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月夜の猫-BL小説です 寒に入り38 BL小説 「フフ、でも、良太ちゃん、八面六臂の活躍でしたもんね、去年も」 美味しいわとケーキを堪能していた鈴木さんが今度はそんなことを言う。 「うちの祐二も良太ちゃんのこと、すごく信頼してるみたい。ほら、前の事務所でギャラ持ち逃げされちゃったでしょ? それから結構人を
月夜の猫-BL小説です 寒に入り37 BL小説 つまり宇都宮は、古くからのファンだけでなく、現役女子高生のハートも掴んでしまう俳優ということだ。 「宇都宮さんて、デビュー当時から今まで、ずっと人気俳優だったってことですよね?」 良太は言った。 「持ち上げてくれても何もでないからね」 宇都宮は良太ににっこ
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には19(ラスト) BL小説 工藤が自分の中に入り込もうとするその時の痛みに、良太がわずかに目を開けると、何だか苦しげな工藤の顔が見える。 ふと、降りしきる雪の中で、鳴きながら羽ばたいていた大きな白鳥の姿が脳裏に蘇る。 切なげで哀しい、野生の命だ。 何だよ! あんた
月夜の猫-BL小説です 寒に入り36 BL小説 小笠原が今日はオフだというので、良太は真中に引率を頼んでしまったが、仕事ではないので撮影を楽しんでみているようだ。 撮影が始まる前にメイクを直してもらっている宇都宮の横に、マネージャー田之上を見つけて良太は挨拶をした。 「今日はありがとうございました」 「
全国各地の視覚障害ミュージシャンが集結するスーパーライブを主催。白杖のプロデューサー「マエケンさん」こと前田憲志さん。ガイドさんと一緒に、NAOウクレレスクールを訪ねてくれました。「念願のNAOウクレレスクールに来られて幸せです。」マエケンさんはオーラがある。
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には18 BL小説 「工藤さん、何かあったの? 良太ってば、ものも言わずに部屋に戻って、ご飯にも降りてこないのよ」 午後八時、ホテルのレストランに集まった面々の中に良太の姿はなかった。 アスカが気にして工藤に聞いてくる。 「そうなんだよ、昨日、帰るなり良太、勝手に部屋にあが
月夜の猫-BL小説です 寒に入り35 BL小説 息せき切って良太がスタジオに辿り着いた時には、既に真中が見学希望者を引率して宇都宮俊治主演の単発ドラマの収録が行われている現場へと足を踏み入れているところだった。 「お、良太ちゃん、今日撮影?」 廊下で顔見知りのディレクターに声をかけられて、良太はぺこりと頭
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には17 BL小説 良太はむっつり黙りこくったまま、みんなの後ろからゲレンデに出た。 小笠原は、どうしたんだ、と良太を心配して声をかけたが、アスカや秋山はあえて何も聞いてこない。 しかもまたしても招かれざる客がそこに登場したのだ。 少なくとも良太にとっては。 出掛けに
月夜の猫-BL小説です 寒に入り34 BL小説 そして良太は男だ。 良太が工藤を狙った男に刺された時、良太の妹の亜弓が言い放った言葉が頭から離れない。 「おにいちゃんには将来があるんです。これから結婚したり奥さんや可愛い子どもと、ささやかでも幸せな家庭を作る権利はあるんです!」 工藤を見た時の亜弓の目
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には16 BL小説 エントランスあたりで、先ほどの集団の中から「へ、うそ」と言う声と、先ほどいちゃもんをつけてきた男が、驚いたような顔で工藤の方を一度振り返るのが、良太にも見えた。 男たちが姿を消すと、従業員も客もホテル中がほっと胸を撫で下ろしたようで、空気が和らいだ。
月夜の猫-BL小説です 寒に入り33 BL小説 店のスタッフは三人を見るとすかさず奥の和室に通してくれた。 おそらく局からそう遠くない立地故に、業界人も結構顔を見せるのだろう。 真新しい店内は、結構手の込んだ渋い作りになっており、ちょっとした料亭もどきな雰囲気で、夜はじっくり酒も飲めるようだ。 「それに
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には15 BL小説 いざ出陣、とばかりに、部屋に戻ろうとした青山プロダクション一行の前に、今まさにエントランスからホテルに入ってこようとしている、黒ずくめの集団があった。 良太はふと、いやな予感がした。 工藤が中山組組長の甥であることは、どうにもできないしがらみなのだが、
