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「今度全国ツアーをやるんですよ。多分皆さんの知らない昔の曲なんかも歌いますから」東京公演は今はなき、お茶の水の日仏会館だった。最前列の真ん中にいた私はオープニングから度肝を抜かれていた。当時、昼夜アコギを練習していたギター少年だった私にとっ
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「きくち寛」はキングレコードでデビューした後、クラウンレコードに移籍し、その時のシングル第一弾『貴船川』で一躍有名(?)になった。これはおそらくプロダクションの力ではないかと思うがFM東京などラジオで頻繁に流れていて、音楽雑誌などでもよく取り上げられてた。おれもそれをきっかけに知った一人だ。
もう一度あのライブが見たい、廃盤になったアルバムをなんとか手に入れる方法はないか・・・おれは来る日も来る日もそんなことを考えていた。今であればネット検索やメルカリ、ヤフオクなどいくらでもアプローチする方法はあるのだろうが、当時は時代が違う。ライブだって今ならDVDが発売されたりスマホで隠し撮りしてyoutubeにアップされるなんてこともあるが、そんな時代ではなかった。
これもどういう経緯だったか覚えてないが、集会室はせいぜい20名とか詰め込んでも30名も入らない大きさなので、大々的な告知はしなかったのだと思う。当日集まったのは確か14,5名ほどだったか。集会場に入るときくち寛はおもむろにギターケースを開け、ギターの弦を張り替え始めた。