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強風のなか、目を真っ赤にした私は、とにかく早く家に帰りたかった。家に着くや否や、目を洗う。そして、うがいをする。鼻をかむ。 今年の花粉の飛散量は、例年に比べ多いという。 薬を服用して、症状が落ち着いたところで、私は一冊の本を手に取った。 月子『あなたは自分の親が好きですか?:月子と母の片付け戦争』(シロクマ社、2023年1月) 月子さんのお母さんは、私の母とも似つかぬし、月子さんと私も、似つかない。「片付けられない」月子さんのお母さんと、「片付けられない」私も、思考は異なる。しかし、「片付けられない」という共通点のなかで、月子さんのお母さんの気持ちが分かるところもある。月子さんの気持ちもまた、…
「マチダ」という場所へ向かっていた。途中の乗換駅は、帰省の時に利用する駅と同じで、方向音痴の私でも不安はなかった。しかし、自宅の最寄駅から電車に乗ると、すぐに緊張しはじめた。目的地が近づくにつれ、さらに緊張が増していることを自覚した。 今日の日を楽しみにしていた。家を出るまでは、間違いなくそうだった。電車に乗った途端、急に我に返った。自ら彼女に連絡した事実は間違いないが、勇気を出してよく行動に移したなと自分に感心した。だからこそ、今、彼女の居る場所へ向かっているのだが、急に現実味を帯びて、どきどきしていた。 「マチダ」駅で降りるのは初めてだった。改札を出て、早速どっちへ進めばいいか分からなくな…