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『不滅の熱球』(55)伝説の名投手・沢村栄治といえば、池部良が沢村を演じた鈴木英夫監督の『不滅の熱球』(55)がある。戦死した沢村が、英霊となって後楽園球場のマウンドに戻ってくるラストシーンが切ない映画だ。妻役は司葉子。この映画の脚本は、黒澤明の映画で有名な菊島隆三が書いているのだが、彼はこの映画の他にも、後楽園球場での巨人対南海戦が映る『野良犬』(49)、志村喬がプロ野球の監督を演じた『男ありて』(55)の脚本を書き、『鉄腕投手稲尾物語』(59)の原作、構成も担当している。多分無類の野球好き。日本の野球映画を語る時には欠かせない存在だ。『その場所に女ありて』(62)広告業界を舞台に、男社会に果敢に挑むキャリア・ウーマンの夢と挫折を描いた、鈴木英夫監督の女性映画。広告代理店同士の熾烈な戦いの中で葛藤する女...鈴木英夫特集『不滅の熱球』『その場所に女ありて』
『悪の階段』(65)(2006.3.30.)実は女が一番怖い鈴木英夫監督作。4人組の強盗団(リーダーの知能犯は山崎努、金庫破りは西村晃と久保明、そして運転手は加東大介という何ともクセのあるメンバー)が、大会社の金庫から4千万円を強奪。分配はきちんと4等分(1千万ずつ)と決め、一見完全犯罪が成立したかにみえたが…。と、ストーリーは単純だが、この後、強奪金を隠した地下室の金庫を舞台に、お決まりの金と欲に目がくらんだ仲間割れが起こり、一種の密室劇が展開される。けれども彼らの行動はどこか滑稽に映り、佐藤勝の音楽がさらにコミカルな味を引き立てる。多分このへんの演出が鈴木英夫の才なのだろう。山崎の情夫役で団令子が絡むところも、なかなか面白かった。実は女が一番怖いのだ。当たり前のことだが、やっぱりこの頃の映画は、今の2...鈴木英夫特集『悪の階段』
『非情都市』(60)(2006.3.29.)NHKBSが昼間に鈴木英夫の映画を特集している。初日の『彼奴を逃すな』(56)は残念ながら録画し忘れたのだが、今日は『非情都市』を見た。舞台は昭和30年代の新聞社(モデルは有楽町にあった頃の毎日か)。三橋達也扮する記者が、強引に特ダネを狙い過ぎて自滅していくさまがドライなタッチで描かれる。何でも安藤組が横井英樹を襲撃した事件を基にしているらしい。今となっては当時の有楽町や新橋の風景も見ものの一つ。三橋はこういう嫌な奴をやらせると結構巧い。社会派物としては、同年に作られた黒澤明の『悪い奴ほどよく眠る』(ここでも嫌な奴を三橋が好演している)や、新聞記者のでっち上げを描いたビリー・ワイルダーの『地獄の英雄』(51)などの影響を感じるところはあるが、プログラムピクチャー...鈴木英夫特集『非情都市』