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月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み44 BL小説 曾祖父は頑健な男だったが、滅多なことでは怒ったりしなかった。 かといって工藤のことを放りっぱなしでもなく、学校の話などよく聞いてきた。 曾祖母は品のいい優しい人だったが、極端に工藤をかまうということもなかった。 だが、当時は嫌われていると思っていたのだが、今思う
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み43 BL小説 どうせ極道などとまともに取引なんかできるか、とでも考えていたのだろうとは容易に推察できる。 いつもそっちで勝手に決めればいい、というスタンスでいるのだが、これが藤田や美聖堂の斎藤には何故か気にいられて、これまで長い付き合いになったりしているのだから不思議だ。 紫
月夜の猫-BL小説です 霞に月の34 BL小説 良太は猫たちにご飯をやり、着替えると、軽くサンドイッチで夕食にして、車で高輪へと向かった。 工藤に言われてから、空いた時間に高輪のジムへ週一、二回通っている。 お陰で身体の調子が前よりいい感じだ。 「でも、あれか。もし、そのイベントで、工藤に誰かが見つかったら、ジ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み42 BL小説 浜村と渡良瀬が立ち去ると、紫紀が言った。 「お疲れ様です。工藤さんも良太ちゃんも、肩凝ったでしょう? ちょっと奥で一服されてはどうですか?」 工藤はすぐにも帰りたそうな気配だったが、「ありがとうございます」と先に良太が答えたので、眉を顰めながら工藤も良太の後に続
月夜の猫-BL小説です 霞に月の33 BL小説 「それはまあ、わからんでもないけど。せや、最近法医学研究室にアメリカから来はった准教授が、工藤さんにちょうどええかもて」 「おや、そうなの?」 「それと、桐島の友人のバイオリニストが美人で陽気なんですわ」 「へえ、なるほど、異業種交流会だ」 「工藤さんと良太にそれ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み41 BL小説 京浜ホールディングスのブレインはこの人か。 良太は心の中で頷いた。 広報にも詳しいらしい。 「そうですか。彼の仕事は素晴らしいですね。実は一ファンなのですよ。お会いしたことはありませんが、これまでの業績は聞き及んでいます」 「ええ、とても、常人にはない発想と技量
月夜の猫-BL小説です 霞に月の32 BL小説 「うーん、それって、表向きはってことだよね?」 すると千雪は少し眉を寄せる。 「まあ、二人とも頑なやし、特に工藤さん。出自があれやからってのはわからないでもないけど、いくら何でもって思うし、この辺で何か起爆剤になるようなことがあれば、や、この際、二人とも別の誰かと
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み40 BL小説 「キャストは有名どころが出演されるんでしょうか?」 渡良瀬は聞いた。 「まだ正式には決まっていないようですが、先生が推しておられる俳優さんはどなたでもご存じの方になるのではと思いますが」 「なるほど」 にっこりと渡良瀬は笑った。 「あら、良太ちゃん、探したのよ~
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み39 BL小説 良太を見つけた工藤は険しい顔をしたが、すぐに表情を戻して、話に戻った。 「ああ、いいところにきたね。浜村さん、青山プロダクションの広瀬くんです」 紫紀が良太を認めるとすぐに二人の男に紹介した。 浜村と呼ばれた男は五十代くらいだろうか、穏やかな顔つきのスマートな男
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み38 BL小説 「いや、俺はお客ってほどでも。ひょっとして警察行ったんですか? 知り合いが捕まえたって?」 良太は聞いた。 「ああ、ダチとその仲間、まあ、ちょっとバイクのテクがある連中四、五人で車追って、のっとった男二人、引き摺りだして、捕まえたて」 「バイクだけじゃなくて腕っぷ
月夜の猫-BL小説です 霞に月の30 BL小説 「異業種交流会、ですか?」 翌日、出社してきた森村に、良太は昨夜千雪に提案された話をすると、森村は怪訝な顔で聞き返した。 「まあ、合コンとはちょっと違うけど、もっと広い意味でというか」 良太としても今一つピンとこないのだが、千雪の言うには、年齢や職業、性別問わず
