*小説『ザ・民間療法』全目次を見る人に何かを教えることは、自分自身にとっても学びが大きい。頭のなかにまとまりもなくつめ込まれていた内容が、むりやり整理される。せっぱつまった引っ越しのときみたいに、なくしたと思っていた大事な物が意外なところから出てくること
『モナ・リザの左目』(非対称化する人類)の花山水清、初の小説<新連載> 人類史に残る新発見の軌跡とともに世界の民間療法と医療の実像に迫る! 毎回読み切り。3分で読めてクスッと笑えて知識も増える♪
この特異な現象が人体にもたらすインパクトはあまりに大きく、同時代の人間の多くには全容を把握することさえできなかった。そしてこの発見の重要性を訴えるMの発言は、社会からはことごとく排除されていく。ついに彼も老いと呼ばれる年齢を迎え、「このままでは神から託された預言が埋もれてしまう」と焦る。彼が見つけてきたもの、成し遂げたものとは何だったのか。果たしてその真実が正しく評価される日は訪れるのか。
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る人に何かを教えることは、自分自身にとっても学びが大きい。頭のなかにまとまりもなくつめ込まれていた内容が、むりやり整理される。せっぱつまった引っ越しのときみたいに、なくしたと思っていた大事な物が意外なところから出てくること
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る私がまだ20代のころ、親戚中でいちばん仲良しだったいとこが、腰痛で入院したことがあった。昭和の時代には、腰痛といえば年寄りか新婚さんのモノと相場が決まっていた。それなのに若くて健康で独身の彼が、腰痛で入院するなんてよほど
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る「やんだタマゲたな~。急にナニいうだぁ~♪」私の頭のなかで、オヨネーズの名曲「麦畑」が鳴り響いている。整体学校の大外先生から、出し抜けに「師匠、私を一番弟子にしてください」といわれた私は、いきなりプロポーズされた女性みた
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るがん患者には、左側の脊柱起立筋が異常なほど固く緊張している人が多い。起立筋だけではなく、左半身の知覚はことごとく鈍くなっている。そんな状態では、どんなに力を入れてもんでも叩いても、ビクともしないのである。ところがある特定
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る沖縄から帰った私は、久しぶりに池袋の整体学校に行ってみた。さわやかな潮風でリフレッシュしたばかりの私には、この場末感が漂う雑居ビルのたたずまいが、ある意味とても新鮮だ。ギギギィーッと建付けの悪いドアを開けると、そこには大
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る明るい光で目が覚めた。ここはどこだろう。メガネがないからよく見えないが、この陽射しはどう見たってうちじゃない。そうだ。沖縄のホテルに泊まってるんだった。胸の奥にプクッと楽しい気分がわいてくる。窓まで行って外を見ると、視界
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る朝カーテンを開けると、日差しがまぶしい季節になっていた。そういえば今日の午前は仕事の予約が入っていない。今のうちに池尻大橋の図書館に本を返しに行こう。ついでに丸正で魚も見てこよう。そう決めると、私はリュックに本を詰めこん
地域タグ:沖縄県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るいつもお世話になっている樹森さんから電話があった。「ちょっと診てあげてほしい人がいるのヨ~」と、相変わらず元気な声である。それよりも、樹森さんのところでベビーシッターをしている瀬戸さんの妹さんが、その後どうなったかが気に
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る激しい腰痛のせいで、寝たきりになりかけていた春子さんの施術が終わった。ここまで車に乗せてきてくれた樹森さんや、春子さんのお嬢さんたちとみんなでお茶を飲んでくつろいでいると、腰の痛みが消えて饒舌になった春子さんの口から、長
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る樹森さんの運転する車が、買い物客でにぎわう吉祥寺の街をゆっくりと抜けると、あっという間に春子さんが待っている瀬戸さんの家に着いた。見上げるほど大きなマンションの前で、「ここです」といわれて入った地下駐車場には、高そうな外
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る友人の子どもは大きくなるのが早い。ついこのあいだ生まれたばかりだと思っていたら、「もうそんな年なの!?」と驚くことがよくある。その度ごとに、独身の自分だけが、世の中から取り残されているような気分になったりする。先週、樹森
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 人というのは、話し上手と話し下手の2つのタイプに分けられる。さしずめ私は話し下手タイプなのか、善意でいったつもりでも、逆に悪意だととられてしまうことがよくある。もちろん話すときだけでなく、話の聞き方にも明らかに上手な人
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 「二度あることは三度ある」とはよくいったものだ。この仕事をしていると、それをつくづく実感する場面が多かった。昨年の暮れから、立てつづけに寺田さん関係でがん患者が現れていた。以前、紹介されて、施術でたいへんな思いをした大
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る新年早々、また寺田さんから電話がかかってきた。「ヨウ、この前はお疲れさん!」と相変わらずごキゲンである。この様子では、彼はまだ山中さんのがんのことは知らないようだ。つづけて彼は、「佐々木さんのことなんだけどナ」と切り出し
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るこの仕事を始めて、早くも3度目の冬を迎えようとしていた。北国生まれの私にはちょっぴり心ときめく季節の到来だ。しかしこのヒンヤリとした安アパートでは、ワビしさが漂い始める時季でもある。少しふとんでも買い足そうか。そんなこ
