メインカテゴリーを選択しなおす
月夜の猫-BL小説です Vacances19 BL小説 午後八時のローマの空はまだ明るい。十時でもまだ薄闇だ。 アスカや秋山、藤堂らと軽く食事をとってから、良太はホテルの部屋に戻り、シャワーを浴びるとベッドにもぐりこんでみたものの、神経が疲れすぎているのか今度は眠れない。 ベッドから這い出すと、冷蔵庫からミネラ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人33 BL小説 「どうしたの!? 京助さん! 速水くん!!」 騒ぎを聞いて、コーヒーを取りに行っていた文子が慌てて駆けつけた。 その頃、二限目の講義のあと教授に質問があって時間をくってしまった千雪は、三限目が始まる前に図書館に行くつもりもあり、カフェテリアで手早く昼を済ませよ
月夜の猫-BL小説です Vacances18 BL小説 「よし、お疲れさま~」 ディレクターの声で一斉に空気が開放感に満たされる。 「お疲れ、バッチシじゃん、良太」 すぐ傍にいるアスカの声が遠く聞こえる。 周りのみんなも何か言っているがよくわからない。 良太は顔をあげてその男を探す。 まっすぐ向こうにようやく
月夜の猫-BL小説です 春雷79 BL小説 「昨日まる一日寝てたんだ。十分だろう」 ってことは、少なくともインフルエンザじゃなかったんだろうな。 良太は工藤の言葉から判断する。 すると工藤の背後から、「工藤様、どうぞこちらへ」という声がする。 「え、今どこです?」 相手はこのクソ寒い雪の日に出歩いたらまた風邪が
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人32 BL小説 明け方ようやく部屋に戻り、ちょっと仮眠した程度でシャワーを浴びて着替え、研究室に戻ってきた京助は、さすがに疲労困憊状態だった。 自販機で買ってきた栄養ドリンクを一気飲みして自分のデスクに足をかけ、椅子にもたれて腕組みをしたまま目を閉じていると、牧村らがやってき
月夜の猫-BL小説です Vacances17 BL小説 「さっきポスター撮りでファインダーから覗いてて思ったよ。背筋がピンと伸びたっていうか。風格っつうのか? ひょっとして初めから尾崎なんかよりよかったかもよ?」 井上に横で説明されるまでもなく、カメラの向こうの良太は開き直ったのか、さっきまでおどおどして見えた
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人31 BL小説 「……はい、わかりました」 緊急ですぐ来るようにという教授のお達しである。 「それ、食ったら、ちゃんと帰れよ」 のんびりと、クレーム・ブリュレを口に持っていく千雪にそう言うと、コーヒーを一口飲んでから京助は慌てて席を立つ。 と思いきや、千雪に覆いかぶさるように
月夜の猫-BL小説です Vacances16 BL小説 休憩になっても、ぐーんと落ち込んだ良太は、部屋のかたすみにうずくまっていた。 「なーに暗くなってんのよ。良太なかなかうまくやってるよ。初めてやったにしちゃ、もう上出来」 アスカが傍にきて声をかけてくれる。 「ヘタな慰めはいいよぉ」 CMに出るんだ、カッコよ
月夜の猫-BL小説です 春雷77 BL小説 「お疲れ様。帰るよ」 間もなく真中が小笠原を呼びに来て、車で帰って行った。 今夜はロケで、出番もないので、当然美亜はいない。 美亜がいないと、小笠原は出番まで妙に一人静かにしていた。 スタッフは片づけをしているし、俳優陣が帰っていくうち、今日は途中から現れた坂口が宇都
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人30 BL小説 「あとは、お任せしますので、よろしくお願いします」 千雪はヘルメットを手に立ち上がった。 「あら、千雪さん、バイクなの? じゃあ、工藤さん、車変えた?」 万里子が小首を傾げて工藤を見た。 「まだ動くものを変える必要はないだろ」 「ふーん、じゃあ、志村さんの?
