静かな渡しの櫓声。恋の物語を結ぶ (矢切の渡し・東京) <トラキチ旅のエッセイ>第18話
毎年、正月を迎えると、柴又の帝釈天をおとずれる。初詣し、おみくじなども引く。年の吉凶を占う。 が、ここのおみくじは、厳しいのだ。なかなか大吉を引かせてはくれない。 それどころか、筆者には、毎度容赦なく、凶を引かせる。 柴又——といえば、「男はつらいよ」という名作シリーズ映画の舞台として、有名である 「車 寅次郎」という、心の澄んだ男が出てくる。 寅次郎は、劇中、登場するヒロインに対して、いつも淡い恋心を抱くが、毎度、容赦なく恋は破れる。 にがい胸の内をかみしめながら、寅次郎は、またも故郷柴又をあとに、どこかへ旅立っていく。 さて、柴又帝釈天=題経寺の境内を裏側に抜け、しばらく進む。 土手に突き…
2023/06/05 12:20