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月夜の猫-BL小説です 花びらながれ21 BL小説 「市川さん!!!」 倒れている市川に駆け寄った良太が、ふと見上げると白髪交じりの年配の男が見おろしている。 「あんた上田?!」 幸い段数が多くなかったせいか、市川はすぐ良太に気づいて身体を起こした。 「広瀬さん!!」 良太にしがみつく市川を見おろしていた上田は
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ20 BL小説 有吉のことも気がかりなのはわかっているが、とりあえずやることは山積みだ。 工藤がコートを手に立ちあがると、良太も慌てて工藤を送るためにキーを持って工藤のあとに続いた。 赤坂五丁目辺りまで来たところで、ハンズフリーにしている良太の携帯が鳴った。 「広瀬さん、
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ19 BL小説 「え、あれ撮ったの、有吉さん?! どういうつもりであんな!」 良太はカッとなって有吉に詰め寄った。 いくら何でも市川をあんな形で世間に晒すなんて、と良太は憤る。 「さすが工藤さん、よくわかったな。あん時、写真撮ってる俺とあいつ目が合って、あとで怒鳴りつけてきた
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ18 BL小説 「口を閉ざしていないとどうなるかわからないぞ、って書面で届いたそうなんです。それ、持ってくるって言ってました」 「何でそいつ、もっと早く証言しないんだ、あの男は」 イライラと渋谷は口にした。 手持無沙汰のまま二十分ほどが過ぎた頃、表にタクシーが止まり、やが
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ17 BL小説 オフィスに戻るとソファに来客がいて、その男はドアが開いたのを振り返った。 「どうもすみません、お忙しい時に、広瀬さん」 立ち上がった大柄な男はちょっと頭を下げた。 「え、渋谷さん、………どうも」 警視庁捜査一課の渋谷である。 工藤とは昔から何かと因縁があ
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ16 BL小説 悪いけど沢村、とても佐々木さん、ここで俺が何か話しかけるって、ムリ。 しかも仕事以外のこととかで。 撮影が始まるとスタジオ全体に緊張が走る。 小笠原も古木も問題はなかったが、三度のリテイクとなって、休憩に入った。 リテイクの原因は、主にワイマラナーのトムの
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き18 BL小説 「う……るさい……なんだよ、………藤堂、人を子ども扱いして」 悠は涙をこぼしながら悪態をつく。 「子どもにはこんなことできないよ」 「…う……ああ………っ………」 突き上げる藤堂の与える刺激に耐え切れず、悠は甘く声を上げる。 藤堂に抱えられたまま美術館から屋
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ15 BL小説 良太が再び目が覚めた時は既に八時を回っていた。 毎度のパターンで、良太は工藤にしがみついて眠っていたらしい自分に赤面しながら慌ててベッドを降りると、チェストからパンツやシャツを出して慌てて身づくろいする。 「……まだ八時だぞ」 「撮影、小笠原の、フジタ自動車
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き17 BL小説 「だが、悲劇が二人を引き裂いた。パッツィ家によるメディチ家の暗殺というね。ジュリアーノも逃れられなかった。のちに捉えられたパッツィ家の暗殺者の処刑シーンをレオナルドがスケッチしたというのは有名な話だよね」 「藤堂さん、うちの美術史のセンセよりかわかりやすい解
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ14 BL小説 「いや、そんな気がするってだけで」 慌てて良太は言葉を濁す。 「食事は?」 「あ、まだだった……」 そうだ、コンビニで弁当でも買ってこようと思ってたら沢村が来ちまったんだ。 「この時間だと…、ま、いいか。行くぞ、良太」 「あ、はい」 何となく良太がごまかしてい
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き16 BL小説 「まさか買うわけないだろ。借りたんだよ。選んだのは俺だけど」 アウトストラーダを制限速度百三十キロギリギリのスピードで走りながら、高津の質問に藤堂は答える。 「そうっすよね、いくら藤堂さんでもこんな車すんなりと……」 「河崎のやつ、車とかファッション、芸術とか
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ13 BL小説 ことあるごとに資産家の御曹司のように言われるが、沢村自身は実家とは折り合いが悪く縁を切っている、というのも良太は再三聞いている。 「それが不動産屋から佐々木さんにそのことがバレて、以来、携帯も切られた」 「ってか何で、そもそも佐々木さんに内緒でやったんだよ?」
