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月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人32 BL小説 明け方ようやく部屋に戻り、ちょっと仮眠した程度でシャワーを浴びて着替え、研究室に戻ってきた京助は、さすがに疲労困憊状態だった。 自販機で買ってきた栄養ドリンクを一気飲みして自分のデスクに足をかけ、椅子にもたれて腕組みをしたまま目を閉じていると、牧村らがやってき
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人31 BL小説 「……はい、わかりました」 緊急ですぐ来るようにという教授のお達しである。 「それ、食ったら、ちゃんと帰れよ」 のんびりと、クレーム・ブリュレを口に持っていく千雪にそう言うと、コーヒーを一口飲んでから京助は慌てて席を立つ。 と思いきや、千雪に覆いかぶさるように
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人30 BL小説 「あとは、お任せしますので、よろしくお願いします」 千雪はヘルメットを手に立ち上がった。 「あら、千雪さん、バイクなの? じゃあ、工藤さん、車変えた?」 万里子が小首を傾げて工藤を見た。 「まだ動くものを変える必要はないだろ」 「ふーん、じゃあ、志村さんの?
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人29 BL小説 いかにもオフィスに用があるような顔で、京助はガードマンに会釈をしてオフィス下の螺旋階段あたりへ歩く。 朝から降っていた雨は上がったが、木立を抜ける風は少し冷たかった。 京助はエントランス横の壁に凭れて、やがて現れるだろう千雪を待った。 二十分ほど経ったろうか、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人28 BL小説 雨は朝になってもしとしとと降り続いていた。 ドアを開けて雨が降っていることに気づいた千雪は、傘を持ってドアを閉めた。 気分は絶不調だ。 あまり雨は好きではないが、理由はそれだけではないだろう。 できれば出かけたくはないが、欠かせない講義があった。 ここのところ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人27 BL小説 一呼吸おいて、速水は続けた。 「いくらでも女がより取り見取りだろう? ゲイってわけじゃないんだ。何も坊やなんか選ばなくてもいいだろ? いったいどこで知り合った? ニューヨークあたりでもよくいるが、あの手合いは絶対援助目的だぜ? お前の素性知ってるんだろ?」
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人26 BL小説 六本木の大通りから少し入ったところにあるバー「サンクチュアリ」は、富裕層が利用する高級会員制クラブの系列で、VIPルームもあるシックな店だが、京助や速水にとっては高校時代からのたまり場で、加えて大抵何人もの遊び仲間が屯していた。 久々にドアをくぐると、久しぶり
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ45 BL小説 「おい、だからそんな恰好で寝るな」 いきなり首に引っ掛けていたタオルで頭をガシガシやられた千雪は目を覚ました。 ぼんやりしているうちに寝てしまったらしい。 「ほんまにお前の兄貴、クエナイやつや」 千雪はボソリと言った。 「だからそうだってっだろ? 兄貴のやつ、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人25 BL小説 「桜木? 政治家というと、まさか何年か前、贈収賄事件で起訴された桜木代議士?」 「そうだ。君の言う通り、引き裂かれて自殺なんて、今時はやらないよな」 小田は苦笑いしながら振り返った。 「いえ、境遇とかは違うかもしれませんが、俺の両親、駆け落ちやったんです。母親
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人24 BL小説 「ああ、ちょっと話をした時にね。それに君の小説を映画化するという話じゃないか、工藤にしてみれば結構大きな仕事になるようだし、私も影ながら応援くらいはさせてもらうよ」 ワハハと豪快に笑う小田からは誠実な人柄が窺えた。 「工藤さんとは今も親しくされてはるんですね」
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人23 BL小説 さすがに切れ者の弁護士というだけあって、その表情からは何も窺い知れない。 「刑法と処罰について、考えているところなのですが、弁護士として実際の事件を扱っておられる先生に、差しさわりのない程度でお話を聞かせていただけたらと思いまして」 もちろん、自分が携わってい
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人22 BL小説 「捜査一課の刑事だ。だいたい、こないだは千雪を容疑者扱いしといてどの面下げて来やがるんだ! 厚顔無恥な連中だ。千雪なんかに頼らず、ちったあ自分の頭を使ってみたらどうだ?! へっぽこデカどもめ!」 むしゃくしゃしていた京助は、ちょうど現れた渋谷に当り散らす。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人21 BL小説 頭から工藤をヤクザと見下しているその正義感面にはかなりムカついたが、千雪のことを見下したいが故に工藤のことを持ち出している速水に対して、反吐が出る思いがして、千雪は立ち上がる。 「根拠のない噂話なんかに踊らされて、仮にも心理学者ともあろう人が、そう知らん他人を
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人20 BL小説 「あ、先輩! こんなとこにいた!」 お前は猛禽類か。 千雪は眼鏡の奥からよく見知った男を睨み付けた。 今日は天気もいいので南側のテラスへ続く扉が開かれ、オープンカフェになっていた。 できればこのうるさい後輩とは顔を合わせたくないし、ちょうど隅の木陰のテーブルが
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人19 BL小説 よりによって、顔を見たくもない相手とどうしてこんなところで出くわしてしまうのか。 「ええ、一応、雑誌で連載なんかやってるんで、色々忙しいんです」 振り返ると速水とその後ろには文子が立っていた。 「まあ、連載? 何ていう雑誌ですか?」 にこやかに尋ねられて、千雪