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るあれから3日たった。今日はまた瀬尾さんの腕の痛みと格闘する日である。前回の矯正のあと、彼の腕の痛みはかなり軽くなって、残りはあと2割くらいだそうだ。瀬尾さんが腕の激痛で受診した病院でも、そこから紹介された大学病院でも、そ
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る手術の前夜、病院から逃げ出した瀬尾さんの話にもどろう。彼はそこで頚椎椎間板ヘルニアの手術を受ける予定だった。しかし頚椎のヘルニアの存在は、一般的にはあまり知られていないようだ。腰椎の椎間板ヘルニアであれば、腰痛のもっとも
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る今から何年前のことになるだろう。まだ私が子供だったころ、山崎豊子の『白い巨塔』という小説が話題になっていた。あとで何度も映画やドラマにもなった人気作品である。私が観たテレビドラマでは、主役の財前教授の役を、二枚目で名高い
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る干ししいたけの軸をかんだら、ポロッと差し歯が落ちた。あわてて鏡を見ると、そこには前歯が一本抜け落ちて、ギャグ漫画にでも出てきそうな情けない顔が映っていた。これでは人に会えない。あわてて山田先生に連絡して、歯をつけてもらう
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る荒井さんの施術のために、新宿のクリニックに通い始めて早くも半年が過ぎようとしていた。最初のころは、女性にしてはあまりにも筋肉が硬くこわばっていた。それが今ではすっかりやわらかくなって、ポーンと張っていたおなかもペシャン
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る私が定期的に施術していた森脇さんが、先日受けた検査で、「子宮頸がんの疑いあり」と診断された。そんなはずはないのにと私がいぶかっていると、改めて受けた精密検査の結果では、がんではなかったそうだ。ところがその際、医師からは「
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る皮膚科医の前田先生から紹介された子宮頸がんの荒井さんは、西武線のはずれ近くに住んでいる。お宅があるのは駅からもかなり遠いところなので、とても私のアパートから通える距離ではなかった。荒井さんは、以前に比べるとものすごく疲れ
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る看護師の近野さんから手紙が届いた。いまどき手紙は珍しい。そういえば彼女には、お母さんのお葬式以来会っていなかった。白い封筒を開けながら、差出人の近野さんの名前に向かって「久しぶり~」と声をかける。久しぶりといっても、あれ
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る田舎の母から電話がかかってきた。ずっと入院していた父方の祖母がとうとう亡くなったのだ。もう103歳だったから、立派な大往生である。本人も満足だろう。私が受話器をもったまま黙っていると、つづけて「葬式に出られるか」ときいて
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る人が最期を迎えるときの姿は、その人がどんな人生を送ってきたかを物語る。生き方同様、人にはさまざまな死に様がある。そこにはそれぞれ、その人なりの美学があるようだ。私の祖父は70代半ばで亡くなった。当時としては早いほうでもな
地域タグ:神奈川県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る友人の父親の宗介さんは、今年85歳になる。戦争で胸に敵の弾を受けてしまってからは、彼はずっと片肺で暮らしてきた。それでも大して不自由もなく、特別な病気もしてこなかった。ところが最近、かぜをこじらせてしまった。症状がなかな
地域タグ:神奈川県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る施術の仕事を始めてからというもの、他人の人生の最期に立ち会う機会が多くなった。その度に胸が引き裂かれる思いにおそわれて、「もうこんな仕事なんかやめてしまいたい」と何度思ったか知れない。先日も、友人の近野さんのお母さんが、
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る田口さんの家にうかがうのは、これで4回目になる。初めてお目にかかってから、3週間が過ぎていた。私が行ったからといって、終末期のがんで余命幾ばくもない人に、何かできるわけではない。それでも、もう1回、もう1回と思いながら通っ
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る私は気が弱いほうではないと思う。しかしどちらかというと、エエかっこしいの部類ではある。この性格のせいで、これまで何度、後悔するはめになったことだろう。大腸がんの下田さんのときだって、初めにはっきりと断っていれば、何か月も
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るこの仕事を始めたころは、確かリラクゼーションを目的とした施術だったはずだ。それがいつしか、がんや難病といった、たいへんな症状の患者さんばかりがやってくるようになっていた。民間療法家にすぎない私のところに、そんな重病の人が
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る下田さんが病院での治療を受け入れてくれたおかげで、やっと私も彼の大腸がんとの闘いから解放された。あのまま彼が病院での治療を拒みつづけていたら、私はずっと彼のもとへ通って施術をつづけていただろう。それでは、私のほうが先に
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るそれにしても、「左」というのはどこか不気味である。背骨は左にしかズレないし、背中の起立筋も左だけが盛り上がる。人の体の「左」に現れる異変は、何か不吉なサインなのだろうか。その不気味さそのままに、大腸がんの下田さんの起立筋
