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第5章「選んだ先にあるもの」 金曜日の夜、東京の空はうっすらと雨が降っていた。 退勤後、オフィスビルの下で長谷川陸が傘も差さずに立っていた。 「……バカじゃん、濡れるやんか」 小走りで駆け寄った市川陽翔が、陸の頭の上に自分の傘を差し出す。 「なんしよんと、こんなとこで」 「……待っとった。お前に、ちゃんと答え聞かんと落ち着かんけん」 陽翔は小さく息を吐いた。 「俺な、ずっと迷っとった。陸とおると、気が楽っちゃ。昔と同じ空気で、なんも考えんで笑えるし、安心できる」 「……うん」 「けど、それって“今”の俺が欲しいもんとは……ちょっと違うか
短編BL小説5章で最後。明日アップして終わり〜次のはもう少し面白いの書きたいなぁ。ってか英語のも書いたんだけど、ここでアップしてもね😅 Lonely
第4章「距離が近づくとき」 週明けの朝、社内はいつもよりざわついていた。 「市川くん、市川くん!今日の資料、部長からすごく褒められてたよ」 「えっ、本当ですか!?やったー……!」 プレゼン資料の準備で、先週ずっと残業続きだった陽翔。報われた嬉しさに、思わず小さくガッツポーズを取った。 「……市川さん」 声をかけてきたのは高槻。少しだけ、目元が緩んでいた。 「お疲れさま。……本当に、頑張ってましたよね」 「あ、ありがとうございます……高槻さんが一緒に残ってくれたおかげです」 「いえ。僕は、あなたと一緒に仕事できるだけで十分なんで」 そう
第2章「意識し始めた瞬間」 「なあ陽翔、昼一緒に飯行かん?」 会議が終わったタイミングで、長谷川陸が陽翔のデスクに顔を出した。隣の席に座る高槻悠真の目が、さりげなくそのやりとりを捉える。 「あ、うん。ええよ」 「ほんじゃ決まりやな!」 にかっと笑う陸を見て、陽翔は少しだけ照れたように笑い返す。 「仲良いんですね、幼なじみって」 ふいに高槻が言った。 その声に陽翔は一瞬反応し、視線を向けた。 「あっ、はい。小学校からずっと一緒だったんで。……なんか変な感じです、ここでまた会うなんて」 「……そうですか」 高槻は視線を落としたまま、静かにタイピングを再開した。
第1章 再会 「おはようございまーす……って、あれ?何か人増えとる?」 市川陽翔(いちかわ はると)はオフィスに入るなり、見慣れない後ろ姿に足を止めた。スーツなのに、どこか体育会系の匂いがする。背が高くてがっしりした肩、ラフなリュック。 「あれ、まさか……うっそ……」 ぽつりと漏らした瞬間、その男が振り返った。 「おっ!やっぱ陽翔やん!お前、こんなとこで働きよったんか!」 「陸!? 長谷川陸!? なんしよん、いつ東京に来たんか!?」 「転職よ。ほんでこっち配属っち言われて来たら、まさか陽翔がおるとか。運命やろ?」 驚きと戸惑いでしばらく口が開いたままの陽翔。 声