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No.6-032 Blue Dreaming シャイな彼女と奇跡の再会
feat.Kajagoogoo 「なに言ってんだ?」ってぼやきながら、鏡に映った自分を見て分かった。 両耳のピアスは両性愛者バイセクシャルを表すからねーって、ちょっと待て⁉︎ 右にも付けろって言ったのお前じゃないか? 二日酔いじゃなかったら制裁を打つのに……覚えてろよ⁉︎ ★ ★ ★ スタジオに入った僕等は盛大な拍手に迎えられた。テレビカメラの前で代わり映えしない司会者の質問に、お決まりの答えを並べる。 それにしてもすごいスタジオセットだな。 日本のミュージシャンは、いつもこんな豪華なセットで歌っているんだ?さすが金持ち日本! 「どうぞ」と通訳の合図でセットの中に入り、司会者の紹介で曲が流れ出…
feat.The Outfield 「そもそも、ケイトが家を出た原因はお前だろ⁉︎」 確かに、愛する女性ひとに先を越されるのは男として辛いことだと理解できる。でもケイトにだって、辛く苦しいことがあるはずなんだ。 それなのに彼女は決して泣き言を言わない。だからこそ、自分の夢に近づくことができるんだ。 「もういいの、やめて!」 ケイトに腕を押さえられるも、言わずにはいられなかった。 「君は……いつも笑顔で明るく前向きで、逞しささえ感じる。でもそれは、弱さを隠すためのカモフラージュなんだ」 ケイトは母親を知らず、父親にも滅多に会うことなく育った。高齢の祖父母に心配をかけまいと明るく振る舞ってきたのだ…
「幸せって、好きな人と一緒にいることじゃないの? 家を出た私には、もう『あなただけ』なのに、何度電話しても連絡くれなかったのは……レイチェルを愛してたからじゃないの?」レイチェルが、たまらず声を上げた。「私のせいなの! あなたからの留守録を消して、アシュリーには一切伝えなかった。あなたからアシュリーを奪おうとしたのよ!」
feat. Cutting Crew 「でも、こんな口うるさい女、嫌われて当然よ!? レイチェルは私とは正反対ね、必死にアシュリーを庇って……きっと何もかも包み込む、聖母のよう人なんだわ。私はダメ、突き放してばかりでバチが当たっちゃった」 ケイトはゆっくりと視線を僕に移し、話を続けた。 「私、ジェムを好きな気持ちは嘘じゃないの。一目見て素敵だと思ったし、あなたと過ごす甘い時間は、女性として至福のひとときだった。だから、アシュリーがレイチェルを選んだように、私も次へ進もうって、そう決心したんだけど……」 涙と雨で顔をグズグズにしてもケイトは凛とした表情を崩さなかった。 「でも、もうこれ以上、気づ…
pick out:A Flock Of Seagulls 霧雨の中、足早に駐車場まで 向かっている途中、ケイトが不動産屋の張り紙に目をとめた。すると、偶然にも中からアシュリーが出てきたんだ。 驚きの表情の二人。ケイトは震える声で言った。 「……どうして、ここに?」 彼は僕に目をやり、控えめに口を開いた。 「……もしかして、二人で住む家を探してる?」 黙って俯くだけのケイトにアシュリーは話を続けた。 「だったら、戻ってくるといい。僕があそこを出るから」 「レイチェルと一緒に住むのね⁉︎」 鋭い口調のケイトをなだめるように彼は説明した。 「いや、彼女は変わらず親元にいるよ。あの家は一人で住むには広…
feat. Olivia Newton-John 「聞けばケイトは、彼の不甲斐なさに呆れて出て行ったそうじゃない? だから確信したの。アシュリーにはケイトじゃない、私が必要だって。これは『運命のいたずら』? いいえ、神様がくれた〝2度目のチャンス〟よ」 [Olivia Newton-John『Twist of Fate』Released:21 October 1983] レイチェルとアシュリーが上手くいけば、それは確かに僕にもチャンスとなる。そんな思惑を巡らしていると、彼女がさらに強く訴えかけてきた。 「ケイトは強い女性だし、誰にでも愛されてるわ。父の会社でも人気なのよ、ケイトが来ると社内が明…
