『そこにすべてがあった』を読む

『そこにすべてがあった』を読む

『そこにすべてがあった』という書名は、本の内容を的確にしめす題名とは思われない。だが、装丁をトータルにみると、この暗示的な言葉は惹句としては良い。副題に『バッファロー・クリーク洪水と集合的トラウマの社会学』とあり、これでおおよその見当を知ることができる。著者はカイ・T・エリクソン、出版社は「夕書房」という会社。地元の本屋の、社会科学系のコーナーに4,5冊ほど平積みされていた。本の裏表紙に、簡潔な紹介文が印刷されていて、さらに目次を見てから即行買い購めた。1972年2月26日、大雨で鉱山ゴミの堆積でできたダムが決壊、アメリカ・ウェストヴァージニア州の炭鉱町バッファロー・クリークは、雨水とボタが混ざった黒い水にのみこまれた。死者125人、住民の8割が家を失った未曽有の人災は、コミュニティの崩壊をもたらし、生存者たち...『そこにすべてがあった』を読む

2022/03/08 11:52