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月夜の猫-BL小説です 残月5 BL小説 「そりゃ、美味しいもんは何でも好きに決まってます」 そういえばと、良太は先日一緒に食事をした時、珍しく工藤が栗きんとんを食べたことを思い出した。 「栗きんとん、そろそろですよね」 「お、いいね、栗きんとん」 後ろから聞きつけたらしく、小杉の声がした。 「あ、小杉さん、
月夜の猫-BL小説です Tea Time18 BL小説 「おう、撮影スタッフのワゴン一台とあと二台ほどくるけど、多分入れ違いだから平気だろ」 「あ、ども、タケさん」 「タケ、撮影なんてさっさとやっつけちまおうぜ、たるい~」 七海の後ろから、さもうざったそうにやってきた志央が早速文句をたれる。 「お前がちゃんと
月夜の猫-BL小説です 残月4 BL小説 「何なら、チケット用意しとくよ。綾小路一族と一緒に」 「綾小路一族ぅ?」 良太は檜山に聞き返した。 「紫紀と小夜子と大、千雪と京助、それから彼らの両親」 「いや、観たいのは山々だけど、工藤も俺も時間が取れるかどうか。工藤にも聞いておくけど」 一族と一緒にって、ほんとに
月夜の猫-BL小説です Tea Time17 BL小説 「いや、どういうわけか面白い具合にいろいろ絡んでいるんだよな~。な、撮影前に明日か明後日、時間取れる?」 『明後日八時頃なら大丈夫っすよ』 武人の思わせぶりな発言に、七海は即答した。 「よっしゃ、わかった。まあ、ここはじっくり策を弄するとしましょ」 とい
月夜の猫-BL小説です 残月3 BL小説 「はい。次はきっと頑張れますよ」 「わかりました! 頑張ります!」 二村も笑った。 良太は志村や桧山にもサンドイッチを持って行った。 「良太ってさ、時々、工藤さんより怖って思うわ」 ボソリ、と志村が言った。 「何ですか、それ」 心外なと良太が眉を顰める。 「二村さん
月夜の猫-BL小説です 残月2 BL小説 そもそもが以前は母校の大学にも新入社員の募集をかけたりしていたものの、面接の最後に、俺の伯父は云々とどすをきかせた声で言い放つため、ほぼ全員が回れ右で帰って行き、万年人手不足に悩まされている青山プロダクションだったのが、ただ一人、出て行かずにめでたく新入社員として残っ
月夜の猫-BL小説です Tea Time15 BL小説 出版社の取締役となっていた武人の父のつてで料理本を出してからというもの、奈央のその美貌も手伝ってあっという間にファンが増えた。 テレビにもちょくちょく顔を見せるようになると、今度は広尾の教室とは別に用賀にこのイギリス風な家を建てて住み、撮影などに使うように
月夜の猫-BL小説です 残月1 BL小説 高い空、葉も色づいた街路樹が秋の訪れを告げている早朝のオフィス街。 やがてビジネスマンが行きかうだろう通りには、先ほどから似つかわしくない怒号が度々飛んでいる。 「志村、遅い! 檜山、お前はもっとそっと出て来い! 二村、トロ過ぎる!」 ライトがたかれ、カメラセットを積
月夜の猫-BL小説です 残月(工藤×良太) BL小説 「幻月」「秋の陽」のあとのお話です。 青山プロ所属俳優志村義人主演映画「大いなる旅人」には能楽師、檜山が出演しているのだが、檜山の家で撮影をすることになり、檜山と話していた良太は、工藤の話をすると嬉しそうな顔をする檜山に、本谷が工藤を好きになったように、ま
月夜の猫-BL小説です Tea Time14 BL小説 秋晴れのある朝、といってももう十一時に近くなっているが。 武人が歩いていたのは、世田谷は用賀の閑静なたたずまいである。 その一角にある門には花で飾られた『Nao Cake House』という木彫りのプレートがかかっている。 チャイムを押して門を一歩踏み入れ
月夜の猫-BL小説です 幻月59 BL小説 おそらく表面上は会社を守らねばとか強がって一人前の振りをして、歯を食いしばっていてもどうせ、一人の時には猫を抱いてメソメソしているだろう良太を抱きしめたかった。 やっぱり少し痩せてしまった身体の首筋や胸や背中をさすりながらしばらく煽ってやれば、良太は色づいた声をあげな