feat.OMD せっかく恋人同士なんだからラブラブなドライブ・デートをしたかったのに、ケイトはどこか上の空だ。 アシュリーに電話したけれど留守電にもならなかったのが気になっているみたいで車内の空気も、なんだか重い。 「ケイト、疲れてる? 寝てていいよ。着いたら起こすから」 彼女は申し訳なさそうにしたものの、ほどなく静かな寝息を立てた。 不安な気持ちに駆られてしまうとラジオから流れる曲にさえつい、過剰反応してしまう。 〜♫ もし君が離れていくとしても、今はいかないで お願いだから僕の心を奪わないで もう一晩いると約束して そして僕たちは別々の道を歩むのだから ♫〜 [OMD『If You Le…
feat.The Style Council そんな連絡一つ寄越さない薄情な男なんか忘れさせてやる!って、つい躍起になってしまう。 今夜はフレッドもいないしバイトも休みだから、ちょっと背伸びをしてライブが楽しめるレストランにケイトを誘った。 「こんなところ初めて……大人の世界って感じね? ドキドキしちゃう!」 レストランの入り口で目を輝かせるケイト。 「ブライトンならナイトスポット、色々あるでしょ? 年上の彼だし、もっと大人な場所でデートしてるんじゃないの?」 なんて、ちょっと勝ち誇ったように意地悪く言うと、彼女は軽く溜め息を吐いた。 「彼はこういう場所は苦手だし、お金もないしね。それに私、ア…
feat.Tracey Ullman 「実は……ヘレンと付き合うことに、なっちゃったんだ」 「へぇ! 良かったじゃないか、おめでとう!」 軽く拍手をしながらちょっとからかってみた。 「君ってモテるんだねぇ。他の女の子たちも、君に好意を持ってるんだろ?」 「モテないよ! 彼女たちのアレは、ゲームだよゲーム! 僕はからかわれてるだけなんだ。だから昨日、やっと断れて清々してたのに、ヘレンは――」 フレッドは顔を上げ、僕の肩を揺さぶってきた。 「彼女は他の子とは違うって、『皆んなは分かってないのよ』って泣きながら言うんだ!」 [Tracey Ullman『They Don't Know』Release…
pick out:The Alan Parsons Project 男のピアスって今は一部の人がファッション感覚で身に付けてるぐらいだけど、昔は男女の区別なくしていたんだって。 例えば夫婦が戦争や仕事で長期間離ればなれになってしまうとき、同じピアスを片方ずつ分け合って必ずまた再会できるようにと願ったんだ。 ピアスは2個で1組だから、お互いを強く引き付け合うって信じられてたんだね。 あとカップルで歩くときは、大抵男の左腕と女の子の右腕が組まれるでしょ? それって男は利き腕の右手を自由にしていざというとき、女の子を守れるようにするためなんだよ。 つまり、男の左耳ピアスと女の子の右耳ピアスはいつもお…
feat.Wang Chung ケイトの提案で木漏れ日が揺れるセント・ジェームズ・パークを歩くことにした。 「きれいなところ……池も大きいのね」 「ここはロンドンの数ある公園の中でも、一番優雅で人気があるんだ。色々な人が来てるでしょ?」 サラリーマン、犬を連れた老紳士、並んでベビーカーを押すご婦人方に団体で賑やかに歩く観光客。ベンチで肩を寄せ合う学生らしきカップルを見て、ケイトが悪戯っぽく微笑んだ。 「私達も、カップルに見えたりして?」 そんな風に言われるとつい深読みしてしまい、淡い期待が思わず声になる。 「――兄妹とはいえ、血は繋がってないからね」 思い切って彼女の肩に手を回そうとした、その…
feat.Wham! そんなウィンク一つ、見つめられるとドキッとしちゃうよ⁉︎ ステイシーに似てるなんて(よく言われる)いつもなら憤慨するところだけど、僕はこの、笑顔の素敵な義妹にすっかり魅了されてしまったみたいだ。 ケイトは軽く頭を下げた。 「ブライトンの家には、ここの電話番号を留守録に入れておいたから、そのうちアシュリーから連絡がくると思うの。そんなわけで、少しの間お世話になります」 そこへ電話の音が。さっそくアシュリーって奴からか?と受話器を取ると、ステイシーだった。 「ケイト着いたのね? じゃあ、そういうことだから、あと頼んだわよ。私はこのままパリに行くから、まだ帰れないから」 ハイハ…