月夜の猫-BL小説です Vacances15 BL小説 石造りの建物の中は、入ってすぐ一瞬ヒンヤリするのだが、これだけぞろぞろとスタッフが入り込むと、空調が効いていてもちょっと動くだけで汗ばんでくる。 秋から放映予定のCMでは、この猛暑の中アスカと良太は秋物を着ているため、半端じゃなく暑いのだ。 ボルゲーゼ公園の
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人29 BL小説 いかにもオフィスに用があるような顔で、京助はガードマンに会釈をしてオフィス下の螺旋階段あたりへ歩く。 朝から降っていた雨は上がったが、木立を抜ける風は少し冷たかった。 京助はエントランス横の壁に凭れて、やがて現れるだろう千雪を待った。 二十分ほど経ったろうか、
月夜の猫-BL小説です Vacances14 BL小説 売り言葉に買い言葉。後悔先に立たずなんてのもある。 後の祭り、なんて言葉も。 打ち合わせ、準備、あれよあれよという間に時間が経ち、良太は今機上の人なのだった。 あ~~~~~~~~あ………………… 何度ため息をついたか。 どうして俺ってこう、短絡的っつうか、
月夜の猫-BL小説です 春雷75 BL小説 「普段熱出したことのないやつの七度五分は、結構きつくね? しかしあんたが風邪とか、天変地異の前触れじゃねぇのか?」 加賀が突っ込みを入れてくる。 「一応人間やってるからな、これでも」 「フン、寄る年波ってやつだろ。若い時みてぇにムリがきかなくなってんじゃね?」 脱げば
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人28 BL小説 雨は朝になってもしとしとと降り続いていた。 ドアを開けて雨が降っていることに気づいた千雪は、傘を持ってドアを閉めた。 気分は絶不調だ。 あまり雨は好きではないが、理由はそれだけではないだろう。 できれば出かけたくはないが、欠かせない講義があった。 ここのところ
月夜の猫-BL小説です Vacances13 BL小説 「何で、今、そんな電話をかけてきたんだ? こっちとしてはタイミングがよすぎるぞ。ああ、なるほどな、それでか。いや、渡りに船って感じだ。ぜひ使わせてもらいたい。ああ、わかった。また連絡する」 電話を切ると、工藤は面々を振り返り、「ヴィラは何とかなりそうだ」と
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人27 BL小説 一呼吸おいて、速水は続けた。 「いくらでも女がより取り見取りだろう? ゲイってわけじゃないんだ。何も坊やなんか選ばなくてもいいだろ? いったいどこで知り合った? ニューヨークあたりでもよくいるが、あの手合いは絶対援助目的だぜ? お前の素性知ってるんだろ?」
月夜の猫-BL小説です Vacances12 BL小説 「何余裕ぶっこいてんだよ、きさま」 「やつの代わりを立てればいいだけの話だろ? 俺に妙案がある」 あくまでも藤堂は暢気そうに答える。 「ほう、言ってみろよ。尾崎は鴻池物産の方で指名してきたキャストだが、中川アスカの添え物としては駆け出しでもいいセンだったん
月夜の猫-BL小説です 春雷73 BL小説 平造への箱は割と大き目で、どうやらみんな同じブランドのものらしい。 ってか、これ、ラルフローレンじゃん。 「あらまあ、素敵!」 あらまあを連発して、鈴木さんは取り出したシルクのスカーフを早速肩にかけてみる。 紺地にゴールドのバラが品の好い鈴木さんによく合っている。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人26 BL小説 六本木の大通りから少し入ったところにあるバー「サンクチュアリ」は、富裕層が利用する高級会員制クラブの系列で、VIPルームもあるシックな店だが、京助や速水にとっては高校時代からのたまり場で、加えて大抵何人もの遊び仲間が屯していた。 久々にドアをくぐると、久しぶり