月夜の猫-BL小説です Tea Time13 BL小説 「……………………だめだ」 やっぱり…………あの人と俺じゃだめだったんだ。 うまくいくはずなんか、なかったんだ。 「ほんとに、バカだよな、俺」 ため息とともに自嘲しながら、勝浩は溢れ出る涙を拳で拭う。 所在無く動かした指は、見慣れた番号を押していた。 『よ
月夜の猫-BL小説です 幻月58 BL小説 「それ、佐々木さんには言わないでくださいよ。直ちゃん、たまたま会社に来てあら捜ししてった刑事見て許せないって、藤堂さんも巻き込んで、『ベア』にアンダーカバー、自分でも反省してるって」 「ったく、藤堂のやつ、何やってたんだ」 工藤は苦々し気に言い放った。 「いや、藤堂さ
月夜の猫-BL小説です Tea Time12 BL小説 『だから何で、俺に言わないんだよ。ミニなんか、ユウだけでいっぱいになっちまうぞ。わかった、アウディだったらいいだろ? お前、運転したことあるし。わざわざ買うことなんかない』 なんとなく幸也の声に険が混じっている。 「あ、ちょ、待ってくださいよ、だってタケさ
月夜の猫-BL小説です 幻月57 BL小説 良太は留置場など居心地悪いだろうし、風呂とかトイレとかどうすんだろう、と考えて、オフィスにたまたまやってきた平造に聞いたことがある。 「トイレは中にあるが、他に人がいりゃ使いづらいな。風呂も三日にいっぺんくらいだ」 それを聞いていたので、工藤もかなりうらぶれているので
月夜の猫-BL小説です Tea Time11 BL小説 「やだー、堺くん、ミニなんだ?」 「かっわいい! 堺くんにピッタシって感じ~」 先輩に借りたのだという勝浩の説明などなんのその、一人二年生の勝浩はゼミの女子学生の間ではマスコット扱いされていて、軽井沢の合宿所となっているホテルのログコテージに着く早々、先輩
月夜の猫-BL小説です 幻月56 BL小説 「いや、ちっさいが畑もありますしな、吉川に任せっぱなしだし、あいつも自分の店がありますからな」 馴染みのリストランテのオーナーシェフ、吉川と平造は案外長い付き合いで、料理や野菜のことで話が合うようで、平造がぎっくり腰をやった時にも世話を焼いてくれた。 「着いたら電話し
月夜の猫-BL小説です Tea Time10 BL小説 ゼミのレジュメはやらなくてはならなかったにせよ、それを理由に幸也を帰したというのが本当のところだろう。 山から降りてきてみると、何だかあれは本当だったんだろうか、とさえ思ってしまった。 よくある夏のなんとか、とか、喉もと過ぎればとか、マイナス思考ばかりが頭
お立寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です 月夜の猫-BL小説です BL小説 霞に月の(工藤×良太)88、幻月55、恋ってウソだろ?!33、Tea Time9、 までアップしました
月夜の猫-BL小説です 幻月55 BL小説 「しかし、小田弁護士から今回の事件の件で、スポンサーを降りた方がいいかも知れないと窺った時は驚きました」 良太は驚いた。 工藤はそんなことまで考えていたのだ。 他のスポンサーに対しても同じように対応したのだろうか。 「工藤さんを信頼してますから、そのような気遣いはご無
月夜の猫-BL小説です Tea Time9 BL小説 午前一時を回った頃。 ゼミ合宿で発表に使うレジュメをやっと作り終え、勝浩がノートPCをパタンと閉じると、散歩を待ちかねたユウがパタパタと尻尾を振りながらクウンと鳴いた。 「お待たせ、ユウ!」 ドアに鍵をかけるや否や、ユウは勝浩を引っ張って小走りにいつもの散歩
お立寄り有難うございます。お気楽ハピエンBL小説です 幻月54 BL小説 男の名は石尾健斗三十八歳。 石尾不動産社長で、二週間ほど前に行方不明になっていた男だ。 その記事を読んでも大抵、へえ、で終わる程度だし、島本組系列でもことが麻薬関係ではトバッチリを避けて誰も何も言わないし、インテリヤクザで偉ぶっていたくせ
月夜の猫-BL小説です Tea Time8 BL小説 経済的にどれだけ恵まれていようが、大切な相手の心がそばになければ何の意味もない。 自分のやりたいように生きてきたが、欲しいと思っても、どれだけ金を積んでも手に入らないものはあるのだ。 それはここ数年で実感した。 最近ほとんど一人で過ごしたことはなかった。 仲