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き15 BL小説 「何で、携帯つながらねんだよ」 悠が言うと、高津はバツの悪そうな顔で、 「ハハハ……夕べ充電してたつもりが、コード抜けててさ、途中でバッテリー切れ」 「なんだと?」 悠はフォークを握りしめて高津を睨む。 「それより、何で、あんたがいるんすか?」 あらかた食べ終
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ12 BL小説 実際、工藤は帰ってきたが、良太が有吉のことを相談しようかどうしようか迷っているうちに、落ち着く間もなく、最近関わっているアイドル主演のドラマの撮影現場へと向かった。 アイドルというのは今人気上昇中の某有名プロダクション所属タレント本谷和正のことだ。 イケメンだ
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き14 BL小説 「もちょっと待って、こなかったら、帰るからな!」 とはいえ、高津に連れてこられたようなところで、タクシーに乗るにもホテルをどうやって説明したらいいかわからない。 日は傾き、人の波も少しおさまってくる。 何度かかけているのだが、状況はまったく変わらず、高津の携帯
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ11 BL小説 「でも奏ちゃん、絶対俺の部屋にいたことは言うな、写真週刊誌にかぎつけられるぞって。何だか私怖くって、奏ちゃんにタクシーでマンションまで送ってもらったんだけど」 有吉からそう念を押されたのだが、有吉がまだ釈放されていないのをやきもきして、どうしようか迷った末
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き13 BL小説 「ああ?」 酔っぱらった顔で高津はそれでも怪訝な目を向けた。 「明日は別行動だ!」 「お前、何言ってんだよ」 チーズをぱくつきながら、高津は笑う。 「俺のおもりにきたわけじゃねーっつんだろ? 見たいものも違うし。明日、バチカン行ったら、お互い好きなもの見れ
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ10 BL小説 「市川さん!」 良太はオフィスに入ってきた女性を見て驚いた。 「広瀬さん、どうしよう……私……」 今にも泣きそうな市川を、良太はソファへと促した。 「さてっと、じゃ、行こっか、秋山さん」 アスカが意味ありげな目を良太に向けて立ち上がる。 秋山とアスカが出て行く
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き12 BL小説 「ビッグになってから……か」 ビッグになんかなれなくてもいいけど、とりあえずいっぱしのもんになったら、若い頃お世話になりました、とか、言うわけ? 高津の言うとおり、藤堂にとって俺なんか、プロジェクトの一環、くらいなもんなのかもしれない。 このプロジェクトが終わ
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ9 BL小説 有吉を信じないわけではないが、もし何かあったら、番組に大いに差しさわりがあることになる。 とにかく真犯人がいるなら早いとこ捕まえてほしい。 「ちょっと、良太、何? せっかくオフにはさ、温泉とか行きたいって思ってたのに」 ドアが開いたと思ったら、文句と一緒にアスカと
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き11 BL小説 「村松幸蔵。こーんな確かな後ろ盾があるってのに……」 「高津!」 ここがパリだからなのか、酒に酔っているからなのか、高津は常日頃の状況把握ができなくなっているらしい。 村松幸蔵が悠の父親だということを知っているのは、高津とそれに藤堂の二人だけなのだ。 「え、
月夜の猫-BL小説です 花さそう73 BL小説 フン、と鼻で笑い、工藤はグラスを傾ける。 「それで? いつから撮る?」 「佐々木さんのスケジュールさえ押さえられれば、来月末辺りからと考えている。近いうちにミーティングだから、空けとけよ」 「俺のことはまあ、今ならどうにでもなるが、佐々木さんって、あの麗しの?」
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ8 BL小説 急を要するとはいえ制作サイドなら今までの経験上何とかなるのだが、良太には今すぐにキャスティングができるようなデータがどうしても不足していた。 もっとタレントについて情報収集する必要はあると反省はしたものの、それらを鑑みれば、この際自ずと答えは出てくるというものだ
