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『炎上』(58)昭和19年春。この世で最も美しいのは京都の驟閣寺だと亡き父から教え込まれたきつ音症の青年・吾市(市川雷蔵)は寺の徒弟となる。だが戦後、寺は観光地と化し、尊敬していた住職(中村鴈治郎)の堕落を目にした吾市は不信と絶望感に追い詰められていく。名匠・市川崑監督が三島由紀夫の小説『金閣寺』を映画化。市川雷蔵の初の現代劇で、国宝の寺に放火した青年僧の苦悩と葛藤を描く。炎上シーンの炎に金箔を施すなど、名カメラマン宮川一夫のモノクロの映像美も見どころ。「BSシネマ」『炎上』
『肉弾』(68)(1980.7.10.日劇文化「セレクションATGスペシャル」併映は『人間蒸発』)昭和20年夏、終戦間際に特攻兵となったあいつの悲哀に満ちた青春を、戦中派世代の岡本喜八監督が、痛烈な皮肉とユーモア、ペーソスを交えながら描く。最高の映画だった。これまで自分が見てきた日本映画の中でも上位に入るだろう。特にあいつを演じた寺田農がよかった。登場人物の一人一人が存在感を放ち、敗戦というものを庶民の側から描き切っている。ユーモアを交えながら戦争批判を感じさせるのは、さすがに岡本喜八の演出と脚本のうまさによるものだろう。あいつという主人公を狂言回しにして、さまざまな人物が登場してくる。それは黒澤明の『どですかでん』(70)と通じるところもある。その中で、戦争の滑稽さ、愚かさ、空しさが描かれ、時には笑わさ...『肉弾』