心模様
彼女はいつも笑顔だ。こちらまで、自然と明るい表情になる。 近所に住む彼女、咲希さんとは、ごくたまにすれ違うことがある。互いに、もしくは片方が自転車に乗っている、そんな状況もあって、立ち止まることはない。挨拶を交わすのみだ。 駅前のクリーニング屋へ行く途中、向こうからよく知る人物が歩いてきた。今日は互いに自転車に乗っていない。立ち止まって、つい話し込んでしまう。彼女の、包容力を感じさせる、優しい声が、会話を弾ませる。 よくないな、とこの頃感じていた。疲れた、時間が足りない、終わらない、分からない、文句のオンパレードだった。確かに、言葉のとおりの事実はあるにせよ、訓練校の帰りの日課のようになってい…
2023/09/19 23:37