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るがんの話をすると嫌われる。ここのところ、それを実感するようになった。がんという病気は、病院で発見されるまではほとんど症状がないのに、末期になるといきなり激痛におそわれる人が多い。「痛みのあまり絶叫して、アゴの骨がはずれた
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る下田さんがパートナーと暮らしている中目黒のマンションは、幸いにも私のアパートから歩いて行ける距離にあった。彼は平日は仕事に出かけているので、日曜の午前中に行って施術することになっていた。最初の約束の日、急ぎ足で歩いてみた
地域タグ:目黒区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む大腸がんの手術を乗り越えて、須藤さんが無事に退院した。ところが元気ではあるものの、まだ排便がうまくできないのでとまどっているようだった。「そりゃ腸を切り取ったんだから、ムリもないヨ」といって励ます。お医者さんからも、時
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む大腸がんの手術を間近に控えた須藤さんは、入院準備だけでなく、入院で不在中の仕事の段取りなどもあって、けっこう忙しそうだ。忙しくしていなければ、不安な気持ちに押しつぶされそうなのかもしれない。そこにあるのは、がんそのもの
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読むテレビ局でプロデューサーをしている河野くんから、「日本に帰ってきたヨ~」と連絡があった。彼は私が特殊美術の仕事をしているころからの仲間で、今でもわりと頻繁に行き来している仲良しである。彼は番組のロケで、しばらくの間、
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むあれから私は、大腸がんの手術を控えた須藤さんの家に通う日がつづいていた。それにしてもがんてヤツは、病気というよりも地震のような天災に近い気がする。地震は何の前触れもなくドカンとやってきて、一挙に今までの生活を一変させて
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む相手の体に触れる以上、施術には必ずリスクが伴うものである。だからこそ、患者さんとの信頼関係がなければ、この仕事は成り立たない。まして須藤さんはがん患者なのだ。いくら慣れているとはいえ、今の彼女の状態では施術によって何が
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む須藤さんは55歳になったばかりの女性経営者である。彼女はあちこち手を広げて仕事をしているせいで、スケジュールはいつもいっぱいだ。サラリーマンのように休みなど取っていられないから、いつも疲れが取れないといっている。そこで
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む子宮頸がんの京子さんの施術を始めて、3週間が過ぎた。家を訪れるたびに、彼女は元気になっている気がする。私を迎えてくれる表情にも、生気が増してすこぶる調子がよさそうだ。以前の体の硬さが、もう気にならないほどやわらかくなっ
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む2回の施術を終えてみて、やっと京子さんの体の感じがつかめてきたようだ。そうはいっても、「あれから大丈夫だったかナ」とその後の調子が気にかかる。京子さんだけではない。この不安は、私が施術したどの人に対しても起きてくる。
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の2度目の闘いが始まった。バトルの相手は京子さんの子宮頸がんである。前回同様、うつ伏せになった彼女の左の起立筋から刺激を再開した。うまい具合に、まだ体はにぶくなっていないようだ。私からの刺激に対して、ちゃんと敏感に反
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読むどうにか他の患者さんの予約をやりくりして、最初の施術の3日後には京子さんの家に向かった。たとえ無料奉仕だとしても、がんという病気の程度から見れば、最優先になって当然だろう。何よりも、最初の施術が終わってからというもの、
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読むまずは紹介者の近野さんとの約束通り、子宮頸がんの京子さんの家でお話をうかがった。がんの手術を前にして、彼女が不安に思っていることにも答えられたし、しっかりと体のチェックもした。これで約束は果たせたはずだ。ところがそれで
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む子宮頸がんで来月手術することになっている京子さんは、左腰の上の部分が大きく盛り上がっていた。だが初対面の段階で、私にはもう一つ気になるところがあった。鼻筋の真ん中あたりから、左に向かって鼻がクキッと折れ曲がっているの
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近野さんから、子宮頸がんで手術を1か月後に控えた京子さんを紹介された。もちろんがんが私の手に負えるわけではないから、一旦は施術をお断りした。しかし「せめて一度診るだけ」と懇願されて、仕方なく彼女の家を訪れたのだ。そこで
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読むまた近野さんから電話がきた。彼女の紹介で私が施術した森本さんから、施術の経緯を聞いたそうだ。森本さんはその後もずっと調子がいいらしい。それ以前は職場でも半病人のようだったから、施術後の変化にみんなが驚いているのだという
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む海外ではどうだか知らないが、日本には西洋医学と東洋医学という分け方がある。だから日本のお医者さんは、自分は西洋医学だと思っているはずだ。これが民間療法となると、なぜだかみんな東洋医学にくくられる。他にも、科学的かどう
