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月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ2 BL小説 この研究会が学内で一躍注目を浴びた理由は、昨年から、老人ホームや養護施設に犬や猫を連れて行き、一緒に過ごしてもらうという活動を始めたことだ。 「でもせっかくホームのおばあちゃんたち喜んでたのに、雨降ってきちゃってさー」 「また、行けばいいさ、な、ラブ」 「ちょっ
月夜の猫-BL小説です 月で逢おうよ1 BL小説 「ここの桜、春になるとすげーよな。こんだけ大きいの、あんまり見ないな」 風がひと吹き、まだ花には遠い寒々しい枝を揺らす。 毎年春になると校門をくぐる生徒たちを静かに見守っている桜の木の下を、初めて二人で歩いたのは、二年と半年前の二月、バレンタインデーのことだ。
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド361 BL小説 あの夜、もうこれ以上は涙はでないだろうというくらい大泣きした千雪を、京助は自分の部屋に連れ帰って寝かせた。 翌日はほぼ一日ゴロゴロしていたようだが、夜になると妙に元気な顔で、「カレー作った。食うやろ?」などと笑顔で京助を出迎えた。 以来ずっと京助
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド358 BL小説 「過ぎてもうた時間は戻らへん、千雪」 研二は自虐的な笑みを浮かべた。 「俺は、お前から逃げてもうた……それが事実や」 「それこそ昔の話やろが! アホ!」 「そうや、俺はドアホや。もし、生まれ変わることがあったら、次は絶対逃げたりはせえへん」 「生まれ変わ
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド357 BL小説 「ずっとこうして…………」 研二は千雪を離すと、愛おし気にその頬に手を置いた。 「お前を抱きしめていたかった」 千雪の目を覗き込むように、研二は笑みを浮かべた。 千雪は研二の言葉が引っ掛かった。 「……俺はずっと……お前と一緒にいたい」 「千雪……
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド354 BL小説 確かに原家は小夜子の母方の親戚とは、もともと後妻の娘である伯母が原に嫁いでからは、伯母の父の葬儀に顔を出して以来、従兄の結婚の際も何の知らせもなく、後で聞いて祝いを贈ったくらいで、疎遠になっていた。 ところが小夜子と紫紀の婚約の話題がマスコミに流れた頃
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド346 BL小説 紫紀と小夜子は看護師に付き添われて京助のベッドに案内された。 あちこち包帯を巻かれているようだが、普通に眠っているようでもあった。 二人はすぐに待合室に戻ってきたが、紫紀は初めて見慣れない二人の女の子に気づいた。 「失礼ですがあなた方ですね、救急車を
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド344 BL小説 藤原が京助の事故を知ったのは、午前八時半を回ったところだった。 昨日からの寒波で冷え切っていた上、早朝は都心でも雪混じりの小雨が降っていた。 「あのっ、京助さんの後輩の佐久間いうもんですけど、さっき京助さん事故で病院に運ばれて………」 連絡はT大法学部
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド343 BL小説 クセでいつの間にか胸ポケットから出したメガネを千雪はかけていた。 こんな時でさえ妙なクセが抜けないのを自嘲する。 思い切ってドアを開けると、先ほどの二人の女性が振り返った。 「小林さん!」 千雪を見て立ち上がったのは、変わらないボブヘアに黒縁メガネの
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド340 BL小説 千雪も頭を下げたが、その時、菊子がバカ旦さんが小バカ旦さんくらいになったと口にしたように、亡くなった江美子と娘の久美子のために頑張っているという気概を感じた。 「バカ旦さんな、肩を持つわけや全然ないけど、江美ちゃんとの結婚が家同士の決め事で、
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド331 BL小説 鮭と卵焼き、ハムとほうれん草、山芋とワカメなどのサラダ、それにフルーツヨーグルトにご飯とみそ汁としっかりした食事だ。 食後にコーヒーが出て、それぞれ一息ついた。 「それで? 今日はどこに行くって?」 京助が千雪似聞いた。 「酒田とか鶴岡とか」 ボソリと
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド328 BL小説 「勢いで来てもうたけど、これからどないします?」 ホテルが近づくと、研二が思いついたように言った。 「三田村が部屋取ってくれてたぜ」 「当日でよう空いてましたね」 「この季節、よほど大きなイベントでもない限りどこかしら空いているさ」 「せえけど、俺らが千雪
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド327 BL小説 「いや、あいつ大抵携帯電源入れてへんやろ」 「せえけど、今、ホテルにおるて」 「俺のカーナビ、PCで走行管理できるよって」 研二は納得し、また何かあったら連絡をくれるように辻に言い、携帯を切った。 研二から辻の話を聞くと、京助は「ったく、あのバカ!」と