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み37 BL小説 「お金に決まってるじゃない! いい服着ていいもの食べて、いい暮らししてるあんたたちなんかにわかんないわよ!」 ちょっと見可愛いと思われるだろう顔がゆがんだ。 良太までをも小谷は睨み付ける。 「いや、俺の服はただこのパーティのために社長に買わせられただけなんだけど
月夜の猫-BL小説です 霞に月の29 BL小説 それでも、ワインをゴクゴク飲んだ良太はそのうち酔いがまわってくると、泣いていたのが「モリーのやつがね、しきりと彼女が欲しいって俺に訴えてきて」とへらっと笑うようになり、「だけど、さすがに俺にも、はい、彼女、とかってプレゼントするわけにもいかないじゃないですか」など
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み36 BL小説 目を眇めるようにして良太と小谷を睨み付けていた工藤は、自然と怖い顔になっていた。 「工藤さん、どうかなさったの?」 そんな工藤を見て、理香が尋ねた。 「あ、いや、知った顔があった気がしたが違ったようだ」 あの野郎、いったいどこに行くつもりだ。 イラつきながら工藤
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み35 BL小説 「手分けして探してどこか、談話室、空いとるよな? あそこに連れてこよか」 聞いてきた京助に千雪が提案した。 「談話室か」 緊張しながら良太は呟いた。 「誠が窃盗犯二人、自分の車で連れてくる、言うてた。諏訪の森公園あたりで追いついたらしい。車はダチに丁重に運転させ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み34 BL小説 「ほんで、学生を使ってこそこそ窃盗やパパ活なんかやらせているのが、さっきのもう一人のオッサンや」 「……何か、段々、その通りだって気がしてきました。ってことは、駐車場、気を付けてた方がいいってこと?」 「せやな。帰りは各々好きな時に帰ってもらうことになっとるし
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み33 BL小説 良太は少しばかり気が気ではない。 戻ると、工藤は年配の男と話していた。 「あら、藤田さん」 理香が声をかけると、フジタ自動車社長、藤田が振り返った。 「おや、理香さんじゃないか。広瀬くんも、久しぶり」 「お久しぶりです」 良太は皿を傍らのテーブルの上に置いて、
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み32 BL小説 「会社ってどこだっけ?」 「え、青山プロダクションです。一応プロデューサーです」 理香に聞かれて良太は、プロデューサー、を強調する。 「っていうと、ひょっとして工藤さんのとこ?」 俄然、理香の目が輝いた。 「そうですけど、昨夜も今夜も一緒に来てますよ」 胡乱気に
月夜の猫-BL小説です 霞に月の27 BL小説 「せやなあ」 千雪は肯定するように頷いた。 「それ、ほんまに近しいもんやないとわかれへんよなあ。工藤さんのご学友の小田先生や荒木検事とかも、工藤さんがこの世に未練がないみたいに生きてるんが歯がゆいて思うとるんやないか?」 やはり千雪も工藤のそういう面を感じ取ってい
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み31 BL小説 門が開いたので、良太は車をゆっくりと進めた。 昨夜と同様車寄せでは藤原とスタッフが出迎えてくれて、良太はスタッフにキーを預けた。 その時、何かしら引っ掛かりがあるような気がして、一度振り返ったが小首を傾げつつ、藤原に案内されて工藤とともに中に入っていった。 ホー
月夜の猫-BL小説です 霞に月の26 BL小説 「寒うはないけど、なんか、ええなあ、炬燵て」 千雪は炬燵に脚を突っ込んで和んでいた。 「はあ、結構この部屋にくると、みんな炬燵に根がはえるみたいで」 良太は苦笑した。 二月半ばには、この狭い部屋に何人もが押し掛けて酒盛り状態だった。 「へえ、妹さん、彼氏連れて来た
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み30 BL小説 「あ、ありがとうございます」 良太はさすがに大きなチョコレートプレートを食べた後は胸やけがしそうになって、紅茶をゴクゴク飲んだ。 「明日は何時頃こちらを発つ予定です?」 杉田は紅茶を良太のカップに注ぎながら尋ねた。 「十時くらいには出ます」 「あら、じゃあ、朝食召
