春うらら
事あるごとに、訪れるこの場所は、最近よく来ている。今日はトレーナー一枚でも十分な暖かさで、ここまで歩けば少し汗ばむほどだ。遠くからでも存在感のある、葉も花も付けていない大木が、赤い鳥居の横で迎えてくれる。もうまもなく小さな花を一輪咲かせ、瞬く間にピンク色に染まり、行き交う人を魅了する。 ぽかぽか陽気の春は、好きな季節だ。生き物がうごめき始めるように、冬の寒さで固まった体を動かし始める。片付けの意欲も少し湧いてくる。 梅雨だの暑い夏だのと、次の季節が来る前に片を付けたい。 洗面台の引き出しを開けるのは簡単だが、閉めるときに少々手間取る。詰め込まれたものが溢れて、どこかに引っ掛かる。例外なく、ここ…
2023/03/10 22:52