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むあれから2週間がたった。あんなに楽しみにしていたのに、森本さんのアパートに向かう道すがら、つい心配性の私が顔をのぞかせていた。ひょっとしてあのときの刺激が元で、彼女は体調を崩しているのではないか。何か悪い影響が出てい
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む人間というのは、つくづくよくわからない生き物だ。今までふつうに楽しくしゃべっていたかと思うと、突如として怒り出す人がいる。理由もわからず、ただただその豹変ぶりにとまどってしまう。そんな奇妙なことが、人間の体にも起こる
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むアメリカの映画やドラマを見ていると、彼らは赤ちゃんが大好きなようだ。生まれたばかりの赤ちゃんがいると、みんな「私も私も!」といって、順番に抱っこさせてもらうシーンがよく出てくる。もちろん日本にも、赤ちゃん好きはたくさ
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む芳子さんが肺がんで亡くなってからというもの、私は何をするにも力が入らなくなっていた。施術には出かけるが、消化試合をこなしているような感覚に陥っていた。そして来る日も来る日も頭に浮かぶのは、「芳子さんはなぜあんなに早く
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私が学生のころ、池袋の怪しいエリアに文芸坐という映画館があった。たしか当時の学割で、3本立てが100円で見られたと思う。私は子供の時分から映画が好きで、学校帰りに近所の映画館に通っていた。東京に出てきてからも、お金もな
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎月のように施術していた芳子さんが肺がんになったと聞いて、私は動揺していた。ちょっと前までは、患者ががんだとわかると家族には伝えるが、本人にはいわないことになっていた。がんだと告知してしまうと、あまりのショックで自殺す
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む出張整体で開業して早2年が過ぎた。少しずつ患者さんも増えてきている。施術の予約はスポットで入ることもあるが、定期的に訪問する人も多いので、経営的には安定していた。そんな定期の患者さんの一人に、84歳になる田中芳子さんが
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む今から20年も前になるだろうか。私は小沢昭一や永六輔が大好きで、彼らのラジオ番組をよく聞いていた。その巧みな話芸は、そんじょそこらの芸人では決してマネのできないレベルだった。おかげでどれだけ笑わせてもらったかわからない
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むこの前、お寺の住職に馬乗りになって施術しているのを見られて、とんでもないかんちがいをされてしまった。しかし患者に馬乗りになっているのを見てかんちがいするのは、実は人間だけではない。私が施術にうかがうお宅では、ペットを飼
地域タグ:東京都
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私は出張専門の整体業なので、いろいろな家に出かけていく。家の大きい・小さい、新しい・古いのちがいだけでなく、通される部屋もまちまちではあるが、古い家では圧倒的に仏間に通されることが多い。仏間というのは畳敷きの和室のせい
地域タグ:台東区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む先日、近藤くんに連れられて行った勉強会の内容には少しガッカリだった。それでも世の中には、まだまだ私の知らないスゴイ治療家がたくさんいるはずだ。テレビをつければ、ド派手なパフォーマンスを披露するスゴウデの治療家が登場する
地域タグ:神奈川県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんに連れられて行った凸凹会で、「の」の字による腎臓病の治療法はマスターした。ここでは毎回ちがう病気をテーマにしているそうだから、腎臓病が「の」の字なら、流れとしては前回が心臓病か肝臓病あたりで、「へ」の字だったの
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんから電話があった。彼は私が特殊美術をやっていたころからの知り合いで、放送作家のかたわら治療院も経営しているという変わり種である。その彼が突然ぎっくり腰で動けなくなって、同じ治療家である私に助けを求めてきたのだ。
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近、また腰の痛みがひどくなってきた。だれでも腰痛にはなるものだから、私だって腰が痛いときがあるのは当然だ。腰痛治療が仕事であっても関係ない。しかも今回は痛いのが腰だけじゃない。お尻から足にかけて痛みが広がって、し
地域タグ:世田谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっぱり健太くんのような重大疾患の人に施術するのは、私にはあまりにも荷が重すぎたのだ。それがわかっていたから無償で施術してきたのだが、これは健太くんだけではなかった。子育て中なのに膠原病になってしまった女性や、友人の
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第51話 奇跡は起きるのか(6/6)カメラが捉えた奇跡、その後。
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む健太くんの家に通い始めて、半年が過ぎようとしていた。言葉と知能はかなり前進したようだったけれど、歩行機能については全く進歩が見られない。脳性麻痺なのだから、歩けないのは当たり前かもしれない。それでも私の心のどこかには、
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第50話 奇跡は起きるのか(5/6)イルカと泳ぐと癒やし効果がある!?