pick out:The Dream Academy なんて羨ましい奴なんだ!まあ、当の本人は迷惑気味で足取りも重く、出かけて行ったけどね。 昨日はバイトの遅番だった僕はもう昼近くなんだけど、起き抜けの目を擦りながらコーヒーを淹れにキッチンへ。すると、またチャイムの音。 モニターに映るのは、女の子が一人。さっきの子達の仲間だなと思いながら、エントランスに出て対応した。 「フレッドだよね? さっき女の子達と出かけて行ったよ。あっちの裏通りのほうに向かったから、急げば追い付くかも」 そう、手を伸ばして案内すると彼女は笑顔で、自ら手を差し出した。 「じゃあ、あなたがジェームズね? 初めまして、お兄さ…
pick out: Bronski Beat 僕等はセント・ブライアンズの1階入り口までやって来た。 店の看板は外されていたけど外側からは、何ら変わった様子は見受けられない。 扉に鍵は掛かってなかったのでゆっくり寂れた暗い階段を下り地下入口のドアを開けると、甘い異臭を感じた。 元々ライブハウスやクラブではアルコールや煙草と同じようにマリファナ程度のドラッグは珍しいものではないけれど、今のこの状況はそんな類の物だけではないと容易に察せた。 ぼんやりとしたフットライトを頼りにそのまま受付、そしてスタッフルームの前を進むも人の気配は無い。 不意にヤスが足元の感触に気付きそれを拾い上げ、僕に手渡した。…
feat. Everything But the Girl 「どうぞ入って」 2人はドアを開け僕等をフラットに招き入れるとジョージは、うとうとしているベビーをそっとバスケットに寝かせた。トニィが中を覗き込む。 「可愛いね、男の子? 女の子?」 「男だよ、名前はエリック」 「ギターの神様と同じだね⁉︎ 将来はジョージパパを超える、名ギタリストになるかな?」 僕の台詞に、ジョージは軽く微笑んだ。 「できればコイツには、真っ当な道を進んでもらいたいけど」 「あら、私達は真っ当じゃないって言うの?」 アンは呆れながらティーポットとカップのセットをテーブルに置いた。 僕からすれば、2人は〝Eurythm…
pick out: G.I. Orange そら面白い! って皆んなで一生懸命木の箱を振っている姿が笑えるな。外国人観光客が多い京都はおみくじも、ちゃんと英語で書いてあるんだ。 「見ろよこれ?『大吉』だってさ!」マークは引いたおみくじを得意気にヒラヒラさせる。 「僕は『中吉』、北の方角がラッキーだって」フレッドも嬉しそうだ。 「私は『末吉』だ。これは、どのぐらい良い結果なんだい?」とスティーブン。 「オレは『吉』だった。ジェムは?」 「トニィと同じ『吉』だよ。悔しいな『大吉』狙いだったのに」 そして皆んなの視線はおみくじを紐に結ぼうとしているヤスに注がれた。 「あのさー、こんなのはお遊びなんだ…
feat. Eighth Wonder 「でも、デビューがどうなるか分からないし……」 トニィはルイスを抱き寄せるも一人前になる見通しが立たないのに軽はずみなことはできないと、頑なだ。 それに関しては僕も気が気じゃなくて気休めも言えずにいたけれど。 「オレが待たせてる間に、君に相応しい人が現れたら――」 「相応しいって、何⁉︎」 ルイスは鋭い視線を送った。 「だったら私の方こそ、バンドマンの彼女として失格よね? 音楽の事なんか全然わかんないし、嫉妬深いし我慢も足りない。トニィの彼女に相応しくないでしょ!?」 「そんなこと、関係ないよ!」 「そうよ、関係ないのよ!」 ピシャリと言い放つとルイスは…
feat. Thompson Twins 「ルイス、いつまで居られる? 両親にOKはもらってるよね?」 「来週末ギリギリまで居るつもりよ。トニィに会いに行くって言ったら、パパもママもお姉ちゃん達も喜んで見送ってくれたわ。Ohトニィ! 感動の対面を、やり直しましょう⁉︎ 会いたかったのよ」 と、いきなり抱き付くルイス。 「オレだって会いたかったよ!」トニィもしっかり抱き返した。 さっきまでの緊迫感は、どこへやら?突然の甘い空気に面食らってると 「ちょっとあんた達、気を利かせなさいよ⁉︎」 ルイスに睨まれてしまった。 「あ、ごめん、ごめん」 僕等はトニィにウィンク一つ残し、慌ててフラットを後にした…