月夜の猫-BL小説です 寒に入り32 BL小説 「あかんね……去年、知り合うた女の子にフラれたて話、あれ、ほんま、俺、話しとっても引いてもうて、女の子に愛想つかされて当然やってん」 そう言えばそんな話もしていたっけと、良太は思い出した。 豪快で陽気なイメージしかなかった八木沼にそこまで深刻なトラウマがあった
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には14 BL小説 朝、起きてみると、体中が痛い。 「夕べ、調子に乗りすぎたかな~」 良太はぼそりとつぶやいた。 それより、工藤には昨日フロントで会って以来顔を見ていない。 顔を洗っていると、部屋の電話が鳴った。 「はい! あ、何だ、お前か」 慌てて電話に駆け寄るが、
月夜の猫-BL小説です 寒に入り31 BL小説 「しばらくして目え冷めてきて、起きな思た時や、その子が、誰かと電話で、八木沼なんかちょろい、写真撮ればカモれるとか何とか話しよって」 「え、それってハニートラップ?」 八木沼の話に良太は驚いた。 「先輩にくれぐれも引っ掛かるなて、耳タコやったのに、ほんまにな
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には13 BL小説 ―――――――――が、しかし。 「あ、良太、いたいた!」 「よう、元気だったか? 俺がいなくてさびしかったろ?」 翌朝、連れがきているという、フロントからの連絡に、うきうきとロビーに降り立った良太は、聞き覚えのあるそれらの声に、耳を疑った。 「あ…アス
月夜の猫-BL小説です 寒に入り30 BL小説 八木沼にも話したのであれば、よほど八木沼のことを信用しているのだと良太は改めて思う。 インタビューが終わり、携帯を見ると時刻はまだ二時前である。 スタジオ見学には十分間に合いそうだと思いながらスタッフと打ち合わせを終えて帰り支度をするか、という時に、八木沼
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には12 BL小説 翌朝は、かろうじて雪も小降りになり、中標津町を出た一行は、一路道西へと向かった。 昼にはニセコに着いた一行は、一旦宿となる『ホテルニセコ』に荷物を預け、その足で撮影に出向く。 だが、それも、風蓮湖の時とは打って変わって、楽しげに辺りに生息する野生動物を
月夜の猫-BL小説です 寒に入り29 BL小説 子供の頃は、差別的な言葉でからかわれたとも言っていたが、本人の陽気な性格や笑うと目がなくなり、厚めの唇がにっと笑うとカワイイ! とSNSでのお茶目なショットやオフシーズンには芸人顔負けのしゃべりでバラエティなどに出たりしているせいで、中高女子から大人女子まで、
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には11 BL小説 「明日はニセコだ。撮影予定は一日だけだから、あとは羽伸ばしていいぞ、みんな」 ワンボックスカーの中で、下柳が言うなり、おおおーーーっとみんなの口から雄たけびが上がる。 「せっかくだから、良太ちゃんも、スキーでもスノボでもやりまくっていけばいい」 「え、はあ」
月夜の猫-BL小説です 寒に入り28 BL小説 そんなことを考えている良太もまた、翌日は忙しかった。 携わっているスポーツ番組『パワスポ』の特集で、レッドスターズの新鋭、八木沼大輔を取り上げることになり、午前中はMホテルでその取材が入っていた。 慰労会二日目は、エステや観劇、買い物など手配だけしてそれぞ
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には10 BL小説 「はい、俺の方はヤギさんいるし。俺、初めてヤギさんの本領見た気がします。何か迫力違うし、すごいですね」 工藤は笑った。 「ああ、そっちは寒いだろう?」 「ええ、すっげー寒いんですけど、最高気温もマイナスだし、でも、これが本物の自然かって感じで、白鳥とか大
月夜の猫-BL小説です 寒に入り27 BL小説 「前に良太に送ってくださったブランデーケーキ、頂いたんですけどすんごく美味しかったです!」 「あら、嬉しいわ。また焼いて送りますね」 口を挟んだアスカにも百合子はにこにこと笑顔を向ける。 「ケーキと言えば杉田さんもプロ並み。何せ、うちの社長の子どもの頃からケーキ
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には9 BL小説 白鳥が声高に鳴いた。 大きく羽を広げ、羽音さえ、空気を伝わって耳に残る。 空に一点の曇りが宿った、と思いきや、舞い降りたのは大鷲だ。 風蓮湖。 海水が混ざる汽水湖だという。 今でも手つかずの自然が残り、約三百種の野鳥が去来する。 良太は、下柳たち
