の残り香を愛した地上のぬくもりの艶模様眼差しにこもる歌声はぼくを掘り起こす光の声地下に眠る種や根たち無心の魂に光は届く見たまえ この意識の発現を頭上に...