【BL短編小説】 卒業、初恋 -第5章-
第5章「選んだ先にあるもの」 金曜日の夜、東京の空はうっすらと雨が降っていた。 退勤後、オフィスビルの下で長谷川陸が傘も差さずに立っていた。 「……バカじゃん、濡れるやんか」 小走りで駆け寄った市川陽翔が、陸の頭の上に自分の傘を差し出す。 「なんしよんと、こんなとこで」 「……待っとった。お前に、ちゃんと答え聞かんと落ち着かんけん」 陽翔は小さく息を吐いた。 「俺な、ずっと迷っとった。陸とおると、気が楽っちゃ。昔と同じ空気で、なんも考えんで笑えるし、安心できる」 「……うん」 「けど、それって“今”の俺が欲しいもんとは……ちょっと違うか
2025/05/18 21:27