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或る種の備忘録的な記事である。拙僧自身が、この辺をどう考えるべきかという問題意識で書く記事である。梵網経中、師と為ると言うは、必ず是れ出家菩薩なり。五徳を具足す、一には持戒、二には十臘、三には律蔵を解す、四には禅思に通ず、五には慧蔵玄を窮む。雲棲袾宏『梵網経心地品菩薩戒義疏発隠』巻1結論からいうと、これは『梵網経』には出ていない。ただし、天台宗の『菩薩戒義疏』には『梵網経』からの引用として出ており、この一節を受けて「什師所伝し、融師筆受す。流伝して今に至る、此れは其れ正説なり」ともあって、いわゆる羅什訳としての『梵網経』を指しているのだが、本文には出て来ない。それとも、拙僧どもが一般的に読める本文には無いのだろうか?ところで、『菩薩戒義疏』では「師徳」という表現を使うが、「師匠の条件」について、声聞の場合...仏道修行で就くべき師匠の条件
冬安居結制に伴う面山瑞方禅師「冬安居辯」を参究する不定期短期連載記事である。肇法師云く、梵網経一百二十巻六十一品、其の中菩薩心地品第十、専ら菩薩行地を明かす。余憶うに、此れ一百二十巻中、定めて冬夏安居の法式有りて、而も審らかなるべし。伝に謂う、真諦三蔵、菩薩律蔵を将ちて此に来せんと擬する時、南海に於いて船に上るも、船即ち没せんと欲す。余の物を省去すれども、仍りて猶お起たず。唯だ律本を去れば、船方に進むことを得るのみ。真諦、歎じて曰く、菩薩戒律、漢地に縁無きことを悲しむ。但し、是の如くの因縁有るも、梵網大本、未だ渡らざるを以ての故に冬安居の説、広伝せざるのみ。『面山広録』巻24「冬安居辯」この一節を紹介していきたいと思うのだが、これは『梵網経』の伝来と、同経が来る前(というか、現代的な研究では、『梵網経』は...面山瑞方禅師「冬安居辯」参究③
とても似たような用語に、「五辛」と「五葷」がある。同じだという場合もある。なお、江戸時代以降の禅宗寺院に良く見られる「禁葷酒入山門」という石碑は、「葷と酒を山門に入ることを禁ず」となるわけだが、この場合の「葷」とは「五葷」を指している。ただ、一方で菩薩戒を見ていくと、「五葷」よりは「五辛」表記が一般的な気がする。なんじ仏子、五辛〈大蒜、革葱、慈葱、蘭葱、興渠〉を食することを得ざれ。是の五種、一切食中に食することを得ざれ。若し故らに食する者は、軽垢罪を犯す。『梵網経』巻下「食五辛戒第四」以上の通りである。しかし、それでは「五葷」はどこに出てくるのか?最近の『大蔵経』検索サイトで調べてみると、「五葷」は中国明代以降の文献にしか出てこない。前述の「禁葷酒入山門」について、黄檗宗到来以降だという話があるので、明代...五辛と五葷に関する雑談
先日アップした【『仏祖正伝菩薩戒作法』の特徴について】の関係で、拙僧自身、授戒作法中に於ける「衆生受仏戒」偈の問題について、興味を抱いた。この偈について、出典はよく皆さまご存じであるとは思うが、確認しておくと中国以東に於いて菩薩戒の根本聖典の扱いを受けるようになった『梵網経』である。それで、拙僧どもはこの偈について、授戒には付きものだと思っているのだが、もしかするとその観念自体、そう古いものではない、と思うようになった。そこで、宗門授戒作法の中で、この偈がどのように採用されいているのか、確認しておきたい。先に挙げた記事でも申し上げたが、道元禅師に係る授戒作法3本では、以下の通りとなっている。・『出家略作法』不採用・『仏祖正伝菩薩戒作法』採用・『正法眼蔵』「受戒」巻不採用上記の通り、採用しているのは『菩薩戒...曹洞宗の授戒作法に於ける「衆生受仏戒」偈の採用について
ちょっとした雑考である。以前、『梵網経』「第二十三軽戒」について考えたときに、ふと思いついたことがあった。それは、現代はネット技術が盛んなので、世界どこでも、「師資相授の受戒」が可能なのでは無いか?という話である。まずは、その戒の原文を見ていただきたいと思う。なんじ仏子、仏滅度の後、好心を以て菩薩戒を受けんと欲せん時は、仏・菩薩の形像の前に自誓受戒(自ら誓って戒を受く)すべし。当に七日をもって仏の前に懺悔し、好相を見ることを得れば、便ち戒を得。若し、好相を得ずんば、応に二七・三七・乃至一年にも、要らず好相を得べし。好相を得已らば、便ち仏・菩薩の形像の前に戒を受くべし。若し好相を得ずんば、仏像の前にも受戒すれども、戒を得べからず。『梵網経』下巻「第二十三軽蔑新学戒」さて、ネット時代になり、またこの新型コロナ...ネット時代に自誓受戒は成立するのか?
『梵網経』は中国で成立したとされる文献なので、仏教では、等と軽々に言うわけにはいかないが、少なくとも中国以東では大きな影響を与えている。そこで、『梵網経』には「十月十五日」という日付が見える。なんじ仏子、常に二時に頭陀し、冬夏に坐禅し、結夏安居して、常に楊枝・澡豆・三衣・瓶・鉢・坐具・錫杖・香炉・漉水嚢・手巾・刀子・火燧・鑷子・縄床・経・律・仏像・菩薩形像を用うべし。而も菩薩、頭陀を行ずる時、及び遊方の時に、百里・千里を行来するには、此の十八種物、常に其の身に随えよ。頭陀は、正月十五日より三月十五日に至り、八月十五日より十月十五日に至る。是の二時中、此の十八種物、常に其の身に随うは、鳥の二翼の如し。『梵網経』「第三十七故入難処戒」それで、上記の通り、「十月十五日」までは頭陀・遊行の期間なのである。そうなる...十月十五日まで頭陀・遊行の期間