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人18 BL小説 一限目の講義のあと、千雪は図書館に出向いた。 飲み会の時の宮島教授の言葉が気になっていたのだが、ここ数日忙しくて時間が取れなかったので、いつの間にか週末になってしまった。 実は三羽じゃなかったんだ、ということはつまり、他にまだ誰かがいた? 荒木志郎、小田和義、工
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人17 BL小説 二件目に入ったパブでは、京助は誰が何を言っていたかも覚えていないくらいイラつきながらやたら酒を煽っていた。 今度こそ千雪が離れていってしまうのではないかという不安につき動かされ、店を出るなり速水の誘いを突っぱねてここにきた。 京助にしてみれば、実際、昔の女とくっ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人16 BL小説 万里子には、小林千雪の正体については社外秘だといい含めて、工藤は万里子と千雪のためにタクシーを呼んだ。 いちいち驚かれるのも面倒なので、千雪としてもそうしてくれると有難かった。 部屋に辿り着くとどっと疲れが出て、千雪はベッドに倒れこんだ。 肉体的疲労という
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人15 BL小説 「あら、おいしそう。いただきます」 万里子はソファに座り、長いストレートの髪を無造作に搔き揚げると、クッキーをつまんだ。 「ねえ、それより鈴木さん、今夜もこんな時間まで? あとはあたしやっておくから、いいわよ、帰っても」 鈴木さんを労わり、気軽にそんなことを申
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人14 BL小説 「大丈夫。私が何とかしてみせるわ。お願い、もう一度チャンスをちょうだい」 平と呼ばれた女性は揺ぎ無い口調で言い切った。 「仕方ないな。やってみろ」 渋い表情のまま、工藤は言った。 「ありがとう。あなたを後悔させるようなことはしないわ」 女性は踵を返し、オフィス
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人13 BL小説 ほろ酔い加減も、初夏の夜風に飛ばされたようだ。 街路樹も青々とした葉をつけて、ゆっくりとざわめいている。 乃木坂の駅を上がって数分、青山プロダクションのエントランスに立って見上げると、夜の九時にもかかわらずオフィスにはまだ煌々と灯りがついていた。 千雪は一旦自
月夜の猫-BL小説です お前にだけ狂想曲18 BL小説 会社の七階にある自分の部屋に良太を連れて入ると、リビングボードからホワイトラムとグラスを二つ持って戻ってきた。 「座ってろ」 怒ってるんだ。 少し平静を取り戻した良太は工藤を上目遣いに見やり、ラム酒が注がれたグラスを素直に受け取る。 「大体、あんなケチ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人12 BL小説 編集者はいざとなれば電話だけでのやり取りでもいいし、楽なのだろう。 そこへ行くと宮島教授やあの工藤は千雪に対して最初から何の先入観もなく、ごく普通に接していた。 まあ、何が出てくるともわからない業界を渡り歩いてきた工藤にしてみれば、この程度のコスプレなど、ちょっ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人11 BL小説 「ずるいぞ、名探偵!」 後ろから声がかかったが、すぐエレベータのドアが閉まった。 「そういえば、小林くん、聞いてるかな」 思い出したように、宮島が言った。 「何をですか?」 「工藤くんたち、三羽ガラスって言ったよね、実は三羽じゃなかったんだ」 「どういうことで
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人10 BL小説 「ねえねえ、あの事件の話、私、聞きたかったんだよね、どうやって解決したの? マスコミもまるで名探偵が犯人みたいな扱いだし、事情聴取までされたんでしょ?」 入れ替わるように、今度は牧村が近くの椅子を引き寄せて千雪の横へやってきた。 「あれは別に俺が解決したとかい
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人9 BL小説 「ああ、彼女のことを思い出すと、今でも心がうずく! 京助、貴様にはこんな純粋な恋心なんかわからねぇだろうなぁ」 尚も突っかかる速水を見て、京助はフンと鼻で笑う。 「てめぇの薄汚れた心なんかわかってたまるか」 「何だと?」 「そういえば、ピアニストの桐島さんて、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人7 BL小説 何でこうなるんや! 千雪は心の中で喚いてから、立ってビールを継ぎにまわったりして、あちこちに愛想を振りまいている佐久間を睨みつける。 御茶ノ水にあるこの居酒屋は、多くの学生で溢れる中、この店の店長が佐久間の高校の先輩だというので、割と急だったにもかかわらず総勢二十
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に12 BL小説 良太が頭の中で瞬時にざっと思い描いたところで、男が徐にサングラスを取った。 「急いでいたとはいえ大変失礼いたしました、マダム、お怪我はありませんか?」 丁寧な日本語でそう言って笑みを浮かべたその男を、良太も、老齢の女性も手を口元に充てたまま、食い入るように
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)11までアップしました BL小説 青山プロダクションとしては初めての一大イベント、社員とその家族のための慰労会が無事終わり、皆が喜んでくれたのが何よりだったのだが、帰りがけにそろそろ風邪を引く頃だから気を付けてと母に念をおされたにもかかわらず、良太
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤と良太)5までアップしました BL小説 青山プロダクションとしては初めての一大イベント、社員とその家族のための慰労会が無事終わり、皆が喜んでくれたのが何よりだったのだが、帰りがけにそろそろ風邪を引く頃だから気を付けてと母に念をおされたにもかかわらず
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に2 BL小説 「急ぎの仕事とかあるの?」 「まあ、全部が急ぎと言えば急ぎだけど……、行ってきます。下手してインフルとかだったらシャレにならないし」 ということで良太には行きつけになっている裏の通りにある内科クリニックに駆け込んだのだった。 受付ギリではあったが、良太の顔見知りの