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月夜の猫-BL小説です 誰にもやらない10 BL小説 「お嬢様たちにぜひ味をみていただきたいとっときのワインがあるんだ」 わっと歓声が上がる。 女の子たちはすっかり藤堂の巧みな話術に手玉に取られている。 さやかは、大沢や土橋らの、さり気なく気を引いている。 「コースケくんもね。ほら、積もる話もあることだし?」
月夜の猫-BL小説です 好きだから51 BL小説 壁の時計の針が午後三時に差し掛かろうという頃、オフィスササキには香しいコーヒーの香りが漂っていた。 スイーツが苦手だという男が多い中、佐々木の周りには佐々木を含めて比較的女子たちに混じってお茶の時間を楽しむ男の比率は高い方だ。 茶道をやっていると甘い菓子に免疫
月夜の猫-BL小説です 誰にもやらない1 BL小説 ゴトンゴトンと規則正しい地下鉄の音が、もたれかかったドアから伝わってくる。 この路線もさすがに昼間はさほど混んではいない。 駅で停車するたび、開かない側のドアのガラスを見るともなく覗き込むと、灯やホームが映し出されていた。 そこには別の世界が広がっている
月夜の猫-BL小説です 好きだから46 BL小説 水波清太郎の覚醒剤事件でしばらくその陰に隠れていた事件が、ここにきて新局面を迎えたのは一昨日のことだ。 民自党の重鎮、現総理の懐刀とされる衆議院議員齋藤保志元国交大臣に東幹産業傘下の東幹建設から公共工事に絡んだ賄賂が流れたとされる事件で、齋藤保志議員と東幹建
月夜の猫-BL小説です 好きだから36 BL小説 さらに、直子を固まらせたのは、いきなりドアが開いて男が入ってきたからだ。 「よう、なかなかいいオフィスじゃねぇか。暇なんで来ちまった」 声は確かにあの男だった。 しかし人相風体が、先日の白衣の熊五郎とは似ても似つかない。 「あれ、稔さん、えらくさっぱりしたやない
月夜の猫-BL小説です 好きだから35 BL小説 太陽の日差しはあるが、真冬並みの北風が街を吹き抜けていた。 午後になると少しは風も和らいで、かつ佐々木の仕事もどうやら目途がつきそうになってきた。 「直ちゃん、ここ数日のお礼もかねて、近いうちに夜ごはん、食べ行こか。コースでもかまへんで。直ちゃんの行きたいとこ
月夜の猫-BL小説です 好きだから25 BL小説 「お前が言うな! でも八木沼さん女性人気ダントツだし、昨今、プロ野球選手ってMLBでもない限りCMとか少ないんで、頑張って下さいよ」 沢村に抗議をしてから良太は八木沼に向き直る。 「ええ? 俺、良太がええのになぁ」 「お前、大体、良太、良太って馴れ馴れしすぎん
月夜の猫-BL小説です 好きだから23 BL小説 「袱紗捌きが違います!」 淑子に叱咤されて佐々木ははっと手元をみた。 「あ、ああ、すみません、濃茶でしたね」 佐々木は慌てて袱紗捌きをやり直した。 「何をぼおっとしているのです。綾小路さんの展示会での初釜は年明け早々なんですよ」 そうだった。 こうして居残り稽
月夜の猫-BL小説です 好きだから22 BL小説 しゅんしゅんと釜の湯だけが静まり返った部屋の中で音をたてている。 名のある僧侶の作と云われる、月清千古秋、の文字の掛け軸が掛かる床の間には、その斜め前に唐物の篭に杜鵑や秋明菊などの茶花が生けられ、炉で焚かれている香が芳しい。 久々夜の時間が空いた佐々木は、茶道
月夜の猫-BL小説です 好きだから21 BL小説 「すごぉい、見てきたようなドラマ仕立て! あたしと沢村っちの馴れ初めから、きゃあ、もう双方の両親に紹介済みとか書いてある!」 アスカが新聞の記事を見て嬉し気な声を上げた。 「そんなことで、はしゃがない」 秋山がアスカを窘める。 「だってぇ、この分だと挙式の日と
月夜の猫-BL小説です 好きだから20 BL小説 昼にはまだ早かったが、十一時は過ぎていた。 「何だ、一体これは!」 オフィスのドアが開くなり、入ってきた工藤高広は声を荒げ、持っていたスポーツ紙をテーブルに叩きつけた。 堂々と一面を飾っているのは人気俳優中川アスカと関西タイガースの四番打者沢村智弘とが腕を組ん
月夜の猫-BL小説です 好きだから19 BL小説 賑やかだったざわめきも消え、寂とした空気の中に、着ぬずれの音に混じって二つの吐息が甘やかな音を紡ぐ。 逸っているのは自分だけでなく佐々木も自分を欲しいと思っていることを沢村は疑ってはいない。 上気した頬だけでなく佐々木自身熱を帯びているのがわかると、埋み火のよ
月夜の猫-BL小説です 好きだから18 BL小説 「佐々木さん、とにかくスケジュール、教えてくれよ。何か例のクスリで捕まった俳優の関係で、忙しいって?」 「まあな。このクソ忙しい時に、メンドイことしてくれよって」 沢村に顔を覗き込まれて、佐々木は眉を顰めつつ答えた。 「そっか、どっかで時間取れたら、またスキー