いと 情け深し
涙が今にも頬を伝いそうだった。 彼女も私も、互いに今日は暖かいものを着込んできたと、報告しあう。それでも、風の冷たさを感じながら、決まったコースを歩く。彼女と別れるいつもの角で、足を止めておしゃべりが続く。 「背中をさすらせて」 帰り際、彼女が私の背中に手を当てた。 「泣きそう」 手で目をこする真似をして答えた私だったが、すでに目頭は熱くなっていた。 背中に彼女の手のぬくもりを感じたまま、手を振って別れた。 昨年の夏、たった一つの小さな石が、私を苦しめた。自然に排出が期待された石は、一日二リットルの水分補給もむなしく、半年経った今も、微動だにせずレントゲンに写りこんでいた。 年内の目標として掲…
2023/02/14 23:28