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私はいつも自炊している。1年のうち1000食は自炊しているだろう。経済的な理由だから、弁当や惣菜を買って家で食べるようなこともない。ところが出張整体の仕事だと、出先からそのまま次の場所に移動することが多い。するとなかな
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む ある日のこと、いつものように健太くんの家に行くと、お母さんがいいづらそうに「実は…」と話を切り出した。隣町に、健太くんと同じ脳性麻痺の子供を抱えるお母さんがいて、健太くんが急にしゃべれるようになったことを、つい話して
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第48話 奇跡は起きるのか(3/6)突然しゃべり始めた健太くん
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎週日曜日に、脳性麻痺の健太くんの家に通うことに決めた。健太くんのトレーニングのためである。トレーニングといってもごく軽い動作なので、健太くんは遊びだと思っていることだろう。子供の扱いが苦手なはずの私が、なぜこんなこと
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第47話 奇跡は起きるのか(2/6)健太くんのトレーニングを始める
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む助産師の酒井さんに連れられて、脳性麻痺の健太くんの家に行った私は、なぜ彼の背骨には、脊髄損傷の人のような緊張が現れていないのか、それを不思議に思った。これは全く予想外だったのである。そもそも脳性麻痺と脊髄損傷による麻痺
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第46話 奇跡は起きるのか(1/6)脳性麻痺の健太くんとの出会い
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む開業して半年も過ぎると、だんだんと整体の仕事にも慣れてきた。もちろんまだまだ知らないことばかりで、毎日が勉強に次ぐ勉強だ。それでも学生のころとちがって勉強が全く苦にならない。知識はすぐ実践に反映されるので、そこに充実感
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近また釣りを始めた。始めたといっても、月に1回も行けるわけではない。それでもふとした瞬間に、「今度は何を釣ろうか」と考えるだけで楽しい。もともと田舎育ちの私は、子供のころから近くの川で釣りをするのが好きだった。しか
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私にとって仕事の予約の電話は生命線である。できるだけ受け損ねないように、寝るときだっていつも手が届くところに電話を置いている。その日も夜中にグッスリと眠り込んでいるときに、突然、枕元の電話が鳴り響いた。深夜にかかって
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の親しい友人である寺田さんは、ロック専門の音楽事務所をやっている。彼の紹介のおかげで、ロックミュージシャンたちからの予約も多くなっていた。音楽の好みとしては、私はロックよりも圧倒的に藤圭子のファンである。だが、私は
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私の整体は出張専門なので、いろいろなお宅に出かけていく。一人暮らしの小さなアパートから高級住宅街の豪邸、企業の会議室や高級ホテルにいたるまで、行き先はさまざまだった。友人の近野さんのおかげで(せいで)、私の患者には医
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む考えてみると、人から人への「紹介」はおもしろいものだ。以前、タモリのお昼の番組に「ともだちの輪」というコーナーがあった。そこではその日のゲストが次のゲストを指名する。すると思いもよらない人同士のつながりが見られて、番
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の仕事を出張専門で開業した私は、紹介のおかげで予約がたくさん入るようになった。これなら仕事としてつづけられそうで、まずは一安心である。ところが整体と銘打っている以上、整体を提供しなくてはならない。これが予想以上につ
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の学校を卒業した私は、いよいよプロの整体師として開業することにした。とはいっても、ちゃんと場所を構えて看板を上げるようなゆとりなどない。不動産バブルは崩壊していたが、それでも東京都内の路面店となれば、べらぼうに家賃
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む友人たちに、最近占いの勉強をしているというと、みんなキラッと目が光り、「見て見て!」とせがんでくる。整体なんかよりも、占いに興味がある人が多いようである。そこで頼まれるまま、あちこちで運勢を占ってあげていた。そんな話が
地域タグ:渋谷区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む世の中は占い流行りである。今や街のいたるところに、占いの看板が立っている。ところが今ほど占いが流行っていなかった、私がまだ中学生のころ、地元の飲み屋街に住んでいた「児島のおばさん」が占いを始めた。始めたといっても、おば
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む平日通っている整体の学校では、私が顔を出すたびに、大外先生をはじめみんなが私の気功修行の成果を知りたがる。そこで週末に習ってきたことを、「にわか気功師」の私がレクチャーすることになった。初歩的な「気」の出し方から始ま
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む何か得体のしれない黒いモノ、意念でしか見えないソイツは、人に取り憑いて悪さをするのだという。それはいわゆる「悪霊憑き」というヤツだろうか。ナカバヤシ先生は、その取り憑いたヤツを「気」の力で引きはがすのだ。そのためには
