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以前、【焼香師について】という記事を書いたのだが、その際、「焼香師」の原型として「焼香比丘」がある気がしていた。実際、「焼香師」という語句は、比較的近年にしか登場しないため、それに相当する別の語句があるはずだと思っていたのだが、宗門の一部法要で用いる「疏」では、法要導師のことを「焼香比丘」としており、その関連を考察しようと思ったのである。宗門の古い用例だが、江戸時代末期の永平寺50世・玄透即中禅師『永平寺小清規』中に2箇所ほど、法要を告知する「牓」への記載として「焼香比丘」が見られたが、多くは見られないことが分かった。そこで、ちょっと気になったので、現行の『行持軌範』を調べてみて、そこから各種「疏」の「○○比丘(実際には「比丘尼」との併記だが、ここでは略記)」の表記について、検討しようと思う。・遺教比丘(...「焼香比丘」の話
現在の曹洞宗では、「焼香師」という言葉が用いられている。しかし、この言葉は古い文献にさかのぼることが出来ず、『曹洞宗宗制』や『行持軌範』には用例はあるものの定義されていないらしい。よって、今回は定義的な問題を含めて検討したい。まず一般的な仏教辞典には、「焼香師」は立項されていない。これは、中国で編まれた漢訳仏典に「焼香師」が登場しないことを意味する。また、江戸時代の臨済宗の学僧・無著道忠禅師『禅林象器箋』にも、立項されていない。これは、江戸時代中期に、用例が存在しなかったと理解して良いのではなかろうか。ただし、『禅学大辞典』には「焼香師」が立項され、以下の意味を見出すことが可能である。①法会に際し香語を唱え香を拈ずる式師で、導師のこと。②本山などの大寺院の特別法要に、とくに外部から式師の役を勤めるもの。そ...焼香師について