霜月四日、咱夫藍―modest
遺されても歓びは、11月4日誕生花サフラン咱夫藍霜月四日、咱夫藍―modest秋枯れて、けれど一輪の色。「まあ…きれい、」微笑んだ足もと、枯草ひそやかに蕾ふく。薄紫やわらかな色燈る、この花を愛したひとの名残りだ。「もう薬の研究には摘まないわね、あなた…」つぶやいた言葉そっと鼓動を燈す、なつかしい匂い頬ふれる。かすかな甘い乾いた風、すこし冷たくて指すこし凍えて、それなのに愛しいのは空気のせいだ。『この花はめしべが痛みどめになるんだ、料理にも使えるから君にもいい花じゃないかな、』ほら声なつかしい、この花に佇んだ夫の声。あなたと重ねた時間だけ、この庭たたずんで離れられない。「あんなに研究してたのに自分のことは…ねえ、あなた?」語りかけて呼びかけて、時の気配が香る。幾年、幾十年、あなたと佇んだ庭で呼ばれた。「おば...霜月四日、咱夫藍―modest
2022/11/05 00:27