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む「私は気功に向いているのかもしれない」そう思うと練習が楽しくて仕方がない。毎週、日曜にナカバヤシ先生のお宅に行くのが待ち遠しいほどだった。夢中で通い続けてしばらくたったころ、ようやく治療のための気功を教えてもらえるこ
地域タグ:埼玉県
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むさあ今日から気功の修行が始まる。私はいくつか電車を乗り継いで、ナカバヤシ先生の自宅がある埼玉県の郊外まで出かけていった。ナカバヤシ先生は痩せ型の50代ぐらいで、ちょっと見は中国人の風貌をしている。弟子はとらないと聞い
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む整体の学校に1か月も通うと、技も少しずつ使えるようにはなってきた。しかし整体そのものの実体が、私には今いちナゾのままである。自分なりにいろいろ調べてみたが、整体にはそれほど古い歴史があるわけではなさそうだ。19世紀末
地域タグ:豊島区
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私とアケミママを乗せて夜の街を走り続けた車は、赤坂にある一軒の店の前までくると、ようやく停まった。運転していたホソダという若い衆に案内され、ママの後ろについて店に入る。そこからまた奥に進んだところで、広めの部屋に通さ
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*小説『ザ・民間療法』を始めから読む平日は朝から晩まで整体の学校で練習に励んでいる。実践も兼ねて、友達の家で整体をやってあげたりしていると、それだけで1週間のスケジュールはいっぱいだ。そんなとき友達から、知り合いのスナックで厨房のバイトを探していると聞
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第29話 お色気「ランバダ流」整体 VS 白衣を着た「〇〇流」整体
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっと住むところも決まったことだし、私は意気揚々と池袋の整体の学校に通い始めた。40になったばかりの私など、かなり若い部類である。生徒の大半は中高年で、退職や定年を機に新たな技術を身につけ、人生の再出発を目指している人
地域タグ:インド
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むヒロコさんが旅立ってしまってからも、彼女が遺した「あったかい」という言葉は、私の耳に響き続けていた。あのときお腹に軽く手を当てただけで、死にゆく人に向けて言葉にならない気持ちを伝えることができた。言葉ではなく、触れる
地域タグ:豊島区
心づくしのごちそうのおかげで、少しずつ食欲が回復し、インド暮らしで失った体重とともに、本来の体力ももどってきた。そこでささやかではあるが、お礼として今までの治療法に加えて、インドで覚えたオイルマッサージを披露してみた。すると・・・
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せっかくインドでの暮らしに慣れてきたが、Mは栄養失調で倒れてしまった。もうこれ以上、ここで暮らせば死んでしまう。失意の末にチベットを回ってインドを後にした。そして成田空港にたどりついた彼を待っていたのは…
地域タグ:インド
第25話 インド編「シッキムのラマ教寺院で究極の悟りに至る」
河口慧海の場合、チベットに行こうと思えば関所破りしかなかったので、彼はヒマラヤの周囲をかなり遠回りした。当時は関所破りが見つかれば重罪で、死刑は免れなかったからである。それに比べてMは…
地域タグ:インド
「よし、日本に帰ろう!」Mはやっと決心した。だが何のためにインドに来たのだったか。これといって具体的な目的があったわけではない。こんなところまで来ておきながら、収穫もないまま手ぶらで帰っていいのか。そんなことが頭のなかでグルグルし始めた。
地域タグ:インド
Mは昨日から今いち体調が優れない。今朝も頭がボーッとして寝起きが悪かった。そういえばインドに来てからどれだけ痩せただろう。ヨーロッパから来た人たちは平気なのに彼だけがどんどん痩せていく。そしてとうとう…
地域タグ:インド
第22話 インド編「ヒンドゥー教の火渡りと御柱祭の岡本太郎」
日本でも修験道の行者の火渡りはテレビでたまに見かけるが、あの火渡りの源流はヒンドゥー教らしい。その本場インドでヒンドゥー教の火渡りを目にして衝撃を受けるM。その体験から彼が得た死生観とは…
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ある日のこと、近所のユルグがサイババのところまで行ってもらってきた、ビブーティなるものを見せてくれた。ちょっと見はお焼香の灰みたいで、あまりありがたくない。「どうせならもっとイイものをもらってくればよかったのに」Mがそんなことをいうと彼は・・・
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第20話 インド編「寒気と高熱で気絶したあとのイタリアン味噌汁」
オーロビルでは毎年4月ごろから急に暑くなる。日によっては夜でも室温が40度から下がらない。暑いだけではない。ここは南インドでも海岸に近いため、その分、湿度も高い。そのせいで寝苦しい夜が続き体力を消耗し尽くしたMはとうとう…
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第19話 インド編「特大パワーストーンの魔除け効果とヒーリング」
Mの住むコミュニティから少し離れたエリアにパワーストーンを扱う人たちがいた。そこへ出かけて行くと、色も大きさもちがう珍しい石がズラリと並んでいる。説明によれば、石にはそれぞれちがったパワーがあって、水晶などはヒーリングにも使われるのだという。確かに…
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*小説『ザ・民間療法』全目次を見る人に何かを教えることは、自分自身にとっても学びが大きい。頭のなかにまとまりもなくつめ込まれていた内容が、むりやり整理される。せっぱつまった引っ越しのときみたいに、なくしたと思っていた大事な物が意外なところから出てくること
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る私がまだ20代のころ、親戚中でいちばん仲良しだったいとこが、腰痛で入院したことがあった。昭和の時代には、腰痛といえば年寄りか新婚さんのモノと相場が決まっていた。それなのに若くて健康で独身の彼が、腰痛で入院するなんてよほど