月夜の猫-BL小説です 幻月53 BL小説 結局、この事件は新聞、テレビ、ネットを通して一時あっちでもこっちでも大いに報道されたが、工藤の名前はどこにもなく、またしても小林千雪とその仲間たちのお陰で、警察も運よく冤罪の謝罪会見をするところを逃れたわけである。 事件報道の空騒ぎもやがて人気芸能人の不倫報道にとって
月夜の猫-BL小説です Tea Time7 BL小説 「ほえ~、さっすが、勝っちゃん、動物好きが高じてもう動物学者かあ。ま、それは置いといてもよ、お前って何でも卒なくこなしそうなくせに、大事にしたい相手にはてんで二の足踏み過ぎンだよ。志央のことだって、何で鳶にあぶらげさらわれる前にモノにしちまわなかったよ? 勝
月夜の猫-BL小説です 幻月52 BL小説 今はさほど問題なく思えたとしても、何かのはずみでフラッシュバックするということもある。 良太は千雪の部屋まで直子に付き添ってきていた。 「今のところ大丈夫だと思うよ」 医師が帰った後、京助が入れてくれた珈琲を一口飲んでから、直子は言った。 「本当にご心配おかけしました
月夜の猫-BL小説です Tea Time6 BL小説 「そんな昔のこと持ち出してウザいよ、お前。第一、お前ら、こないだの山小屋以来、ラブラブ街道まっしぐら、じゃなかったのかよ?」 それに対して即答できないでいる幸也に、「まさかお前、また何かやらかしたのか?!」と武人が詰め寄った。 「何もやってねぇよ」 そう、山
月夜の猫-BL小説です 霞に月の85 BL小説 「だけど工藤さん、こういう反社会勢力とか政治家が大嫌いで」 香坂はフフっと笑う。 「昔からヤクザ嫌ってたよ。でもそもそもなんで、高広がヤクザに狙われるわけ?」 「はあ、それは、おそらく、跡目争いのせいで。主に二つの組系列が争ってて、工藤さんを担ぎ出されたら困る連
月夜の猫-BL小説です 幻月51 BL小説 「ああ、この男が振り回していたナイフはそのテーブルの上のビニール袋の中にあります」 谷川が橋本に言った。 「この男以外に素手では触っていません」 すかさずそう付け加えた谷川をじっと見つめた橋本は、「失礼ですがご同業ですか」と丁寧に尋ねた。 「元です」 「そうですか」
月夜の猫-BL小説です Tea Time5 BL小説 俺と志央が女を口説いているところを見て、勝浩はあからさまに侮蔑の視線を送ってきた。 それを周りに言いふらすようなことはしなかったが、表ではいかにもな優等生を気取りながら裏では悪さをしている俺たちのことを、面と向かってきっぱりと非難してくれた、可愛い顔に似合わ
月夜の猫-BL小説です 幻月50 BL小説 「でもな、俺も、留守の間会社を守らなけりゃっては思ってたんだけど、皆が動いてくれているのに、自分が動けないのがもどかしくてさ、実は、直ちゃんに何か言う資格はないんだどさ。ってより、俺、何もできなかったからな」 そんなことを話しているうちに、先ほどの建物に着いて、良太
月夜の猫-BL小説です Tea Time4 BL小説 「志央、ピアノ習ってただろ? ガキん頃。美央と一緒に。お前、ナイト気取りで習いもしないのにピアノ教室までくっついて行ってたろうが」 「え………? そういや……」 高校の行事で、たまたまピアノの話になったときだったか、子供の頃ピアノの発表会で、全然練習もし
月夜の猫-BL小説です 幻月49 bl小説 「俺らもだけど、谷川さんとか、工藤とか、おっさんら、もろ心臓にくるから、これきりにして」 ちょっと柔らかい言葉で良太は直子を窘める。 「はい!」 元気よく直子は返事をする。 「なんか、千雪さんのお友達って、すごいタフそうな人ばっかだね」 「だよね~。今回俺なんか出て
月夜の猫-BL小説です Tea Time3 bl小説 「そりゃ会うだろ、お前、あいつら高校のクラスメイトなんだし。七ちゃんて勝っちゃんの一番仲いいダチだろ? 生徒会長と副会長で。ほら、学祭でさ、うちの研究会が『ワンニャンと遊ぼうわーるど』って茶店出したら、結構賑わってさ、ガキにワンコに触らせたり、ジュースやコーラ
月夜の猫-BL小説です 幻月48 bl小説 「別に、何もしてませんよ、俺は。千雪さんにもここにいろって言われたし」 良太は波多野を少し睨み付けて反論した。 「まあ、どうやら実行犯は皆さんが捕まえてくださったようだし、証拠も見つかったらしいから、やつらがあらいざらい吐いてくれれば、工藤さんは出てこられるでしょう。