月夜の猫-BL小説です 寒に入り26 BL小説 しらっちゃけた会にならないようにと気を配った良太の考えより遥かに賑やかなものとなったのは、主に女性陣のお陰だ。 というより、女性陣はほぼ明るくておしゃべりで賑やかで美味しい物が好きな人が集まった感じで、あっという間にあちこちで笑い声が上がっている。 杉田さ
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には8 BL小説 「良太、俺のことなんか、かまってらんないみたいだし」 「すねたような言い方すんな。俺には俺の仕事があんの。ほら、着いたぞ」 小笠原が自分に懐いてくれるのはいいのだが、実際問題として、良太が小笠原のマネージメントを全面的に引き受けるとすれば、今の仕事を全てほっぽ
月夜の猫-BL小説です 寒に入り25 BL小説 ドアが閉まるなり、工藤は良太の腕を引くとその後ろ頭を持ち上げるようにして唇を重ねてくる。 執拗でエロいキスに酸欠になりそうで喘ぎながら工藤のコートを掴む良太だが、そのうち夢中にさせられて身体から力がふっと抜けていく。 唇が離れると、良太は思い切り息を吸い
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には7 BL小説 日本では午後五時を回ったところだから、ニューヨークは真夜中の三時頃のはずだ。 「あ、はい、明後日から根室のヤギさんに合流します。はあ、そうですか。わかりました。極力本人にも自覚させますから。はい、気をつけて。おやすみなさい」 携帯を切ると、そこはかとない寂
月夜の猫-BL小説です 寒に入り24 BL小説 最近は生意気に俺に指図なんかしやがって。 工藤の宴会嫌いとか、年齢が上の女性にはあまり強く出られないところなどを良太は把握して、うまく立ち回っている。 竹野に関しては他の共演者とうまくやって行けるかどうかが問題だとは思っていたが、誰かが上から目線でそんなこ
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には6 BL小説 「だから、言っただろ? お前、結構イイセンいってたから、覚えてるやつが多いんだよ」 後部座席の小笠原が、シートの間から身を乗り出さんばかりに断言する。 「何がイイセンなもんか。とにかく、俺は今、お前のマネージャーなんだから」 「ちぇ、頑固なんだからよ、見か
月夜の猫-BL小説です 寒に入り23 BL小説 バタバタと動いていたので寒さもどこぞへ消えて汗だくになった良太は、七時まで十五分となったところでバスルームに飛び込んでシャワーを浴びた。 五分で出てくるとざっと髪にドライヤーを当て、セーターを被ってジーンズを履く。 時間がなくて手近にあったダッフルコートを
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には5 BL小説 「…っせーんだよ」 良太はさっさとスタジオのドアを開けた。 「なんだよ」 小笠原は怪訝そうに良太を見た。 「工藤はヤクザなんかじゃねー!」 「へ?」 「今度、ふざけたことをぬかしたら、ただじゃおかねーからな」 ぽかんと口を開けたまま、しばし突っ立っていた
月夜の猫-BL小説です 寒に入り22 BL小説 お土産などもいっそ宅配してしまうのがいいかも知れない。 「そういえば、奈々ちゃんとこご両親が参加されるってことです」 「ほう?」 奈々と言えば良太にとっては曰くありありで、何しろ、奈々が親に黙って映画のオーディションを受けたことがわかって、良太は当初、激怒し
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には4 BL小説 ニューヨークで初舞台を踏む志村嘉人に、小杉と工藤も同行して現地にいる。 世界で既にその名を知らしめている演出家筒井明彦演出の『ハムレット』の舞台出演だ。 過去のシェークスピア劇にとらわれない、斬新な演出が話題になっている。 その筒井と組んでプロデュース
月夜の猫-BL小説です 寒に入り21 BL小説 「みんなの希望日時をまとめると来週末ってことでAホテルは確保しました。二泊三日で、アスカさん、志村さんは撮影で一泊になりますが、親睦会は社員は全員OKです。ご家族の方がまだお返事保留の方がいますけど」 「そうか」 「一応、宴会場を借りて食事はホテルのメインレスト
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には3 BL小説 二月も終わりに差し掛かり、たまに春めいた風が流れる日はあるものの、まだまだ身震いするような寒さが日本列島上空に居座っている。 「何やってんだよ! 五時にはきっかりスタジオに行かなくちゃなんないんだぞ」 広瀬良太は、ぐずぐずとまだコーヒーなんかを飲もうとして
