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いくつになっても、この時期は高田敏子さんの誌「忘れもの」が忘れられない
子供時代、「夏休みの友」に必ず掲載されていた、高田敏子さんの詩「忘れもの」。夏休みとは無縁となって久しいアラフィフの私でも、毎年この時期になると必ずこの詩を思い出して、些少の寂寥感に包まれます。夏休みを擬人化して、「だがキミ!」と呼びかけるのが、この詩の特徴的なところでありましょうが、子供時代の私はここを「だがキミー」だと信じ込んでおりました。実のところ、「だがキミ!」が正しいと知ったのは、わずか...
2022.8.29(月) 忘れもの 高田 敏子 入道雲にのって 夏休みはいってしまった 「サヨナラ」のかわりに 素晴らしい夕立をふりまいて けさ 空はまっさお 木々の葉の一枚一枚が あたらしい光とあいさつをかわしている だがキミ! 夏休みよ もう一度 もどってこないかな 忘れものをとりにさ 迷い子のセミ さびしそうな麦わら帽子 それから ぼくの耳に くっついて離れない波の音 ※...
2022.8.18(木)布良海岸 高田敏子この夏の一日 房総半島の突端 布良の海に泳いだ それは人影のない岩鼻 沐浴のようなひとり泳ぎであったが よせる波は 私の体を滑らかに洗い ほてらせていった 岩かげで 水着をぬぎ 体をふくと 私の夏は終わっていた 切り通しの道を帰りながら ふとふりむいた岩鼻のあたりには 海女が四五人 波しぶきをあびて立ち 私がひそかにぬけてきた夏の日が その上にだけかがやいてい...