月夜の猫-BL小説です 霞に月の25 BL小説 「あ、まさか、締め切りが迫ってて、バックレようとか思ってます?」 「フン、残念ながらギリで間に合うたわ」 「そっすか? だって時々、携帯切って編集さんやり過ごそうとかやってるじゃないですか」 前科があるから千雪の言葉を鵜呑みにすると危ないこともある。 「シルビーの
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み29 BL小説 こういう時、昔ならつい煙草に手が行くのが常だったが、最近は自分だけでなく周りにも害があるなどと言われて、禁煙までは行かないが、ポケットに煙草を入れるのはやめている。 「さあさ、座って下さいな、ほら、ぼっちゃんも」 良太は吹き出しそうになるのを何とか堪える。 ダイ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み28 BL小説 「ただ今帰りました~」 別荘に着き、声をかけながら中に入ると、キッチンから音が聞こえた。 杉田はキッチンにいるらしい。 「杉田さん?」 「あら、良太ちゃん。お帰りなさい」 「ただ今戻りました。これ、どうぞ。クロワッサンがすごくうまくて」 良太がベーカリーの袋を
月夜の猫-BL小説です 霞に月の24 BL小説 「このシリーズの主人公である六条渉は、幼い頃に家族を強殺されるという凄惨な経験を持っているので、罪を犯した人間に対して極端な憎悪を抱いています。ともすると非情に被告人に対して厳罰を与えかねない自分と常に闘っているというような深い闇があります。また六条に限らず、刑事の
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み27 BL小説 「そうか。工藤さんそういう義理難いとこあるしな。けどまあ、昨日から夏休み珍しゅうとらはったんやろ?」 千雪は頷いた。 「はあ、何かドラマの若いタレントが風邪でスケジュールに穴をあけたとかで、怒ってましたけど、ちょうど休みになったからよかったっていうか、急に軽井沢行
月夜の猫-BL小説です 霞に月の23 BL小説 「クッソ、まんまと良太の姦計にはまってしもたわ」 食事を済ませてNTVへ向かう車の中で、後部座席の千雪はボソリと言った。 「何ですか、その言い方、人聞きの悪い」 「美味いもんでつられる俺も俺やけど。ちゃっかり着替えまで用意してきとるし」 千雪は大学での上下ジャージ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み26 BL小説 「俺、何か、中山組の先代が工藤さんのそのお嬢さんに一目ぼれして無理やりみたいなこと考えてましたけど」 「今、八十歳くらいか? 先代は十年くらい前に亡くなったけど、お嬢さんの方は今もバリバリの姐御や、いう話」 良太はしかし、少し眉を寄せた。 「でも、そんなみてきた
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み25 BL小説 「旧軽のカフェでしたっけ?」 ハンドルを切りながら良太は千雪に聞いた。 「前に、通りかかっていっぺん入ってみよ思うとったんや」 ナビに案内されて辿り着いた店は、ちょっとした林に囲まれた古い木造の建物だった。 ランチメニューはパスタやカレーと自家製パンが最近ちょっ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み23 BL小説 「京助さんと千雪さん、あれって、双方横暴でもどっちかっていうと、京助さんの方が弱いよな、惚れてる分」 一見して京助の傲慢さに千雪が振り回されているようで、その実、どちらかというと千雪の方が振り回しているようだ。 「まあ、しょうがないよな、惚れてるんだから」 良太
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み22 BL小説 別荘に戻ると、ダイニングテーブルに、ワインクーラーに冷やした冷酒と杉田のメモが置いてあった。 「お酒を召し上がるのなら、いくつかおつまみが冷蔵庫にあります」 良太が冷蔵庫を開けると、ナスの煮びたし、里芋の含め煮、キュウリの梅肉和えなど、工藤の好きそうな小鉢がいく
月夜の猫-BL小説です 霞に月の21 BL小説 「四月は杉田さん、ほら、軽井沢でお世話になった年配の女性だけど」 「大丈夫です。ちゃんとわかります。いろいろ杉田さんとはお話もしたので」 「四月がバースデイなんだけど、大々的じゃなくてこじんまりとでいいので、平さんみたいにお祝いしたいんだ。それで、何かいい案がない
