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絵を描きたいけれども何を描いて良いのかわからない。テーマはどのようにして見つけるのですか、という質問をよく受けます。テーマは何でも良いのです、と答えます。尋ねた人はキョトンとしてなんのことかわからない表情をします。テーマはとりあえず絵を描く前進力となる行
絵画で対象のモノの表現の仕方は、作者とモノとの距離感や関係性を表しています。細密に描くのはモノの価値を外見に置くからです。作者以外の対象であるモノは、目前の物質である以外に作者の記憶やイメージの中で特別の位置を占めているものです。思い出の品であったり個性
絵画は虚構への扉を開いてくれます。絵画それ自体が積極的な虚構だからです。虚構の世界では私達は自由に振る舞うことができます。空想の翼を広げ夢想を羽ばたかせます。日々の拘束から開放されて、より気高く、自信に満ち、悠然と、繊細で、気品に満ちた生き方を選ぶことが
若い人の作品の中で妙に記憶に残った作品があります。風呂屋の富士山の絵にヌードをコラージュしたような絵で、『きっとここに戻ってくるだろう』と題した大西美来さんの絵で、絵画の原風景をイメージしているのでしょう。日本人風の裸婦の背後にはピエロ・デラ・フランチェ
絵画が個人のものではなかった19世紀以前、絵の話題は主に「何を描いているか」でした。絵画力は専門家としての当然の描写力があり、構図においても、色彩においても他者と遜色のないものでした。それを可能にしたのは絵画の技術水準が一般の人が考えるのと画家が提示するも
絵画を作る道具や素材、アクションやストロークを画面づくりの本質と捉えて、それらを表現材料として構成したものを「抽象画」といいます。「絵画」ではありません。平面を創作する工芸の一種です。それが意味を持つとすれば、工芸の分野が広がったということで、テキスタイ
絵画は三次元の世界を二次元に落とし込んだものとの考えからは自ずと絵画の限界が見えてきます。絵画は無限に周辺領域を拡大できるのではありません。美術的な創作の中の極めて限定的な分野が絵画なのです。模様とか、サインとか、二次元上の美術的な表現は多くあり、二次元
グラフィックデザインには絵も文字も図も含まれますし、基底材のテクスチャーや形状もデザインの範囲に含まれます。20世紀に絵画が急速に変貌したのは絵画の周辺を拡大してグラフィックデザインすべてを創作的な平面として絵画と呼んだからです。名称のすり替えです。グラフ
絵画を成立させている基盤は虚構性です。牛が小さな牛型の模様で描かれたり、人がどこかに向かって歩いてるような形の模様であったり、遠くの山や木があるように見えたりするのが虚構性です。実際の実物ではないのになにかに見えるのを仮象性もしくは虚構性と言います。時々
絵画の起源を考古学などにたづねると、シンボルとイラストレーションになります。失われた偉人とか愛する人達とか、神が宿ると信じられる動物など意識の対象となるものを示すのがシンボルで、物語や事件、狩りや戦の状況を図で示すのがイラストレーションです。シンボルは対
我々の経験する事柄には瞬間的なものもあり、長い期間、場合によっては一生をかけて経験するような事柄もあります。虚構が必要なのはそれら一つ一つを経験としてまとめることができるからです。デルボーの絵には夜汽車と裸婦と停車場の絵がたくさんあります。「こうもり傘と
絵画は虚構の世界です。現実を美化したり、現実から逃避したり、見えない存在を白日に晒したり、ことさらに現実を掘り下げたりもやはり非現実の世界です。虚構の世界は物理的な限界を超えて無限の可能性の世界です。現実の世界は確定した世界ですので、何らかの具体的なア
ボリュームは存在です。存在するものは対象化しえるものです。対象化されて観察され、位置や大きさや様態が特定されるものです。絵は観察しうるものを用いて構成されます。そこで絵はボリュームを描くことを第一義とします。ボリュームを端的に作り出す線もしくは色面の輪郭