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る「やんだタマゲたな~。急にナニいうだぁ~♪」私の頭のなかで、オヨネーズの名曲「麦畑」が鳴り響いている。整体学校の大外先生から、出し抜けに「師匠、私を一番弟子にしてください」といわれた私は、いきなりプロポーズされた女性みた
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るがん患者には、左側の脊柱起立筋が異常なほど固く緊張している人が多い。起立筋だけではなく、左半身の知覚はことごとく鈍くなっている。そんな状態では、どんなに力を入れてもんでも叩いても、ビクともしないのである。ところがある特定
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る沖縄から帰った私は、久しぶりに池袋の整体学校に行ってみた。さわやかな潮風でリフレッシュしたばかりの私には、この場末感が漂う雑居ビルのたたずまいが、ある意味とても新鮮だ。ギギギィーッと建付けの悪いドアを開けると、そこには大
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る明るい光で目が覚めた。ここはどこだろう。メガネがないからよく見えないが、この陽射しはどう見たってうちじゃない。そうだ。沖縄のホテルに泊まってるんだった。胸の奥にプクッと楽しい気分がわいてくる。窓まで行って外を見ると、視界
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る朝カーテンを開けると、日差しがまぶしい季節になっていた。そういえば今日の午前は仕事の予約が入っていない。今のうちに池尻大橋の図書館に本を返しに行こう。ついでに丸正で魚も見てこよう。そう決めると、私はリュックに本を詰めこん
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るいつもお世話になっている樹森さんから電話があった。「ちょっと診てあげてほしい人がいるのヨ~」と、相変わらず元気な声である。それよりも、樹森さんのところでベビーシッターをしている瀬戸さんの妹さんが、その後どうなったかが気に
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る激しい腰痛のせいで、寝たきりになりかけていた春子さんの施術が終わった。ここまで車に乗せてきてくれた樹森さんや、春子さんのお嬢さんたちとみんなでお茶を飲んでくつろいでいると、腰の痛みが消えて饒舌になった春子さんの口から、長
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る樹森さんの運転する車が、買い物客でにぎわう吉祥寺の街をゆっくりと抜けると、あっという間に春子さんが待っている瀬戸さんの家に着いた。見上げるほど大きなマンションの前で、「ここです」といわれて入った地下駐車場には、高そうな外
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る友人の子どもは大きくなるのが早い。ついこのあいだ生まれたばかりだと思っていたら、「もうそんな年なの!?」と驚くことがよくある。その度ごとに、独身の自分だけが、世の中から取り残されているような気分になったりする。先週、樹森
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 今日は武蔵小杉まで出張だから、渋谷に寄って大和田青果で野菜を買って帰ろう。そんなことを考えながら朝ごはんを食べていると、湯飲みの向こうで電話が鳴った。例の山田先生からである。先生に高木さんの相談をしたのは、おとといの夕
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 人というのは、話し上手と話し下手の2つのタイプに分けられる。さしずめ私は話し下手タイプなのか、善意でいったつもりでも、逆に悪意だととられてしまうことがよくある。もちろん話すときだけでなく、話の聞き方にも明らかに上手な人
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る 「二度あることは三度ある」とはよくいったものだ。この仕事をしていると、それをつくづく実感する場面が多かった。昨年の暮れから、立てつづけに寺田さん関係でがん患者が現れていた。以前、紹介されて、施術でたいへんな思いをした大
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る新年早々、また寺田さんから電話がかかってきた。「ヨウ、この前はお疲れさん!」と相変わらずごキゲンである。この様子では、彼はまだ山中さんのがんのことは知らないようだ。つづけて彼は、「佐々木さんのことなんだけどナ」と切り出し
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るこの仕事を始めて、早くも3度目の冬を迎えようとしていた。北国生まれの私にはちょっぴり心ときめく季節の到来だ。しかしこのヒンヤリとした安アパートでは、ワビしさが漂い始める時季でもある。少しふとんでも買い足そうか。そんなこ
*小説『ザ・民間療法』全目次を見るあれから3日たった。今日はまた瀬尾さんの腕の痛みと格闘する日である。前回の矯正のあと、彼の腕の痛みはかなり軽くなって、残りはあと2割くらいだそうだ。瀬尾さんが腕の激痛で受診した病院でも、そこから紹介された大学病院でも、そ
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る手術の前夜、病院から逃げ出した瀬尾さんの話にもどろう。彼はそこで頚椎椎間板ヘルニアの手術を受ける予定だった。しかし頚椎のヘルニアの存在は、一般的にはあまり知られていないようだ。腰椎の椎間板ヘルニアであれば、腰痛のもっとも
*小説『ザ・民間療法』全目次を見る今から何年前のことになるだろう。まだ私が子供だったころ、山崎豊子の『白い巨塔』という小説が話題になっていた。あとで何度も映画やドラマにもなった人気作品である。私が観たテレビドラマでは、主役の財前教授の役を、二枚目で名高い
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むアメリカの映画やドラマを見ていると、彼らは赤ちゃんが大好きなようだ。生まれたばかりの赤ちゃんがいると、みんな「私も私も!」といって、順番に抱っこさせてもらうシーンがよく出てくる。もちろん日本にも、赤ちゃん好きはたくさ
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む芳子さんが肺がんで亡くなってからというもの、私は何をするにも力が入らなくなっていた。施術には出かけるが、消化試合をこなしているような感覚に陥っていた。そして来る日も来る日も頭に浮かぶのは、「芳子さんはなぜあんなに早く