月夜の猫-BL小説です 寒に入り20 BL小説 東洋グループ側からは、紫紀を始め、中平広報室次長、岡林広報室長、宮下東洋商事営業第一部本部長、渡辺東洋フィナンシャル営業第一部本部長など、主要幹部が列席すると言われて、良太は心の中で溜息をつく。 何? その顔触れ。 紫紀が直々に沢村にオファーしたことからも
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には1 BL小説 我侭なタレントに振り回されるのはテレビやラジオ業界だけではない。 情報を先取りして旬の話題を追いかける週刊誌はもとより、流行を創り出す一端を担う女性誌もその忙しさは並大抵ではない。 我侭タレントがスケジュールを散々変更させた上、やっと撮影にこぎつけた
月夜の猫-BL小説です 寒に入り19 BL小説 「こういう席なので無粋な話は極力控えたいところですが、今回、CMの件、佐々木さんにも快諾頂いてありがとうございます」 「あ、はあ」 沢村は思わず仏頂面で紫紀を見た。 「あ、藤堂さん、良太ちゃんも、よろしくお願いいたします」 「はい、こちらこそぜひ、いいものにな
月夜の猫-BL小説です 静かな夜には2 BL小説 石川が受話器を置くと、ややあって電話が鳴り、女子社員が出た。 「編集長、広瀬さんって小笠原さんのマネージャーから」 「はい、石川です」 受話器を取る石川に目をやりながら、女子社員が山野に向き直る。 「でもさ、仕方ないよ、今、一番人気だもん、彼」 「まーね
月夜の猫-BL小説です 寒に入り18 BL小説 淑子に言葉をかけられて神妙に頷いている工藤を見て、良太はまた一人、工藤の苦手な相手を見つけた気がして、笑みを禁じ得ない。 この場合の苦手は、決して嫌いじゃないが、という前提だ。 クソババア、なんて自分の祖母のことを詰っていた工藤だが、案外、本人を目の前にし
月夜の猫-BL小説です 寒に入り17 BL小説 俄かに沢村の周りが賑やかになった。 沢村は煩わしくて仕方ないながらも、佐々木のことが気になって目で探していた。 佐々木は母の淑子と一緒に小夜子や義母佐保子、浜村会長らと話しているところだった。 そこに兄の宗一郎がいるのを見て、沢村は眉を顰めた。 思わ
月夜の猫-BL小説です 寒に入り16 BL小説 すると由樹も名刺を差し出した。 「まあ、よろしく。智ちゃんの従姉の大河内由樹です」 名刺には三友産業グループ、三友ホールディングス、専務取締役という肩書があった。 「プロデューサーさん、カッコいいわね」 「いえ、まだてんで駆け出しなので」 「パワスポとかやっ
月夜の猫-BL小説です 寒に入り15 BL小説 亭主の小夜子が正客である淑子に銚子と引き盃を渡し、盃が最初のグループ内に順に渡ったところで、酒を注いでいく。 次のグループからは、直子と洋子も亭主側の手伝いとして同じように銚子と引き盃を持って回った。 全員に行き渡ると、直子と洋子も末席の自分の席に着き、そ
月夜の猫-BL小説です 寒に入り14 BL小説 「ちょっと、良太、もう二度目でしょ? 今頃から根を上げてどうすんのよ」 「アスカさん、案外正座も平気なんだ?」 顔を顰める良太の足はまだジンジンする。 「これでも一応、お茶もかじってるし」 ツン、とアスカは自慢げな表情を見せる。 「そうなんだ?」 ふと良
月夜の猫-BL小説です Summer Break ようやくラストです BL小説 年が明けて世の中寒波が襲来のこのシーズン、 お正月も終わりですが、 Summer Breakようやくラスト、です。 すみません、唐突に充電切れすることがあり、 そうすると、次が出てこなくなることがあって。 というか、
月夜の猫-BL小説です 寒に入り13 BL小説 どうやら良太と工藤、沢村は金髪碧眼にフレームレスの眼鏡をかけた男と一緒のグループのようで、先頭に研二が座り、良太、沢村、金髪男、工藤という順に席入りした。 「沢村、お前、英語しゃべれるんだろ? 隣の人何者だよ」 「英語人種じゃねぇみたいだぜ? フランス語っぽ
月夜の猫-BL小説です Summer Break38 ラスト BL小説 何だかわからなかったが、その夜の工藤は割と酔っていたのか機嫌がよさそうに思えたものの、別荘に帰ってから猫の世話を済ませて翌日帰る準備をしていた良太の部屋を強襲して、やたら良太に絡んできた。 良太としてもせっかく東京を離れて二人きりでい
月夜の猫-BL小説です Summer Break37 BL小説 「初犯で執行猶予も終わってほとぼりが冷めた頃でも、いざ復帰となると、視聴者が金輪際許さないとばかりダメ出しするんで、スポンサーもうんとは言わない。せっかく実力のあるやつらがバカをやって這い上がれなくなる」 工藤が怒りを滲ませた口調で言った。