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド324 BL小説 「セイシ? バショー? って何? でもすっごくきれーモデルとか?」 「男にしとくのはもったいないくらい……」 コソコソ話とはいえないくらいな声でカップルが言い合っているのが聞こえ、また彼氏が小突かれるのを青年は見て苦笑した。 「せや、今夜の宿、取っとかん
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド321 BL小説 三田村も後に続いて、駐車場の車に乗り込む京助に、「俺も行きます」と言うと、助手席のドアを開けた。 京助のマンションに着くまで、二人は言葉がなかった。 京助はエントランスの前に車を乗り捨てて、中に駆け込んだ。 ガードマンのジョージに千雪が来なかったか
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド318 BL小説 日比谷、芝ビルにある甘味処やさかでは、午後の繁忙時が過ぎ、スタッフが順次休憩に入り、研二はたった今入ってきた年配女性二人組がテーブル席に着くと、メニューやお茶をトレーに乗せて立った。 「ご注文がお決まりになりましたらお声掛けください」 不愛想で強面、
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド317 BL小説 そろそろ出かける時間になったのを、カウンターの上に置かれたデジタル時計で確認すると、研二はコーヒーを飲み干して立ち上がった。 「洗い物はやっとくし」 「食洗機に放り込んどいたらええ」 セーターの上にレザージャケットを羽織ると、研二は玄関に向かう。 「千雪
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド314 BL小説 九時を過ぎている。 それにドアチャイムだ。 宅配業者ではないだろうし、来客の予定は聞いていない。 ただし、オートロックとはいえエントランスのドアは下手をすれば住人の誰かに続いてなら入れてしまうが、その前に管理人室がある。 「何や、研二、鍵忘れたんか?」
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド313 BL小説 何でまた京助出てくるねん。 そう言えば………。 推理小説書いてみろと言ったんは京助やったな。 京助に言われるまで、千雪は古今東西の推理小説について、キャラクターやトリック、謎解きの方法などについて、ああでもないこうでもないと推理小説研究会のメンバーと
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド308 BL小説 「エラリークイーン。また全巻読も思て。まだ、国名シリーズの途中、ギリシアや」 「何冊あるんや?」 「四十冊くらいか?」 「こないだ読んどったんは何やった?」 「ヴァンダイン。あれも何べん読んでもおもろい」 研二は本に目を落とす千雪を見て微笑み、風呂
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド304 BL小説 好きになったら、か。 まさか、あいつも………? その時ふと速水は思いを巡らした。 もし、研二の離婚の原因が千雪だったとしたら。 「千雪くん、今研二くんのところにいるようなんです」 「研二くん?」 これは紫紀も意外だったようだ。 「実は千雪くんと研二くん
月夜の猫-BL小説です 寒に入り59、メリーゴーランド304までアップしました BL小説 京助と千雪が互いにぎくしゃくしていたのは、兄が落ち着いたら次は京助だという周りの雰囲気を察した千雪が京助から離れようとしていたからだ。さらにここにきて千雪は原稿が書けなくなる。千雪は京助に別れを切り出す。
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド301 BL小説 その料理人が泉水といい、ただでは屋敷をもらえないというので、何かあるとこの屋敷で会合などで利用するようになり、その息子が後を継いで、今はたまに綾小路家専用の料亭のように使われている。 親同士の付き合いもあり、速水は子どもの頃からたまに連れられてきていた。
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド293 BL小説 「まさか、マジで、別れるつもりじゃないわよね?」 理香の表情が強張った。 「速水さんなんか俺のこと目の上のコブみたいやし、せいせいするんやないですか?」 「克也のことなんかどうだっていいわよ!」 思わず立ち上がった声高な理香の科白に、店内の客が振り返る。
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド292 BL小説 「そう言えば、華道家のあたし、小説に出してくれるんでしょ?」 「え、そないなこと言いましっけ?」 「あら、軽井沢であたしの花見てて、言ったじゃない」 千雪は小首を傾げた。 「うーん、いつになるかわかれへんなあ」 「次回作はもう決まっちゃってるの? 登場
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド291 BL小説 「今、小夜子さんのところで、初釜や初生け用の訪問着を誂えていただいたの。出来上がりが楽しみ」 「そうですか」 研二は微笑んだ。 接客業なんだからなるべく笑え、とは千雪の命令だ。 とはいっても意識して笑うのに研二は苦労している。 そこへいくと、理香は