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私が学生のころ、池袋の怪しいエリアに文芸坐という映画館があった。たしか当時の学割で、3本立てが100円で見られたと思う。私は子供の時分から映画が好きで、学校帰りに近所の映画館に通っていた。東京に出てきてからも、お金もな
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎月のように施術していた芳子さんが肺がんになったと聞いて、私は動揺していた。ちょっと前までは、患者ががんだとわかると家族には伝えるが、本人にはいわないことになっていた。がんだと告知してしまうと、あまりのショックで自殺す
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む出張整体で開業して早2年が過ぎた。少しずつ患者さんも増えてきている。施術の予約はスポットで入ることもあるが、定期的に訪問する人も多いので、経営的には安定していた。そんな定期の患者さんの一人に、84歳になる田中芳子さんが
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む今から20年も前になるだろうか。私は小沢昭一や永六輔が大好きで、彼らのラジオ番組をよく聞いていた。その巧みな話芸は、そんじょそこらの芸人では決してマネのできないレベルだった。おかげでどれだけ笑わせてもらったかわからない
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むこの前、お寺の住職に馬乗りになって施術しているのを見られて、とんでもないかんちがいをされてしまった。しかし患者に馬乗りになっているのを見てかんちがいするのは、実は人間だけではない。私が施術にうかがうお宅では、ペットを飼
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私は出張専門の整体業なので、いろいろな家に出かけていく。家の大きい・小さい、新しい・古いのちがいだけでなく、通される部屋もまちまちではあるが、古い家では圧倒的に仏間に通されることが多い。仏間というのは畳敷きの和室のせい
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む先日、近藤くんに連れられて行った勉強会の内容には少しガッカリだった。それでも世の中には、まだまだ私の知らないスゴイ治療家がたくさんいるはずだ。テレビをつければ、ド派手なパフォーマンスを披露するスゴウデの治療家が登場する
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんに連れられて行った凸凹会で、「の」の字による腎臓病の治療法はマスターした。ここでは毎回ちがう病気をテーマにしているそうだから、腎臓病が「の」の字なら、流れとしては前回が心臓病か肝臓病あたりで、「へ」の字だったの
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む近藤くんから電話があった。彼は私が特殊美術をやっていたころからの知り合いで、放送作家のかたわら治療院も経営しているという変わり種である。その彼が突然ぎっくり腰で動けなくなって、同じ治療家である私に助けを求めてきたのだ。
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近、また腰の痛みがひどくなってきた。だれでも腰痛にはなるものだから、私だって腰が痛いときがあるのは当然だ。腰痛治療が仕事であっても関係ない。しかも今回は痛いのが腰だけじゃない。お尻から足にかけて痛みが広がって、し
*小説『ザ・民間療法』を始めから読むやっぱり健太くんのような重大疾患の人に施術するのは、私にはあまりにも荷が重すぎたのだ。それがわかっていたから無償で施術してきたのだが、これは健太くんだけではなかった。子育て中なのに膠原病になってしまった女性や、友人の
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む健太くんの家に通い始めて、半年が過ぎようとしていた。言葉と知能はかなり前進したようだったけれど、歩行機能については全く進歩が見られない。脳性麻痺なのだから、歩けないのは当たり前かもしれない。それでも私の心のどこかには、
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む私はいつも自炊している。1年のうち1000食は自炊しているだろう。経済的な理由だから、弁当や惣菜を買って家で食べるようなこともない。ところが出張整体の仕事だと、出先からそのまま次の場所に移動することが多い。するとなかな
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む ある日のこと、いつものように健太くんの家に行くと、お母さんがいいづらそうに「実は…」と話を切り出した。隣町に、健太くんと同じ脳性麻痺の子供を抱えるお母さんがいて、健太くんが急にしゃべれるようになったことを、つい話して
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む毎週日曜日に、脳性麻痺の健太くんの家に通うことに決めた。健太くんのトレーニングのためである。トレーニングといってもごく軽い動作なので、健太くんは遊びだと思っていることだろう。子供の扱いが苦手なはずの私が、なぜこんなこと
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む助産師の酒井さんに連れられて、脳性麻痺の健太くんの家に行った私は、なぜ彼の背骨には、脊髄損傷の人のような緊張が現れていないのか、それを不思議に思った。これは全く予想外だったのである。そもそも脳性麻痺と脊髄損傷による麻痺
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む開業して半年も過ぎると、だんだんと整体の仕事にも慣れてきた。もちろんまだまだ知らないことばかりで、毎日が勉強に次ぐ勉強だ。それでも学生のころとちがって勉強が全く苦にならない。知識はすぐ実践に反映されるので、そこに充実感
*小説『ザ・民間療法』を始めから読む最近また釣りを始めた。始めたといっても、月に1回も行けるわけではない。それでもふとした瞬間に、「今度は何を釣ろうか」と考えるだけで楽しい。もともと田舎育ちの私は、子供のころから近くの川で釣りをするのが好きだった。しか