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き10 BL小説 着いてみれば、ここがフランスのパリなんだ、と感慨を深める余裕もないまま、安ホテルにチェックインし、その夜はルーブルのチェックをして食べて寝るだけだった。 翌朝早く、悠は高津に叩き起こされ、時間がないからとあたふたとルーブルに向かう。 確かに藤堂の言うとおり、
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ7 BL小説 「あ、ヤギちゃん元気? この仕事ヤギちゃんとやってるんだって?」 水野が思い出したように聞いた。 「はい……、すごく元気ですよ。ヤギさんと、それからカメラマンの有吉さんに今回のプロジェクトに参加して頂いています」 「ヤギちゃんってさ、見かけはジジくさいくせに、
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き9 BL小説 「十日も悠ちゃんの顔を見られないと、アイちゃんが寂しがるだろうな」 そのまま悠に唇を寄せた藤堂だが、やんわり押し戻される。 「……どうして?」 だが、しっかと唇を引き結び、悠は藤堂の手からすり抜けて部屋に入ってしまう。 なんだよ、それ! 悠はベッドに突っ伏した。
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ6 BL小説 「それで今回参りましたのは、『レッドデータアニマルズ 自然からの警告』の音楽全般を今回ぜひ『ドラゴンテイル』の皆さんにお願いしたいと思いまして、番組のご説明をさせていただきたいんですが」 「いいよ、どうぞ」 気難しいどころか、気さくに対応してくれているのは、
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き8 BL小説 河崎が自分を嫌ってるのは知っている。 そんなことはどうでもいい。 だがそれ以上に藤堂をよくわかっているだろうことも知ってる。 そう所詮は金のある人間の遊びなんだ。 いつか高津が言った通り、真剣になったらバカみるのは俺。 わかっているつもりなんだけどな。 あまやか
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ5 BL小説 「はじめてお目にかかります、私、青山プロダクションの……」 パソコンの前にこちらに背を向けて座っている女性が一人いたので、良太は名刺入れから名刺を取り出しながら声をかけた。 「ああ、君が良太ちゃん? なるほどねぇ」 自己紹介し終わらないうちに振り返って立ち上が
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き7 BL小説 それでもその時その時、臨機応変に完璧に仕事を遂行していく二人には圧倒されることもしばしばだ。 ただ、きっちりとスケジュールを組んで動く性格の三浦としては、ちょっと待てよ、と思うことも少なくないわけだ。 まあ、何が起きても驚かないというスタンスの浩輔にはまだ及ばない
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ4 BL小説 MBCテレビで制作中のドキュメンタリー番組『レッドデータアニマルズ‐自然からの警告』の音楽は人気ミュージシャンに依頼している。 良太もいくつか好きな曲がある『ドラゴンテイル』は、ボーカル担当の水野あきらがほとんどの曲を作っているのだが、この独身美女と噂の水野は
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き6 BL小説 「これは何の冗談だ? 義行!」 コーヒーをすすりながらデスクを見た河崎が、数枚の書類を手に言った。 CF撮影のために翌日の日曜も返上で労働を終えたプラグインの面々は、夕方オフィスに戻ってきて一息ついていたところだ。 「見りゃわかるだろ? 企画書兼出張届け」
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ3 BL小説 竹野紗英は最近急速に伸びていると評判の人気女優ではあるが、業界では超わがままでスタッフ泣かせという評判の方が先に立っている。 元来人気女優やアイドルといえば、どちらかというと周りがちやほやしつくして、おだてて女王様に仕立て上げるので、それが自分の事務所の人間だけ
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き5 BL小説 「いや、実際留学したければした方がいいんだ。そのくらいできるだけのものはほんとはあるのにな」 無論、悠が留学なんかしてしまったら、きっとあの部屋は火が消えたようになるだろうな。 藤堂にもその寂しさは想像がつかない。 「悠、まだ受け取らないんですか? 絵の代金」 浩輔は
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ2 BL小説 これまで何だかだと沢村のトラブルに巻き込まれてきた良太としては、できればこのくそ忙しい時に何もあってほしくはないと頭の中から沢村のことをシャットアウトする。 「良太ちゃん、坂口様からお電話です」 社長の工藤がドラマの撮影でギリシア辺りをうろついている間に、やら