月夜の猫-BL小説です Vacances11 BL小説 工藤や河崎の話している内容から、良太も大体のことは把握できた。 工藤もドラマのために河崎らと同行してイタリアに飛び、撮影用にヴィラを押さえてきたのだが、持ち主から急遽使うことになったから貸せないという連絡が入り、こちらも番狂わせもいいところなのだ。 「来週
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ45 BL小説 「おい、だからそんな恰好で寝るな」 いきなり首に引っ掛けていたタオルで頭をガシガシやられた千雪は目を覚ました。 ぼんやりしているうちに寝てしまったらしい。 「ほんまにお前の兄貴、クエナイやつや」 千雪はボソリと言った。 「だからそうだってっだろ? 兄貴のやつ、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人25 BL小説 「桜木? 政治家というと、まさか何年か前、贈収賄事件で起訴された桜木代議士?」 「そうだ。君の言う通り、引き裂かれて自殺なんて、今時はやらないよな」 小田は苦笑いしながら振り返った。 「いえ、境遇とかは違うかもしれませんが、俺の両親、駆け落ちやったんです。母親
月夜の猫-BL小説です Vacances10 BL小説 爽やかな好天にもかかわらず、朝からオフィスは怪しい雲行きを醸し出していた。 「そのくらいの怪我、テーピングで何とかごまかせるでしょう?」 丁寧な言い回しだがはっきりと秋山は相手を見据えた。 「いや、そう簡単には行かないみたいでして。誠に申し訳ございません。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人24 BL小説 「ああ、ちょっと話をした時にね。それに君の小説を映画化するという話じゃないか、工藤にしてみれば結構大きな仕事になるようだし、私も影ながら応援くらいはさせてもらうよ」 ワハハと豪快に笑う小田からは誠実な人柄が窺えた。 「工藤さんとは今も親しくされてはるんですね」
月夜の猫-BL小説です Vacances9 BL小説 「それで、シッポを掴んだのか」 「今、譲に調査させてるとこだ。だが、きさま、ほんとに奈々やアスカに手を出してるんじゃないだろうな? それが事実なら俺は無罪にしてやる気なんかさらさらないからな」 「るせーな、あんなガキに俺が手を出すかよ。何度もブタ箱に入り浸っ
月夜の猫-BL小説です 春雷71 BL小説 「いや、今朝、おかゆとか食べて薬飲んだけど、気力だけで動いてるみたいです。夕べは何せ、斎藤さんの付き合いだったし」 「ああ、体調悪い時あの人の付き合いはきついな。しかし、インフルじゃないのか? 病院にも行ってないわけ?」 「熱があるようなら病院行かないとですよね」
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人23 BL小説 さすがに切れ者の弁護士というだけあって、その表情からは何も窺い知れない。 「刑法と処罰について、考えているところなのですが、弁護士として実際の事件を扱っておられる先生に、差しさわりのない程度でお話を聞かせていただけたらと思いまして」 もちろん、自分が携わってい
月夜の猫-BL小説です Vacances8 BL小説 それに、昨年末の忙しい時期に十日ほども入院し、しかも工藤に別荘に連れて行ってもらったりして、逆に工藤に負担をかけてしまった良太としては非常に心苦しかったのだ。 どちらかというと休みをとって欲しいのは、工藤自身になのだが。 それにしても家族で一緒に旅行なんて何
月夜の猫-BL小説です 春雷(工藤×良太)70までアップしました BL小説 春雷(工藤×良太)70、真夜中の恋人(京助×千雪)22、Vacances(工藤×良太)7(良太入社2年目くらい)までアップしました。真夜中の恋人、Vacances は、エピソード―風薫る頃、からどうぞ。
