アユタヤ 美しき廃墟を彷徨う <トラキチ旅のエッセイ>第30話
アユタヤの歴史遺産は、そのほぼすべてが廃墟といっていい。 おびただしい数にのぼる寺院跡は、どれもがすさまじい破壊のあとであり、収奪の終わったのちに残された荒々しい残骸となる。 アユタヤを破壊したのは、ビルマだった(現ミャンマー)。 1752年のこと。ビルマの地に新たな王朝が生まれた。コンバウン朝という。翌19世紀末まで続き、ビルマに巨大な版図をもたらしつつも、最後はイギリスに降ることとなる王朝である。 コンバウン朝は、誕生後またたく間に国内の諸民族を切り従え、平定を終えたが、次に牙をむいた先が、豊かな隣国アユタヤだった。 アユタヤは、まことに豊かだった。 際限なく収穫される米。無尽蔵に湧く林産…
2024/05/09 21:58