feat. Bananarama 「私が悪いって言うの?」 ルイスのひと睨みで大きく首を横に振るトニィ。 「いや……何でわざわざ……急にこっちに来てくれたのかと……も、もしかして――」 しどろもどろな様子にルイスはイラつき遮った。 「もしかして『もうオレのこと好きじゃない』とか『オレに別れを言いに来た』とか、言うんじゃないでしょうね?」 どうやら図星みたいだ。顔を引きつらせるトニィにルイスは凄い迫力で詰め寄る。 「私が! ただトニィに会うためだけに! わざわざロンドンに来ちゃ、いけないって言うの⁉︎ っていうか別れ話なんかで、わざわざロンドンまで来ないっつーの!!」 「ご、ごめん。でも電話して…
feat. Culture Club - Time(Clock Of The Heart) フレッドの方もかなり気が立っていた。 「ロバートのやることに、疑問を感じないの!? 彼の作る音を気に入ってるの?」 「別に、そういうわけじゃないけど……良い時も悪い時もある、そういうもんだろう」 そう、あっさり答えると彼は怒鳴ってきたよ。 「僕達のデビューアルバムなんだよ⁉︎ 最高のモノを作りたいって言ったじゃないか! 良くも悪くもあるだなんて、良いモノしか認められない……100%じゃない、200%の力を出すつもりじゃなきゃ駄目なんだよ!」 こうなると、熱血少年にはウンザリしてくる。 「だけどこれ以上、…
物語に入れられなかった アーティスト・楽曲シリーズ〔第6弾〕 今年のGWは有給を取って 9連休にしたのは 旅行や帰省ではなく ただただ、休みたかったから バタバタの年度末を乗り越えたものの 肩こり腰痛、むくみ、疲れ目が酷くて ここでリフレッシュ&リラックス しとかなくちゃね! で、思い出す 『リラックス』ってタイトルなのに 怪しさ全開で 全然リラックス感のない曲 フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの『Relax』 ボーカルのホリー・ジョンソンが ゲイなのは当時から知っていたので この曲が、男性同士の行為の際 「リラックスしなよ」っていってる 内容だからと分かり、納得w 世界中で大ヒットしたも…
feat. Howard Jones - Things Can Only Get Better 「ジェム、有難いけどそれは――」 マークの言葉を遮り話を続けた。 「君の言いたいことは分かる。僕等だって、この先どうなるかなんて分からない。このバンドが成功する保証なんて無いんだ。でも約束する、僕等は The Starlight Night を No.1 にして見せる」 トニィ、フレッド、ヤスも深く頷いている。動揺するマークに、僕は詰め寄った。 「だから君も約束して欲しい。絶対に、また僕等の元に戻ってくると――」 「そうだよ、音楽の道を諦めちゃ駄目だよ!」とフレッド。 「ベースはその時々で、サポート…
物語に入れられなかった アーティスト・楽曲シリーズ〔第5弾〕 明けましておめでとうございます 去年の今頃は物語を完成させて ブログにしてみようと 試行錯誤していたかと思うと ほんと一年なんて、アッという間です! すっかりブログにも慣れたところで 早速、新年に相応しい80年代洋楽をと 思考を巡らせてみたものの 脳内リストはU2一択(笑) 検索しても、New Yearの曲って あまりヒットしないのは 向こうの方々はクリスマスが主流なので 新年には特に思い入れがなく 曲も無い……といった感じ? そこで、新しい年=スタート として選んだのは エンヤの『オリノコ・フロウ』 (Orinoco Flow) …
feat. Kate Bush 僕等はマークに引っ張られステージの正面を陣取った。 先ず、パンクっぽいバンドの演奏からスタート。シンプルながらも激しいビートで掴みはOKだ。 次は女性ヴォーカル。幼げなルックスの割に独自の世界観で歌い上げる様は〝ケイト・ブッシュ〟を彷彿とさせる。 気が付くと、次から次へと入れ替わり立ち替わり常連達で盛り上がっていた。 フロアにいる何人かが、慣れたようにステージに上がっている。もちろんマークも、その一人だ。 もう、どこまでが客だか演奏者だか分からない。ハードロックから弾き語りまでまるで音の洪水だ。 かつて僕が BAD MOUTH で演っていた空間とは、全然違う。こ…