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み21 BL小説 良太は何もかもが済んでから父親から連絡をもらって、それこそ青天の霹靂だった。 ただし、債権者しかもたちの悪い連中にいつの間にか債権が譲渡され、ガラの悪い連中が良太のアパートに押し掛けたのは、中野弁護士の誤算だったようだ。 中野から直接良太にも連絡がきたが、何か手立
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み20 BL小説 「あ、そうだ、さっきプリンとかお渡ししたんで食べてくださいね」 別れ際、良太は千雪に伝えると、駐車場から車を回してくれた公一からキーを受け取って運転席に乗り込んだ。 工藤が助手席に座ると、良太はそろそろとアクセルを踏む。 藤原と公一が頭を下げて見送るのをバック
月夜の猫-BL小説です 霞に月の19 BL小説 佳乃さんとは、そういう関係ではないって言ってたけど、未だにちゆきさんを忘れられずにってのは、工藤、哀しいぞ、それ。 小説家の千雪さんに未だに横恋慕してるっていうんでもないのなら何だよ? 考えたら、四十超えて、俺なんか相手にしてっから、工藤、結婚とかもできないんじゃ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み19 BL小説 「大も最近、紫紀さんてより、京助のクローンみたいになってきたやろ?」 大学生になったという大はこころなしかスキー合宿の時より背が伸びたようで、ほぼ京助と変わらないくらいだ。 「性格は似ても似つかない感じの真面目さですけどね」 千雪は苦笑する。 「そのとおりやから
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み18 BL小説 「やだ、仲間割れ? そういえば、スキーに来てた麗しの茶道の若先生は?」 理香が思い出したように聞いた。 「仕事です。茶道の若先生はサブで、本業はクリエイターですから」 きっぱりと良太は答えた。 「ああら、残念。またお会いしたかったのに」 理香が大仰に肩を竦める。
月夜の猫-BL小説です 霞に月の18 BL小説 辛うじて十時前にオフィスに駆け込んだ良太は、鈴木さんと森村の声がするキッチンを覗いた。 「おはようございます、すみません、手伝います」 鈴木さんが食器を洗い、森村がキッチンペーパーで拭いてワゴンの上のトレーに置いている。 「あ、いいですって、良太さん、自分の仕事や
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み17 BL小説 「まあな。しかし、今夜はまちごうたな。ジャージに黒縁メガネで来なあかんかった」 「は?」 良太は千雪の顔を見て、小首を傾げる。 「こんだけわけありなセレブや俄かセレブが集っとるんや、何が起こるかわかれへんやろ? 名探偵がおらんと話にならん」 「ああ、はいはい、で
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み16 bl小説 「せやな。あとはほら芸能人や業界関連もいてる」 良太はそれらしい一団に目をやった。 「ああ、浜田しおりとか岸紘一郎とか、大御所俳優ですね。あれってスズキエンターテイメントの鈴木社長でしょ」 スズキエンターテイメントは古くからの大手芸能プロダクションで、良太もそ
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み15 BL小説 「フン、同類やん」 千雪がここぞとばかりに言い放つ。 「喜ばないでください。料理と言えば、宇都宮さんもできるんですよ、てきぱきとアクアパッツァとか」 「へえ、てか、宇都宮さんとそない親しいん?」 「え、いや、ドラマの合間に、宇都宮さんちで鍋やったんです。ひとみさ
月夜の猫-BL小説です 霞に月の17 BL小説 キスくらい幾度もしているけれど、良太は未だにこれ現実だよなとか、疑ってしまう。 一度離れたあとまたすぐに口づけられて、良太は少し震えた。 何だよ、まるで恋人のキスみたいじゃん。 キスは次第に深くなり、目を閉じた良太の脳内は次第に白濁していく。 唇が離れて良太は目を
月夜の猫-BL小説です 鬼の夏休み14 BL小説 ノースリーブのフレアーワンピースはシンプルな紺色だが、小夜子が着ると華やかでゴージャスに見えるから不思議だ。 ふわりとした可愛らしい雰囲気の女性だが、仕事はきっちりこなす、なかなか芯はしっかりしている。 さらに千雪の従姉にあたり、よく似た美女である。 「お忙しい