メインカテゴリーを選択しなおす
とりあえず、七日間の加行を伴い行われるはずの「伝戒式・伝法式」について、非常に簡略化された儀礼が存在することを指摘しておきたい。それは、或る意味で以前からよく知られている切紙の『山居伝授儀規』を見ておきたい。なお、「山居」であるが、今一つ分からないところもあるけれども、中世の頃、参禅問答を中心とした参究が終わった者に対して、師が私的に与えたものであったようである。○山居伝授儀規一七日間、三時に巡堂し、専精に道心の堅固ならんことを祈祷す。第七日午後、道場を荘厳し、室内に椅を設け、法被之を覆う。椅の後の壁上に高く両鏡を懸く。椅の前に一卓を設け、卓前に師資の拝席を展ぶ。卓上に華瓶・香炉・燭台・洒水器・松燭〈三把〉・衣鉢・血脈嗣書等を置く。瓶に松枝を挿み、洒水枝の松枝なり。当晩の昏鐘鳴の後、師、資を引いて道場に入...『山居伝授儀規』切紙に見る儀礼の簡便性
拙僧が所持している切紙集(これは、資料として購入したもので、拙僧が室内で伝えられたものではない)には、幾つかの伝法作法に関わる内容のものが入っているのだが、今回紹介するのは「法鉢伝付」という名前の切紙である。正直なところ、拙僧はこの切紙を、他で見たことが無い。おそらく、石川力山先生などは、各地でご覧になっているのだと思うのだが、主著の『禅宗相伝資料の研究(上下巻)』(法蔵館)の索引などでも探すことが出来ないので、詳しいことは分からない。そこで、今回の記事では、当該切紙の内容を紹介することで、読者諸賢の見識に教えていただければ幸いである。なお、予め述べておくと、内容は2段落である。おそらくは、前段だけで十分なのだが、他の切紙同様に、関連する説話を挿入することで、この切紙の価値を高める努力が後段で行われている...「法鉢伝付」切紙について