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人22 BL小説 「捜査一課の刑事だ。だいたい、こないだは千雪を容疑者扱いしといてどの面下げて来やがるんだ! 厚顔無恥な連中だ。千雪なんかに頼らず、ちったあ自分の頭を使ってみたらどうだ?! へっぽこデカどもめ!」 むしゃくしゃしていた京助は、ちょうど現れた渋谷に当り散らす。
月夜の猫-BL小説です Vacances7 BL小説 「俺の昔話なんかお前には関係ないだろうが」 工藤はもう終ったことだというようにそう言った。 でも、じゃあ何故、「あの人」のことになるとあんなに一生懸命になるんだ? それを聞く勇気がない。 …どーせ俺なんかさ! キショーめ、飲みに行っちゃろーかなー… さっき工
月夜の猫-BL小説です 春雷69 BL小説 曽祖父がスーツを着ると、昔の人間にしては背が高く体格もよかったせいか、ロンドンの紳士ってこんな感じだろうかと思わせるような佇まいだったのを覚えている。 激高して怒るようなことはなかったが、冷たい印象が幼い工藤には曽祖父には好かれていないと思わせた。 軽井沢の別荘に通って
月夜の猫-BL小説です Vacances6 BL小説 「どうぞ」 キッチンから出てきた鈴木さんがコーヒーを谷川と井上に渡す。 「うお、ありがて~。今日は一段と美人だね~鈴木さん」 「魚武さんみたいなこと言わなくてもいいの」 ソファに腰をおろした井上はコーヒーをすする。 「…魚武って誰よ?」 「らしいってだけじゃ、
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人21 BL小説 頭から工藤をヤクザと見下しているその正義感面にはかなりムカついたが、千雪のことを見下したいが故に工藤のことを持ち出している速水に対して、反吐が出る思いがして、千雪は立ち上がる。 「根拠のない噂話なんかに踊らされて、仮にも心理学者ともあろう人が、そう知らん他人を
月夜の猫-BL小説です 春雷68 BL小説 おかゆを器に入れ、梅干しを添えて、薬や栄養ドリンクと一緒にトレーに乗せると、良太は隣へのドアを開けた。 何だか、妙にこのドアが機能している気がする。 部屋に入ると、工藤はシャワーを浴びたらしく、バスローブで頭をタオルで拭きながらリビングまでやってきた。 「シャワーとか
月夜の猫-BL小説です Vacances5 BL小説 「イっちゃってるよー、良太~」 バッチーンと背中を叩かれて、良太は「ってぇよ~~、アスカさ~ん」と振り返る。 「ドア見つめて、セツナげな顔しちゃってさ~、かーわい~ったら」 「せ…つなげになんかなってないよっ!」 アスカに追い討ちをかけられて、良太は顔をカ
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人20 BL小説 「あ、先輩! こんなとこにいた!」 お前は猛禽類か。 千雪は眼鏡の奥からよく見知った男を睨み付けた。 今日は天気もいいので南側のテラスへ続く扉が開かれ、オープンカフェになっていた。 できればこのうるさい後輩とは顔を合わせたくないし、ちょうど隅の木陰のテーブルが
月夜の猫-BL小説です 春雷67 BL小説 大学の先輩で工藤はよくしてもらったというが、実際鴻池と相対した良太からみると、工藤に対して異様な執着があるのだ。 だから工藤がよりによって良太なんかと付き合っていることが気に入らず、良太を排除して自分が理想とする相手を工藤にくっつけようとしたわけだ。 当時は工藤も鴻池の
月夜の猫-BL小説です Vacances4 BL小説 弁護士のタマゴ一人と司法書士一人を抱え、半蔵門に事務所を構えている小田は、現東京地裁の敏腕検事荒木志郎や工藤とは大学の同期で、大学卒業の年には司法試験に三人競って合格したという、在学当時から一筋ならでは行かないツワモノ三羽烏の一人だ。 寄ると触るとお互いの
月夜の猫-BL小説です 真夜中の恋人19 BL小説 よりによって、顔を見たくもない相手とどうしてこんなところで出くわしてしまうのか。 「ええ、一応、雑誌で連載なんかやってるんで、色々忙しいんです」 振り返ると速水とその後ろには文子が立っていた。 「まあ、連載? 何ていう雑誌ですか?」 にこやかに尋ねられて、千雪