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き4 BL小説 「ま、なあ、ロダンのヒヒジジイの作ったお約束なシロモノより数段マシ、かな」 「悠にかかっちゃ、ロダンもかたなしだな」 藤堂はくっくっと笑う。 「俺にとっちゃ無用のもんってことだ。ロダンを崇拝するヤツに喧嘩売る気はないさ」 「なるほど。しかし過密スケジュールだな」
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ1 BL小説 近年の日本のスポーツ界といえば、レベルの高い闘いが続くフィギュア、テニスの上坂の世界ランキングの動向が気になるところだ。 サッカー界では海外で活躍する選手の移籍問題が注目されている。 MLBでは大宮選手の活躍で持ち切りだが、プロ野球はと言えば三月も半ばを過ぎる
月夜の猫-BL小説です 花びらながれ(工藤×良太) BL小説 やらなくてはならないことが山積みな良太のところに、脚本家の坂口から電話が入り、ドラマのキャスティングで問題があったと言ってきた。結局良太がその穴埋めをすることになった。しかもそんな良太に悪友の沢村から相談事が舞い込んだり。そろそろお花見かななんて思
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き3 BL小説 「高津はしゃべれるのか? フランス語とかイタリア語とか」 「しゃべれるかよ、んなもん」 悠は、と藤堂が聞かないところが悠は癪に障るのだが。 「特訓するにも三日しかないしな。ちなみに英語は?」 「だから、しゃべれるわきゃねーって」 悠はしれっと断言する。
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き2 BL小説 「そう、お金、あるのか? 念のために多めに持っていった方がいい。今度こそ絵の代金、ちゃんと使いなさい」 そうである。 藤堂が買った、はずの今このリビングのひとつの壁一面を飾っている絵は悠が個展に出品したものだ。 だが、その代金を悠はどうしても受け取ってくれないの
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)72までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)72までアップしました。 時節柄、花にちなんだエピソードをアップしております。 花の宴(工藤×良太)9(ラスト) 故あって桜を敬遠している工藤を、良太らが会社の裏庭で始まった夜桜の宴に引っ張り出します。
月夜の猫-BL小説です 花びらの囁き1 BL小説 「ヨーロッパに旅行? いつ? 誰と?」 声がひっくり返りそうになるのを、藤堂はすんでのところで堪えた。 「高津と。今度の月曜日から次の週の火曜、って二十二日? パリからローマ経由してフィレンツェ回るんだ」 夜の十時。 三月に入ったばかりの金曜日である。 昼のうち
月夜の猫-BL小説です 花の宴9 BL小説 「何が?」 アスカはパイを頬張ったまま振り返った。 「あの二人、工藤さんと山内ひとみ」 「どうにも。昔からの悪友みたいよ」 「良太とのことは?」 「知ってるわよ、彼女、良太を可愛がってるし」 「そうか……」 千雪はなるほどとうなずいた。 「それより、工藤さんじゃない?
月夜の猫-BL小説です 花の宴8 BL小説 「はあ、ガキの頃から女みたいや言うて、からかわれよりまして、じゃまくそうて、大学デビューで変身したったんです」 千雪はしれっと言った。 「はああ、いろいろ苦労があったわけやね」 「いや、これがまた周囲の反応がおもろいのなんの、ちょっとやそっとではやめられへん」 千雪は
月夜の猫-BL小説です 花の宴7 BL小説 「あ、俺やります、千雪さん」 「良太、お皿並べてんか」 「でも、テーブル乗っかりませんよ」 「じゃ、あたしみんなに配る」 皿を持つアスカを見かねて、今度は京助が切り分けたパイを二つずつのせた皿を取り上げて、配って歩く。 そのようすをしげしげと眺めていたひとみが、
月夜の猫-BL小説です 花さそう72 BL小説 「ったく、心臓が止まるかと思ったぞ。俺の人生設計が狂うかと思ったじゃねぇか」 「なあにが、設計のせの字も知らないくせに」 「フン、自慢じゃないが、俺なんか胃も腸もポリープ取りまくって、医者に一体どういう食生活してるんだってど叱られてるぞ」 それこそ自慢げに言うと、下
月夜の猫-BL小説です 花さそう71 BL小説 二四六から一つ入った通りの地下に、古いショットバーがある。 MBC時代からADや下請けスタッフのたまり場になっていたこの店は、工藤もまた金のない仲間らとよく訪れていた頃から全く変わっていない。 ドアも壁もカウンターもスツールも年季が入っている。 ポップスだかジャズ
月夜の猫-BL小説です 花の宴5 BL小説 「だって、谷川ちゃんってば、絶対飲まないのよ、運転するからって」 「それが当り前なんだ」 秋山がアスカをたしなめる。 「あの人、堅いよなー、あんま笑わねーし」 次、日本酒行こう、と俊一と競い合っている小笠原が言った。 「あ、やっぱここだ、来たぞ~良太」 良太が顔を上げ